その後に、ダービー馬のレイデオロの仔であるサンライズアースは入ったかと思えば、この馬の後塵を拝したのが、父と同期でダービーで惜しくも敗れたスワーヴリチャード産駒のレガレイラとアーバンシックら、同血とできるディープインパクトファミリーの一団
レイデオロの母母は、言わずと知れた、三冠馬・ディープインパクトの半姉であるレディブロンドだから、前の方では、皐月賞勝ちのジャスティンミラノだけが孤軍奮闘状態だったというわけだ。
今回はディープ×ストームキャットという配合であるリアルスティールやキズナの産駒が同期のライバルとなり、ワープスピードは母父にディープの血を持つが、大胆な仕掛けといくらか時計が掛かる馬場、あるいは上がりの脚が極端に速いものを求められないこうした条件に適したレイデオロの産駒だから、ヌレイエフの配置が5×3と、アーモンドアイと同じキングカメハメハの孫という構造にも期待し、お馴染みのハルーワソングの一族という点でも、従兄のシュヴァルグラン級の活躍にここでは期待。
さすがのデムーロ騎手<兄貴の方>でも、新馬でかつ、将来有望の中長距離型を目指す上で、わざわざ、京都の2000M戦を選んで走らせたのに、逃げるというのは、8頭立ての7番人気とかなりの低評価と言っても、540kg近い馬体重。
絞れなかったというか、作り上げる過程で、クラシックを目指すにはここらあたりでもう走らせておかないと、後に続けて使うことが難しくなってしまうという状況を踏まえ、菊花賞の日に下したのであろうが、望外の逃げ切り勝ち。
しかし、この時に妙な癖がついてしまったことで、メイショウタバルが作る猛ペースに対応できなかっただけでなく、そもそも、自分から動けるようなところにつけられない死角を皐月賞で露呈し、ダービーも出たが、後ろからの発進。
ただ、ここで捲るのが得意なタイプというか、後方待機の馬で大一番を数多く制してきた、ここからスイッチされた池添騎手と、ここで勝負の3コーナー手前の強気の動きで、前の力の足らなかった面々を振るい落とすことに成功。
阪神大賞典2025 予想 - レース展開と最終予想
自分は速い上がりを使えないから、歴代屈指の皐月賞馬であるジャスティンミラノは当然のこと、後々、距離適性の通りであったことを示すダノンデサイルや世界レベルの活躍が今後期待されるシンエンペラーなどを前にやってしまったのに、案外しぶとく、しかし、それでいて、キレる後のグランプリフィリーのレガレイラには、映像的には交わされているようにも感じたが、しっかりとハナの差先着した。
それを思うと、前走は同じ東京2400だったのに、条件戦で2着はだらしないのだが…。
秋に使えなかったことで、日経新春杯を選択するまではよかったが、春に使ったことで減った分だけ元の戻した状態は、決して、プラスの要素ではなかったのだろう。
春までは鈍かったそれをフォローしようと、ここはともかく、以降に繋がる競馬に持っていこうとしたところで、メイショウタバルがまた逃走して、場を荒らしたにも拘らず、パワー満点の大型馬らしい行きっぷりがあまりに豪快に過ぎて、本来は前に行けないというか、序盤の消耗は最小限で行きたいタイプなのに、ほぼ、エネルギーの大半を使い果たした直線では、下がる一方であった。
掛かる馬という印象はなかったが、そうした背景を新馬戦の逃げ切りに求めた時、妙なサインかもしれないが、これも本格化の合図なのだろう。
理由もなく、特定の一頭のためだけに重賞のない日に、わざわざ東京に来る理由もなかった早春Sで、池添騎手ではなく菅原明良騎手にスイッチしたが、やはり、少し掛かった。
掛かったから負けたのだが、ダービーほど走っていない。
何だが、勝ち馬を含め、差し切れなかった後方で悶々としていた連中の巻き返しに対し、ダノンデサイルは程々にやっているが、このサンライズアースは完全に置いて行かれかけている。
しかし、考えようによっては、調子云々というよりも、体を作りこめていない段階で、まだまだドタドタしたような走り方のままであることを映像で確認しているのに、より長い距離で押さえるのはリスキーなのだが、だからこそ、騎手が重要なのだ。
池添謙一が掛かると思っていたのなら、最初から折り合いを重視したアシストをしているはず。
むしろ、その逆だったのだから、好転しているとするべきだろう。
本来、これならば、ダービーよりペースが速かった早春Sで、もっと自己ベスト更新をしておくべきだったとしたいのに、それができなかったことに不満があるのだが、掛かると騎手が不安に思うと、やはり思った以上に行く気をコントロールできなくなってしまう。
距離相応の振る舞いができない、若々しすぎる少年のままであるサンライズアースに、しっかりと折り合いをつけるテクニックを備えた若武者・菅原明良とて、特殊なキャラが過ぎたというだけのことだろう。
掛かったが、交わされたのは1頭だけ。
コーナーが増える今回は、騎手の腕も問われるが、オルフェーヴルのようなことになれば、とっとと前で勝負する方に切り替えればいいだけ。
自分でそうしたのだから、そうなっていくことを望み、明らかにスピード型ではないことを確認しているのだから、堂々と振る舞うのみだろう。
おっかなびっくり、差し馬にそれらしい振る舞いを求めることに固執しなくてもいいという貴重な経験があるベテランには、何とも乗り応えのある若馬である。
ただ、この鞍上。
若干、脚部不安を抱えているとのこと。
期待のルーキー・舟山クンの落馬だ何だと、雨馬場でもあったことで、先週はとんでもなく荒れたレースが多かった。
その中で、アクシデントに見舞われた池添謙一騎手が、日曜日の最終だけスイッチを申し出た。
かなりの伏兵であったということもあったのだろうが<小崎騎手に替わって15着>、芝で出戻り2戦うまくいかなかったあとのダートでの仕切り直し、騎手としては後輩である千葉直人調教師の管理馬でもあり、夏には暴力沙汰の不体裁が発覚してペナルティを受けた後、この開催で自信を取り戻すように1年ぶりの重賞制覇を果たしたばかりなのだから、無下にするわけもないので、ベテランだからこそ気にはなる。
ショウナンラプンタには気になる乗り替わりもあるが、こちらの御仁も、1年と少し前は、このクラスならこう言ってもいいだろうが、少々若馬に隙のある態度を取ったその刹那、不意打ちを食らって、長めの休養を余儀なくされた。
集中力を必要とするタイプに騎乗する際は、ある程度のキャリア、名声を手に入れたトップクラスの実力者ほど、よく騎乗数を絞ることがある。
そのクラスになってきた池添騎手が、日曜日の阪神でそういうことをしてきたら、是非ともこのサンライズアースに注目しておきたいところだろう。
思えば、彼と同じ1979年生まれのルメール騎手も、あの阪神での悲劇を起きなければ、昨春最大の事故と評されるようなドバイでの落馬負傷の被害が、春G1前半に大きな問題を引き起こすという意味で拡大。
自身は早めの復帰となったが、川田騎手にプレッシャーをかけられまくったNHKマイルCでは、隔年ごとのペースで発生する不始末で、好勝負可能だった武豊騎手のボンドガールなどにかなりの迷惑をかけてしまったが、秋もそんなことがあったか…。
そんなルメール騎手に運命の時、自国でついに勝ち取れなかったダービーのタイトルを得たその瞬間に、信じきれたことが必然の勝利を引き寄せた<もしかすると、ダービー馬はスワーヴリチャードで、完璧に近いエスコトートをした四位元騎手がダービー3勝目となっていた可能性さえある>、あの神騎乗のレイデオロ、勝負の向こう流し進出が、今の立場を作ったとできる。
ややその辺りにも、これも必然的な若手の台頭で、簡単な道ではない部分が出てきたところで、レイデオロ産駒の初ダービー参戦の際、池添騎手がそれを再生するような仕掛けで、魅せたのである。
若手とやり合うなら、こういう馬上での駆け引きに限る。
魅せる男として、少し寒い時期までは冴えなかったそれが、何となく菊花賞を思い起こさせるフィリーズレビューで外々追撃の力の抜け出しだった鞍上、その勝ち運に願いを託したい。
スタミナはあるのだろうが、小回りだからこその仕掛けのタイミングへの配慮は欠かせない。
明らかに、先週のピコチャンブラックではないが、外から被されるとカッとする自分と似た(笑)、そんな性質が見受けられる。
行く手一本のタイプがいるはずもない条件であるから、ここ2走の感じだと、間違いなく先行態勢に入るはずだが、その予定調和を壊すタイプのキャラであるサンライズアースは、そっちではない時の方が、むしろ、マイペースに進行で自分らしく走れる可能性がより出てくる。
未だ勝利なしの牝馬にも厳しい舞台として知られるが、中京でやたらと強かったゴールデンスナップの目下の充実に屈する可能性は十分に想定内も、レースの歴史から見て、それならば、グランプリホースであるブローザホーンの方が気になるが、距離が合う感じはないし、京都と阪神では少し評価を変えたいタイプ。
また、想定ライバルに挙がる、心底愛する大先輩である武豊騎手のショウナンラプンタ、福永初ダービー制覇の裏で人気馬の良さを引き出し切れなかったその片棒を担わされた川田騎手のヴェローチェエラに、捲り屋としての確実性でリーディング争いに加わっている横山和生騎手に手が戻るワープスピードの動きの読みなど、長距離戦らしい読みの精度を、一定以上のレベルの騎手の思考に合わせて動けることは、意外なほど、勝ちパターンにハメこめた時の成功率も高くなりそうな感じもして、前に行けること自体が有利。
知られるように、スタミナを徐々に絞り出すように走るレースで、前受けは当然厳しいから、誰も序盤から先頭で勝負したくないとするのが当たり前なのだが、グランプリ春秋制覇のメジロパーマーは、数少ない逃げ切り勝ちを決めている。
関東馬も牝馬も逃げ切りも、勝利からほど遠い阪神大賞典で、これが最も近くに起こった珍事。
宝塚記念を39年ぶりに牝馬・スイープトウショウで制した池添謙一が、メイショウベルーガで人気を裏切ってから15年。
このミスターグランプリは、小回りのややこしいテーマを問われる舞台でヘグることの方が珍しい。
と、ここは信じたい。