大阪杯2017 回顧

サトノクラウンがいい位置につけていたので、これが負かしに行くと思ったのだが…。

勝負所で後ろを見る武豊というのは、あまり見たことがない。

マルターズアポジーの行きっぷりはよかった。

でも、リードホースの逃げ方というよりは、存外、後ろがややけん制し合う流れになったから、これは楽過ぎるよなあ、とユタカ騎手は感じたのだろう。

近くには、昨年キタサンブラックを一頭マークしに行った横山騎手のサクラアンプルールがいたくらいで、ペースは厳しくなかった。

バランスラップのレコードがよく出るパターンに近い。

ただ、楽過ぎるのがよくないというより、ここまで激走を続けてきた精神的な消耗もあったのか、マルターズアポジーの方が先に音を上げてしまった。

差し馬も簡単には届かないだろうし、前も勝手に消えてくれたし…。

こんなに楽でいいのか。

本音はきっとそうだったはずだ。

2000MGⅠをこんなに楽な手応えで上がってきて、名うての中距離馬であるステファノスやヤマカツエースを封じる。

自分で思っている以上に、あまりにスムーズな展開に見せてしまうのは、流石はジャパンC逃げ切りの名馬である。

武豊騎手、これで中央GⅠ22レース目の勝利。引退はまだ遠い先となる。

だって、またJRAはGⅠを作るかもしれないし。

内枠スタートから終始、キタサンブラックをピタリとマークしたステファノスは、惜しいといえば惜しいし、結局いつもポジションに収まってしまった。

いくらか軽い流れを好むヤマカツエースと共に、自分の仕事をしたのは間違いないが、理想の展開が望外だったことと、やはり、キタサンブラックが強すぎたというのも、好走の要因であり、敗因にもなってしまった。

最後は、決め手の差でも劣っていた。

サトノクラウンは精一杯の4着争いというゴールシーンが、ちょっと残念。

1:58.9の勝ちタイムは、やや修正は必要でも、自身が皐月賞で出遅れ、追い込んだ6着時の走破時計と同じ。

0.1秒差で皐月賞3着のキタサンブラックに、この日はもう少し離されてしまった。

堀調教師の思う以上の仕上がりは、-12kgという馬体重の変動以上に感じたしなやかな走りをするのに向くパドックで見せたフォルムからも納得できるものがあったが、肝心の適性を超えたところで戦う底力の部分に、まだ課題を残した格好だ。

正直、ステファノスにもついていけなかったのは、結構辛い。

本質は軽い馬という血統のイメージ以上に、スムーズに走れる条件が狭いという傾向は、多種多様な条件に適応せねばならない日本のチャンピオンロードでは輝けないということとイコールである。

マカヒキの出来は平行線で、2000Mなら、もっと前崩れになってくれないと、本質的なスピードが引き出されないタイプでもある。

シャンティイの2400Mよりは遥かにフィットした条件ではあるが、2000MGⅠで力勝負をできる馬ではない。

5着アンビシャスも同じで、この結果は案外、キタサンブラックだけが強い競馬をしたときは、あるあるの結末であったように感じる。

マルターズアポジーには、その穴をついてもらいたかったのだが…。

流石に完調までは仕上げていないキタサンブラックに対し、よく言われる「刺客はフレッシュな組から」の格言に倣えば、彼のパワフルな競馬を支える条件は、ノーマークであるかではなく、自分が走りたいと思う気持ちの方が重要で、パドックではそこまでのやる気は感じられなかったので、ちょっと諦めムード。

差し馬ならば、首を前に伸ばしてリラックスするようにする仕草はむしろ歓迎なのだが、逃げ馬のそれは、ややのんびりムードが過ぎるという危険性があった。

逃げっぷりは良かったのだが、その中身が少し平凡すぎた。