2018年有馬記念 回顧

レイデオロは素晴らしい出来で、まずヘグることはないという調子に窺えた。

引退レースのサトノダイヤモンドも、本来の姿を取り戻したかのように、いつものらしいオーラが戻っていた。

しかし…。

雨は心配ではあったが、プラス4kg以上にムチムチに仕上がった?ブラストワンピースは、その次に大きな馬が514kgのオジュウチョウサンという状況で、ただ一頭、ここ秋2戦の530kgにプラスして、メンバー中断トツでドでかい馬であった。

ところが、16頭の中で最も合理的にキセキの作る流れに乗り、長距離戦としては理想的な2列か3列の縦隊の外の中団追走。

ダービーは位置はとれたが、絶好調のエポカドーロの巧みなレースに最も翻弄され、勝ち馬のワグネリアンに一番いじめられる切ない一戦になってしまった。

快走した新潟記念のことは、あまり語るまでもなく、有馬記念を制した馬だから…、で整理できる内容と言えるわけだが、菊花賞も別に、流れに乗れていなかったわけではないし、彼の競馬はできていた。

ところが、えげつないレベルのスローペースを、本来逃げるとされたジュネラーネウーノが作り出してしまったがために、正攻法の外目追走が裏目に、4角で多く外へ振られてしまい、スムーズに立ち回った3頭にキレ味でも敗れてしまった。

詰まるところ、いいレースが結果に繋がらなかっただけというのが、正直なところ。

予想の段階で書き上げた自己満足感満載のGⅠ以外無敗馬の中でも、かなり上位につけられる存在に思えていた。ああ、キタサンブラックの15年、4戦4勝<7戦5勝>は抜け落ちていた。

兎にも角にも、スムーズに運べさえすれば。

敗軍の騎士は、ハービンジャーの馬場だったと語ったとされる。

レイデオロは出来も良ければ、力勝負のグランプリは期待した通りの状況に思っていただろう。

雨も予報があり、突然の道悪ではない。

特に苦手にしているわけではない、そういう厳しい馬場状態は、新馬戦で経験済みのダービー馬改めエンペラーズカップウイナーだから、キセキには中途半端で、騙しが利かないこの馬場は、返って、不利に働いたはずだ。

厳しい展開を自ら望むように選択したところのあるキセキと川田騎手は、逃げての粘り込みで5着ならば、何も後ろ指差されることはない。

惜しむらくは、年長タイトルホルダーのミッキーロケットやシュヴァルグランの(外)コンビでの躍進を防げればよかったのだが、誰よりも頑張った人馬に、そんなこと言う方が相当にヤバい。

あと、ちょっと有馬っぽい感じを受けたのが、久々にサンデーorロベルトなどのヘイルトゥリーズン系ではない馬がテイエムオペラオー以来18年振りに制した時に、ディープインパクトのクラシックホースが意地を見せるわけでもなく、老兵は消えゆくのみという感じで、掲示板外に敗れ去ったことだろう。

この手の馬場は得意ではないマカヒキ、サトノダイヤモンドらが、いい頃の出来にあれば、もっと違うレースができたという見立ては、筋違いではない。

しかし、530kg余りの馬体が、まだ甘い作りのように見え、幼さを残していることの何よりの証明であったブラストワンピースは、東京の稍重の経験はあっても、客観的に見て重よりに映った稍重馬場が、見た目のパワーと比例してこなせたとは思わない。

キセキが勝った時の菊花賞のような馬場は特殊過ぎても、そうでない馬場でディープが出番をモノにできないのは何故かと考えたのだが、

「キングカメハメハの年」

を象徴する結果とするのが、道理に合った見解のように思う。

褒めることばかりのブラストワンピースに、冷静さが武器となり「牝馬の池添」をさらにバージョンアップさせることに成功した鞍上も然り。

こうした馬場はキングカメハメハの庭であり、サンデーが母父に入ったアーモンドアイはあの結果である。

ロードカナロア、ルーラーシップ、母父キングカメハメハ。

直仔のミッキーロケット含め、シュヴァルグラン以外はキングカメハメハばかり。

シュヴァルグランも母父のミスプロ直仔・マキャヴェリアンの影響を色濃く受けた晩成型であり、ネイティヴダンサー直系の孫であるオグリキャップが活躍した境目の時代から、先祖帰りではなく、明らかなレベルアップが系統全体に見られたことが、この有馬記念の大きな意義であると、改めて強調しておきたい。