全く関係ない流れのようで、かつてというか、数年前のホープフルSでも、コントレイルの次の次の年に勝ったキラーアビリティが、同じディープ産駒であるというだけでなく、牝祖に基礎繁殖牝馬として多大なる貢献をしてきたラトロワンヌの末裔ということで、もうひとつの括りを持っていたことでも、キラーアビリティは現役中ながら、希望を捨てるなと励ますこともできる背景を持つ。
父はエピファネイアというナグルファルは、牝馬ばかりが活躍してきた中で、その先頭を走った無敗牝馬三冠・デアリングタクトの杉山晴紀厩舎ということも、ひとつの因縁があると同時に、昨年のダービー馬で、旅をさせることで自力強化を図るドバイ遠征に挑戦するダノンデサイルと同じように、米三冠馬・シアトルスルーの濃くはないクロスを抱える。
ストームキャットは入っていないが、代を入れ替えるように、母父にダンチヒ系のベラミーロードが入り、これがディープだと底力の補強に役立たない印象に止まるが、少し足らない父のスピードを補うにちょうどいい、スピード型のノーザンダンサー系で、芝が比較的得意なチーフズクラウンのラインということでも、いかにも本流のクラシック路線に繋がる一戦で買いたくなる構成となっている。
父が無残に敗れたレース<福永騎手が騎乗停止だった影響大>としても知られ、クラシックホースを4頭出しておきながら、まるでここに縁がないというのは偶然であろうとも思い、ここは逆張り。
十分に買える下地を持った、社台ファーム的解釈でサンデークロスを避けた配合から、鬼ツヨのクロワデュノールに同じく3戦3勝で挑む、コントレイル×サリオスの5年前の決戦のような対戦構図を作るべく、表玄関から堂々登場の対抗馬になってもらいたいという願いを込め、この推し材料を紹介してみた。
弥生賞ディープインパクト記念2025- レース展開と最終予想
続開催のスタート直後、秋の京都2週目の新馬を勝って、ちょうど2か月後の変則京都の12月に行われたエリカ賞を圧勝のナグルファルは、1000Mの通過から、自身の上がり、そもそものレースセンスというか、序盤からいい並びの先行態勢で押し切りを図ったなどの特長で、この京都2000Mでの結果が、勝ちタイム2分0秒台中盤でぴたりと並ぶというあたり、荒れ馬場でも似たような好タイムで、そちらの方が良かったという点でも、いかにもエピファネイアのパワーを受け継いでいるといった印象。
気難しいという点で、その危ない側面がそのまま産駒にも伝わる傾向から、モーリスほどではないにせよ、乗り手を選ぶ傾向がある中で、初戦が川田騎手、前走のエリカ賞が翌日の香港国際競走に向けた準備等で、特別戦の騎乗をしなかった川田騎手の代わりに、坂井瑠星騎手で結果を出した非凡さなども含めて、ここでも十二分に期待できる好素材であることを皆が理解する。
朝日杯が異様なスローで、勝ったアドマイヤズームにとっても、変に前につけられたことで序盤は折り合いに苦労したほどのレースで、見事にずっこけたような後手から巻き返したミュージアルマイルは、クリスチャン・デムーロ騎手の好騎乗と称えられつつ、意外なほど、本質的な能力の大まかな部分は出してしまった印象を受ける。
スロー必至のワンターンマイル戦、その中で瞬発力に現れる、見た目と実測データが示す結果というのは、正しく、クラシックレベルの才能か否かの問いに、ほぼ確実な線でランク付けを出来るだけのものがある。
アドマイヤズームにつけられた着差は、そのまま、マイルという距離での実力である可能性だけに止まらず、菊花賞を除いた、大半のレースの能力指標をしっかりと反映していた可能性を筆者は支持する。
幸騎手がどうこうではなく、クロワデュノールと比して、この馬が天下のトライアルである弥生賞<歴史的な視点からも、敢えて、こう言いたい>を制したところで、アップセットを期待することは難しいのではないのか。
あくまでも、本命の対抗に止まらず、大逆転を期待する正統派を求め、時計のレベルに内容がついてきている雰囲気がまだない、反動だけが気になるヴィンセンシオではなく、このナグルファルを全面に推してみたい。
このレースは、トゥザワールドと無敗馬のダノンプレミアムらで制したという2勝に止まる川田騎手。
ただ、皐月賞制覇のきっかけをここで距離に目途をつけたことで、確実な線にまで持ち込んだキャプテントゥーレで、今の立場を作る大きな一歩を記した騎手・川田将雅にとって、決して、苦手な類のレースではない。
昨年も期待馬のシンエンペラーで、コスモキュランダとの似たキャラ同士の争いに敗れたものの、正統派という点で、海外で2度の高額賞金レース好走の実績に加え、ダービーでひどい揉まれ方をしながら3着に上がってきたのは、ここで無理をしなかったことも要因に思える。
先約があったからこそ、ピンポイント参戦だったが、間もなくG1というターゲットを捉え切れそうな彼の成長に、一躍担ったことは間違いない。
ところで、エピファネイアといえば、一度だけ、2014年の有馬記念で騎乗したことのある川田騎手。
若手という括りから外れた頃、凱旋門賞で相応の時間、1番人気に推されていたハープスター<ジャパニーズオークスで負けていたのだが…>での経験も糧にして、いよいよ、自身が本格化を果たす、ダービー制覇前夜の時代<2016年にこのレースを制したマカヒキに、皐月賞、ダービー2戦のみ騎乗の確約を得て、2、1着とした見事なクラシックでダービージョッキーとなったのは、見事というより他ない>、スローの先行で、最後は歴戦も猛者たちに呑み込まれた5着によって、昨年の皐月賞3着だったジャンタルマンタルを除くと、中山であまり狙えないという印象が少し先行するきっかけを生んだのが、ナグルファルの父と本当に邂逅を言うべきもので、また刹那の時間の接触に過ぎなかった、わずかな接点だが、ここで活かせる十分な経験値にもなってくる。
少し下だが、だいたい同世代のビュイック騎手が、自身の勝つ前年に、やや失態にも近い折り合いを欠く事態を招いたことを、期待のクラシック候補としてみていただろう川田騎手が、まさか、最後から2番目のレースで騎乗することになるとは、誰も想像していなかったのだが、結果は、似たような負け方。
最後までうまく乗れた感触は得られず、神戸新聞杯と菊花賞だけは胸を張っていた福永先輩<繋がりの強い両者、緩い感じながら、先輩の最初の弟子であり、後輩の最後の師匠といった関係性>が、今でも消化しきれない何かを抱えたほど危険な側面を持ったエピファネイアに対し、意外と、似たような感覚を持っていることを、筆者は想像する。
有り体に評するなら、人との折り合いが極めて困難なタイプで、同時代に活躍したゴールドシップ以上に、自尊心を傷つけられることに嫌悪感を示した才能だったと思う。
故に、ビュイックではダメだったが、ジャスタウェイに乗ることで自然と乗り替わりとなったジャパンCで、エピファネイアに似たような性格のスミヨンが乗ったら、あっさりと突き抜けて見せたのである。
気まぐれなどではない。
緊張感がプラスに作用する、変わった特性のある一流馬ならではの隠しきれない一面。
産駒の傾向は多様などではなく、クラシックど真ん中で躍進のエフフォーリアや前述のデアリングタクトのようなタイプこそ本流ながら、定番であるサンデーサイレンスの4×3を持っていながら、デュランダル肌のブローザホーンは個性派の京都&道悪巧者であり、異様なローテで我が道を進むダノンデサイルは、正統派とは言い難い馬にこそ、ベストコミュニケーションを取れる横山典弘騎手の新伝説誕生に登場するダービー馬と、中距離型の中でも、キャラクターが色々あったところで、父がそうであったように、基本距離のクラシックディスタンスで結果を求めるべき才能にのみ、その血を継承する権利が与えられてきたようなところは、
血統的な狙いがハマるとするより、エピファネイアの種牡馬としての才能であろうと思う。
サンデーのクロスはなくとも、味のある決め手が引き出せる要素に、北米のスピード系を取り込むという独自スタンスを取った社台ファームは、ノーザンファーム産のクロワデュノールに、昨年で言えば、ジャスティンミラノやアーバンシックに伏兵のダノンデサイルや2歳王者のジャンタルマンタルをあてがった結果、一旦、本流から外れた時にアスコリピチェーノをNHKマイルCで完封する構図を描く2歳王者の復権を演出することに成功して、ようやく、古い表現なら、あの社台の勝負服の勢いが戻ってきたとできる反面、このレース、ダンスインザダークで29年前に勝ってから、ただの一度も、社台ファーム産馬は数度制したが、社台レースホースは勝っていないのは、何とかしておきたい。
何も景気づけに、昨年のダービーを勝ったわけではないが、兄弟間の軋轢など何もないにしても、岡田兄弟のような一時的な格差の解消を一気に行うきっかけを社台ファーム産、社台レースホース所有だったデアリングハートの孫・タクトで叶えた牧雄氏が、鬼籍に入った直後に、今度は岡田繫幸氏が作り上げたマイネル冠号のクラブ・ラフィアン<無論、在りし日の若き繫幸氏がアメリカで発見したダイヤの原石ということでも有名>の所有するユーバーレーベンが翌年のオークスを制するなど、尋常な繋がり方ではない。
ノーザンファームのソダシが人気になり、対抗馬にはアカイトリノムスメという三冠アパパネの娘がいたレースでもあった。
ノーザンファームの馬が強いからこそ、エピファネイア産駒のテンハッピーローズやダノンデサイルが輝くという構図。
ミュージアルマイルが消えることはないにせよ、いかがわしい邪推をさせてしまうような穴埋めの補填に、当然、エリキングでの皐月賞参戦が既定路線の川田騎手もまた、専任の騎乗者ではないだろうが、常に、手駒を複数用意できるほどの選択肢が、トップクラスの騎手には求められる立場上、十分に保険になるナグルファルを3着以内に、筆者の求めは1着ではあるが(笑)、 複雑な解決法を常に要求される側になった川田騎手にとって、メリット十分のディープ記念制覇は、実際問題、昨年よりは本番でのチャンスが少ない力関係からも、ある程度の見込みをもって、確実な勝ち筋でしっかりとした結果を残すということでも、陣営だけでなく、やはり、自身のために大きな価値をもたらす一生になるような気がする。
クレイジーボーイそのものだったドゥラメンテの娘を手駒に抱えているなら、別タイプでも、厄介な部分を抱えるエピファネイアの牡馬に戸惑うことはあまりないだろう。
走る馬の気性を理解しているからこそ、あの桜花賞の諦念にも似た後方待機が、勝利に繋がった説明できる。
十分に、ナグルファルにはそのレベルのパフォーマンスを期待できる。
勝たないと、まず、クロワデュノールに相手にもされないだろう。