皐月賞2017 回顧
昨年の高松宮記念のような馬場状態だった。
前週までは雨に祟られ、かなり内の方が悪くなっていたのに、週中までのレース当日の雨予報が外れたことで、高速決着連発。
結果に及ぼした影響は大きい。
想像以上に速かったアダムバローズは、先週大金星を上げた池添騎手のお手馬。
ここまで逃げを封印してきたトラストらが、ファンディーナの走りやすいリズムを見事に崩し、それらを追いかけたクリンチャーが、己の能力を振り絞って、先行勢で唯一粘り込み、4着だった。
しかし、ディープ産駒が沢山出てくるレースのこと。
途中、賭けのイン追撃を敢行しできることはすべてやった福永騎手のカデナには、少し線の細いところのある馬に辛い展開で、出番を回ってこなかった。
好スタートから早めの位置取りも可能だったスワーヴリチャードも、ハーツクライで器用ではないから、流れを見て、恐らく計画通りの外差しも、キレが足らずに伸びきれず。
双方、内枠は良くないタイプだが、これがダービーだったら結果も違っていたかもしれない組。
また内枠なら、策は変えてくるはずだ。
忘れてはいけない。
このレースは池江厩舎のシンザン記念組の競馬。
水準程度のメンバー集まり、滅多に降らない雨が大量に降った影響で、キョウヘイの一撃をまともに食らったのはペルシアンナイトの方だった。
道悪に苦しみ、最後はインをついたことを後悔するほどの脚の上がり方で、3着だった。
苦しい経験をすれば、それより更に専門家が増え、質のばらつきのあるアーリントンCは、どうってことのないレース。
そのシンザン記念の結果を、最も悲劇的に捉えていたのが、当時2戦2勝でクラシックに向けいい叩き台にしたかったはずのアルアインだった。
重で負かしたはずのキョウヘイに、今度は重で負けたのは、内回りコースとの合流点のちょっと先で進路をカットされ、立て直すので精一杯となったのが最大の理由。
インからまずまずいい手応えで上がっていったが、こういう時に不利を受けたら、もうお手上げである。
毎日杯で新境地の好位付けから、当面のライバルになるだろうサトノアーサーの賞金加算の邪魔はしないように、しかし、中身も求めた松山弘平騎手は、案外粘っこいアルアインに、思っていた以上の底力を実感していたのだろう。
混戦ながら、前走重賞勝ち馬ながら、全く人気にならなかった。
目標も分かりやすいレース。
内に入ってもがくファンディーナの精神的消耗と比べれば、そこでじっとしていた勝ち馬はシメシメであったはずだ。
最後の叩き合いは、ディープとハービンジャーのキレと、実は底力の差であろう。
血統面でも底力の根拠は、ドイツ由来の名牝系出身のディープの方が一枚上。
昨年も、南米牝系の有力馬を、底力のアイルランド血統を祖母に持つディーマジェスティが圧倒している。
時計が速くなれば、1800をこなせるくらいのスピードがないと苦しい。
1分59秒を切った年の勝ち馬には、決まって1600、1800どちらかで快勝した記録がある。ダイワメジャーは例外だが、その後の戦績は言わずもがなだ。
そういう意味では、ファンディーナの経験値の不足は、この乱戦では残念な結果も致し方なし。
ウオッカが果敢に宝塚記念に挑んだ時は雨のハイペース。
急坂コースで牝馬が過度に人気を集めると、男馬を育ててきた男たちの目の色が変わる。
すんなりの時計勝負ならもっと違った競馬だったろうが、自分でペースを作る経験も少ない。
外に張っては、1000M59秒の展開で残れる可能性はなかった。
自分のペースで59.5秒を作れることを、ここまでのレース過程で見ることができれば、結局、人気の牡馬勢は負けているのだから、皆の夢は叶ったはずだ。
人気馬総崩れの高速決着との年のダービーは、上位争いできなかった組か別流組から。
レイデオロの馬群強襲の5着には期待は持てるし、サトノアレスも上がりはメンバー中唯一の33秒台の脚。
横一線にまた戻った皐月賞後、一気の成長を望めそうなのは、念願のダービー獲りを目論む藤沢軍団かもしれない。
流れが同じでも遅くなっても、東京であればもっと自分らしく走ることができる。