菊花賞2018 回顧

驚きのスローと驚きのゴールシーン。

ブラストワンピースが道中で外にいる時点で、前のメンバーが残るか、決め手比べで中団からのグループが伸びてくるか、であった。

勝負が決したのは、ゴール寸前というより、うまく道中で位置を上げたエタリオウより、レース直前のナーバスな立ち振る舞いから前に壁を作ってロスなく道中をやり過ごすしかなかったフィエールマンの方が、決め手で優れていたという残り200M過ぎの手応えの差だった。

概ね、先週のレース展開と同じで、その気がある馬が多い時ほど、うまく立ち回れる馬が上手に先頭に立ってしまうと、執念で先行しようとするタイプの馬<正確には鞍上か>が、どうにも押しても無理となってしまい、その後ろもどうにもならないという構図になる。

秋華賞は2000Mだから、ミッキーチャームには200Mの延長は相手を意識したら引く手はなかった。

が、スタミナに自信があるとはいえ、本当は自分より他の馬に行ってもらいたいところのあったタフネス・ジェネラーレウーノには、後ろが追撃してくる展開では末脚比べでは分が悪いとわかりつつ、さすがの田辺騎手でも、色気を持ちすぎた展開作りが、エポカドーロ以下にも不利な条件になった。

3:06.1。

30年前でも出ていたタイム。

凡戦であるがゆえに、正しいスタミナ比べの菊花賞にはならなかった。

そこは残念。

しかし、同時にそれはダービーのレース展開でも見えていたこと。

内枠に先行馬が固まりすぎて、それがにっちもさっちもいかない状況に追い込まれたら、当然、ストレスの少ない差し馬に出番である。

キャリアのことはともかく、近年でも、キタサンブラックやキセキ、直前の1800戦圧勝のスリーロールスに、思えば、唯一の圧勝のきさらぎ賞だったサトノダイヤモンドやアサクサキングスらが快勝し、1800的バイアスが展開上掛かることも多いこのレース。

かつて、このレースでレコード勝ちしたソングオブウインドとローテこそ違うが、ラジオNIKKEI賞2着は同じ。

アサクサキングスが勝った時の1番人気は、そのラジオNIKKEI賞勝ち馬のロックドゥカンブである。

フィエールマンはフロックでもなければ、サクラスターオーの例も含めて、特殊なことは何もないくらいの候補だった。

何故か1800ばかり使われている。

そういう印象さえ受けていた、その1800戦におけるパフォーマンスに見たスケール感から、明らかに2400M近辺に大きな可能性を秘めた才能と皆が思っていたはず。

ところが、伏兵の実績しかなかったことで、ルメール鞍上より、モレイラが乗った古馬戦にも快勝の馬の方が人気になっていた。

死角はファンの中にあった先入観ではなかったのか。

展開の読みが筆者も大方の推理した平均より大分速い展開の読みで、前が誰によって掃除されるかというテーマで、皐月賞馬の出番と考えたが、充実度はエタリオウの方がずっと上。

出来も良く、軽くストレスがかかる時が一番根性を出せるステイゴールドの好気配ぶりが、よく伝わってきた。

しかし、彼もまた死角の少なくない男。

序盤は遅れ、いつも届かない。

青葉賞こそ正攻法で行ったが、ゴーフォザサミットに手も脚も出ず。

その時に近い仕掛けで、素晴らしい内容の人気馬の競馬で抜け出しにかかるも、持って生まれた根性はあるのに勝負弱いステイゴールドらしさが、結局、フィエールマンの底力を引き出してしまったのである。

勝負はラスト200M辺りで…。

筆者の言わんとすることは、その時にエタリオウに追撃者がいた場合は、今後もこういうシーンが繰り返されるのだろうという意。

【1601】という戦績は、未だに2勝馬のサウンズオブアースとまるでそっくり。

父ステイゴールドを現役時代から知る多くのベテランファンからすると、あのフィエールマンの勝った菊花賞ではなく、エタリオウがついに勝てない男に昇格した一戦と、後から振り返るとモニュメントのようなレースになってしまうのかもしれない。

次は有馬記念か、はたまたJCか。

敗者が17頭のはずが、16頭になっている気がするのは、エタリオウの今後の結果如何である。

早晩勝たないと、ずっと同じグループの中にいる存在のままであろう。