マイルチャンピオンシップ2021【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧
【レース結果速報】1着グランアレグリア(1.7倍)2着シュネルマイスター(4.6倍)3着ダノンザキッド(16.1倍)
レース名 | 第38回 マイルチャンピオンシップ(GⅠ) |
日程 | 2021年11月21日(日曜) |
優勝馬 | グランアレグリア |
優勝騎手 | ルメール |
勝ちタイム | 1:32.6 |
馬場 | 良 |
3連単配当 | 5,460円 |
マイルチャンピオンシップ2021 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ
着順 | 馬番 | 馬名 | タイム | 着差 |
---|---|---|---|---|
1 | 12 | グランアレグリア | 1:32.6 | - |
2 | 3 | シュネルマイスター | 1:32.7 | 3/4 |
3 | 13 | ダノンザキッド | 1:32.8 | 1/2 |
4 | 7 | インディチャンプ | 1:32.8 | ハナ |
5 | 1 | ホウオウアマゾン | 1:33.0 | 1.1/4 |
単勝 | 12 | 170円 |
複勝 | 12 | 110円 |
複勝 | 3 | 140円 |
複勝 | 13 | 300円 |
枠連 | 2-6 | 270円 |
ワイド | 3-12 | 190円 |
ワイド | 12-13 | 630円 |
ワイド | 3-13 | 970円 |
馬連 | 3-12 | 370円 |
馬単 | 12-3 | 540円 |
3連複 | 3-12-13 | 1,960円 |
3連単 | 12-3-13 | 5,460円 |
マイルチャンピオンシップ2021 - レース後コメント(騎手/厩舎)
「安心しました。嬉しいですね。今日、一番大事なのは、グランアレグリアのパフォーマンスでした。ラストランなので、本当のグランアレグリアを見せたかった。今日は、走り方が違いましたね。ちょっと後ろになったけど、“スーパーホース”ですから気にしないで騎乗しました。直線で大外から伸びることができた。ゴールまで頑張ってくれた。本当に、こういうメンバーで素晴らしいパフォーマンスです。最初から特別な馬でした。2歳からトップレベルで走りました。毎回毎回、いい競馬をしてくれました。ファンもこの馬が好きだったと思います。これから、寂しくなりますね」
※優勝したルメール騎手のコメント
マイルチャンピオンシップ2021 - レース結果動画(YouTube)
※実況レース映像
マイルチャンピオンシップ2021 - 回顧
前が差されるはずのない展開から、外を突いて上がってきたのがグランアレグリア。
スタートはまずまずで、苦しい展開も内を突いて伸びてきたのがシュネルマイスター。
スケール感で追いつたいたようなところはある若手勢だが、格をキープしたまま、逃げたホウオウアマゾンに差し返された哀れなサリオスを置き去りにして、現状の力の通りの結果になったようなところがある。
しかし、サリオスは手応えよく上がってきたものの、2歳時のようなタフな展開を好む馬には、昨年以上にもっとキレ味勝負にならない展開は、キレるマイラー全盛の時代にあって、厳しい展開だった。
サイレントウィットネスのようにも窺えた気配は、この流れではその特性を全く活かせない門外漢と化していた。
キレるが時計勝負の方が合うインディチャンプも、文句のつけようがないインからの抜け出しだったが、陣営の狙いが香港にあるのか、伸びはもう一つ。
いや、これを差す馬が強かったのだ。
勝ったグランアレグリアは、幾らかこういう展開にはアドヴァンテージのようなものはあったとはいえ、鋭さで互角くらいに育ったシュネルマイスターが内枠で、サリオスが道を作ってくれたから<インディチャンプに先を行かれた不利もあったが>、本当はかなり厳しい引退レースであったはずである。
ところが1:32.6という上々の勝ちタイムで、底力の差を見せつけたのだ。
ディープインパクト直仔ももうそう多くないから、阪神外回りコース適性を語られることは減るはず。
しかし、直仔のサトノダイヤモンドや産駒がデビュー初年度のシルバーステート、再来年産駒誕生の予定であるコントレイルなどが、その一流のキレ味を引き継いでいく「エース種牡馬」となれるかは、牝馬だからという次元ではなく、こういう流れでこそという魅力を大舞台の不利な展開の時にこそ、見せつけられるかにかかっている。
マイルに合う体型、キレ味は父も母のタピッツフライも持ち味としていたが、それにしてもスパッと切れるディープインパクト産駒というのは、あまり大舞台で活躍のイメージはない。
何しろ、ダービーでやたらと勝ち馬を出すが、コントレイルで古馬タイトル未勝利で引退の危機にある状況で、そうした真の本物を作るという競走馬作りに適さない性質を、サンデーサイレンスの後継種牡馬として、特にそうした早熟性を凝縮させたように継承したのだから、真の意味でのサンデーサイレンス系大種牡馬は、このディープインパクト産駒の中から生まれるのであろう。
ディープインパクトは走ることが大好きだった競走馬だったから、それを半ば強引に抑え込んだ武豊騎手の騎乗に、当時の池江泰郎調教師はひやひやモノだったとよく語ってきた。
しかし、凱旋門賞で掛かったのだから、走ったことをなかったことにされる悲劇こそあれ、鞍上の判断は正しかったように思う。
今回グランアレグリアを駆ったルメール騎手も、本質的な思考では同じだろう。
他の馬は違うのかもしれないが、差せる脚も類まれな加速能力もあるから、芝の基本距離では自分のリズムを守り通した方が安全。
『35.6-47.6-59.3→33.3秒で1:32.6』
『35.4-47.7-59.4→33.3秒で1:32.7』
<*2019年・桜花賞のラップ>
鞍上も同じ、調教師ももちろん同じ藤沢和雄師。
ここでデジャヴとは驚きだが、これは誰も得意ではない展開だから、勝ち目はなかったということになる。
桜花賞の時のグランアレグリアより、今のグランアレグリアの方がスピードは削られたとしても、経験値が違うのだから。
そうした知っている展開をぶち抜いたグランアレグリアに対し、意義ある抵抗でファンを沸かせたのは、3歳のタイトルホルダーだった。
内からシュネルマイスター、外から復活叶ったダノンザキッド。
弥生賞ディープインパクト記念で連勝が途切れた面々は、こうして、中距離シフトの展開に転じたマイルチャンピオンシップで、未来への伸びしろの豊かさを結果で示した。
まだマイル慣れが必要に思われたダノンザキッドではあったが、面白いように自分の思惑通りに事の運んだ昨年の今頃よりは、ずっと中身が詰まっている印象もある。
いずれ転厩の運びになるだろう、あと1年と少しのキャリアで勇退の安田隆行調教師にとって、首尾よく、マイラー気質を引き出したこの流れもまた、師の思惑の通りだろうか。
藤沢調教師とは、どことなく方向性が似ている。
早期引退の可能性は、シュネルマイスター破りしかないだろうか、決め手比べで負けたこの後が重要だろう。
案外、今後の活躍のステージは入れ替わっていく可能性がある。
スピード比べにもキレ味勝負にも、タフなローテも初経験の連続にもめげず、これでトータル【4・2・1・0】とした上に、負けた相手は、
・ディープインパクト記念=タイトルホルダー
・安田記念=ダノンキングリー、グランアレグリア
今回はダノンキングリーの後に続いた面々で決まった結果も、G1馬なり、そうしたことが既定路線だった馬に敗れたのみという記録は、世代の基準ではなく、マイルから2000Mにおける大レースへのステップにおいて、極めて重要な存在になっていくことがこれで確定した。
何があっても、自分の良さは出し切るのが信条。
ほぼ無敗に近い父キングマンは、ファーブル厩舎・仏にはペルシアンキング、ゴスデン厩舎・英にはパレスピアという、自身とよく似たキャリアを重ねるマイラーを送り込んでいる。
彼らとは違い、一度はスピード競馬にかこつけて、日本のギニー競走である皐月賞を目指すが、コーナーワークで巧みに距離損をなくすような戦法が向かず、ならば展開不適でも差す形<実際は出が悪いことが原因だが>に拘って、自分のタイミングでスパートを駆けるべき馬なのだと、グランアレグリアの前で再び示せた価値は大きい。
ライバル陣営は、再びこのキレるマイラー対策に挑まねばならない。
手塚貴久調教師は、フィエールマンの経験を活かし、ゆっくり長持ちさせる策を練る。
楽しみは続くだろうが、遅くとも、5歳春のドバイまでにはスタッドインだろう。
生産者の期待は、ディープインパクト産駒以上に大きいであろう。
今後のポイントは、母タピッツフライが英三冠のNijinskyのクロスを持つから、重厚な芝向きの性質はどう産駒に、孫以降に継承されるのかというところだろうか。
速いディープでは後継のミッキーアイルがしっかりとA級馬を出しているから、今後とも期待できる個性派の道を歩めるが、牝馬のグランアレグリアは、ディープ直系の繫殖牝馬としての未来を、母系の中で支える基礎としての位置づけを早くに作る必要に迫られる。
時代はスピード型を求めるから、ノーザンダンサー系ならばStorm Cat、Danzigといった快速型の末裔が全盛期であり、芝向きのNureyevやLyphardなどは、Sadler's Wellsにスピード型前記2系統らに押され、案外、目立ったところに入らない。
北米型の血統であるものの、スピード型のノーザンダンサー系、芝向きキングのサドラーはないのだから、邪魔にならないところに入るミスプロ系の血も好感が持て、グループ全体としてどうした配合相手を迎えるべきか、実のところは、彼女が誕生した時から色々お楽しみで、思案してきたところがあるように気がする。
キングマンボの血は、ヌレイエフが入っていないから簡単に入れ込める。
フォーティナイナーはもう流行っていないが、邪魔する血もない。
ストームキャット系のドレフォンはクロスが薄すぎて、淡白なイメージの通りに出そう…。
生産者の楽しみを堪能できる配合相手探しに、当初から考えを持っていたはずのノーザンファームは、本気で後継を作りとして、芝向きならロベルト系ツートップのモーリス、エピファネイアに限らず、世代の進んだサンデー系<ダノンザキッドであれば、サンデーは4×3の同系配合といった感じ>という選択肢もある。
引退後のシュネルマイスターやその父キングマンも視野に入るし、欧州、北米の大種牡馬との交配があってもいい。
長期展望で楽しめる一大牝系を作る上で、後継の牡馬と同じくらい、牝馬の出来や繁殖能力も重要。
これからが実は忙しいのが、グランアレグリアなのである。