2022年天皇賞(春)【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着タイトルホルダー(4.9倍)2着ディープボンド(2.1倍)3着テーオーロイヤル(9.9倍)

レース名第164回天皇賞(春)
日程2022年5月1日(日)
優勝馬タイトルホルダー
優勝騎手横山和生
勝ちタイム3:16.2
馬場稍重
3連単配当6,970円

2022年天皇賞(春) - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
116タイトルホルダー3:16.2-
218ディープボンド3:17.37
37テーオーロイヤル3:17.41
49ヒートオンビート3:18.03.1/2
51アイアンバローズ3:18.3 2
単勝16490円
複勝16180円
複勝18120円
複勝7260円
枠連8-8450円
ワイド16-18270円
ワイド7-16950円
ワイド7-18500円
馬連16-18520円
馬単16-181,230円
3連複7-16-181,580円
3連単16-18-7 6,970円

2022年天皇賞(春) - レース後コメント(騎手/厩舎

「今日は本当にタイトルホルダーと仲良く走ろうっていう気持ちでした。タイトルホルダーにホントに教えてもらいました。GⅠを勝ったというよりも、タイトルホルダーと勝ててうれしかったです。
折り合いに不安がなかったのでしっかり出して行って。あとはタイトルホルダーを信じて乗っていました。僕がそろそろ息を入れたいというタイミングで馬もスッと息が入ってくれたので、馬が(レースを)自分で分かっているんじゃないですか。GⅠなので甘くないのかなと思っていましたが、馬もしまいの動きがしっかりしていたので、まず大丈夫だろうと思っていました」

※優勝した横山騎手のコメント(※タイトルホルダー)

2022年天皇賞(春) - レース結果動画(YouTube)

2022年天皇賞(春) - 回顧

みんなよく知っているキングマンボ系×サドラーズウェルズ系の配合ではあるが、サンデーサイレンスを母系に挿し込むことをしないノーザンダンサー系に関わるクロスばかりに収束させたことで、母父Motevatorに入るゴーンウェスト由来のミスタープロスペクターのクロスはスピードアップ効果をほとんど有せず、バランスをとるための緩衝材のような役割に出たということだろう。

ここの点が強く出ると、菊花賞も阪神の天皇賞も逃げ切る馬など出るはずがなく、しかし、唯一その持続性に富んだスピードの安定した繰り出し方<差し馬とは違い、瞬時に爆発的なものを出すことには向かないということでもある>は、北米テーストのダート向きが多く出るミスタープロスペクターの本質をわずかに残した、タイトルホルダーの強烈な長距離での先行力に少なからず影響を与えたとできる。

キングマンボ系はミスタープロスペクター系の中では、かなり芝に向いた性質を芝競馬の本場・ヨーロッパの主要レースでも見せつけてきたわけだが、そうした才能の部分がもし強く出ていたのなら、滅多に春の天皇賞で上位入線しないキングマンボ系の傾向に反している要素がどこかになければならず、それも芝向きに出すことを強化したノーザンダンサー系のヨーロッパ総局代表であるサドラーズウェルズ系の血の影響が強く出たとするだけでは説明がつかないので、エルコンドルパサーが凱旋門賞で逃げて押し切りそうになった例からも、速さの出し方を変に芝向きに器用に使いこなせないようにしたからこそ、こういう偉業が達成されたというわけだ。

どこからどこまでもキングマンボ系の本質を逸脱し、欧州圏における長い距離ほど逃げてはならない鉄のおきてを破ったということでは、もう、2015年春二冠を完勝で決めてみせた父ドゥラメンテの才能というより他ない。
より天才の能力発揮の法則にがんじがらめにされているようで、どこか自由なところのある馬。
父がそうであったように、タイトルホルダーもまた言い知れぬ何かを未だに隠し持っているのかもしれない。
そう評するより手段を持たない我々の方が、競馬への理解が不完全である可能性を示した、圧巻の春の盾完勝劇であった。

早い話が、競馬をできなかったのにオープン参加をしていたシルヴァーソニックまでもがよもやの逸走に終わったことでもわかるように、信じられないほどのスタミナ比べになったということ。
それは強い馬しか上位には来ない。
3000M級重賞の出走経験のないヒートオンビートも大健闘の4着だったが、勝ったタイトルホルダーとは2秒ほど離されている。
春の天皇賞の道悪競馬で、唯一、重馬場ながらも死闘に持ち込んでレースをハナ差で制したライスシャワーのみ、3:19.9で勝ち切った記録があるくらいで、高速馬場がわずかに湿ったというレベルではなかった稍重馬場で、なんと3:16.2の快時計で、横山和生騎手と菊花賞馬のタイトルホルダーは逃げ切りによる大楽勝のおまけつきで、皆が手放しで絶賛のレースを魅せたのだから、ディープボンドさえも伏兵に過ぎなかったということだろう。

筆者は、セイウンスカイと和生騎手の父典弘騎手の苦心の競馬を<春の天皇賞は4歳時に3着>見ているので、キングマンボ系も滅多に連絡みすることのない長距離重賞で、スタミナはディープボンドの方が上と考え、安易な感じでディープボンドの方を上位に取ったが、理解が甘かったし、そもそも、このレースに出られるかわからないほど不安な正月を送ったタイトルホルダーとその陣営でありながら、身内すら裏切るほどの再成長である。

破壊力の増強ぶりは、4コーナーの手応えからも一目瞭然。
いつも勝負どころの動きは鈍いディープボンドとはいえ、テーオーロイヤルの方が上がり目があるような、これも菱田騎手の素晴らしすぎる好アシストにも屈することなく、最後はねじ伏せているのだから、その7馬身前でゴールとなった時点で、勝負になっていなかったことを意味する。

横山典弘騎手が作り上げた「芸術的ラップの名作」のひとつのセイウンスカイであり、人気薄大逃走のイングランディーレ<2004年の天皇賞逃げ切り、タイトルホルダーと同じく2着馬に7馬身差>も歴史を作った名レースであるが、もしかすると、父の再現を狙った弟武史騎手の菊花賞よりも、馬もそうだが、兄和生騎手は父をも上回るような、傑出した策を繰り出した可能性を仮定してみたくなった。
そういう結果である。

序盤の1000Mは60.5秒で、菊花賞の60秒のペースより、セイウンスカイの59.6秒に近いだろう。
ただ、かなり緩めた武史騎手の中間ラップに対し、よりセイウンスカイに近づけて、2000Mは123.6秒=2分3秒6。
セイウンスカイの123.9秒よりわずかに速く、調整に入ったことになるが、一方で、後続を前にいながら撫で切ったように思える厳しいラップだった。
何しろ、高速馬場が一変する阪神の稍重競馬である。

レースレコードとして残るキタサンブラックの3:12.5では、2000は2分を切っているが、これはキタサンブラックが先頭ではない時のヤマカツライデンのラップ。
しかし、消耗度合いが明らかに違う京都と阪神で、差し馬に少しは有利になる溜めを自身のために必要な分を作ったため、マイルの前後半で、今年の天皇賞(春)は、

<97.4秒・1:37.4?98.8秒・1:38.8>

実は、イングランディーレははるかにタイムは遅いものの、

<99.8秒・1:39.8?96.6・1:36.6>

何を言いたいのか。
策士・横山典弘は菊花賞も春の天皇賞も逃げ切った、恐らく最初で最後の騎手になるはずだが、唯一、それを可能にする体内時計を持っているのが、その子息・和生、武史両騎手なのではないだろうかということ。

セイウンスカイで天皇賞を逃げ切ろうしたとき、終生のライバルであるスペシャルウィークと武豊騎手の執拗なマークだけでなく、今回のテーオーロイヤルのように、ダイヤモンドSを勝ったタマモイナズマという伏兵がいたせいで、自由にできなかったのである。
ところがよりスタミナ基調の長距離戦となる阪神開催で、タイトルホルダーのような傑出した特殊能力の持ち主に力を発揮させてしまうと、逃げ切りが可能になるということを証明したのだ。

明らかにイレギュラーな展開ではあるが、血統の歴史とレースのルールが画一化された近代競馬において、異常な何かが発生するとき、そこにも特異な法則が存在し、勝ちパターンもまたわずかな可能性とはなっても、完全遂行さえできれば、難しいが不可能ではないと言えるのである。
イングランディーレは単純な展開の綾だか、菊花賞を逃げ切ることをできたタイトルホルダーには、変則開催を味方につける才能があり、また横山家の血を引く名手の才能もまた、阪神で引き出されたというわけだ。

スタミナとは無縁になりつつある現行長距離G1に、再びタフネスの存在を証明すべき舞台としての存在意義を改めて名馬と名手の絆により、高らかにこの世界に示した価値は、あまりにも絶大だった。
3200Mにこそ本物の価値があることを天皇賞競走自身が魅せる形で、これがG1の本質であると結果で示したのだから、ジャパンCも有馬記念もない。
普段のイメージを超越し、G1のレース水準に持ち込まれた時の春の天皇賞は、明らかに、どんな大レースよりも大いなる勝利の意義をもたらすのである。
まさしく、タイトルホルダー様様。
そうしても過言ではないほどに、この再演による大楽勝には芸術的価値に実益が伴っていたのだ。