2022年菊花賞【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着アスクビクターモア(4.1倍)2着ボルドグフーシュ(11.5倍)3着ジャスティンパレス(9.7倍)

レース名第83回菊花賞(G1)
日程2022年10月23日(日)
優勝馬アスクビクターモア
優勝騎手田辺 裕信
勝ちタイム3:02.4
馬場
3連単配当30,010円

2022年菊花賞 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
114アスクビクターモア3:02.4-
24ボルドグフーシュ3:02.4ハナ
3
17ジャスティンパレス3:02.5 1/2
4
11ドゥラドーレス3:03.45
59シホノスペランツァ3:03.4クビ
単勝14410円
複勝14160円
複勝4290円
複勝17330円
枠連2-7850円
ワイド4-14790円
ワイド14-17770円
ワイド4-171,920円
馬連4-142,030円
馬単14-43,370円
3連複4-14-176,440円
3連単14-4-1730,010円

2022年菊花賞 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「よくしのぎきってくれた。自分から勝ちに動いていったので、最後、脚が上がり気味だったけど、迫ってくる勢いもじりじりだったので何とかしのいでくれないかなという思いだった。(ゴールの瞬間は)分からなかった。僕も3分走った後なんで、疲れました。

最後の1冠ようやく獲ることができました。まだ若い馬ですし、これから強い馬と戦うことも多々あると思うけど、まだまだパワーアップしてもっともっとG1も勝ってほしい。」

※優勝した田辺騎手のコメント(アスクビクターモア)

2022年菊花賞 - レース結果動画(YouTube)

※実況レース映像

2022年菊花賞 - 回顧

優勝したアスクビクターモアの半姉にあたるQemahは、父がDanehill Dancerという影響もあるのか、3歳時にロイヤルアスコットと夏のドーヴィルでマイルG1を連勝しているような馬。

アイルランド産のフランス調教馬で、アスクビクターモアとよく似て、掲示板は滅多に外すことのないタイプの馬だった。

母カルティカは凱旋門賞馬のRainbow Quest産駒であり、サクラローレル<天皇賞・春、有馬記念>と人間で言うところの兄妹馬であるから、ある程度のステイヤー適性は備わっていたはずだが、ローレルはおろか、ナリタトップロードが完成しきった頃に叩き出した3:02.5を上回ったのだから、何ひとつかけることのないA級中長距離馬を名乗ることができる。

近親には一応、ミスタープロスペクター産駒の中での異質な存在感を放つCrafty ProspectorやスワンSを快勝したケイエスミラクルなども登場するから、何だかイレギュラーな存在となっているレインボウクエストの存在が、大きく影響していることは明らかだろう。

昨年も異様な勝ちっぷりを誇るディープインパクト記念優勝馬が登場したが、実は、昨年のタイトルホルダーよりもこの時点での完成度は上なのかもしれない。

底力のディープインパクト産駒は、3歳時に完成する。

ほぼ最終挑戦に近い菊花賞が、タフすぎる阪神開催であり、ディープインパクト産駒が1、3着というのは、日本の競馬ファンとして誇らしく思うべき素晴らしい結果ではないだろうか。

セイウンハーデスの幸英明騎手は、あんなに飛ばす予定ではなかったはずだが、恐ろしいほどの快スタートを決めた影響で、止めることができなかった。

最初の1000Mは58.7秒、次の同ラップは62.7秒なので、この時点で昨年のタイトルホルダーより4秒速い流れを作ってしまっている。

逃げ残る事さえ叶わない切ない逃避行だったが、追っ手がダービー最先着馬のアスクビクターモアだから、もう勝負どころではなす術はなかった。

ただし、このガンガン行ってしまったことが、凄まじい消耗戦を生み出したのである。

行く気を見せるといっても、ハイペースまでを作ることはしないアスクビクターモアにとって、外枠からのスタートの有利さやこの折り合いに変な面を見せる可能性の失せる、落ち着いた追走を心掛けるしかない展開を、田辺裕信騎手は一切の邪念を捨て去ることで、歴代ステイヤーたちが繰り広げてきた「菊花賞の正しい勝ち方」にはめ込み、ハマったと思わせたボルドグフーシュら後続勢をついに抑え込んで見せた。

馬乗りの才能は極めて洗練された非アスリート型を地で行く田辺騎手にとって、折り合いは難しいが差す手はないという強気スパートのみに勝機のあるこの手の馬との競馬で、コパノリッキーやロゴタイプでの強烈なパフォーマンスを思い出したファンも多かったはずだが、あの4コーナーからの引き離し方は、馬に合わせたというよりも、歴史に学んだ勝ちに出る形を踏襲したもの。

細かくラップを見ていくと、最後の1000Mはちょうど61秒。

レースの上がりが3Fで37秒であるから、綺麗に12秒のラップを刻み続けてで上がってきたのだ。

アスクビクターモア自身の上がりは36.9秒であり、ほぼレースの上がりと同質。

追い上げて最速とて、36.3秒が精いっぱいのボルドグフーシュがいかに頑張ったところで、突き抜けることができなかった計算になる。

ただ、負け組にも見どころが十分にあったレース。

こういう展開に対応したというよりは、これまでのスタミナの活かし方を丁寧に育んできたボルドグフーシュ<中京2200戦の京都、神戸両新聞杯で追い込む形で3着>だとか、ジャスティンパレス<神戸新聞杯圧勝、ホープフルSも無駄な動きもあるながら2着に飛び込む>らに、他のライバルにはなかった時計勝負での実績を背景にした強みをフルに出し切ることが、前を行った2頭の動きにより、可能になったということだろう。

たとえ、アスクビクターモアがボルドグフーシュやジャスティンパレスらに捉えられたところで、拙騎乗を問うような愚筆は飛び出さないようなレース。

勝てば官軍なのだが、負けても賢いとされる競馬は現にある。

今回の敗者にはそれを当てはめてあげたい。

トライアルホースとして最高の結果を出そうとねじ伏せに掛かったジャスティンパレスと鮫島克駿騎手の惜しい内容・3着にも、人馬共に充実の現状を示す背景のようなものがよく好結果に反映されていたようにも感じられたが、速い展開を好むようなディープインパクト産駒ではないだろう。

高馬はあまり走らないという定説に逆らってはみたものの、誰にでも限界は存在する。

本来、アスクビクターモアだってダービー馬になれそうな位置から差されたという屈辱があるのだ。

もう少し弾ける馬にパワーアップさせたい。

ガイアフォースは母父がクロフネのキタサンブラック産駒ということで、芦毛を味方につけた、例の菊での快走の前例に倣う支持が多く集まったものの、実際は、セントライト記念でも距離はギリギリだった可能性がある。

相手が菊花賞を勝つアスクビクターモアであったから、それを狙い討っていい勝負に持ち込んだ結果が高く評価されたが、阪神開催の菊花賞だけに、上がりが速くなったところで、キレにが限界があるうえに、父と同じように内枠の利を<父は4番枠、ガイアフォースは1番枠・父はこの枠を引いてG1で沢山好走していった>最大限に活かそうとしたのだが、まるで抑えが利かない激しい展開に何とか参加こそしたものの、持てる才能を生かすには、このスタミナ勝負の長距離戦は苦しすぎた印象。

ロベルトの入っている馬が上位を占めて、奇しくも昨年の勝ち馬と同じ父を持つドゥラドーレスが健闘を見せるも、あのタイトルホルダーが通った後は空白地帯が生まれるという現象を再現するかのように、セイウンスカイにも及ばない3:03.4で大きく離された4着だったことでも、上位3頭とその他大勢とでは、まるで適性や持っている勝負運が違ったという展開にも映った。

健闘のシホノスペランツァ、やけに好気配に見えた武豊騎手のヤマニンゼファーらは、初戦は追い込んで好走。

頑張っても耐えきれずに8着だったガイアフォースの方が、内容的には次につながる経験となったはずで、菊花賞が荒れやすいということがよくわかる展開でもあったとできる。

強いて、もっと頑張ってほしいと思わせたのは、ハイペースなのに大事なポイントで掛かってしまった本命のフェーングロッテンよりも、序盤から何もできなかった印象のヴェローナシチー。

速すぎた京都新聞杯でも最も印象深いレースをした強気スパートが売りの伏兵が、出来も悪くように見えなかったのだが、川田騎手を配して、スタミナ勝負になったにもかかわらず、着順が大いに後方位に終わった。

この手の馬は、ますます成長をして、いずれは春の天皇賞での活躍を期待したくなるようなスタミナの血を持ちながら、この馬も母母父がクロフネ。

母父同種牡馬のガイアフォースもプラダリアもパッとしなかったように、本来は速い血である北米血統のこのラインが、何とか格を保つ日本の長距離G1ではNG血統である可能性を大いに示した、阪神・大レコード菊花賞だった。