影なる存在にあまりならないG1組は、1番人気でなければ堅軸
マテンロウレオはホープフルS、道悪の2017年は雨で動き一変のアメリカズカップが後に名脇役として味を出していくダンビュライトと共に、阪神移設後の朝日杯組として見せ場を作った。
しかし、ヨーホーレイクもそれに続いたランドオブリバティもそう、朝日杯組で残る1頭の好走馬であるアッシュゴールド<重荷を背負わされたオルフェーヴルの全弟>などのように、あまりあてにならないタイプ程、よく走っている。
だから、すでに怪しげな戦績を積み上げてきたジェットマグナムも、早くも心房細動で実質完走断念の2戦目があり、前走は勝負になりそうな雰囲気のなかったホープフルSというローテからも、過剰人気では困るが、後述の
血統が一見すると地味であることで…。
アッシュゴールドは朝日杯で掲示板に載っていると評価も変わっただろうが、ここは3番人気だった。
その後はほどんど走っても結果が出なかった馬とすれば、最後のひと仕事でもあったように、ここで終わってしまう馬だとしても、ここまでは強い馬という場合も多くある。
マテンロウレオのように、パートナーに恵まれれば言うことはないが、渋い騎手から、時に派手に仕事をする職人として大きな進化を遂げるベテランの丹内騎手が、泥の津村以外見どころナシ世代という酷評から、川田隊長を筆頭に躍進を続けるJRA騎手会の取りまとめ役世代の一人として、一つ下で断然の主役を任せられた北村友一をビビらせるだけの存在に再度名乗りを上げたいジェットマグナムにすべく、ここはしっかりとその足掛かりを作るための一戦にしておきたいところか。
勝った2戦はいずれも、実力通りの完勝である。
きさらぎ賞予想2025 - 出走予定馬の血統/成績/タイム
噛み応えのあるワイルドな血統が積み重なった隠れ良血馬があっさり突き抜ける? とここは思いたい
ジェットマグナムの血統
ヘンリーバローズ×ルーラーシップと考えると、まだ未勝利で3、4着を繰り返していそうな配合にも思えるが、6代母が、あのデビュー後初勝利のオークス・英が大差勝ちだったサンプリンセスであり、お馴染みの直仔・バレークイーン<持ち込みの産駒であるフサイチコンコルドは無傷3連勝で東京優駿・ダービーを、年の離れた半弟が皐月賞圧勝のアンライバルド、いずれの父もどこかの国のダービーを勝つことに連続して成功の父系>だから、わかりやすいタイプのクラシック
血統ではある。
最速サイクルの代重ねに等しく、徐々に戦績は下降線の危険な流れにあったが、未出走馬のビビットオレンジから2歳時に新馬、特別と2勝のこの馬が2番目の産駒から登場することで、復元力を示したことになる。
有益なクロスであるサンデーサイレンスの3×4を配されたこの馬だが、同じディープインパクト×シルヴァースカヤの未完の大器・シルバーステートよりも中身がある意味濃い、デビュー戦でワグネリアンに敗れて、未勝利戦圧勝でキャリア終了の父ヘンリーバローズがヘイルトゥリーズンの同系での4×4がマイナス効果をもたらしながら、こうして、種牡馬としての可能性の一端を示している反面、母のビビットオレンジも凱旋門賞馬にして日本で大成功のグレイソヴリン系大種牡馬・トニービンが3×4、また、これが絶世の美女にして1997年JRA年度代表馬のエアグルーヴと、フサイチコンコルドの半妹であるグレースアドマイヤ<府中牝馬Sでメジロドーベルと接戦2着だっただけでなく、1997年のきさらぎ賞4着馬>らに掛かる、特殊な組み合わせでの奇跡の血量をもたらす配合なので、未完の血の組み合わせの中では、有効な手法にも思える。
秘める破壊力が全開になった途端、実は、強すぎるあのクロワデュノールに唯一に近い対抗馬になれそうなことを示そうと思っていると、新馬で負かしたはずのリトルジャイアンツが目覚めかけているだけでなく、東京で派手に連勝したエネルジコなども登場し…。
正統派クラシック
血統の積み上げの中で誕生した、地味に映るこの馬こそが、和製大砲の最右翼であることを示すことこそが、このレースにおける、ジェットマグナムの使命であると筆者は感じる。
他にはそこまでの魅力も感じないからこそ、勝ってもらいたいと思った。
好位抜け出しで、また弾けるように伸びる馬ではないため、ローカルの名手というイメージが未だ先行する丹内祐次騎手にぴったりなのはわかるが、前々走の芙蓉Sでは、モレイラのミッキーマドンナ<また東京で負けてしまって少しピンチ、このセントポーリア賞はエネルジコが勝った>が必死に進路を探してもがいているところで、前受けの悠々抜け出しの構えから、堂々の押し切りで差を詰めさなかったという好結果だっただけでなく、心房細動で4角途中ではすでに怪しげな雰囲気になって、さすがにキャリア十分の乗り数で勝負できる騎手らしく、比較的早い反応の鈍さに対する理解により、ダメージ最小限とはいえ、そこから1か月半程度しか経っていない中での実戦復帰。
そのコスモス賞にはアスクシュタインという札幌2歳Sで中心視された馬がいて、一騎打ちの様相から、レース継続断念の結果がとりわけ残念とされた1番人気での出走。
しかし、名誉の撤退がダービー奪取に繋がる奇跡を目撃した年の2歳特別戦。
どこかしら、何となく繋がるものがあったという芙蓉S完勝の内容であった。
きさらぎ賞予想2025- レース展開と最終予想
新馬戦は福島で、これはさすがに
血統から人気にならなかったが、栗東の安達厩舎というのもあってか、一応の狙いがあるという感じで、関東のトップである戸崎起用で、勝負を懸けつつ、明快な課題の抽出をベテランの騎乗ではっきりさせようと思惑が透けて見えた。
ところが、飛び出していった若々しすぎるリトルジャイアンツ<このデビュー戦は436kg>が差し馬のようなフォームでスロー逃げを決め打つ、伏兵ならではの作戦を決めかけたところで、じっくり前を捉える差しの型を一旦仕込む常道の中距離戦法に当てはめながら、自在性を証明する理想の三分三厘仕掛けを普通通りにしてみせると、あっさり、35秒台の上がりで粘り込むリトルジャイアンツを差し切ったのである。
思えば、もっと正攻法に近かったが、坂の手間のスパートをかける真の勝負どころではエース・クロワデュノールと同格だったジェットマグナムは、そこからの決め手で差をつけられたが、もっと巧みにインを抜け出した松山騎手のジョバンニとは、上がりの差が1秒以上も開いたのに、休み明けで道中も動きのある厳しい展開の割には、一旦は抵抗した分失速したものの、大差はつかなかった。
差しの手に出ざるを得なくなったとはいえ、収穫十分のアスクシュタインとはハナの差敗れただけ。
ある意味、思った通りに正攻法でかましていくような、底力勝負こそ歓迎の伏兵になろうとしているわけだが、いくらか余裕残しに思われた芙蓉Sから、寒くなってきた分だけ増えたようなホープフルSは、いずれも完調ではなかった可能性があり、秋にあまり使っていないからこそ、再度軌道に乗せるこうした2月のG3にはぴったりのローテーションに思える。
共同通信杯では、こういうタイプの馬を買うよりは、単純に、G1で結果を出した好走馬を狙った方が得策とされるが、大昔の関西馬の方がずっと弱かった時代のきさらぎ賞のように、伏兵生産の拠点のようなキャラに戻りかけているから、ようやくホームで初めて走ることになる、旅を半ば強制的に組み込まれたジェットマグナムのタフさが、中身がまだ伴わない状態でまるで不思議のないその他の青二才に、圧倒的な差をつける根拠を、今はいくらでも示せる立場を、あまり支持が集まらないと思われる今回こそ、再度その単純能力そのもので評価されるべき存在として、敢然と本命に支持したい。
タフなファイタータイプながら、杉原誠人騎手と小倉で同着優勝のインタビューでみんなと一緒に楽しい時間を演出するような振る舞いでもかわるように、東西問わずに、乗り役として絶大なる信頼を、長い時間をかけて、怪我をするなどの空白もしっかり成長の期間に変え、今まさに、同期の中でも目立つ存在になった丹内騎手は、騎手課程の同期で図抜けた存在とされた津村騎手と、やけに気が合ったように、イチャイチャしているように見えたという藤岡佑介報告と川田証言から、ずっとローカルで乗っていたことも含めて、つい最近まで、ある意味では垢抜けないままであったのかもしれないが、ジェットマグナムの騎乗依頼から、いきなりの1番人気支持だったように、多くのファンも、少なくとも右回り平坦のローカルで欠かせない存在となったことは事実だが、それで早くから結果を残した意味は大きい。
津村騎手も思い返せば、G1が行われる週に福島や新潟などをホームに戦う第3場の騎手という立場に甘んじていることに、虚しい気持ちを覚えた数年前の決意を、衝撃のG1戴冠・津村だからこそのテンハッピーローズの才能開花を天下に知らしめ、気づけば、思わず笑ってしまうほど強気に持ったデルマーで、BCマイルを勝ちそうなところまで持ち込んでいた。
頭もスマートで人当たりのいい佑介騎手は、早くからそうなっていく変化の端緒を自慢のコミュニケーション術で見抜いて、一緒に一喜一憂する本質を隠そうとはしないが、リバティアイランドの走りに素直な感情を表し、ファンの感動を呼んだ頃には、その主戦である川田騎手も頼れる、自慢の同期たちの奮闘に、人一倍の力を込めて、心から応援しているということを盟友の藤岡佑介騎手を介し(笑)、 今こそ活躍すべき時期である障害でレーディング争いをする上野翔騎手などを含めた同期らに、エールを送っているという。
数から質に変わっていかざるを得ないデビュー20年目以降の騎手は、高度な技術の研鑽と同時に、自身の体力と折り合いをつけながら、明確なアドヴァイスをする役割が自然と求められる過程で、他の大勢の騎手たちと同様、怪我のリスクも抱える中で、その空白の時間で自分の立ち位置を失うと、もう戻れなくなってしまう怖さを若手以上に抱える。
単純なトーナメントを最初の10年で戦い終え、勝ち残った先で自分の武器を得た時、その種類は多いに越したことはない。
俺も津村に続きたい。
その思いが結実したとき、クラシック候補のジェットマグナムの才能も開花する。
ほんの少し前までは、G1級に乗ると頼りなかったものが、コガネノソラをピンポイントのクイーンS騎乗で勝たせると<今や、マイネル、コスモの主戦級になろうとしている>、それが出てきた小倉牝馬Sでは、もう少し乗り難しいところのあるフェアエールングを、あの大接戦ゴールで何とか勝ち切らせて見せた丹内祐次は、確実に、大物獲りの準備を着々と進めているように感じる。
僅差3着のコガネノソラは、その後怪我をしてしまった。
人気の川田将雅・クイーンズウォークを戦略的に負かし、コガネノソラをお手馬にしていては届かない次のステージを探り始める楽しい時間を手に入れたあたり、今の丹内騎手には勝ち運がある。
再び、川田・今回はショウヘイ を負かした時、皆の見る目が明らかに変わる。
ドスローの
目黒記念をウインキートス共に制した以外、主要4場での芝重賞制覇の記録がない丹内騎手だからこそ、この一戦を勝ち切る価値は、今後の立ち位置なども含め、人馬共に大きなものがある。
色々な意味で、勝ちたいレースになる。