ヴィクトリアマイル2017 回顧
昨日のクリストフはどうなんだ?というくらい冴えない騎乗が続いていたが、かなりパワーを要する馬場状態で、非常にコース取りが難しい中で、内枠を100%活かした「荒れ馬場の正しい対処方」を用い、ロスなく決め手をフルに引き出した無理のない競馬で、アドマイヤリードが見事に差し切った。
思えば、桜花賞5着馬であり、秋以降の末脚に磨きのかかった圧倒的なパフォーマンスは、前走道悪でも怯まぬ内から伸びる競馬を確認した、そう仕向けたきらいもあるルメール騎手の、トータルで考えた完璧なエスコートも、初重賞制覇=GⅠ制覇に繋がった格好だ。
前日好結果を残していたデムーロ騎手は、本番当日に名手がよくやる騎乗数を絞って?というのとは違うだろうが、朝から一杯乗って、結果も残していたルメール騎手と比べ、芝一鞍のみというのは、さすがに痛手だったか。
雨が降っていればまだしも、内ラチ沿いから差し馬が伸びてこられるような馬場ではなかった。
しかし、そのクイーンズリングに対し、隣にいたデンコウアンジュが、前走の捲りから一転、かつてメジャーエンブレムをねじ伏せた時と同じような流れで必殺の追い込みを決まりかかったところまでいったのに、少し揉まれたとはいえ、勝負所も勝負どころの坂上でもう一つ上のギアに入らなかったミッキークイーンは、見せ場なくクイーンズリングに半馬身届かず7着。
期待したソルヴェイグが、それこそ先週のアエロリットではないが、二の脚が極めて速いスピード型らしい先行力で出たのはいいが、あまりに良すぎたスタートで、川田騎手も冷静になりすぎて抑え込んでしまったことで、しかし、ペースが緩いから5着に粘っているし、中距離型として育ててきたミッキークイーンが、全く対応不可能な展開でもなかったのに、この内容は…。
前走大いに見せ場を作ったジュールポレールが、キレの差を勝ち馬にここでも見せつけられる格好でまた3着だったから、1、2、3、5着は4歳馬。
正攻法でやれることは全てやった平常運転の武豊騎手が乗るスマートレイアーも、ある程度読めていた程度のパフォーマンスで意地を見せた。
外を回るよりほかはない、5歳の上位支持馬であったレッツゴードンキやルージュバックも、それよりは競馬のしやすかったミッキーに続いている。
馬場の影響は大きかったし、上昇力が実はピカイチだったアドマイヤリードだけではなく、みんな自分なりにできる仕事はできたように感じる。
となると…。
陣営は、特に浜中騎手は、自身の不始末のことも頭にあるのか、一時は引退危機にあったということをメディアに対し、明け透けに、正直な言い方でミッキークイーンの復活を喜んでいた。
秋華賞以来の勝利ということよりも、4歳シーズンがまるで思うようにいかなかったことがあって、阪神牝馬Sの勝ち方に、内心かなり痺れるものがあったのだろう。
が、あの重馬場の結果は、ミッキークイーンの1勝のためには必要だったが、本当に価値をもっていたのは、かつての女王に肉薄する機会を極悪馬場で得られた
4歳の2頭だったのかもしれない。
奇しくも、昨年のミッキークイーンが通ったコースから伸びてきたのが、前回力でねじ伏せたはずのアドマイヤリードだ。
皮肉なもので、アドマイヤリードが重馬場が得意であったことは、父ステイゴールドの名を見る前でも明らかな戦績を誇っていたのだが、メイショウサムソンの2頭に続く33.4秒の決め手は、ここ数戦メンバー中断トツだった末脚に比べ、中身は違えど、数字的には図抜けてはいなかった。
あの日の雨の阪神牝馬Sがあったからこそ、望外の乱戦を制する勇気をもえらえたのであろう。
とても体がもたないような体重減で、レースレコード決着で勝ち馬にミッキークイーンが肉薄したのは、この東京マイルで行われるクイーンCであった。
引導を渡されたわけではないが、こういう流れになってしまうと、立て直しはより一層難しくなる。