エリザベス女王杯2017 回顧

スローの前残り。

クイーンズミラーグロが逃げたところで、上がりもかかる馬場状態。

内枠からスムーズに立ち回ったモズカッチャンとクロコスミアの競馬になってしまった。

1000M通過62秒台は、日本の全カテゴリーのGⅠレースにおいても、当然のスローという扱いになる。

エリザベス女王杯とすれば、それは平均より遅いくらいの許容範囲内の競馬ではあったが、いくら荒れ馬場になってきたといえ、良馬場であればロスなく回ってきた馬が有利である。

筆者推奨の超穴馬<いくらなんでも119倍は馬鹿にしすぎ>マキシマムドパリなど、枠が桃色と接する15番枠ながら、好発から万全の手応えで抜け出しを図るも、コース選択の自由がない分、鋭く反応できるタイプでもないので、惜しくも上位争いから最後は脱落。

言ったら、もう勝負を賭けて好位付けを選んだヴィブロスのルメールの気持ちを察するに、もっと内枠が欲しかった…、の言い訳は今回ハイレベルな争いだっただけに、ファンも納得であろう。

前を壁にできないGⅠ戦は、今回が初めてだった。掛かるのは仕方ない。

勝ったのは、前走が道悪×落鉄の死亡遊戯で3着までは粘った3歳のトップホース・モズカッチャン。

もうすっかり馬の特徴を手の内に入れたミルコ・デムーロ騎手の完璧なエスコートは、スタートが今年は良かった分、昨年以上のベストアンサーに繋がった。

本来もっと楽に逃げたかったはずのクロコスミアにしても、自身初の年間100勝を射程圏に捉えた、もう名手と言っていい和田竜二騎手のテン乗りとは思えない、オーソドックスながら強かな正攻法の抜け出しで、大いに見せ場を作る2着。

内を通ってきたとはいえ、あとは実力上位<改めて言うが、今年重賞2勝のマキシマムドパリは4着>の枠関係なしの入線という結果であって、最後は競馬が上手な馬が上位を占めるのであった。

ハービンジャーがこの3歳世代からやたらと大物が登場するいい流れになっていたが、今度はサンデーの血が一切入っていない上位人気の馬が、以後ドドドと連なるその血を持った馬を負かしたという意味でも、勝ちは大きい。

ミルコも良かったが、生産者にとってこれほど誇れる結果もない。

母父キングカメハメハは、現在の日本競馬で唯一、アウトサンデー血統を形成できるクラシック血統であり、そういう者同士の組み合わせでのGⅠ制覇には、ダート以外にもいくらでも可能性を見出せることによる勇気というものが湧いてくる。

サンデー系統の相性も悪くない2者だけに、実質外国産のキングカメハメハともども、日本導入の意味合いは大いにあったと、今回は結論付けられるだろう。

さて、宝塚記念以来で連続3着のミッキークイーン。

思えば、昨年も3着。

今年は春に一つ勝ち星を挙げているから、調子自体は昨年より良かったはずだ。

ファンも結構支持していた。

ただし、秋華賞でクイーンズリングやマキシマムドパリらをねじ伏せた頃と、多少はパワーアップしているところはあっても、一度はマイル仕様の体にしたものを絞ったところで、本質はキレ馬ではないから、いくら別次元の脚を使っても、本当のゴール寸前でいい勝負になっただけであり、惜しい3着ではなかった。

5歳秋の2冠牝馬<正確な表現ではないが>だから、上がり目はないにしても、ない体がもっと消えてしまうようなクイーンC参戦時の悲惨な馬体減の中、一時は桜花賞も参戦できそうな状況にしてしまったあの好走は、この日の僅差の敗戦に、色濃く反映されている気がする。

個人的には、昨年いっぱいの引退でも彼女の功績は全く色褪せなかったと思えるのだが、皆さんはどうだろうか。

なまじ力あるせいで、貧乏くじを引いてしまう馬は、GⅠ未勝利馬には多いのだが…。