菊花賞2023【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着ドゥレッツァ(7.3倍)2着タスティエーラ(4.7倍)3着ソールオリエンス(2.7倍)

レース名第84回菊花賞
日程2023年10月22日
優勝馬ドゥレッツァ
優勝騎手C.ルメール
勝ちタイム3:03.1
馬場
3連単配当12,380円

菊花賞2023 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
117ドゥレッツァ3:03.1-
27タスティエーラ3:03.73.1/2
314ソールオリエンス3:04.01.1/2
46リビアングラス3:04.13/4
58サヴォーナ3:04.1ハナ
単勝17730円
複勝17210円
複勝7160円
複勝14120円
枠連4-81,050円
ワイド7-17660円
ワイド14-17400円
ワイド7-14260円
馬連7-171,980円
馬単17-74,210円
3連複7-14-171,570円
3連単17-7-1412,380円

菊花賞2023 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「勝つことができて、嬉しくてゴールではテンションが上がりました。1周目は静かな騎乗をしたかったのですが馬がとても元気で、すぐ前の方に行ったので逃げた方がいいと思いハナを切る判断をしました。3、4コーナーの手応えは良く、いい結果を出せると思いました。強いメンバーの中でGIを勝つことができましたし、今回は3000mでしたが2000mや2400mでもGIレベルでいい結果を出せると思います。」

※優勝したC.ルメール騎手のコメント(ドゥレッツァ)

菊花賞2023 - レース結果動画(YouTube)

※実況レース映像

菊花賞2023 - 回顧

ドゥラメンテは先週の主役であるリバティアイランドの父であり、来週人気の一頭になる二番手グループ的存在のスターズオンアースの父であり、菊花賞と春の天皇賞を暴力的スタミナで押し切ったタイトルホルダーとも共通するスーパーサイアーである。

何しろ、ここに来て、牡牝のクラシックを同年に獲る種牡馬となって、偉大なる遺産を競馬界に置き土産にして旅立ったということでは、死んだ馬の仔が走るというレベルを遥かに超越する結果。

ディープインパクトはサンデーサイレンスの死後、その仔であるコントレイルも、父が死んだ後のデビューだったというのは、パーソロン産駒のシンボリルドルフが登場した流れとまるでそっくりだから、必然性さえも感じさせる。

このドゥレッツァ号は、まさにそのドゥラメンテの持つスピード勝負に強い血を、ある意味で強化したヘイローやミスタープロスペクターのクロスを有するものの、元々は欧州系のファミリーであり、実は、2着に入ったダービー馬・タスティエーラの父系に入るマルジュと同族。

マルジュの母母とドゥレッツァの5代母は共通のWelsh Flame。

大物を出す系統でもある。

デインヒルもサザンヘイローに関わるウッドマンも入るから、ベースはスピード型なのだが、意外と距離延長に強いということでは、どの血もわずかな共通項の部分で似ている面もあり、得意なわけはないが、同期同士の争いであるなら、末のスパート力を封じる先行力を得るようなこうした場面で、全力の好勝負を演じて不思議はないと出来なくはない。

ミスプロクロスはその点で、イメージ邪魔をし、前々走で東京の直線勝負で圧倒的なキレ味を披露したそれにも引っ張られるが、それは、新潟でおぞまじいまでに瞬間移動能力を証明したリバティアイランドのそれと、本質の差はない。

新潟のタフな内回りにも適応した時点で、ドゥラメンテのスタミナ保有型・本格派タイプの菊花賞向き、だったという可能性を、今更ながら、痛切に思い知らされた次第である。

知らないことではないのだから、私がバカだったというだけの話であろう。

暴れ馬たるルメールさんの、わがままな勝負意欲がよく表れた一戦であったが、先週よりもっと、ここは自由に戦える大レース。

普段以上にリラックスして臨めたことで、型に拘ることなく、次に繋がればそれでいいというくらいに、レースの組み立て方そのものでは、ほとんど型破りに近かった。

ところが、このルメール騎手が示した先行して粘り込むスタンスは、時計のレベルからして、1998年伝説を生んだセイウンスカイ・横山典弘騎手を皮切りに、型だけ真似て、地力を信じてメイショウサムソンを倒すというイメージでそれに先着したアドマイヤメイン・武豊騎手<2006年>など、JRAでも出色の戦績を残す名手は、すでに記録的菊花賞のレースシーンをセンセーショナルな形で演出というか、主役になったようなところがあったから、皆が知るそれでもあった。

一方で、父のまねを普通できるはずがないのに、2021年の阪神開催で逃げ切ったタイトルホルダー・横山武史騎手は、兄である和生騎手に手綱を譲るものの、それでも春の天皇賞を逃げ切る。

父は古い順に、シェリフズスター、サンデーサイレンス、ドゥラメンテ。

英仏の12Fのタイトルを一つずつ持つシェリフズスターはもちろんのこと、サンデーサイレンスもドゥラメンテも、生まれ故郷のクラシック二冠で、ダービーと名の付くレースを勝っている。

何がどうなのか、端的に言えば、そうした似たような記録をもつ競馬の型を、どこかで知っているのであれば、ルメール騎手ならいくらでも相似の型くらいには持ち込めたはずなのだ。

ヨーロッパ出身の騎手で、好き好んで長距離重賞を逃げるバカはいない。

ただ、北米テーストのスピード競馬を、年々進行させるようにして、速さを優先する競馬を長距離戦でもできなければ、G1など勝てないことを知り尽くすルメール騎手ならば、勢い有り余る4勝馬・ドゥレッツァという極め付きにも近い上り馬を駆るところで、迷いなどない。

行きたければ、行ってみればいい。

ただ、その時点で勝負ありだったということ。

ルメール騎手は逃げたことがあったというより、似たように本来の型からも、先行のスタイルで勝負しないといけないリアファルで、これよりはもう少し抑え気味でも、キタサンブラックやリアルスティールに屈しながら、何とか粘り込ませて、3着に残した経験がある。

これが日本の騎手になって、ちょうど最初に菊花賞に参戦した時の記録。

以降、菊花賞は2勝し、強い競馬をする馬の2着も同じ数だけ記録しつつ、ついにリーディング争いをする騎手らしく、3・2・1の着度表を、今年の結果で実現。

早い段階で、動かないといけないことがあるというものと、動かない方が当然いいという両方の長距離G1の戦略が、鞍上の柔軟な思考によって、馬に合わせながら、しっかりと体現されなければならないことを、しっかりと理解できたからこそ、ドゥレッツァは気持ちよく、楽逃げに近い形から、近年の名物である捲り合いと経て、ミドルラップを延々繋ぎ続けるスピード競馬を自ら演出することで、結果、クラシックホースの脚を奪った。

面白いもので、1着馬から順に、その父はドゥラメンテ、サトノクラウン、キタサンブラックである。

これに続いたのが、キズナの2頭で、掲示板外の中でも上の方は、ハーツクライ・ゴールドシップ、グレーターロンドン。

この次の9着が、菊がよく似合う武豊のファントムシーフ<ハービンジャーの産駒>であった。

何から何まで、2015年のクラシック世代の因縁がここまで競馬に影響を及ぼすものかと、感慨深い気持ちにもなるが、サトノダイヤモンドや迫って見せながら完敗のキズナに仕事させなかったことは、競走能力以上に、競馬界にとって有益な仕事をした有能すぎる牡馬であったということで、改めて、類まれなるハイレベル世代であることを証明したことになる。

ドゥラメンテはキングカメハメハの産駒、キタサンブラックはブラックタイド。

いずれも、同じ場所で2001年に生まれた同期同士。これに、ハーツコンチェルトの父であるハーツクライも加わってくる。

あの年に菊花賞を制したデルタブルースは、低迷と故障を経て、メルボルンCを制していた。

ブラックタイドはキタサンブラックで十分だが、キングカメハメハはロードカナロア、ハーツクライも負けじとジャスタウェイを、それぞれ繁殖生活の序盤で開放的に輩出。

そうした背景までは知らないマジックマンのタスティエーラは、正攻法で競馬をし、まだ若すぎて、自分のおじいさんと同じくらいのポジションにあるキングカメハメハやハーツクライなどの存在意義を、これから深く理解できるようになる横山武史騎手のソールオリエンスも、自分の型にしっかりとはめ込んで、展開上は正しい戦法で、スタミナは少し足らないが十分な応戦で3着。

スタミナ自慢のキズナ・リビアングラス、サヴォーナらを含め、破綻のないクラシックということでは、事実上その路線に組み込まれた秋華賞と全く同じ展開。

それぞれができることをしたことになる。

・1998年

59.6→123.9→183.2秒

・2023年

60.4→124.5→183.1秒

序盤だけ、セイウンスカイより遅く走らせ、近代的なスピード戦になる後半は少しだけ速いというだけで、締めは同じ。

あの時と同じ、ほぼ仕上がったダービー馬・スペシャルウィーク/タスティエーラが2着。

着差は3馬身半で同じ。

また見ることができたというのは、生き証人である横山父、武豊両者が戦っているレースでの出来事ということで、これはこれで歴史的なデジャヴの瞬間となったことになる。

あの年のレース内容は全く同じだった。

またリアファルの時も、直線でもうひと脚使わせるために、下りでは溜めた。

ルメール騎手の経験の中にあるすべての事象が、同じ軌跡をドゥレッツァに描かせた以外、これは偶然で片づけられないほど、見事な勝負手であったと言わざるを得ない。

参りました、である。