朝日杯フューチュリティステークス2018 回顧
攻めてきた時の反応が悪かったというより、グランアレグリア自身の勝負に対する熱意のようなものが、アドマイヤマーズやその鞍上のミルコほどではなかったから、一度は差し返すところまではいったのだが、再加速するというところまではいかなかった。
実は本質的に似た者同士だったのではないのか。
外から被せるように追い上げていく形はグランアレグリアも取れていたわけだが、アドマイヤマーズの方が接戦を好むところがあり、それは父のディープインパクトとダイワメジャーとの違いということになるわけだが、アドマイヤマーズには経験値を上回るようなローテの多彩さによる、
「ストレスの加算」
がもたらす精神面の成長が、楽勝しか経験していないライバルより、遥かに大きな底力の差として現れた。
ただしかし、明らかにグランアレグリアが力を出し切っていないのは事実であり、その点を考慮して、1:33.9、伏兵に2馬身差の快勝、ローテがほとんどグランワンダーと似ている4戦4勝馬の誕生、という劇的登場の2歳王者という評価はしがたい。
現状のアドマイヤマーズを褒めるならば、普通の競馬をさせようとした新馬戦から、もっと差す形に拘った中京2歳S解消を経て、超一変というほどの成長までは見せないまでも、以降の重賞は共に超正攻法であるということが、実に素晴らしいと言える。
普通は、本番に向けて、もっと器用さを求めていくもの。
今回は特殊な立場であったアドマイヤマーズとミルコの状況が、実質、直線入り口先頭の強気の、そして、唯一の勝機であったということが、選択肢を狭めたことでより人馬一体のレースに繋がった面は認めつつ、ダイワメジャーの背中もよく知る鞍上だからこその、実に強かな戦略があったことが見て取れる。
追う者の強みとはよく言われるが、ある種の理不尽な評価に対し、正攻法で挑む不満たっぷりの対抗馬としては、実に理想的で痛快な展開であったのかもしれない。
特に拘りなく、枠なりの競馬でまたしても藤岡兄スペシャルを決めたクリノガウディ―以下、あまり具合がパッとしなかった印象のケイデンスコール以外、ファンの期待通りに牡馬陣も走っていた。
走らなかったのはグランアレグリアだけ。
だから、そうだと断言できるかどうかを判断する材料のようなものが欲しかったのだが、目立つほどの雨量でもなかったので、右回りそのものの問題や展開上の不利もないから、これまでで一番遅い1:34.3でしか走れなかったことを、改めて、考え直す必要がありそうだ。
ナリタブライアンやグラスワンダー、昨年のダノンプレミアムもマルゼンスキーもそうなのだが、歴代の朝日杯の覇者というのは、戦っていく中で、より強くなっていった経緯がある。
ナリタブライアンに関しては、1:34.4で駆け抜けた中山の朝日杯が7戦目。
当然の重賞初制覇なのだが、ハードローテでデイリー杯を負けた後にまた、京都2歳Sを使われてからの東上にも拘らず、ここが一番強かった。
ダノンプレミアムは新馬戦が1800で、それが道悪の競馬。
時計はそれなりに出る馬場だったが、2歳の新馬が激走するところではない。
ハイペースの東京で独走して、1:33.0という凄まじい時計を叩き出したが、本番は1:33.3。
それでもコース形態や馬場状態などを加味すると、相手が強かった分だけ、強さが際立ったところもある。
グランアレグリアは新馬戦が一番強かった。
ダノンファンタジーもそうだったが、こちらは少しずつ器用になって、本番は追い込みの競馬で後続の追撃を凌いだ。
幻影を追いかけてしまうところはあるが、陣営も我々も、基準が常に新馬戦の1:33.6、奇しくも、グラスワンダーが総決算として2歳シーズンを締めくくった時と同じタイムで、そこを勝ってしまったところをこの馬の理想形としているから、負けるまでは全容が見えてこない面も当然あったのだ。
上がりはメンバー中でも平凡な34.6秒。
新馬は一番で、サウジアラビアRCは2位。
使い減りというよりは、ダノンプレミアムより更にハードに攻める強気な競馬で、後続を屈服させる形をとるしか、今のところはいい策は見当たらない。
相手が楽すぎたからこそ…。そういう言い訳だできない以上、まずは2歳女王に勝つ方法を見つけていきたい。