天皇賞(秋)2023の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り
目次
天皇賞(秋)の予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!
歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。
レース名 | 第168回天皇賞(秋)(G1) |
グレード | 重賞(G1) |
日程 | 2023年10月29日(日) |
発走時間 | 15時40分 |
開催場所 | 東京競馬場 |
距離 | 芝2,000m |
コース | 左回り |
賞金 | 2億2000万円 |
レコードタイム | 1:56.1 |
天皇賞(秋)2023の予想オッズ/出走馬(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)
天皇賞(秋)2023の予想オッズと登録馬
枠番 | 馬番 | 出走予定馬 | 騎手 | 性齢 | 斤量 | 予想オッズ | 人気 | 1週前追い切り | 最終追い切り |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 1 | ノースブリッジ | 岩田 康誠 | 牡5 | 58.0 | 105.7 | 8 | 美浦・南W・良(岩田康) 6F 80.8-64.6-50.9-36.6-11.6(馬なり) | 美浦・南W・良(岩田康) 5F 68.2-53.3-38.0-11.8(馬なり) |
2 | 2 | エヒト | 横山 和生 | 牡6 | 58.0 | 206.2 | 11 | 栗東・坂路・良(助手) 800m 50.0-36.6-24.3-12.1(一杯) | - |
3 | 3 | ドウデュース | 戸崎 圭太 | 牡4 | 58.0 | 3.7 | 2 | 栗東・CW・良(武豊) 6F 81.1-65.8-51.1-36.2-11.2(一杯) | 栗東・坂路・良(助手) 800m 52.8-37.8-24.1-12.0(馬なり) |
4 | 4 | ダノンベルーガ | J.モレイラ | 牡4 | 58.0 | 12.9 | 4 | 美浦・南W・良(助手) 5F 64.9-50.0-35.8-11.2(G前仕掛け) | 美浦・南W・良(モレイラ) 6F 82.0-65.4-50.8-36.8-11.5(馬なり) |
5 | 5 | ガイアフォース | 西村 淳也 | 牡4 | 58.0 | 36.3 | 7 | 栗東・CW・良(西村淳) 7F 96.9-65.9-51.0-36.3-11.6(一杯) | 栗東・坂路・良(西村淳) 800m 54.0-39.2-25.0-11.9(馬なり) |
6 | 6 | ジャスティンパレス | 横山 武史 | 牡4 | 58.0 | 28.8 | 6 | 栗東・CW・良(横山武) 6F 81.1-66.0-51.6-37.0-11.5(直一杯) | 栗東・坂路・良(高倉) 800m 55.6-41.2-26.7-13.0(馬なり) |
6 | 7 | イクイノックス | C.ルメール | 牡4 | 58.0 | 1.5 | 1 | 美浦・南W・良(ルメール) 7F 93.7-65.4-51.4-37.4-11.8(馬なり) | 美浦・南W・良(助手) 5F 67.6-52.5-37.3-11.3(馬なり) |
7 | 8 | ヒシイグアス | 松山 弘平 | 牡7 | 58.0 | 107.6 | 9 | 美浦・南W・良(助手) 5F 65.7-50.4-36.2-11.4(直一杯) | 美浦・南W・良(助手) 5F 65.8-51.0-36.8-11.5(馬なり) |
7 | 9 | プログノーシス | 川田 将雅 | 牡5 | 58.0 | 9.8 | 3 | 栗東・CW・良(川田) 6F 83.9-68.6-53.6-37.6-11.3(馬なり) | 栗東・CW・良(調教師) 6F 83.7-68.0-53.1-37.9-11.9(馬なり) |
8 | 10 | ジャックドール | 藤岡 佑介 | 牡5 | 58.0 | 14.0 | 5 | 栗東・CW・良(藤岡佑) 6F 81.1-65.1-49.9-35.6-11.1(直一杯) | 栗東・CW・良(助手) 5F 65.4-49.7-35.3-11.0(強め) |
8 | 11 | アドマイヤハダル | 菅原 明良 | 牡5 | 58.0 | 116.9 | 10 | 栗東・CW・良(菅原明) 6F 83.0-67.5-52.5-37.1-11.8(馬なり) | 栗東・CW・良(助手) 6F 84.0-68.9-53.7-38.2-11.5(馬なり) |
人気 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1番人気 | 11回 | 4回 | 2回 | 3回 | 55.0% | 75.0% | 85.0% |
2番人気 | 1回 | 4回 | 5回 | 10回 | 5.0% | 25.0% | 50.0% |
3番人気 | 1回 | 1回 | 2回 | 16回 | 5.0% | 10.0% | 20.0% |
4番人気 | 1回 | 2回 | 1回 | 16回 | 5.0% | 15.0% | 20.0% |
5番人気 | 4回 | 2回 | 0回 | 14回 | 20.0% | 30.0% | 30.0% |
6~9番人気 | 1回 | 5回 | 7回 | 67回 | 1.3% | 7.5% | 16.3% |
10番人気以下 | 1回 | 2回 | 3回 | 145回 | 0.7% | 2.0% | 4.0% |
脚質 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
逃げ馬 | 0回 | 2回 | 2回 | 16回 | 0.0% | 10.0% | 20.0% |
先行馬 | 6回 | 7回 | 4回 | 58回 | 8.0% | 17.3% | 22.7% |
差し馬 | 14回 | 8回 | 8回 | 114回 | 9.7% | 15.3% | 20.8% |
追い込み馬 | 0回 | 3回 | 6回 | 83回 | 0.0% | 3.3% | 9.8% |
枠順 | 1着 | 2着 | 3着 | 4着以下 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1枠 | 4回 | 4回 | 1回 | 27回 | 11.1% | 22.2% | 25.0% |
2枠 | 2回 | 3回 | 1回 | 32回 | 5.3% | 13.2% | 15.8% |
3枠 | 1回 | 0回 | 5回 | 31回 | 2.7% | 2.7% | 16.2% |
4枠 | 5回 | 4回 | 4回 | 26回 | 12.8% | 23.1% | 33.3% |
5枠 | 1回 | 5回 | 1回 | 33回 | 2.5% | 15.0% | 17.5% |
6枠 | 2回 | 1回 | 3回 | 33回 | 5.1% | 7.7% | 15.4% |
7枠 | 4回 | 3回 | 2回 | 40回 | 8.2% | 14.3% | 18.4% |
8枠 | 1回 | 0回 | 3回 | 49回 | 1.9% | 1.9% | 7.5% |
天皇賞(秋)2023 - 過去10年のデータ傾向
主力級が当然のように出てくる、宝塚記念上位人気組は、必要に応じて切ることも大切
実は、あの不良馬場で巻き返しなったキタサンブラックによる、サトノクラウンに対する借りを返した2017年の大消耗戦以外、大手を振って出てくるはずの、宝塚記念直行組は勝っていない。
もう一つ言うと、連覇したシンボリクリスエスや、ブエナビスタ、メイショウサムソンらも、最近ではそのキタサンブラックもそうだが、前走で負けている馬が勝っているのである。
そもそも、宝塚記念から連勝を伸ばしてきたタマモクロス、テイエムオペラオー、ラブリーデイといった猛者たちの内、直行して勝ったのは、奇しくも、昭和最後の天皇賞を制したタマモクロスたった1頭だけ。
直行ローテが成就したとて、それは負けていた馬のための復活の舞台。
イクイノックスは58をクリアしたものの、真っ正直に狙える中心馬ではないとなる。
タマモクロスより強いのは確かだが…、もう一頭の芦毛、一匹狼を倒すだけの相手関係ではないのは事実だろう。
他方、負けた組もイクイノックスとは力差がありすぎるので…。
妙な感じで、アーモンドアイ様の功績に肖ろうというシンパが、最近増えておりまして
安田記念から直行の馬など、まず相手にすべき存在ではないという印象だったが、全体の枠組みからはるか遠くの方に行ってしまった九冠の大女優・アーモンドアイ<2019・20年と連覇>が、思惑を超えたようなところで、新たなトレンドを開発。
それが、彼女の代名詞であった休み明けから全開されるスピード能力、という構図を前面に押し出したかのような、6月初週開催が固定化される安田記念からの直行ローテでの連覇達成。
その内、4歳時に初制覇した際は、安田記念でよもやの斜行におり、初手の時点でぶっ倒れたもう一頭であるダノンプレミアムとのワンツー。
思えば、虚しいほどにドバイで初タイトルゲット後の安田記念を、いかにも盛り上がりに欠ける争いとしたかのように、モーリスと共に沈んだリアルスティールも、札幌記念を叩いた勝ち馬に続き、こちらは直行で好走。
その他のG1という枠で、1頭だけ引っかかるフィエールマンが、アーモンドアイ連覇の際の2着で、これが春の天皇賞連覇後の激走。
仲良く天皇賞連覇同士のワンツーということであれば、イクイノックスが連軸に確実という見立てをしたとき、オーソドックスなG2叩きのローテを取ってきた組ばかりの中で、それでも悪目立ちしないヴィクトリアマイル組のスターズオンアースは少し怖い。
決まって、この枠は乗り替わりの馬が好走の傾向で、その類としてハマる彼女は、牝馬ということでは目立っても、役者として物足りないということはなさそう。
3着拾いでは、悪いことはない。
100点満点でないとまず勝てない札幌記念組は、連対馬以外まず通用しない
最近来たのは、モーリス、サングレーザー、パンサラッサなど、世代のエース級というより、独特の感性を持った個性派という感じの一流どころばかり。
元より、最初にこのローテをハメこんだエアグルーヴも、元々はバブルガムフェローという前年覇者に挑む同期対決であったというところから始まる、秋を充実のシーズンにするためのローテを可能にしたもの。
ただの叩き台にならないから、そうは多くない道悪の札幌記念とて、今年は着差が大きく、昨年も馬場は似たようなものであったものの、そこで接戦を落としたパンサラッサは、あわやのシーンを作っている。
前走着順がよくなかったヒシイグアスは巻き返しが必要だったし、そういう感じではないジャックドールは馬場もあるから言い訳はできても、もう少しタフなローテであったダノンベルーガとの昨年の対戦結果からも、みんな進展がありそうな内容でもなかった。
プログノーシスより上の着順というのは、そこまで気にすることはないが、東京の雨馬場だった時、むしろ、先行して粘り込んで…、ということで、枠は広めにとっておくか。
強烈な惨敗の例があるので、1番人気馬にはくれぐれも要注意
アーモンドアイ、モーリス、キタサンブラックなどに伍して、イクイノックスが加わる、ザ・チャンピオンシップと評すに相応しい勝ち馬が、いずれも人気最上位の高評価を、確かな実力でそれに応えるようにして、各年で登場。
一時期、まるで人気馬が走らなかったこともあったが、適距離で有象無象の反撃を平定してみせたラブリーデイなど、前までは来なかったタイプ。
直線が延伸され、2コーナーの入りを少し急な曲がりにして、緩慢な作りで内外のゴチャツキを少しでも解消する中で、実は最も問題とされ、最終コーナーから直線入り口にかけての外に振られやすい問題の解決により、2003年からは人気馬がコンスタントに活躍し、ひどい展開で荒れ模様の結果にはならない年が増えた。
ただ、秋緒戦を11月に掛かるかどうかという時期に選択する組が、パッとしない出来であるとか、以降の大レースを展望することで、仕上げ一歩の影響で、スタートもまずまずだったが、中身が今ひとつだったコントレイルをはじめ、ジェンティルドンナもパッとしない2着。
イスラボニータは3歳で仕方ないとしても、スワーヴリチャードはスタートでやらかした上に挟まれて、結果的には翌年のJC制覇へ向けた再スタートとなったものの、中身はボロボロ。
改修前には、ルドルフ・テイオー親仔が罠にかかり、サイレンススズカは命を失った。
テイエムオペラオーくらいしか勝っていないからという1番人気への逆張りは、本物こそ買い、という中距離至上主義の現代競馬におけるスタンダードに則した結果が出続けている一方、アクシデントも多いレース。
思えば、レイデオロが快勝し、スワーヴリチャードが消えたあの年は、12頭立てという少なさ。
昨年のようなお祭りムードではない一方、凝縮された大レース独特の緊張感は、レースに破綻を引き起こす最大要因でもある。
サイレンススズカの年は12頭、アーモンドアイ連覇の年も同じだったことを考えると、彼女の恐ろしいまでの生命力と底力が透けて見える。
イクイノックスが58を再びこなし、大レース連勝を続けたなら、事実上の頂上決戦となるジャパンC制覇も、ほぼ確実になる。
天皇賞(秋)2023- 出走予定馬の血統/成績/タイム
56の妙味を遺憾なく発揮できそうな、唯一の存在がダブルティアラズクイーンであったなら…
ジャックドールの血統
モーリスを父に持つということで、キタサンブラック産駒である2頭がそうであるように、親仔制覇がかかる一頭に数えられるが、昨年、そのマッチアップでキタサンブラック産駒のイクイノックスに完敗であったから、大阪杯を勝ったくらいでは足りなのだが…。
北米系のファミリーであることを示す母父アンブライドルズソングは、コントレイルやスワーヴリチャードの母父でもあるから、実に縁起が悪い(笑)。
昨年は、そんな感じで敗れたが、リファールがやけにクロスするイクイノックスにかっさらわれた勝利は、モーリス自身がそうであったように、異様に重厚な血を求めるこのレースにおける拘束要項のようなところがあって、昨年もその前も、サドラーズウェルズ系の血を受けた非サンデー系が絡んでいるくらいで、母系に入る余計にも思えるおまけのニジンスキー<母父シャディードはその直仔、2000ギニーを親仔制覇>は、北米の高速熱戦を真似ているようで、当初から、凱旋門賞馬・トニービンの血が躍動したレースだけに、物足りない部分をキャリアアップにより穴埋めしたジャックドールは、漸く有資格者になったのでは感じる。
血統的に、イクイノックスのようなリファールお化けが有利というほど、偏重の傾向を示す競馬ではないから、マイペースで強いロベルトの底力を期待。
父父スクリーンヒーローは終わったと思わせた後、5歳秋緒戦のこのレースでカンパニー<トニービン直系、この馬もここに何度も挑んだ馬>に続く2着だった。
モーリスも同じ5歳で初挑戦の2000G1を快勝し、香港ではもっと強かった。
ジャックドールの大団円は見えている? のかもしれない。
札幌記念1番人気馬が、エアグルーヴやトーセンジョーダン以外の連勝馬だけでなく、モーリスやアーネストリーなど、血統的傾向の偏りと合わせるように、いい感じでよいリズムを作っている。
件の1番人気で札幌記念を制した連勝の組は、トニービンの血筋。
こちらはモーリスとアーネストリーというグラスワンダー属だから、当然、その直系であるジャックドールは名誉な背景? を味方につけられるかに注目が集まる。
ちなみに、昨年も豪華だった札幌記念は、勝ったジャックドールは3番人気であり、それより少し人気になっていたパンサラッサが、本番でも2着。
1番人気は、その後は勝ち切れなかったあのソダシ。
ソダシも勝った時は、ラヴズオンリーユーに続く2番人気支持だった。
何となく、ディープ苦戦する理由がわかる気がする。
ディープインパクト産駒は、札幌記念が今年で4勝目であったのに対し、スピルバーグでの1勝のみというこちらには、府中の杜に宿る例の疫病神的な存在たる魔物が憑りついているのであろう。
兄ブラックタイドは、キタサンブラックもイクイノックスも意気揚々と、今後の飛躍繋げる大勝利を挙げているのとは、あまりに対照的。
第一、三冠馬が滅多に崩れないこのレースで、ジェンティルドンナもコントレイルも、ライバルの才能を全開にしてしまうという失態を演じてきたのだ。
イクイノックスがそちらの番に回っても、不思議はない、とは妄想が過ぎるか。
スターズオンアースの血統
血統の構成を語るまでもなく、祖母スタセリタはフランス牝馬二冠だけでなく、凱旋門賞で3番人気に推されるほどの実力馬で、オークス前にも、4歳時にドーヴィルでもタイトルを得た後、北米に移籍し、東海岸でも2つG1を勝った。
そうしたキャラは、早期完成の優駿牝馬快勝馬・ソウルスターリングには伝わらず、3歳秋以降は未勝利。
その妹であるシェーングランツは、アルテミスSを派手に勝っただけで、あとは消化試合のようなレース内容に終始した。
それを思えば、代を一つ経て、ミスタープロスペクターの4×3が直交する同系配合馬であるスターズオンアースが、未完成の中で桜花賞を制し、オークスは半数くらいしか力を発揮できなかっただろう一戦も完勝で、以降は歯車がかみ合わない父ドゥラメンテの競走生活後半とも似ているものの、驚くほど崩れないということで、ようやく、このファミリー全てに関わるルメール騎手としても、本物が出てきた、スタセリタの後継という認識でいるのだろうと思う。
最初から本物ではないというのは、皐月賞の前に、自滅完敗2着2度の記録を持つ天才・ドゥラメンテとそっくりな部分もあって、そういう感じで出世しないけど、スケール感だけは父と同格かそれ以上というリバティアイランドとは、歳は一つ違いでも、まるで個性からして別物というのが、同じ超名牝にもかかわらず、比較できる対象でさえないということが面白い。
スターズオンアースというのは、ベースラインにフランスというか欧州圏のタフな芝向きに適合していったスタセリタ・モンズーン産駒の影響を色濃く受けるべきところ、北米系の名種牡馬・スマートストライクを組み込み、面白いという感じで吉田照哉氏などが連れてきたのだろうが、結果、キングカメハメハ直系が発展する過程で、軽くはない速い血を組み合わせる必要に迫られる日本での馬産では、最も、幅広い可能性をクラシックディスタンスの10Fで過激なほどに、よく動く馬を作りたいと思えば、この形が最も合理的で、また血を繋ぐ上でも効果的なクロスを作りやすいベストに近い血統構成のように思うから、案外、楽に勝ってしまう可能性も、もっと重厚な配合のイクイノックス相手ながら、十分に想定される。
天皇賞(秋)2023 - レース展開と最終予想
血統背景が背景だけに、ドゥラメンテをつけたとて、鋭い瞬発力を繰り出すようなタイプではないからこそ、総合力での牝馬二冠であり、再びの立て直された後に挑んだ大阪杯の見せ場十分の2着である、と結論することこそが、このスターズオンアースの本質を捉えた見解であろうと思う。
何しろ、桜花賞は1:32.9、前走のヴィクトリアマイルは雨で滑る馬場とはいえ、1:32.3であるから、まるで他との比較で見劣りすることはない。
周囲にもナムラクレアであり、前走であれば、先着を許したのがソングラインとソダシなのだから、引け目に思う理由は思い当たらない。
負けて当然とは思わないが、敗れて仕方ない相手に対し、その前後の中距離戦におけるスパート能力の非凡さから、十分な応戦の末の好結果であったとするのが、やはり正しい見方であるはず。
だからこそ、相手が実に凄まじく、世界のトップオブトップ・イクイノックスを筆頭とする、えげつないクラスのトップファイターどもであったところで、見劣るものなど全くないわけだ。
正直、秋華賞の不完全燃焼の結果より、年明けの完調とは思えない段階でジャックドールを攻略しかかった大阪杯の方が、数段スケールアップした結果であったように思う。
ヴィクトリアマイルの結果が口惜しいのは致し方なしとて、最初から、マイルの牡牝通じてエース格の年長コンビニ見劣る可能性は大いにあったが、ナミュールやスタニングローズなどの秋華賞で先着を許した組には、縁がよっぽどなかったということでは全く一緒であったのに、結果は雲泥の差。
春二冠の結果に、色物の評価を与えるべきクラスではないことを、改めて、敗れながらも証明したのだった。
問題は、休み明けで出負け連発中の死角となるが、こればかりはやってみないと分からない。
オークスの後は、軽い骨折で父ドゥラメンテの二の舞を演じるところだったが、夏の内に治療を終え、ギリギリではあっても、走れる状態には持ち込めた。
大阪杯は接触の不利もあったし、中枠が秋華賞以上にゴチャつき、秋華賞の学習内容を復習したようなレースぶりでも、ペースの差の分、走破タイムでは1秒と少し更新だから、本質の中距離適性は、確実な線であったとも言える。
現に、桜花賞はハナの差の勝利、オークスは中団から前を言ったスタニングローズをねじ伏せる完勝の1馬身半。
その間の距離にベストのゾーンが潜んでいる可能性は大いにあったと思わせるような、実に劇的なまでに中身が変化したパフォーマンスで、翌年である今年のリバティアイランドと、見事にリンクさせた部分ともなった。
京都であれば、もしかしたらのタラレバは、この秋の天皇賞を好走した時、改めて語られるはずだ。
そんな中距離型の名牝に、今回は、通算5戦、皐月賞・東京優駿の二冠を含む3勝、ドバイシーマクラシックと宝塚記念各2着と、最も重要な場面でドゥラメンテに騎乗したミルコ・デムーロ騎手に手が替わる。
イクイノックスにルメール、プログノーシスに川田、武豊にも何ならと思えたモレイラにも、大事なパートナーと言える存在が今回いるから、ノリかもう来ないペリエか、そしたらもうミルコしか…、という感じで自然に決定の状況。
しかし、誰よりもドゥラメンテのことを知るミルコがコンビを組むなど、こんな幸運もない。
ルメールのために存在しているようなところがあるスタセリタ一族の中で、唯一、代役が務まりそうなタレントとして、ここは辣腕をブンブン振り回していきたいところだ。
危ない性質と折り合いをつけながら、たまに出るイタリアンテーストのいい加減さは、我があまりにも強いドゥラメンテにはぴったりの相棒だった。
娘はそこまで個性派ではないが、ムラなところについては、戦績に現れないところで、真っすぐ走れない問題をクラシック直前に解決できないまま本番突入の軌跡が、あまりにも父とよく似ていて、一冠目はその解決法を探りながら、テン乗りの騎手が大事に乗った結果、劇的な直線の逆転劇となったところまで瓜二つ。
父と娘という以上に、その遺伝力に強い繋がりを思わせるタレント性の酷似に、ディヴィーナを止められなかったが、しっかり持ち堪えてみせた府中牝馬Sの静かな激闘を制した好結果を、今度こそ、大舞台で魅せるミルコらしさ全開のプロローグとしたような気もしないではないから、ここは全力で支持をしていきたい。
ドウデュースとイクイノックスとの一年半ぶりの直接対決は、同じ阪神2200で今年勝っている同士で、一応、現状維持であるとできるが、あの時と、すっかり立場が逆転。
凱旋門賞になど挑んでいなかったら…、という己を卑下するかの如きタラレバは、京都記念・阪神での圧倒的勝利で霧散させてみせた。
しかし、苦しみながらでも宝塚で58をこなしたイクイノックスは、簡単に逆転できない。
それが可能だとすれば、アーモンドアイやここ2年の3歳ダービー2着からの直行組などに共通する、斤量56の優位性しかない。
イクイノックスより見劣るとしても、彼自身に不満の残る仕上げがあったとするなら、直後に控えるジャパンCが今後最大の勝利目標第一番手であるから、そこを勝って、来年は凱旋門賞…、という狙いを持ったところで、いずれにせよ、ここは連覇したい目標とはなっていないので、休み明けという不安があったところで、斤量が2kg以上ではないかとされる昨今、牝馬がやはり、決め手比べの有利さと相まって、力勝負で互角であって不思議ない条件になった今回は、大いに見えない敵グループとして、その魅力を最大発揮できそうな雰囲気にある。
プログノーシスもトータル時計の高速化は懸念すべき部分はあるが、毎日杯の1:44.2と同時に、前走事実上重馬場の札幌記念独走のパワーから、総合力という武器で、イクイノックスがメイチではない状況を味方につけられる筆頭。
その他は、昨年のリターンマッチグループが中心であるから、新顔のようでそうではない、古牡馬ともやれるだろうスターズオンアースの底力にここは賭けるのが常道で、プログノーシスも侮れないとなると、あとは、どれでもいいから適当に頑張ってくれたまえである。
イクイノックスが逃げてしまってもおかしくないところを、ジャックドールが締まった展開を作った時、それぞれの出来が、結果に大きな影響を及ぼす。
牝馬はこの点でも有利であろう。