チャンピオンズカップ2017 回顧

体重大幅増にも拘らず、やけに気配の良かったゴールドドリーム。

相変わらず情緒不安定に映ったテイエムジンソクは、好発スムーズ先行の豪傑・コパノリッキーのマイペースの逃げに最後までお付き合いする形になったが、最後はねじ伏せた。

ムーア-古川-田辺。

それぞれに競馬の面白みと厳しさを学んできた名手や名パートナーが、味のある競馬を見せてくれた。

中央のGⅠは、地方のそれより有力とされる馬の多さとタイトさで、遥かに厳しいレースになるとされる。

その意味で、GⅠはおろか、GⅡ格以上のタイトル戦に初参戦だったテイエムジンソクは素晴らしい粘りであったし、それを挟んで入線した歴代のフェブラリーS覇者も、その価値あるタイトルを制した意義を大きくアピールするいい仕事を成した。

どういう結果であれ、このメンバーで先頭ゴールした者は称賛されるべきである。

復活なったゴールドドリームと2週前は惜しかった世界のムーアは、さすがの競馬だった。

前年はふて寝?状態のミルコとともに、スタート直後のずっこけでレースにならなかったゴールドドリームは、再戦叶ったフェブラリーSで、その時負けたサウンドトゥルーもろとも、力でねじ伏せてしまった。

この頃までは4歳馬の充実はどこまで続くのか?と、皆が末恐ろしい気持ちになっていたのだが、以後、彼を筆頭に、同じ時期にGⅠ馬になったセイウンコウセイやドバイで驚異の追い込みを魅せたヴィブロスなどが活躍してからというもの、まともに大舞台で走った同期は、もうヴィクトリアマイルのアドマイヤリードくらいしかいなかった。

長い沈黙を経て、アロゲート、コパノリッキー、アウォーディーらに蹂躙される競馬版のかわいがり「雑巾絞り」の効果が、得意の左回り、比較スピード勝負になる中央のタイトル戦で全面的に表出したのが今回だった。

ムーアだって、特別素晴らしい状態ではない。

今年も、ややあおり気味に決して褒められたスタートではなかったものの、卒なく内に入れて、昨年のサウンドトゥルーばりの決め手を直線で発揮させたのは、直線で極限の決め手を引き出すことに長けたヨーロッパの騎手の中でも、より素晴らしい技術を誇るムーア騎手の真骨頂であった。

ある程度ライトな展開でないと、こういう脚は引き出せない。

その意味では、前残りの展開を作った2、3着馬がうまくやり込めたということになるわけだが、よく言われる中京ダートは前残り天国という傾向とは、今回ばかりは違う気がする。

コパノリッキーの逃げは、重馬場や盛岡以外では平凡もいいところ。

それが楽なら、テイエムジンソクはもっと楽である。

古川騎手も、昨日今日騎手になったようなペーペーではないから、思惑以上に事が運んだはずだ。

が、元来スピード優先のゴールドドリームが能力前回の展開と転じたのだとすれば、コパノリッキーは自力で何とか出来る限りのことはしたけれども、テイエムジンソクはまだ余力が残っていた可能性がある。

一方はGⅢ馬であり、内で粘るのは10個のタイトルを誇る大ベテランだ。

挑戦者の気持ちで…。好事魔多しとはまさにこのこと。

うまく行き過ぎたがために、肝心の本質を見誤った策に甘んじるのは、人馬とも修羅場の数が皆無に等しいのだから、ちょっと仕方のない部分もある。

そういう差は、GⅠで大きな結果の違いとして現れるものだが、これによって、次はもっと強気に戦えるはずだ。

スピード自慢の快速馬。ゴールドドリームが最大のライバル。

新たな時代の始まりも予感させるような、フレッシュコンビによるGⅠ劇場の開幕である。