阪神ジュベナイルフィリーズ2023の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

阪神ジュベナイルフィリーズの予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第75回阪神ジュベナイルフィリーズ(G1)
グレード重賞(G1)
日程2023年12月10日(日)
発走時間15時40分
開催場所阪神競馬場
距離芝1600m
コース右回り
賞金6500万円
レコードタイム1:32.3

阪神ジュベナイルフィリーズ2023の予想オッズ/出走馬(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

阪神ジュベナイルフィリーズ2023の予想オッズと登録馬

阪神ジュベナイルフィリーズ2023の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11コスモディナー松岡 正海牝2 55.0 65.515美浦・ウッド・良(松岡)
6F 83.7-66.8-52.0-37.5-11.7(馬なり)
美浦・ウッド・稍重(松岡)
5F 69.8-54.1-38.5-11.7(馬なり)
12クイックバイオL.モリス牝2 55.0 53.514栗東・坂路・良(助手)
800m 53.2-38.7-24.9-12.0(一杯)
栗東・坂路・良(モリス)
800m 53.0-38.9-25.4-12.9(馬なり)
23キャットファイト大野 拓弥牝2 55.0 10.86美浦・ウッド・良(助手)
6F 81.7-65.1-50.9-37.0-11.3(一杯)
美浦・ウッド・稍重(大野)
6F 82.7-66.4-52.0-37.8-11.4(馬なり)
24ニュージェネラル田口 貫太牝2 55.0 102.916栗東・坂路・良(助手)
800m 55.3-39.6-25.5-12.8(末強め)
栗東・CW・良(田口)
6F 86.8-70.5-55.1-39.1-12.2(馬なり)
35スプリングノヴァ和田 竜二牝2 55.0 28.511栗東・CW・良(和田竜)
6F 83.7-68.8-53.7-38.0-11.6(強め)
栗東・坂路・良(助手)
800m 51.9-38.4-25.6-13.4(馬なり)
36ステレンボッシュC.ルメール牝2 55.0 7.34-栗東・CW・良(ルメール)
7F 98.7-66.7-52.4-38.4-12.1(強め)
47アスコリピチェーノ北村 宏司牝2 55.0 5.12栗東・CW・良(北村宏)
7F 96.3-65.4-51.2-36.1-11.4(一杯)
栗東・CW・良(助手)
7F 97.8-66.6-51.5-36.7-12.0(馬なり)
48プシプシーナ浜中 俊牝2 55.0 43.512-栗東・坂路・良(浜中)
800m 55.8-40.0-25.4-12.8(馬なり)
59テリオスルル古川 吉洋牝2 55.0 237.618-美浦・ウッド・稍重(助手)
5F 66.3-51.6-37.4-11.7(強め)
510コラソンビート横山 武史牝2 55.0 4.91美浦・ウッド・良(横山武)
5F 67.0-51.7-36.8-11.5(馬なり)
美浦・ウッド・稍重(助手)
5F 66.4-50.9-36.9-11.4(馬なり)
611スウィープフィート永島まなみ牝2 55.0 47.113-栗東・坂路・良(助手)
800m 55.2-40.5-25.2-12.0(馬なり)
612シカゴスティング鮫島 克駿牝2 55.0 28.010栗東・CW・良(助手)
6F 82.6-66.9-51.0-36.2-11.9(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 53.7-39.0-24.8-12.0(馬なり)
713カルチャーデイ酒井 学牝2 55.0 25.09栗東・坂路・良(酒井学)
800m 54.2-39.5-25.0-12.1(一杯)
栗東・坂路・良(酒井学)
800m 55.2-39.5-25.0-12.1(馬なり)
714サフィラ松山 弘平牝2 55.0 5.43栗東・CW・良(松山)
6F 77.9-64.2-50.8-36.7-11.7(末一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.9-39.8-25.3-12.3(馬なり)
715ナナオ西村 淳也牝2 55.0 14.47栗東・ポリ・良(助手)
6F 78.1-64.2-50.7-37.5-11.4(強め)
栗東・坂路・良(助手)
800m 52.2-37.4-24.3-12.1(一杯)
816ルシフェルB.ムルザバエフ牝2 55.0 8.95栗東・CW・良(ムルザバエフ)
6F 81.3-66.0-51.8-37.8-12.5(馬なり)
栗東・CW・良(助手)
5F 68.4-53.0-37.9-11.8(馬なり)
817ミライテーラー中井 裕二牝2 55.0 133.217栗東・坂路・良(中井)
800m 52.9-38.4-25.0-12.4(馬なり)
栗東・坂路・良(中井)
800m 54.2-39.7-25.6-12.2(馬なり)
818ドナベティ坂井 瑠星牝2 55.0 23.38栗東・CW・良(坂井瑠)
6F 83.7-68.5-52.9-37.2-11.4(馬なり)
栗東・坂路・良(坂井瑠)
800m 53.3-38.7-25.0-12.3(馬なり)
人気1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1番人気7回2回2回9回35.0%45.0%55.0%
2番人気2回4回3回11回10.0%30.0%45.0%
3番人気2回3回3回12回10.0%25.0%40.0%
4番人気3回1回5回11回15.0%20.0%45.0%
5番人気3回1回0回16回15.0%20.0%20.0%
6~9番人気3回5回4回68回3.8%10.0%15.0%
10番人気以下0回4回3回171回0.0%2.2%3.9%
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬1回1回1回17回5.0%10.0%15.0%
先行馬3回4回4回70回3.7%8.6%13.6%
差し馬14回11回12回111回9.5%16.9%25.0%
追い込み馬2回4回3回100回1.8%5.5%8.3%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠4回1回0回35回10.0%12.5%12.5%
2枠1回2回5回32回2.5%7.5%20.0%
3枠2回3回1回34回5.0%12.5%15.0%
4枠1回3回0回36回2.5%10.0%10.0%
5枠2回5回4回29回5.0%17.5%27.5%
6枠3回3回3回31回7.5%15.0%22.5%
7枠4回1回4回50回6.8%8.5%15.3%
8枠3回2回3回51回5.1%8.5%13.6%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト39回38回39回222回11.5%22.8%34.3%
ロードカナロア23回25回23回199回8.5%17.8%26.3%
エピファネイア18回15回15回118回10.8%19.9%28.9%
ハーツクライ18回10回16回134回10.1%15.7%24.7%
ルーラーシップ15回11回10回119回9.7%16.8%23.2%
キングカメハメハ14回10回5回62回15.4%26.4%31.9%
ダイワメジャー13回20回11回113回8.3%21.0%28.0%
モーリス12回8回14回88回9.8%16.4%27.9%
キズナ11回15回9回109回7.6%18.1%24.3%
ドゥラメンテ11回4回3回83回10.9%14.9%17.8%

阪神ジュベナイルフィリーズ2023 - 過去10年のデータ傾向

来るか来ないかはっきりしている1番人気

ハープスターが、同じ時期に2戦2勝としたレッドリヴェールに際どく敗れた以外、ここ10年で、来る馬と来ない馬ははっきりと分別可能であるが、東京だとか京都で頑張りすぎた馬は苦しいというくらいで、はっきりしたものはない。

1番人気に関し、前走勝ち馬は8頭該当し、不思議と、負けていると2頭とも勝っているが、あとは4頭が馬券外なのだから、過剰支持と同時に、前走から大きくパワーダウンというシーンは、朝日杯以上にセンシティヴなこととして、機微の部分は慎重に捉えるべきとなってくる。

前走勝ち馬は、言うまでもなく8勝であるが、その全てはアルテミスSを除くとなってきて、アルテミスSから連勝馬は3頭。

半分はアルテミスSで顔見せをファンにした上で、本番で諸々調整されて、力を示すとなるなら、前走時点での人気がここと比例しているならば、負けているかどうか重要ではないとするべきだろう。

評価は上がっても、いずれも1番人気ではないサークルオブライフしかり、人気にどうしてもなるリバティアイランドやメジャーエンブレムなど、キャラをある程度は見極められるアルテミスS組以外、人気になる以上は相応の根拠を求めるべきというのが、アルテミスS創設後のジュベナイルフィリーズ攻略法の定番だ。

関西馬は結局有利

一時期、関東馬が3連勝するなど、賑やかに寒風吹きすさぶ阪神マイルを彩ったシーンもあったが、ここ5年では、国枝厩舎が一矢報いただけで、関西の相応に名の知られた厩舎から、いい馬が出てきて、しっかりと勝ち切るという順当なシーンを数多く目撃することが増えた。

記録上は、互角以上に関東馬が肉薄というか、大いに健闘という傾向を示すが、すっかり2着が関東馬の流れにあるから、後述する部分も含めて、関東馬は穴狙いが鉄則というブランドイメージ通りのプラン立てがおすすめ。

関西馬で人気薄が連対したのは、無敗の重賞ウイナー3頭の内、1頭だけ突き抜けた2019年のレシステンシアを底に、とんでもない野郎改め、年の割に腹黒の乙女は、同じように無敗の重賞馬だったレッドリヴェールに限られる。

評価不当の典型で、筆者をはじめ、消した方が悪いというやつ。

似たタイプのキャリア、臨戦過程などに加え、どう脚質の馬が絡むパターンだから、選別しすぎて、関西のナンバーワンを先に決めない方がいい。

ある意味、リバティアイランドやソダシなどは、やや人気が散ったようなところで底力全開の必然があったから、スター性の裏返しとして、不当評価の点で、関西馬は特に、オッズとの兼ね合いを重視した方がいいだろう。

シンリョクカ、ラブリイユアアイズ、マルターズディオサ、ウインファビラスらは、東のユタカならぬ刺客であった

上記2着馬は、いずれも単勝人気も真ん中寄りしたくらいか、その他大勢が多すぎて、一緒くたにされた関東のファビュラスガールズ。

素敵ついでに、ラブリイ以外は決まって関東所属の騎手であるから、当地の関係者は鼻高々。

ただし、サークルオブライフもそうだったが、メジロドーベルクラスにまでグイグイ成長を遂げる大物にはなかなかならない。

やはり、相対的に見ても、牝馬G1が馬齢限定であると3つもある関西の栗東所属馬の方が、当たり前のように有利。

昔とこの辺りは大きく変わらない。

ただ、馬券的妙味に限れば、海のものとも山のものともつかないと、いい加減適当な評価がある程度通用する舞台なのだから、シンリョクカさんに学ぶという、タフな茨城弁ネイティヴフィリー探しにちょっと傾注するのは面白い。

前走好走が条件で、飛んでいたとするなら、すでにオープン馬である、という括りで行けば、今年はアスコリピチェーノ、コラソンビートら重賞勝ち馬とボンドガールしか買えないではないかとなって…。

この辺りで、手堅い関東馬狙いは吉と出るか凶と出るか、普段とは組み合わせの優位性で逆転傾向の読み方が、大きな勝負の分かれ道となる。

重賞勝ち馬が、結局は納得の結果を残すという強圧

重賞勝ち馬も無敗であるケースが多い2歳G1だけに、キャリアの積み上げ方には、一定の配慮のようなものは必要なようでいて、ここでは絶対に近いパワーワードの重賞勝利の記録を持つステークスウイナーというだけで、9年続いた、どれか軸で確実という3連複黄金の法則が、昨年ついに途切れたが、勝ったのは誰でも知っている新潟瞬間移動伝説をこしらえたエースのリバティアイランドだから、正直、この点だけとって、重要な視点が欠けているというようなことはなさそう。

スプリント型のブランボヌールやレーヌミノルなども、適性の問題というよりは、総合的な競走能力の絶対値に比例するようなレースぶりで、強烈な先行タイプがレースを破壊する勝ち方をしながら、スピード能力も通用というところで、レシステンシアやレッツゴードンキら、桜花賞あたりまではマイルをこなした短距離型とも、似通った傾向を示したことから、1200専門ではどうにも立ち行かないが、東京か京都を経ていれば、見せ場を作れるので、関連する東西重賞に絡む以外のところでも、重賞勝ち馬はマークしたいところ。

コラソンビートはその手の馬だが、新馬の相手関係からここも人気になる。

重の女・ナナオは雨待ちではあるものの、通常の成長曲線に乗って、前走二桁体重増でオープン連続好走のロードカナロア。

多分に、母父オルフェーヴルの影響を受けての適性だが、カルチャーデイ以外は重賞勝ち馬が人気になる組み合わせなので、人気馬を押さえていく過程で、スパイスの代わりに関西の珍しいタイプの伏兵は買っておきたい。

きっと、マイラーでなくともこの距離をこなせる、タフなミス琵琶湖候補であって不思議ない。

阪神ジュベナイルフィリーズ2023- 出走予定馬の血統/成績/タイム

モンスター系パーフェクトホースの後に続けと、リバティアイランドと違うタイプの女王誕生が予期される一戦に

アスコリピチェーノの血統

ダイワメジャー産駒では、3戦目にして、完成の型を少し長いこのマイル戦で示したレシステンシアが、圧倒的な結果を残したことで著名だが、よく考えたら、同じように強気の先行で押し切り勝ちを決めたメジャーエンブレム、雨馬場を味方に、自慢のスピードで豪華メンバーを一手に封じ込めた桜花賞となるレーヌミノルが、ソウルスターリング、リスグラシューに続く3着。

一定のリズムで世代のエース級が出てくる、牝馬らしいマイラータイプのダイワメジャー産駒は、このレースが得意なことだけは確かだろう。

アスコリピチェーノはマイルに止まらない、適性のいい意味での不確定要素が伸びしろの部分に加わるはずだが、母母リッスンは、アスコットのフィリーズマイルのウイナーであり、母の持ち込み馬であるアスコルティも、国枝×後藤コンビでデビュー戦勝利から、2戦目は強気の3歳オープン・クロッカスS参戦&堂々1番人気であるから、想像以上に、母の妹であるタッチングスピーチなどより、ずっと早熟性が一定レベル問われる舞台への適性で、他のクラシック候補にさえ、一切見劣ることはない。

ソウルスターリング<スターズオンアースの叔母>やレシステンシアがそうであったように、ダンチヒ・デインヒルのラインとサドラーズウェルズ系は、その型をそのもの自身が持っているフランケル<ソウルスターリングの父>を筆頭に、続々と日本の競馬にも浸透している、自然な流れの中で活躍するトレンドは出来上がっている。

取り立てて、高速のマイルに適性がある配合ではないが、少なからず、高速という日本のスタンダートとはまた別で、先日のイクイノックスがそうであったように、時計的な概念とは別の事情で速くなる中では、単純な底力の反映がなされた結果となり、そのように、かつての名牝が同じ血を抱え、勇気を与えてくれるような実績は残されたことで、勝機はより手元に近いところにまで引き寄せられているとできる。

阪神ジュベナイルフィリーズ2023 - レース展開と最終予想

前走の新潟2歳Sは、デビュー戦の東京から中8週ばかり開いた、今では通常よりも短いくらいの、それでも余裕を持ったローテーション。

ただし、雨が一切降らずに、近くのダムが干上がってしまいそうなほどの酷暑に見舞われた地域であるから、そもそものリスクはあった。

春季開催とて、季節は梅雨時でもう暑い東京の経験で乗り切れるようなレベルではなかったかもしれないが、そういった死角を微塵を感じさせずに勝ち切ったアスコリピチェーノは、一流になる資格があると思わせるに十分な一戦にもなった。

この際、彼女に騎乗した北村宏司騎手はご存知の通り、日本競馬界を再構築する上で欠かせない、先進的な競走馬優先の理念を体現した大家・藤沢和雄調教師の下で鍛えられたジョッキーである。

本場アイルランドでその本質を学んだ師匠が、巡り合わせで、野平祐二厩舎に移ったのちに出会った皇帝・シンボリルドルフとの濃密な時間を、唯一に近い、そのことを共有できる大名人・岡部幸雄騎手と3者で、時代を築き上げた末、調教師、主戦級騎手という立場に変わろうとも、その深い関係や、傍から見ると意味深長な乗り替わりにも、平然とジョッキーが乗ってくれないと困るタイプか否かで、見事に使い分けをしたところで、ルドルフに学んだ全てを、日本競馬の進展に大きく寄与するタイキシャトル<短距離馬初の顕彰馬>、シンボリクリスエス<エピファネイアを送り込んだG1・4勝のビッグスター>ら、この世界では宝物のようなスターホースを続々生み出す過程で、しっかりと還元した真の意味でリスペクトされるホースマンに、恐れ多くも、当然叱られることも多かった中で、その管理の馬の一頭である血統がワールドクラスのダンスインザムードとのヴィクトリアマイル初代王者戴冠という一種の還元は、北村宏司騎手にとっても、重い意味を持つ1勝となった。

桜花賞を制した後、ゼンノロブロイに食らいついた天皇賞はよく頑張ったものの、基本的に負けばかり。

やる気のないダンスインザムードを、走りたくないのならと、後方一気の、それこそ横山典弘騎手がよくやるアレを試したあと、ロブロイと共倒れながら、近走内容とは一変の3着となった府中牝馬S→秋の天皇賞のローテは、気難しさがどうにも手に負えない状態になりかけた、そのマックスだった頃に甦るきっかけを掴み、自力で継続騎乗を手繰り寄せた末での価値ある勝利に直結する。

普通は蘇らないはずの桜の女王は、栄えある新世紀の第一回ビクトリアC<エリザベス女王杯の前身であるこの名称をあえて蘇らせたという経緯がある>を制し、その鞍上には、本番では日欧米の名手に乗ってもらうばかりだった所属騎手である北村宏司がいた。

誰にでも、初G1制覇には思い入れがあるものだが、この結果は、なかなか珍しいタイプのサイドストーリー添えで、まさに藤沢和雄厩舎ならでは物語がついてくるから、語り継ぐのも難しくない。

自身の騎乗者としての道が、プロとして四半世紀を過ぎようという今年、プリモシーンという少し懐かしくなった名前を思い起こさせる重賞の1勝を、同じ新潟で挙げた。

このアスコリピチェーノでのものだった。

キタサンブラックに後藤騎手の不幸なラストという後ろめたくもある影の物語を引きずらせないよう、自分なりに前向きに走ることを教え込み、クラシック最終戦の菊花賞で、今度は我慢の立ち回りを丁寧に手ほどきすると、インから末を伸ばし、事実上、生涯唯一のレース上がり1位<一応、あのアクシデントからの大脱出であった秋の天皇賞もそうなるが、これは別枠。ただ、あそこで勝っていなければ、驚異のサラブレッド・イクイノックスは生まれたのだろうか…>で勝利。

いつも以上に下げて、藤沢元調教師に少しだけ恩返しをしたスピルバーグとの天皇賞制覇も、フリーになったあとだった。

こういうG1制覇の軌跡を踏まえると、北村宏司がこのアスコリピチェーノを駆るとするなら…。

実は、ダイワの馬で2000年に一気に重賞を4つ制した年、変則の中山・新潟旧3歳Sを勝った馬が、ダイワメジャーやスカーレットの姉であるルージュだった。

桜花賞でも旧阪神3歳Sでも、強烈なスピードを負けん気を誇ったテイエムオーシャンがライバルでは、歴史上は目立たない存在となってしまって不思議ないが、このファミリーが今重要な位置にいることは、自分がダイワメジャーの仔でG1に挑むというだけでも、容易に理解ができる。

スカーレットブーケという牝馬重賞の大物が、繁殖牝馬として大きな仕事をするその始まりに、北村宏司騎手は最も大事なスタートの瞬間から立ち会ってきた。

スピード優先の血であるという理解に対し、新馬戦でルメール騎手に教育を施されながら、半ば底力の一端を末脚という部分にクローズアップされる形でキレるイメージを残した一戦から、本質的なこの牝馬の性質を理解する北村宏司騎手は、マイル延長を踏まえ、構える形をとった新潟ではあったが、抑え込むようなことはしなかった。

スローで掛かるのは仕方ない。

ダイワメジャーもスカーレットも、もちろん、もっと速いルージュも前で勝負する馬。

力で相手を制したのは、当然、ずっと強力というほどの存在がいなかったことも幸運な形で、好結果をアシストしてきたが、怖い馬の本性というものを、実戦で乗らないまでも、藤沢厩舎で十二分に体得した北村騎手は、あえて今回は引かないように思う。

キレるダイワメジャータイプは、朝日杯でアドマイヤマーズやセリフォスが好結果を残しているが、このレースでは前に行ったメジャーエンブレムやレシステンシアが勝っている、というのもある。

ただ、北村宏司のというか、師匠に仕込まれた思考の大部分を占める馬優先の在り方は、その部分というより、いかにリラックスして走らせてあげられるか、気持ちよくのびのびと…、いや、強い牝馬ばかり見てきて、ジャパンCだって相当に強いドゥラメンテの娘がナイスファイトしていたが、もう一度、牝馬の繊細な部分だとか、大事に守らねばならないものをしっかり壊さないように乗る騎手のG1制覇を期待する。

能力は十分でも、その先のことも考えて、全てを出し切らせないように丁寧にお釣りを残しながら…。

ドゥラメンテと言えば、母母のエアグルーヴ。

ここでビワハイジの2着に終わったが、春にはあっさり逆転し、伝説を作ったこの名牝を管理したのが、スカーレットブーケだけでなく、マックスビューティ、ファインモーションも手掛けた故伊藤雄二元調教師の信念。

感じるままにではなく、己の知識を総動員しつつ、ベストが勝つことではなく、次に繋がるようなレースを重ねるようにして、本番でチャンスがあるならば…。

前回の北村宏司騎手の表情を感じ取るに、距離も問題ないし、もっと動けるようなら行ってしまってもいいのではないか。

無論、休み明けの一戦だけに、新馬戦のように序盤からややテンション低めの進行はあり得るが、その才能は既に証明済み。

この中でその末脚は見劣ることはないが、十分に正攻法で戦えるという手応えがあるところで、引く手はない。

内枠が当たるに越したことはないが、先行して押し切った3頭・内2頭は同じダイワメジャーの仔 は全て、普段は差し競馬で不利になる内枠の馬だった。

上手に立ち回ったソダシでさえ、6番枠。

差しに出ないでいい枠を引いた時、この陣営に幸運が訪れたことを予期するサインとなりそうだ。