ステイゴールドの遺産
アジアの中とはいえ、異国での競馬で青服のデットーリを見ると急に活力が漲ってきて、今まで使ったことのない末脚を使えるようになった。
お陰で、種牡馬入りにもGⅠ勝ちの箔もついて、ハッピーエンドを迎えたのがステイゴールド。
中には、クラシックでも底力を発揮する馬も出てきたりして、名種牡馬のまま天に召されたのは、つい最近のこと。
今年のような、最強馬対猛者という熱い対戦構図では、ステイゴールド産駒は無類の勝負強さを見せた。
その活躍を振り返ると、宝塚記念の傾向と御用達種牡馬の産駒たちに個性の違いも見えてきた。
サインあり
ドリームジャーニー
ナカヤマフェスタ
産経大阪杯の返り討ちを成した前者に、凡走なしの東京で突如目覚め、同世代のクイーンを打ち負かした後者。
いかにも、宝塚記念であった。
秋にも大いに見せ場を作り、双方、ブエナビスタという共通の敵を屈服させたことにより、その名を高めた。
もっと強い敵、他の馬にも走りやすい条件では脆かったが、自分の庭を作ってしまう強みがあったから、相手の良さを消せるだけの才能は、間違がいなくあったのである。
故に、燃え尽きやすい。
大いに健闘した秋の大勝負の後は、ただの馬になってしまった。
サインなし
オルフェーヴル
ゴールドシップ
2010年代の名馬2頭。言わずもがな、ステイゴールド産駒の代表馬である。
故に、掴みにくかった。
共に、春の天皇賞を一つの目標としておきながら、凄まじいまでの負けっぷりで評価が一変。
信用ならざる者代表格とされたステイゴールドそのままの評価を、この宝塚記念で受け、見事手のひら返しの裏切るものを切り捨てる快走を見せた。
「しまいにはありがとうと言わせてしまう魅力」
怪我をするほど自分を追い込むことをしない彼らは、その振れ幅の大きな走りで、我々を常に裏切ってきた。
でも、裏切らなかった人には優しい彼らは、最後だけは期待に応えて、らしい競馬で締めくくってくれた。
故に、ありがとう。
優劣を決めるレースというより、捨て身の勝負が決まりやすいレース。
波乱の芽は今年もある。しかし、本物であれば、何とでもなるのも宝塚記念である。
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