2020年朝日杯フューチュリティステークス【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着グレナディアガーズ(17.5倍)2着ステラヴェローチェ(5.1倍)3着レッドベルオーブ(2.5倍)

レース名第72回朝日杯フューチュリティステークス
日程2020年12月20日(日曜)
優勝馬グレナディアガーズ
優勝騎手川田将雅
勝ちタイム1:32.3
馬場
3連単配当51,360円

朝日杯フューチュリティステークス2020 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
12グレナディアガーズ1:32.3レコード
27ステラヴェローチェ1:32.4 3/4
38レッドベルオーブ1:32.7 1 1/2
411バスラットレオン1:32.8 1/2
56ブルースピリット1:32.8クビ
単勝21750円
複勝2320円
複勝7170円
複勝8130円
枠連1-41,520円
ワイド2-71,280円
ワイド2-8670円
ワイド7-8380円
馬連2-75,000円
馬単2-714,610円
3連複2-7-84,150円
3連単2-7-851,360円

朝日杯フューチュリティステークス2020 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「新馬前から素質を感じていた馬なので、こうして結果が出ることが何よりうれしく思います。どうしても性格が難しい馬なので気分を害さないように気持ちよく走るような競馬を、とイメージしました。

とてもリズムよく、よく我慢してくれて、いい内容で走ってくれていたと思います。後ろを待つよりは、つかまえにいきすぎず、つかまえにいこうという選択をしたんですけど、最後までしっかりと自分の能力を出してくれたかなと思います。

そもそもの能力値が高い馬なんですけど、2戦目で暴走気味になってしまって、性格の難しさを出してしまったので、そこをコントロールしながら、ここまで来られて、ポテンシャルの高さは間違いないと思います。こうして毎度いい内容で、自分の能力を出し切る競馬をするというのが一番大事なことになってくると思いますので、無事にまた来年、いいリズムで競馬ができればと思います」

※川田将雅騎手のコメント(グレナディアガーズ)

朝日杯フューチュリティステークス2020 - レース結果動画(YouTube)

朝日杯フューチュリティステークス2020 - 回顧

いい位置を取って粘り込んでしまったグレナディアガーズは、フランケルの血を引くスペシャルな高速マイラーであったということなのだろう。
前走の阪神の未勝利戦で、

34.2−45.8−57.4

という展開から、11.4−11.6というハイレベルの持続ラップをキープして、1:20.4の2歳コースタイレコードで駆け抜けていたような、天才的なスピードランナー。
その直前の中京では、ここで大本命と目されたレッドベルオーブに勝負を挑む前に敗れていたが、今度お行儀が悪かったのはレッドの方だった。

今回の激しい展開は、快速型としてモデルチェンジさせる前に、マイルで限界に挑んだモントライゼが作ったものであり、

33.7−45.2−56.9→1:32.3<上がり3F/35.4>

これから類推できることは、
①マイルで時計勝負になれば、底力はそのまま反映される
→しっかりと、サウジアラビアロイヤルC快勝のステラヴェローチェとデイリー杯レコード勝ちのレッドベルオーブが、何だかんだで勝ち馬に続いた。

②伏兵の底力が根幹距離で発揮されたか否か
→4着のバスラットレオン、5着のブルースピリットは、洋芝の高速レースで逃げ切り勝ちをしていた2頭で、距離はこことは違うが、どちらも1600Mのレースは初めて。

③重賞2着だった馬は大体揮わない
→ゴール前突っ込んできた京王杯2着馬のロードマックスは伏兵の競馬に徹した6着だったが、それができないホウオウアマゾンは、僚馬の目標でもあったバスラットレオンに最後は突き放されてしまった。

インタビューの川田騎手はクールさを装っていたが、誰よりも自分へ期待をしてくれている中内田調教師の管理馬で、ましてや、異様なテーストの怪物が出てくることもあれば、自身が見事に翻弄されたミスエルテ<2016年のこのレースで断然人気に支持された牝馬>のようなタイプも出すフランケルの産駒で、見事なG1制覇を果たしたわけだから、嬉しいはず。
先々週のこともあれば、ここに至るまでの自分の至らなさへの不甲斐なさもあるだろうが、今回はそれだけではない。
ようやくコントロールできるようになった天才児の走りを、連続して最高にアシストしているのだ。
歓びがあると同時に、またホッとしながらも、どうしても気疲れする面もあったのかもしれない。

決して大きくはないが、バネがあるというよりは体力勝負向きの気配を漂わせるグレナディアガーズ。
個性派の才能には、色々な適性が秘められていることがあるが、この馬は詰まるところ、前に行けるモズアスコットという感じだろう。

母父がヘネシーでストームキャットの流れを汲んでいたモズアスコットは、暴走する気性をコントロールできたとき、強烈な差し脚を左回りの1400や1600のレースで、芝、ダート問わずに刹那的に爆発させるように発揮していた。
大人しいわけではないが、ソウルスターリングもジュベナイルフィリーズはハイペースの押し切り勝ち。
完全な欧州型のソウルスターリングには、上がり目を残すという仕上げができなかったが、グレナディアガーズはそうではないのかもしれない。

まず、母ウェイヴェルアヴェニューはBCスプリントの牝馬限定の方<D7F/フィリー&メア>を4歳時に、キーンランド競馬場で制していて、翌年はサンタアニタでも頑張って2着。
引退は2016年の暮れだから、2018年生まれのグレナディアガーズは正真正銘の初仔。

母がファピアノ系でアンブライドルドの直系であることに始まり、母父がデピュティミニスター直系、奥に続くのはボールドルーラー系とミスタープロスペクターの地味な後継馬であるガイガーカウンターなどと、キラキラした感じは全くないものの、ずっとミスタープロスペクターかその父のレイズアネイティヴをしつこく掛けられてきて、薄めのブラッシンググルームのクロスとノーザンダンサーの継続クロスも適度に入っているから、サンデーサイレンスの決め手はなくても、スピード負けはしないというマイルG1向きのバランスではある。

芝の底力勝負は中距離以上でという欧州型は、日本では鈍重すぎて反応の差で敗れるが、それは気にしなくていいマイルでは、基本的なスピード能力で敗れる危険性があるサドラーズウェルズ系の死角は、北米型との組み合わせでも本領発揮のフランケルにはあまり関係ないことを証明したから、優秀さでフランケルとその仔であるグレナディアガーズは他を上回ったと断言して、差し支えないだろう。

2着のステラヴェローチェは、ブラッシンググルームの直系。
バゴの産駒だから、それは初期に活躍のビッグウィークのようなステイヤーが多いと思いきや、有馬記念に出走するだろうクロノジェネシスに、そんな気配はまるでない。
競走能力の核心部分を本当で嗅ぎ取る能力に長けた横山典弘騎手は、時計勝負になると分かっている今回は、普通の競馬をさせつつ、オーソドックスな差しに実は溜めればキレるという何かを知っていたかのように、直線はインへと誘った。

掛かってしまったレッドベルオーブとはその差もあったが、限界に近いポイントで追撃開始も、先週のルメールが感じたように、このベテランも前が遠いなと感じたことだろう。
持ち味は出し切ったが、猛獣のような風体で、器用さを何とか出してもまだまだ体はでき切っていなかったのかもしれない。
サリオス同様、早くから仕上がったとしても、完成はずっと先というのは、ナスルーラ系の影響が強い血統の馬ではよく見られる傾向だ。

それにしても、馬体こそ元に戻しつつあったレッドベルオーブは、何とも残念な内容であった。
走らせてあげたい気持ちに加え、決して、完成は先ではないことを見切ったように、ダービートレーナー・藤原英昭、名伯楽の采配は振ったものの、戸崎→福永の万全の配置で、変な味付けのやんちゃなマイラーになってしまったのでは、無念であろう。
もちろん、敗因はここに至るまでの激戦の影響もあるし、もっと強気に動けるはずの馬なのだろうが、それだできるような状態ではなかったのだろう。
福永祐一同様、馬を大事に、その後のことも考えての競馬を心掛ける陣営のこと。
今日のところは、この時計で力を出せるような余裕がなかったから、次に備えるということで…、と茶を濁すしかないだろう。
実力負けではなく、グレナディアガーズが抱える死角と同じように、常にいいバランスで走れるとは限らないスピード型なのだろうから、こういうこともある。

期待馬は他にも沢山いたのだが…。
実力勝負で持ち味を出せなかった馬も多かっただろうが、下馬評の印象より、ずっと混戦ムードを漂わせたパドックの各馬の気配などを考えると、ハイレベル決着で、この程度でよく収まったという印象。
次もまた勝ち馬はチェンジなのか。いやいや、強いチャンプが生まれたではないか。
そう信じたいと同時に、伏兵でいることの優位性を活かし切った勝利コンビにも見られるそれは、昨年3着のグランレイと似たモノを感じる。
どの馬も、もう二皮くらい向けないといけない。