有馬記念2023の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

有馬記念の予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第68回有馬記念(G1)
グレード重賞(G1)
日程2023年12月24日(日)
発走時間15時40分
開催場所中山競馬場
距離芝2,500m
コース右回り
賞金5億円
レコードタイム2:29.5

有馬記念2023の予想オッズ/出走馬(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

有馬記念2023の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11ソールオリエンス川田 将雅牡356.08.05美浦・ウッド・稍重(嶋田)
7F 95.4-80.1-65.1-50.8-36.0-11.2(馬なり)
美浦・ウッド・良(川田)
5F 69.2-53.4-38.0-11.2(馬なり)
12シャフリヤール松山弘平牡558.027.59-中山・芝・良(松山)
4F 50.9-35.9-11.2(馬なり)
23ホウオウエミーズ坂井 瑠星牝656.043.214美浦・ウッド・稍重(助手)
5F 65.4-50.9-36.8-11.5(G前仕掛け)
美浦・ウッド・良(助手)
5F 67.6-52.2-37.4-11.4(馬なり)
24タイトルホルダー横山 和生牡558.011.97美浦・ウッド・稍重(原田和)
6F 83.0-66.4-51.5-36.8-11.5(馬なり)
美浦・ウッド・良(横山和)
5F 64.6-50.6-37.3-11.6(馬なり)
35ドウデュース武 豊 牡458.09.56栗東・CW・良(武豊)
7F 99.0-82.8-67.5-52.0-35.7-11.0(直強め)
栗東・ポリ・良(助手)
6F 80.6-63.8-49.0-35.8-11.0(馬なり)
36ディープボンドT.マーカンド 牡658.042.713栗東・CW・良(荻野琢)
6F 85.0-68.4-52.9-37.2-11.6(末強め)
栗東・CW・良(荻野琢)
6F 82.2-66.0-51.3-37.0-11.9(一杯)
47アイアンバローズ石橋 脩牡658.066.516栗東・坂路・良(助手)
800m 53.1-38.8-25.5-12.9(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 53.2-38.7-25.4-12.7(馬なり)
48ライラック戸崎 圭太牝456.030.510美浦・ウッド・稍重(戸崎)
6F 80.7-65.6-51.3-37.0-11.4(馬なり)
美浦・坂路・良(石川裕)
800m 50.4-37.5-25.1-12.8(強め)
59ヒートオンビート坂井 瑠星牡658.037.312栗東・CW・良(坂井瑠)
7F 99.0-82.3-67.7-52.6-37.1-11.5(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 53.1-38.1-24.7-12.3(末強め)
510ジャスティンパレス 横山 武史牡458.04.91栗東・CW・良(横山武)
7F 96.9-80.3-65.9-51.8-37.3-11.8(一杯)
栗東・坂路・良(高倉)
800m 53.3-38.7-25.1-12.4(馬なり)
611ハーパー岩田 望来牝354.024.58栗東・CW・良(岩田望)
6F 83.5-68.2-52.5-36.2-11.2(一杯)
栗東・CW・良(助手)
7F 98.4-67.1-52.2-37.1-11.9(末強め)
612ウインマリリンL.モリス牝656.052.015美浦・ウッド・稍重(助手)
7F 97.6-81.4-67.1-52.3-37.4-11.5(強め)
美浦・ウッド・良(嶋田)
5F 68.9-52.9-37.5-11.4(馬なり)
713タスティエーラR.ムーア牡356.06.03美浦・ウッド・良(助手)
6F 80.9-65.5-50.4-35.7-11.1(G前仕掛け)
美浦・ウッド・良(助手)
6F 82.3-65.4-50.6-35.9-11.3(G前仕掛け)
714プラダリアB.ムルザバエフ 牡458.036.711栗東・CW・良(ムルザバエフ)
6F 84.8-69.6-54.4-38.7-11.8(直強め)
栗東・CW・良(ムルザバエフ)
6F 80.3-65.3-51.2-36.7-11.9(一杯)
815スルーセブンシーズ池添 謙一牝556.07.44美浦・ウッド・稍重(助手)
5F 64.1-49.8-35.9-11.4(直強め)
美浦・ウッド・良(助手)
5F 65.9-50.6-36.3-11.2(G前仕掛け)
816スターズオンアース C.ルメール牝456.05.52美浦・ウッド・良(杉原)
6F 82.6-66.3-51.6-37.2-11.4(馬なり)
美浦・ウッド・良(ルメール)
6F 83.1-66.2-51.5-38.1-11.7(馬なり)
人気1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1番人気12回4回1回3回60.0%80.0%85.0%
2番人気3回1回4回12回15.0%20.0%40.0%
3番人気1回2回5回12回5.0%15.0%40.0%
4番人気2回2回2回14回10.0%20.0%30.0%
5番人気0回3回0回17回0.0%15.0%15.0%
6~9番人気2回5回5回68回2.5%8.8%15.0%
10番人気以下0回3回3回120回0.0%2.4%4.8%
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬2回1回1回17回9.5%14.3%19.0%
先行馬12回7回8回54回14.8%23.5%33.3%
差し馬5回10回7回89回4.5%13.5%19.8%
追い込み馬1回2回4回86回1.1%3.2%7.5%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠3回3回1回28回8.6%17.1%20.0%
2枠2回33回2回29回5.6%13.9%19.4%
3枠3回5回2回27回8.1%21.6%27.0%
4枠2回3回5回29回5.1%12.8%25.6%
5枠5回3回3回28回12.8%20.5%28.2%
6枠2回1回2回35回5.0%7.5%12.5%
7枠1回1回4回34回2.5%5.0%15.0%
8枠2回1回1回36回5.0%7.5%10.0%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト6回7回12回66回6.6%14.3%27.5%
エピファネイア6回1回0回8回40.0%46.7%46.7%
ハーツクライ4回4回7回40回7.3%14.5%27.3%
ステイゴールド3回3回1回28回8.6%17.1%20.0%
ルーラーシップ3回2回3回35回7.0%11.6%18.6%
ゴールドシップ2回3回0回24回6.9%17.2%17.2%
ジャスタウェイ2回2回1回8回15.4%30.8%38.5%
ドゥラメンテ2回1回0回8回18.2%27.3%27.3%
トーセンラー2回0回0回1回66.7%66.7%66.7%
ヴィクトワールピサ1回2回1回6回10.0%30.0%40.0%

有馬記念2023 - 過去10年のデータ傾向

1番人気というか、ルメールというか、再び軸の堅いレースに戻ってきた有馬

有馬記念が10年で1番人気が7度も連対するレースになっているとは、このレースを見始めた頃には想像もつかなかった。

3年に一度くらいは、破綻をきたすように崩れる大本命を見てきたからなのだが、近年消えたのは、歴史的名牝の邂逅に伴い、レース全体が変なバランスで展開した2019年、アーモンドアイが消え、リスグラシューの末脚が大爆発したあのレースくらい。

衝撃的な結末が恒常化していた時期も知っている者とすると、リスグラシューが独走ゴールくらいではびっくりしないが、キタサンブラックにもオルフェーヴルなども見て覚えた感慨深いそれは、ある意味、3歳春から強かったジェンティルドンナのアレよりも、矢作先生とは違う立場ながら、グッとくるものがあったのは確かだ。

今のサフィラと何となく共通するものがある。

同時に、いちフランス人扱いだった善良な短期免許取得者のルメール騎手が、通年免許取得の後、不穏な負け方をした若葉マーク時代のリアファルを除き、前記アーモンドアイはどうにもならない展開で仕方ない年だから、そうすると恐ろしいことに、その他では毎年3着以外とは、ハーツクライと共に刹那的ではない栄光を掴んだ有馬制覇であったとしても、やけに縁がある。

だから、ダービーは縁がないのか…、とも思えるほど、当たり前のように人気馬を、そうではないクイーンズリング含め、卒なく持ってくるこの腕を、ここでこそ買いたいというのが、ルメールマジック期待の有馬記念なのである。

スターズオンアースは期待に応えてくれるのか、と、騎手に心配がないだけに、オッズとの兼ね合いがポイントになりそうだ。

金看板の古馬比2kg減のアドヴァンテージを活かしたい菊花賞組

ここ数年は、昔から考えられてはいたものの、実践というか、いざやってみようと思うと及び腰になって、淀の大一番を選ぶといった風潮を取っ払い、ダイレクトでダービーから秋の天皇賞に挑むという形が、2度続けて成功して、その前の神戸新聞杯を挟んだサートゥルナーリアも、どさくさ紛れの感は否めなかったが、スミヨン騎手の冷静な判断は実を結び、猛ペースの乱戦で2着に突っ込んできた。<形の上では、4角でリスグラシューを一度交わしたので、差し切られたように見えるが、道中は後方待機だった>

世代最強だから通用というのは、本流の菊花賞組と同じ理屈。

一方、その時に3着であった菊花賞馬のワールドプレミアは、無理も祟ったのだろうが、次走がジャパンCになってしまったものの、2年後の春の天皇賞は見事優勝。

よく考えると、昨年の2着は連続好走の菊花賞組であるボルドグフーシュ。

ワールドプレミア3着の前の年に勝ったのも、菊花賞でモタモタしていた大型馬のブラストワンピースだった。

秋の天皇賞組はエースでないと苦しいし、お釣りはなくなるが、イクイノックス師匠と同じ生産者であるか、その力を過剰ではなくして、しかし、慎重に力量の違いを推し量った上で、今年は距離適性を踏まえた進路を獲れなかった菊花賞組は、やはり買うべきであろう。

本来は互角、中山だと振れ幅の大きなパフォーマンスになる皐月賞馬とダービー馬は、距離延伸で自在性とキャラの差が出てきたが、ムーア人気でタスティエーラが買われるなら、川田でソールオリエンスの方が面白いように思う。

3歳馬と同じくらいの割合で来る、ハイレベルJC非連対の掲示板内好走馬

今年は特殊なジャパンCで、2020年・未曽有の三冠馬三つ巴戦は、有馬3着以内馬を出せなかったものの、わざと有馬狙いに照準を絞ったアーモンドアイ優先の忖度ローテが、全てハマったという側面はある。

秋天組が好走し、何故か急に一流馬になっていたサラキアが、そのワンツーを阻止したという構図。

しかし、あの時の4着はカレンブーケドール、5着はグローリーヴェイズ。

今年は、3着スターズオンアース、4着ドウデュース、5着がここを現役生活終焉の舞台としたタイトルホルダー。

みんな少なくとも、三つ巴戦の3着に食い込んできたデアリングタクト級であり、コントレイルがあのギリギリの状態であるなら、十分にそれを脅かしていたはずの面々。

アーモンドアイとイクイノックスを同格とみなした時、あの牝馬同士の首の上げ下げの接戦の中に入ってくるはずの力量がある。

カレンブーケドールは、少し合わない条件とスローで持ち味が出せなかった5着同時入線に終わったが、今年の猛者ども(笑)はそんなヤワではないだろう。

プリンセス級に自然と格上げになった牝馬三冠のリバティアイランドと猛烈な競馬をして、そこに至るまでにかなりロスの大きな無毛な時間消費があったスターズオンアースに、反動の危険性があるため、一旦様子見で評価を落とすが、ドウデュースはあの京都記念があり、朝日杯も強い相手に好内容の勝利。

言わずもがな、スタミナモンスターたるタイトルホルダーは、決戦の淀における和生騎手の優しいアシストで、見事に甦った。

3歳が少し怪しい感じもあるから、クラシックホースの選択では、長い距離での実績が光るこの2頭を推すのが自然であろう。

ルドルフ、スペシャル、ディープ、エイシン、レイデオロらにまつわる、名手たちの物語

エイシンフラッシュ<2011年、オルフェーヴルに続く2着>には正直驚いたから、翌年は本命にしたが、4着だった。(笑)

これにまつわる話は、ルドルフ完全復活のジャパンCを経て、行く末に凱旋門賞を据えた北米遠征の壮行レースを、ミホシンザンのプライドを粉砕するためだけに独走したような歴史的大勝<イクイノックスがリバティアイランドにつけたのと同じ4馬身差>が、その後、何度か繰り返されているうちに埋没しているのに対し、意外と深掘りされていないから、浅く掘ってだけでも新鮮だ。

何しろ、ダービーを勝ってから1年半勝っていないし、翌年秋まで勝てないのだが、急にルメールで変わった。

ルメール騎手はフランスの騎手だったから、秋にならないと来なかったが、この年はエイシンフラッシュに2度乗って、秋の天皇賞で最初の実戦。

ジャパンCでも出てきたエイシンフラッシュだが、フランスからシャレータというお手馬が参戦してきたので、奇しくも、池添謙一騎手にスイッチ。

で、手が戻ったルメール騎手は、ブエナビスタが苦しむ直線で、悠々外からぶっこんで来た三冠達成直後のオルフェーヴル<もちろん、池添謙一騎手の騎乗>にきっちり捉え切られた。

結果的には、デムーロ兄で展覧競馬を制する復活の序章に過ぎない話だが、かつて有馬記念の実況を担当したフジテレビの三宅アナウンサーではないが「情念渦巻く中山競馬場(有馬記念)」だからこそ、こんなストーリーが不振のダービー馬についてくるほどなので、ほとんどの人間のためだけに彼らが走っていることがよくわかる。

海外遠征で恥をかいたディープインパクト、レイデオロらは、主戦騎手共に自信を深め、内容ある連対。

ディープインパクトでは叶えたが、スペシャルウィークでのグランプリ奪取の夢はモーリスの祖父・グラスワンダーに再び奪われた武豊騎手が、引退レースではない馬で有馬記念を勝ったことは、不思議となかった。

運命の馬の一頭であるスーパークリークと挑んだ2年目の暮れは、失格処分で記録取り消しの憂き目にあったが、メジロマックイーンで再び屈辱に塗れるとは…<1991年、穴の熊沢伝説を永遠のものにしたダイユウサク快走の2着>。

エアグルーヴは落鉄してしまったし、オグリキャップからようやく始まるユタカの有馬史は、決して、いいことばかりではないが、一緒にダービーを制した馬で登場すると、さすがに【1・2・0・0】と崩れない、精緻な構造の逆算されたゴールシーンを描くために必要な頭脳を持つ不世出のスーパージョッキー。

わずか4度目の挑戦でも、狙うならここで…。別に、ジェンティルドンナを有馬ウイナーにした戸崎圭太でもいいのだが、やはり、ドウデュースは武豊のお手馬である。

有馬記念2023- 出走予定馬の血統/成績/タイム

友道軍団、有馬を本気で獲りに来るの巻、であると仮定した時、厩舎の大将を本命にしないのは筋違いであると妄想

ドウデュースの血統

父は2005年のウイナーながら、古馬初勝利で、G1を4度目の連対でついにタイトルに届いたというだけでなく、ディープを倒したルメールが日本で初めて大きなレースを勝ったということでも、歴史的な1勝を挙げたサンデーサイレンスの代表産駒の1頭して知られるが、それよりは、ディープのライバルとして、種牡馬としての対決を何度か制したという実績を褒めるべきか。

有馬記念においては、天下のグランプリ女王・リスグラシューさんが、アーモンドアイだけでなく、3頭のG1勝利経験があるディープ産駒<ワールドプレミア、フィエールマン、アルアイン>をまとめて葬り去った劇的大楽勝劇があまりにも衝撃的だったが、ハーツクライ産駒は、ウインバリアシオン<オルフェーヴルといつもセットで来た追い込み型>やシュヴァルグラン<キタサンブラックと守備範囲が同じで苦労した名ステイヤー>、一時的にイクイノックス級の世界的評価を受けた天皇賞馬・ジャスタウェイなど、適性とはまた別の理由で来るといった、ハーツクライ自身と同じ性質を秘めながら、無理やり好走のグループがいて、大ボスのジャスタウェイだけ馬券外。

こと、ダービー馬のドウデュースは、同じ父のワンアンドオンリーが有馬はおろか、菊花賞でショッキングが敗戦を喫してからというもの、ついに走る気を取り戻せずに終わってしまったというようなストーリーに、ややハマりかけているところにきて、絶頂期であったはずの4歳時はごたごた続き。

リスグラシューもジャスタウェイも2歳重賞の好走馬であったし、最初から人気のある馬だったが、本格的にG1級としてようやくといった具合に走れるようになったのは、それこそ、ドウデュースが休んで、復帰してきた天皇賞の頃。

サリオスでさえ、4歳時は不完全燃焼のまま終わったが、5歳になって、毎日王冠をレコード勝ち。

暗に早熟とも言い難い、リファールのクロスを持ちながら、かつダンシングブレーヴというミラクルな血が、イクイノックスという化け物を生むきっかけとなった経緯に絡み、こちらはその一族という関係では、ナミュール<3代母のキョウエイマーチはダンシングブレーヴ産駒>が香港で健気に頑張って、ビュイックさんに褒められていたからには? 同じ4歳の代表する存在であるダービー馬・ドウデュースを買わないわけにはいかない。

母系は北米系の血に染められながら、生き残るのは芝も走れる血を残せたものというシアトルスルー系の大きなテーマを、欧州系の芝血統で固められたサンデー直仔種牡馬がフォローアップしている状況で、最も効果的にその影響を受けたグランアレグリアに学ぶとしたら、ノーザンテースト産駒のように、何度も成長をする馬、であって、このドウデュースも何一つ不思議ではないような気がする。

有馬記念2023 - レース展開と最終予想

わざわざ、改めて言うことではないが、ここには、イクイノックスとリバティアイランドはいない。

ジャパンCでそれらに続いたグループが、クラシック専念の選択をするしかなかった3歳ツートップに対し、力量というより、破壊的な活動を繰り広げた競馬界の両エースから得た、彼らと戦うことでしか経験のできない財産の、大きな重みというものを見せつけねばならない。

とはいえ、簡単ではないのは百も承知の有馬記念。

時計も展開次第で、急にグレード制導入前の時代の決着に落ち着くこともあれば、今っぽい、2分32秒の標準的なものを記録されるから、実に難しい。

強い馬が多く来れば来るほど、マークが散漫になるから、全体が落ち着くこともあるので、強い馬が1頭だけ目立つということもある。

逃げも差しも同じくらい決まるが、伏兵は常に、有力勢の裏をかくというある種の正攻法がハマる。

長く続く名物戦となった有馬記念は、近年ほど、変な荒れ方をしなくなった。

あのサラキアの人気薄激走は、ついにその覚醒の度合いに無頓着だった多くのファンが、ただ見過ごしてしまったというだけのこと。

過酷な雨馬場の府中牝馬Sを独走したあたりで、一介の5歳牝馬の枠からは突き抜けていた。

狙いを絞るという形は、単複に重点投資という策以外、不確定要素を楽しむグランプリの特性上、かなり隙だらけのイクイノックスでさえ、大外ぶん回しをしていると、格下というか、十分にG1で戦えるクラスならいくらでも接近できるという、あの宝塚記念の経験を活かすのであれば、叶わずとも、接近の事実を、実力としてみなすことは可能。

ここには、皐月賞馬のジオグリフもいない…、強引ではあるが、武豊&ドウデュースを復活劇を再度目撃したいと希望する。

フットワークに重厚感が出てきたここ2走は、考えるというか、集中することができない環境で、詰める作業を十全にはできない立場の戸崎騎手が、卒なく乗るということで、対イクイノックスどころではなかった面も認めざるを得ない一方、ほとんど逃げ馬とイクイノックスのおかげではありながら、秋の天皇賞は1:56.6<勝ち馬比プラス1.4秒>、ジャパンCでも2:22.7<勝ち馬比プラス0.9秒>というのは、実力の一端くらいは見せていたと仮定くらいはできる。

徹底してイクイノックスマークであるのだから…、戸崎圭太の好判断がこの結果を生んだと、いい方に捉えたい。

とはいえ、大型のマッチョマンになってきたドウデュースは、そもそも、北米の血を受けたパワフルマシーンで、朝日杯こそ、距離が少し短い印象もあったが、それ以降に関しては、むしろ、武豊騎手がどうやって凱旋門賞にもっていこうか、勝てる形に仕上げていこうかと思案していくうちに、一瞬の脚を活かす、普段のユタカ式ダービーメソッドを実践することとなり、しっかりと勝つべき一戦=日本ダービー<正式には東京優駿>の第89代王者となる事だけは叶った。

ただし、反動はあるはずで、フランスの2戦は、適条件からかけ離れた長めの距離で、普通の型がハマらない大レースとその前哨戦を使ったことで、大いに調子を狂わせ、京都記念こそ、圧倒的な快走であったが、太目残りではあったのだろうから<最高体重だった508kgは、結果次走になる天皇賞でまた4kg増えた>、万全ではないから、ドバイへはカラ出張となってしまった経緯もある。

これでは宝塚記念も使いづらい。

捨て身でイクイノックスに当たろうと画策すると、今度は鞍上がどこかに行ってしまう大きなアクシデント。

いい流れではない。

友道康夫厩舎にしても、一枚看板状態で、次点の準エースは不在で、ディヴィーナやハーパーが強敵相手に賑やかに働くこともあったが、勝負強さの点で、基本能力の違う相手が出走することで、良さを前面に押し出すことは叶わなかった。

微妙に彼女たちの適条件からは、相手関係含め、ズレがあったのは事実。

その中からはハーパー、古豪の厩舎のボスキャラからは、長距離実績十分の安定飛行型キングカメハメハ・ヒートオンビートが、共だって助太刀の格好。

エースとして厩舎の空気を生む存在であるダービー馬は、空気を読むことも求められる。

馬主バラバラなのだから、思惑は当然違うはずだが、同じ敷地から大レースに赴くのだから、調教師の鼻息は少し粗くなっておかしくない。

だからこそ、オーナーサイドも<キーファーズの松島氏など>武豊復帰を心待ちにしているはず。

生産者サイドに忖度する必要のあった、対社台の構図も、オーナーの方が次々鬼籍に入ったこともあって、案外ゆるゆる。

武豊でなければ…、という信念にも似た確信がある松島オーナーのような方が、ユタカブランドによって栄光を浴すなど、しばらくなかったが、確率論の関係でも、勝率というか、勝ち星そのものが50代の騎手ではない武豊騎手は、ある意味では、安定のユタカを体現できているので、乗せる側も信頼できる状況。

辛いのは武騎手自身であり、彼に怪我をさせてしまったあの馬の陣営であるはずだが、誰も彼が悪いとは思っていないから、これは過去の話。

朝日杯に乗ったところで、有馬も大丈夫とはならない年齢であるから、怖さ半分。

骨折していてもダービーで乗った、メリーナイスの根本康広<藤田菜七子騎手の師匠>ではないが、その重み、勝った者のステイタスなど、全てを知り尽くす武豊騎手は、無理をしないようにと言いつつ、無理をするはずだ。

いいか悪いかは、この後の騎手人生に影響する可能性もあるほどで、極めて重要な局面であるのだが、ダービー馬に乗りこんだ武豊は、前述の通り、大外しはしない。

全く違うローテーションということもなく、スペシャルウィークもプレップの京都大賞典爆死をカットすれば、全く同じ。

スペシャルウィークと闘ったのも、セイウンスカイ、エアジハード、目覚める前も2着のステイゴールド<天皇賞>、モンジュー<ジャパンC1番人気の凱旋門賞>、有馬で敗れたグラスワンダーと、最強の意味を教え諭した翌年無敗のテイエムオペラオーと、いちいち凄まじかった。

戸崎モデルのドウデュースでも十分好勝負だろうが、いくらかは終いに脚を残したいという点で、その味付けが天下一品のユタカ騎手であるから、この乗り替わりで少し変わったドウデュースを、オグリキャップ級の好アシストで好位抜け出しの型にハメこんで不思議ない。

もう、キレで勝負は難しいが、速さを活かしながら戦う術を馬自身が身に着けている。

ハーツクライ産駒特有の全盛期に持ち込めるかは何とも言えないが、この秋の内の争いであるなら、十分にここでも戦える。

イクイノックスはいない。

ドウデュース自身が燃えているところに来て、武豊も当然全力にアシストする。