有馬記念2024の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

有馬記念2024の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切りの予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第69回有馬記念(G1)
グレード重賞(G1)
日程2024年12月22日(日)
発走時間15時40分
開催場所中山競馬場
距離芝2,500m
コース右回り
賞金5億円
レコードタイム2:29.5

有馬記念2024予想-予想オッズ/出馬表(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

有馬記念2024の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11ダノンデサイル横山典弘牡3564.22栗東・CW・良(横山典)
6F 82.5-67.0-52.1-37.1-11.1(馬なり)
栗東・CW・良(調教師)
6F 83.2-67.1-52.3-37.6-11.6(馬なり)
-2ドウデュース武豊牡558-取り消し栗東・CW・良(武豊)
7F 96.7-65.3-50.3-35.5-11.0(馬なり)
栗東・ポリ・良(助手)
6F 82.6-65.4-50.5-37.4-11.5(馬なり)
23アーバンシックC.ルメール牡3562.91美浦・ウッド・良(石神深)
6F 80.7-65.4-51.5-37.6-12.0(G前仕掛け)
美浦・ウッド・良(ルメール)
6F 83.7-67.2-52.2-37.6-11.6(馬なり)
24ブローザホーン菅原明良牝55829.111栗東・坂路・良(助手)
800m 56.8-41.4-26.4-13.1(馬なり)
栗東・坂路・良(菅原明)
800m 55.9-41.0-26.3-12.9(馬なり)
35ベラジオオペラ横山和生牡4588.13栗東・CW・良(横山和)
7F 95.6-65.0-50.7-35.9-11.2(一杯)
栗東・CW・良(調教師)
7F 99.3-68.1-53.0-37.3-11.3(馬なり)
36ローシャムパークT.マーカンド牡55819.68美浦・ウッド・良(マーカンド)
7F 94.3-65.1-50.6-36.2-11.5(馬なり)
美浦・ウッド・良(助手)
6F 83.9-67.4-52.6-37.7-11.4(馬なり)
47スターズオンアース川田将雅牝55613.66美浦・ウッド・良(杉原誠)
6F 82.4-66.3-52.2-37.5-11.9(馬なり)
美浦・ウッド・良(川田将)
6F 81.9-66.3-51.5-37.4-11.8(馬なり)
48レガレイラ戸崎圭太牝3 5410.84美浦・ウッド・良(助手)
7F 96.1-66.3-51.6-37.6-11.7(強め)
美浦・ウッド・良(戸崎圭)
6F 84.6-68.6-53.6-38.9-11.4(馬なり)
59ディープボンド幸英明牡75834.512栗東・CW・良(幸英明)
6F 81.6-65.8-51.2-36.6-11.3(稍一杯)
栗東・CW・良(幸英明)
6F 82.3-67.4-52.6-37.5-11.5(一杯)
510プログノーシス三浦皇成牡65815.57栗東・CW・良(三浦皇)
6F 80.6-66.0-51.7-37.0-11.6(馬なり)
栗東・CW・良(三浦皇)
5F 68.9-51.9-35.8-11.1(一杯)
611ジャスティンパレス坂井瑠星牡55811.85栗東・坂路・良(坂井瑠)
800m 54.6-40.2-25.6-12.3(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.7-39.6-25.6-12.5(馬なり
612シュトルーヴェ鮫島克駿セ55878.514美浦・ウッド・良(助手)
6F 84.0-67.0-52.1-37.3-12.0(馬なり)
美浦・ウッド・良(助手)
5F 66.1-51.2-36.4-11.3(馬なり)
713スタニングローズR.ムーア牝55624.39栗東・坂路・良(助手)
800m 53.2-38.6-25.0-11.9(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 55.1-39.4-25.1-12.0(馬なり)
714ダノンベルーガ松山弘平牡55886.415美浦・ウッド・良(助手)
6F 84.3-67.4-52.4-37.4-12.0(馬なり)
美浦・ウッド・良(助手)
6F 82.9-65.9-51.0-36.3-11.3(強め)
815ハヤヤッコ吉田豊牡8 5835.613美浦・ウッド・良(助手)
6F 80.1-64.4-50.1-36.2-11.7(強め)
美浦・ウッド・良(吉田豊)
6F 82.8-66.0-51.9-37.9-12.6(強め)
816シャフリヤールC.デムーロ牡65828.010栗東・CW・良(西塚洸)
6F 83.0-67.2-51.8-36.4-11.4(一杯)
栗東・芝・良(西塚洸)
5F 63.0-48.1-35.4-11.1(馬なり)
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬2回1回2回16回9.5%14.3% 23.8%
先行馬12回7回7回55回14.8%23.5%32.1%
差し馬5回10回7回92回4.4%13.2%19.3%
追い込み馬1回2回4回87回1.1%3.2%7.4%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠3回3回1回29回8.3%16.7%19.4%
2枠2回3回2回30回5.4%13.5%18.9%
3枠4回4回2回28回10.5%21.1%26.3%
4枠2回3回5回30回5.0%12.5%25.0%
5枠5回3回3回28回12.8%20.5%28.2%
6枠2回1回1回35回5.0%7.5%12.5%
7枠1回1回1回34回2.5%5.0%15.0%
8枠1回2回2回36回2.5%7.5%10.0%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ハーツクライ6回3回7回45回9.8%14.8%26.2%
エピファネイア6回1回0回12回31.6%36.8%36.8%
ディープインパクト4回6回11回64回4.7%11.8%24.7%
ドゥラメンテ4回4回1回9回22.2%44.4%50.0%
ゴールドシップ3回3回0回34回7.5%15.0%15.0%
ルーラーシップ3回2回4回33回7.1%11.9% 21.4%
ジャスタウェイ2回2回1回9回14.3%28.6%35.7%
ネロ2回0回1回0回66.7%66.7%100.0%
トーセンラー2回0回0回3回40.0%40.0%40.0%
キングカメハメハ1回4回1回25回3.2%16.1%19.4%

有馬記念2024 - 過去10年のデータ傾向

武さん、とりあえず最後も頼みます

アーモンドアイと引退レースのゴールドシップに、ターゲットは間違っていなかったが、鞍上の技術に関する補正が不完全で兄を差し切れなかった武史騎手のジャスティンパレスが来なかったというのは、例年通りという表現は正しくないにしても、大方、そんな感じで決まる、有馬の流れという意味では、何も大昔から変化はない。
やたらとうまく乗る、ただでさえ超優良株であるルメール騎手が、それこそ、アーモンドアイくらいしか飛ばしていないので、これがかなり不自然な臨戦スケジュールであったことを思えば、ドウデュースはジャパンC創設後に生まれた秋三連戦の基本形に忠実というだけで、イレギュラーな存在ではない。
ただ、原則論で言ったら、キタサンブラックも同じような感じだったが、勝った年だけ秋G1オンリーの3戦という流れからも、普通は厳しい。 連外しのなかった馬が、歴史上、シンボリルドルフ、タマモクロス、スペシャルウィーク、テイエムオペラオー、ゼンノロブロイ、ブエナビスタのみ。 いるといえばいるのだが、意外と、秋天・JC連勝の馬は、スペシャルウィーク父娘<娘の4歳時のJCは完勝の内容も、スミヨンらしい不手際で降着>だけなので、三タテの2頭が有馬が秋4戦目とした時、それは厳しいと結論は出るのだが、当然、皆1番人気か、スペシャルウィークはローテが嫌われてグラスワンダーに譲っただけで、ひどい競馬にはならないはずだが…、これら全てが充実の4歳を示す記録なので、5歳馬は皆無。 だから、お願いしたのである。消すのも手だろう。

王道を誇示し続けられている唯一のホットライン・菊花賞組

王道というか、同じコーナー6つで、あとは何から何まで違うのだが、東京で瞬発力勝負を続けるよりは、ローテそのものが楽なので、11月開催の時代から変わらず、斤量利がフルで活かせる日本的采配<未だに、1月で斤量設定が横並びになると分かっていて、古馬優勢を理由に2kgのアドヴァンテージを3歳に与えてくれることが、結果に分かりやすい影響を及ぼしている>で、凱旋門賞と同じくらいに3歳馬が走るので、秋の天皇賞から連勝を決めたビッグネーム襲名の2頭は除いても、いくらか、王道クラシック転戦組は、様々な観点からも、有利だと言える。
ただ、別に強い馬でなければならないという縛りがないようでいて、皐月賞に関わる中山の実績だとか、その以降の長い距離での安定感は最低限必要。 メイショウタバルの過激な逃げが見られるかは運次第となっているが、その他G1勝ち馬は全て、中山で強烈な結果を残しているから、変な話、ドウデュースよりこちらが人気でも、本来は不思議ない。 内回りならば、恐らくは、アーバンシックとダノンデサイルが能力減退があり得ない全戦績、そのパフォーマンスを長い距離で見せてきた以上、鞍上が替わらない上に、自信を持っている名手が武豊潰しに躍起になっていると考えるだけでも、絶対に押さえたい2頭。 レガレイラも中山で崩れていない印象があり、皐月賞を普通の時計レベルに落とし込んだ時、途端にここで勝ち負けのイメージも湧いてきて、これらを消す理由はほとんどなくなった。

ジャパンC組のポイントは前走の結果というより、前々走からの繋がり

連対していた馬で来たのは、近年では、シュヴァルグランとキタサンブラックだけ。 いずれも春の天皇賞で複数回、それも連続で馬券内の活躍をしている、単純に適性で走った面もあるから、ドウデュースはここの部分の死角を大いに抱えているとできる。
昨年は自身が3着外しをしたことで、着順を入れ替えた上位組が、スライドしてやってきただけになったが、これも、ジャパンCのレベルが異常に高かったから。 そのレースレベルを見極めたファンが、余裕ローテのジャスティンパレスに流れて、多くのファンが天を仰いで、武豊を褒めちぎるという無様な負け方をしたのなら、元より、二番を期待するのは筋違いである。
一方で、前々走勝っていた馬は、キタサンブラックが連続して3度馬券内だったのみで、ジャパンC参戦に限り、その他は全て、3連続連対の記録はなく、前述のブエナビスタが最後。 有馬を勝った馬は、歴史的に見ても、春の天皇賞を勝っていたケースがほとんどで、ゼンノロブロイも横山典弘に翻弄された上での2着で価値は一定レベルあったとできる春天2着もある。 内容一変の馬が少ないとみれば、力差のあったJC組は、勝ち馬を着拾いする以外、意外と今年は出番がないのかもしれない。

別路線組で面白いのは…

何を隠そう、ルメール無双の有馬記念で、唯一に近いほどの大穴を開けてしまった時に勝ったのが、春のグランプリからムーニーバレーのコックスプレートを難なく突破し、終いには有馬を持っていったリスグラシュー。 近い存在になりそうなプログノーシスは、キャリアこそ、リスグラシューの半分くらいしかないが、それ以前に、一つ上でG1が未勝利。 自信を持って買えるわけがない。
ただ、ディープボンドも凱旋門賞でぐちゃぐちゃにされながら、持ち直しての2着があった。 筆者は激推ししていたからよく覚えているが、ああいう姿が、かつてのタップダンスシチーやオルフェーヴルなどと重なったのだ。 西海岸遠征組では、昨年のシャフリヤールは松山騎手がこれ以上はない決め打ちで惜しい5着。 ローシャムパークとの兼ね合いでどうなるか不明も、この方々、敢えて、人気が落ちるこうした特殊な舞台で絡むG1未勝利馬という枠で、本来は、プログノーシスと行きたいのだが、諸々、買い目が増えすぎることを嫌った筆者は、男の勝負に出るというどうでもいいスタンスで、スルーしたのである。
買っておいて損はないはずだ。 違う国の競馬を経験しただけで、中身が大きく変わることはある。 何となく、香港で威光を放つロマンチックウォリアーが、安田記念を経て、また元気になったようなレースぶりが、頭から離れない。 サウジC優勝をご所望のようだが、ここはフォーエバーヤングの動向如何で、全体の流れは大きく変わるか…。

有馬記念2024- 出走予定馬の血統/成績/タイム

日本競馬の基本形を進化させたうえで熟成も重ねた二人が、ここで崩れるのか否か

ダノンデサイルの血統

京都2歳S以来の本命であるからして、妙に緊張気配の筆者に追い打ちをかけるように、狙いの有馬の前に、菊花賞でひどい負け方をしたのは、ダービーの道中でこけて、トンビならぬユタカにダービータイトルをさらわれた父エピファネイアのそれが、順番通りに回ってきただけとも思えた。
父父のシンボリクリスエスは、当時はもう、外国産馬でも菊花賞に出られる時代になっていたのに、神戸新聞杯<外回りのない2000Mの時代>を圧勝して、中山の天皇賞に転じて、中身は完勝というところで、JC出負けを経て、ここで天下を獲った。 翌年も全く同じ秋の戦績で、ここはレコードでほぼ大差勝ちの大団円。 ある意味、無茶苦茶なところは父系の長所であると、ダービーで直系最大のテーマをクリアした孫のダノンデサイルが、その道を進んでいることを示したかのような、ダービーと菊花賞のコントラストであった。 ちなみに、父は4歳時に父のシンボリクリスエスが勝ちそびれたジャパンCを圧勝後、川田騎手となぜか逃げることになり、ジェンティルドンナ=戸崎圭太に引退のはなむけを手渡す羽目になった。 ダートも合わなかったが、父とも大分違う性分だった。
父のいい面と悪い面、祖父と同じようなキャラを受け継いだダノンデサイルは、中山で3戦して、皐月賞だけまともに走ったけどロゴタイプに完敗だったエピファネイアに対し、旧500万下突破の1勝から計4勝の中山であったシンボリクリスエスの良さを取り戻したような、京成杯での勝利で、いくらか進化をしている印象を持った。 ダービーの走破タイムで父とほぼ同じというダノンデサイルだが、京成杯の走破時計は、父がラジオNIKKEI杯から弥生賞にかけて一気に短縮した持ち時計を大きく更新した時以上に、時代が違う父父の頃より、評価価値ではずっと上の2分0秒台なのであって、ダービー馬・ロベルトと三冠のシアトルスルーの同時に掛かる配合ながら、ケンタッキーダービー快速レコードウインのノーザンダンサーが5代目以降のクロスであることで、今のロベルト系の底力そのものが、ダイレクトに出ている印象。
ナリタブライアンの1994年優勝時は、3着が同父系のライスシャワーで、シンボリクリスエス連覇に至る10度の有馬記念の内、実に、7度もロベルト系から勝ち馬が出ていた。 劇的連覇のグラスワンダーや、マヤノトップガンにシルクジャスティスなども…。 この強圧の中で唯一、特殊なブラッシンググルーム直系のビッグスターで胸のすくような圧勝劇を演じた横山典弘騎手が、ロベルト系で勝ち星を挙げると、異様な空気に包まれていた時代の中山らしさが蘇ってくる。
サンデーサイレンス系だと、2005年ハーツクライからのトレンドが途切れた、2015年のグラスワンダーの孫でスクリーンヒーロー産駒のゴールドアクターが勝利して以降、同系3連勝はなくなって、ノーザンダンサー系もブラッシンググルームまでもが来るようになった。 その時代に戻りつつあると踏まえた時、ハーツクライの連チャンを狙う手はなくなると、意固地になって、ドウデュースを買いたくない筆者のようなクソ人間どもは、こんな無理筋を通そうとするのである。

有馬記念2024 - レース展開と最終予想

横山典弘の騎手生活を彩る、極めて特殊なデータというか、その濃密な戦いを物語るに相応しい快記録が存在する。 恐らく、不滅の記録。
JRAだけでとんでもない数のG1レースを制してきた武豊には、当然のごとく、その大舞台での1番人気馬に乗る機会が、誰よりも多いことは、何も触れるまでもない話なのだが、全部が全部、自分の思い通りに事が運ぶわけではない。 最近なら、ドウデュースで1番人気のJRAG1というのは、皐月賞、宝塚記念という、いかにも適距離に思える大舞台で、見事に連を外している一方、それと同じ数人気に応えたG1勝利数にするべく、あのイクイノックスに頭数では並ぶことができる最後の大舞台で、そんな記録を作ろうと密かにしているのだが、この武豊人気負けG1のうち、これまで10回、横山典弘が制してきているのである。
あの緻密なユタカをもってしても、うまくいかないことはあるが、それを凌駕したことが一度や二度ではない。 ほぼ40年、プロの世界で様々な場面に立ち会い、フランキーと日本で再戦するは誰も思っていないところで、ユタカと二人でフィニッシュ<日本のG1では最後まで実現しないと思われる>という、胸アツの展開が繰り広げられる中、中京や中山で騎乗したノリは、数少ない乗り鞍の中で、勝ち星を一つ挙げていた。
勝ったり負けたりというより、ほとんど負ける中で、どれほど勝率で2割に迫ろうかと躍起になって、馬を動かすテクニックを極めようとしてきたが、もうそういうことで勝負をしようと思わない二人が、再び究極の勝負へと挑もうとしているのである。 都合、11度目のJRAG1における、武豊1番人気潰しに最も相応しいのが、あの34年前と同じ、3歳馬で挑む5歳引退レースの名馬を倒す、最初で最後のチャンスとなったこの一戦。 東京でなら、この展開で何度も強い馬が勝ってきたという歴史はあるが、有馬記念は必ずしもそうではないし、菊花賞馬が強いことがよく知られるように、3歳は斤量面からも、内面的にほぼ古馬になりかけているからこそ、相当に有利とされる。 そういう買い方で穴を拾ったファンは、長くやっていれば、ほぼ全員であろうとも断言できる。
1990年、その3歳馬だったライアンと元エース扱いに成り下がったオグリの一騎打ちに転じた有馬は、まだダービータイトルに飢える立場であった、現在夏の復帰に向けてメンテナンスに入った柴田善臣騎手のおじである政人騎手駆るホワイトストーンが、ジャパンCの内容から人気に推されていた。 前年はイナリワンで武豊騎手のスーパークリークをハナ差退けた、日本を代表する名手の一人。 盟友に福永洋一、宿命のライバルは岡部幸雄。 いちいち、周りのメンツが重厚だったから、やけにオジサンだったなと、ウイニングチケットで3年後のダービーを勝った後の映像を振り返ったふたりは、陰でこそこそ、余計なことを言っていたとも伝え聞く。 ヨシトミちゃんが若く見えることも多分に影響しているのだろうが、子供の考えそうなことでもある。
何とか、連戦連敗から奇跡的に立て直されたオグリキャップが、若き星であるメジロライアンやホワイトストーンらをねじ伏せたシーンは、周りの盛り上がりで、あの伝説のシーンを語る人ばかりで、内実、それほどのメンバーではなかったことは知られるところでも、登場騎手は重厚かつ老獪。 武豊騎手21歳9か月、横山典弘騎手もまだ23歳になる少し手前。 もう初老ジャパン入りの政人大先輩は、例によって渾身の手綱、鬼気迫る表情であったと思うが、その現場にいたひとりの横山は、今にして思えば、格の違いがあったということだね、とこの特殊な大舞台を振り返り、あくまでも人馬の力量の通り、正しい結末であったと、主催者発信の動画の中で語っている。
ローレルとマーベラスもあれば、逃げがぎこちないセイウンスカイと落鉄のエアグルーヴという何とも寂しい有馬があった。 前者には田原成貴が絡み、後者であるなら、的場・河内で決まったという結末。
戦ってきた相手が違うとなれば、年齢的には年下のランフランコ・デットーリ、半分日本人のような感じになっていったシンボリクリスエスを仕上げたオリビエ・ペリエなどは、好敵手に違いはないが、感心することの方がむしろ多かったのだろう。 フランキーも辞めそうになった時期はあったが、特殊なローテで、北米のタピットを連れて来ただけでも、大きな貢献である。
結局、昔話の中身の方が重厚なようで、今年の有馬記念は異常な好カード。 ハイレベルすぎて、皆、有馬記念のコース形態を忘れているようだが、心配無用、特殊なリズムで進むこのレースでは、中山適性そのものは不問。 ただし、巧者はほとんどいないだろう。
そんなところで、3歳馬はいずれも中山に実績があり、買いたい馬ほど、重いタイトルを持ち合わせる。 ダノンデサイルは京成杯を勝っているだけでは足りないが、そこでアーバンシックを倒し、ダービーでは皐月賞では戦えなかったレガレイラだけでなく、当時、間違いなく世代最強だったジャスティンミラノの二冠制覇を阻止して見せた。
それでいて、粗忽なところがあり、前走は距離も長く、また仕上がりも攻めすぎないという然るべき夏からの立ち上げを意識したところも多分に影響し、揉まれ弱い面を出すことで、今後の伸びしろが大きく変化することを予期した横山が、変な格好で馬込みを捌いて、下手に勝ちにいって、失敗することを防ぐように、バランスを保つことで重視して、直線まで控えていたが、意外と、最後は止まっていたように感じる。
ただ、リバティアイランドが香港である程度見せ場を作ったように、何もまだ壊れていないこの若い星は、いくらでも磨き直せる状態に置いてある。 伸びしろを大事にとっておくことの重要性や、その勝負所を理解しつくした名手には、そんな若い時代の成功の裏に、ひどい出来事や自らの判断ミスで大きな失敗をしたという苦い経験が星の数ほどある。 少なくとも、ダービーで駆けさせた過去の名馬で、それで勝ち切った2頭とは全く違う。 彼らは思われたより完成は早いが、明らかにその時の経験とライアンやハーツクライでの、激しいダービー好走後の再浮上への道筋に、確信を持った何を合わせ持ち、横山典弘騎手ならでは感性とマッチングさせ、無駄な部分も残しつつ、自分が無理をさせないというスタンスを守り通して、この日に至ったという印象を持つ。
ローテの引き出しも様々とある中で、長い距離の休み明けでの戦いもサクラローレルで経験した鞍上にしてみれば、何故そんなことをするのかを理解し、強引な手を控える価値の方を、菊花賞では優先した部分がよく見えていた。 無論、すんなり抜け出せれば、間違いなく、アーバンシックと一騎打ちだったろうが、これが短くなれば、むしろ、決め手で勝るダノンデサイルは優勢に思う。
何しろ、中山で数々の伝説を作ってきた横山典弘騎手は、皐月賞も有馬記念も1勝しただけなのに、昨年の紫苑Sや今年の中山記念などの様に、桁違いの精度と猛烈な競馬に対応する引き出しのレパートリーで、他を凌駕してきたという歴史がある。 有馬記念1番人気は、サクラローレルのあとにセイウンスカイとブエナビスタがあったが、いずれも3歳馬。 メジロライアンでもワンアンドオンリーでも、そうした若き挑戦者という立場で挑んだ経験はあるものの、1番人気馬以外でどうにかなったか言われれば、正直、苦しいシーンばかりであったような気もする。
セイウンスカイの時はグラスワンダー目覚めの瞬間と重なり、ブエナビスタは直線が短い競馬への対応力を見極めた上での鞍上スイッチの結果、グランプリ巧者のドリームジャーニーにしてやられた一戦。 しかし、ドウデュースはディフェンディングチャンピオンではあるものの、あくまでも、ダービーとジャパンCを制したその姿こそが本質。
調子落ちはないほどに今年は仕上がっているが、こういう相手に、思われているよりは乗りやすい面があるダノンデサイルに<まあ、勘違いしていると思われるのはよくないから但し書きしておくが、まだ本気では走らせていないし、突き放して勝っているときに限って、追っ手が大物になっていたりするから、本能的に襲われたと勘違いして逃避しているだけの可能性さえある>、無理なリクエストをするまでもなく、この場合は、相手に合わせない手を繰り出した時、有馬記念の歴史に倣うと、驚くほどの一撃を難なく繰り出せる可能性まで見えてくる。
セイウンスカイやブエナビスタは速さもあったが、実は、メジロライアンのパワーが、強烈であったからこそ、自分自身が奢っていた面があったと認めるその姿勢に、体をまだ持て余している印象のダノンデサイルが重なる。 完全に仕上がるまでは至らないまでも、しっかりと動かしやすい時期に乗りこめば、スローのダービーを突き抜けたかった能力は、すぐにでも取り戻せる。 こういう勝ち方は、三冠馬には多いが、コントレイルの時ほど遅いペースの年はまずなく、それより遅かった今年、歴代の名馬と大差ない着差で、最後は独走だったことからも、シングルタイトルであることを踏まえれば、途端に、古馬になって本領発揮となったイクイノックスやドウデュースらの背をすぐにでも追いかけられる可能性に思いが至る。
速い馬が有利なようで、強い馬ばかりが集まると、かえって、時計が遅くなる。 そうした瞬発力勝負を東京で制してきたドウデュースが、本領発揮の今、昨年のような振る舞いを出来るとも思いづらい。 いいところまで追い詰める可能性もあり、わずかに少し前めに入ることも想定内だが、案外、器用なように見せて、そうではないことを示したジャパンCと、器用ではないにしても、不器用だから負けたわけではないという菊花賞は、この有馬で意外なほど、あっけない結末を生む象徴的にして、あまりに対照的な前走であったと振り返る要素にもなりそうな気がする。
明らかに、余力勝負の点で不利なドウデュースは、戦略的にも、その限定されたスパートのかけどころの難しさで、意外な負け方をしてしまう可能性にここは賭ける。 むしろ、最初から有利なポジションをとれるダノンデサイルにマークでもされた時は、共倒れの危険もあるが、ローレルに敗れたマーベラスサンデーのように、ねじ込まれる可能性さえある。 少しだけその部分にも配分することも踏まえ、3連単は手控え、頭をどうすべきかに力を注ぐ予想になった。 菊花賞の直線を見る限り、前に行く方に分があると思うが、言わずもがな、彼はまだ本気を出したことがないから、仕上げた時のリアクションは誰にもわからない部分があると、いい方向で裏切りがある事への期待が大半だという見解を付け加えておきたい。