2020年フェブラリーステークス回顧

インティは行けず、芝スタートを利して、久々に自分のリズムを取り戻して、揉まれても挫けない一番自信満々だった時の自分を取り戻したモズアスコットに、今回は敵がいなかった。

ノリにノッている時こそ、メインでは危ういことの多いルメール騎手も、序盤から絶好調であることを示す重賞勝利量産状態の中で、当日も連戦連勝。

事あるごとに、勢い止まらない矢作芳人調教師の管理馬ということも含め、様々なジンクスを人気になるがために識者に持ち出されては、やっぱり強いのではないかと皆が言ったりと、消えるか圧勝かの二項対立を生んだが、結果として、そのどちらにとっても納得の結果であった。

フランケルが使われるごとにドンドン逞しさを増し、単なるスピードスターから総合力のあるチャンピオンホースへと駆け上がったように、最後は自分自身が敵になる場面で、多分に経験した芝でのアドヴァンテージで、ライバルを粉砕してみせたということだろう。

もはや、多くを語る必要のない馬。

追い込みから中団後方待機策になりがちな馬だから、父とは違い、自分で時計を作れるような馬ではないが、根岸Sの快勝をステップに、このフェブラリーSも1:35.2で快勝。

若い馬にはそういうタイムになる競馬に出番が生じるがための4、5歳馬天国だったフェブラリーSは、ダートキャリア2戦目の芝タイトルホルダーに、そのプライドの挽回の舞台を与えたことになる。

いきなりのダートで消えた馬が多かったフェブラリーS。結局、矢作調教師が出した回答は、経験の一語に尽きるということだろう。

さて、その抜け出す時の華麗さもさることながら、衝撃的だったのが長岡騎手とケイティブレイブ。

約一年前のドバイ遠征で疝痛を発症し、当地で手術を受け、命かながら帰国した男だけに、浦和記念は無事帰国と回復の快気祝いと思っていたのだが、ある意味で、ちょっと前のコパノリッキーや前日のミライヘノツバサより遥かにインパクトのある結果だったように思う。

差して走ったというのは、スタートで大失敗の上、当時の主戦である福永騎手が見事にリカバリーを果たして快勝した5歳時の帝王賞くらいなもの。

ただ、その時も京都JBCも流れた競馬だったから…、というイメージで、浦和や川崎で輝くタイプと思っていたのだが、父アドマイヤマックスのように、初の1600の大舞台で…、彼は4歳時に既に経験しているから、もっとびっくり。

長岡騎手の評価が上がるとともに、それこそ、名うてのベテラン砂巧者を引き連れ、モズアスコット君の復活祭をもっと盛り上げようぜという、かつてのトップホースが覗かせたプライドのようなものに、グッとと来るものがあった。

筆者にはこういう馬を買うセンスがないから、代わりとして前走の川崎記念でもっと上の着順だったデルマルーヴルの本質的な適性の方を勝ったわけだが、一番大事な三分三厘の手前で上がって行けず、直線ではデムーロ騎手が諦めてしまったという寂しい散り様に、尚の事、ケイティブレイブの底力には感嘆したものだ。

ワンダーリーデルや休み明けでもしっかりと走れる状態に見えたサンライズノヴァなど、サウスポーの上位勢が皆見せ場を作り、格好のいい負け方をしたタイムフライヤーの完全復活も近いように見えたが、インティが消えたのと同時に、上位4頭が6歳以上という結果は、ヴァーミリアンが勝った時が上位3頭全て6歳以上の時以来で、若手に有利ではなかったのは偏に、クリソベリルやオメガパフューム、故障から復帰の待たれるルヴァンスレーヴなどがいない影響が、そのまま表れたということになる。

ベテランのようでベテランではない馬と、完全な古豪のワンツーから見えた結果は、ただのダート重賞ではないということだろう。

芝も走れないといけないし、ダートではどんな不利も乗り越えないといけない。

コーナーが2つのチャンピオン戦だからこそ、限りなくセパレートな直線の攻防になるのがほとんどのフェブラリーSで、インティの揉まれて惨敗は何とも弱々しく見えてしまう。