チャンピオンズカップ2023【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧
【レース結果速報】1着レモンポップ(3.8倍)2着ウィルソンテソーロ(92.0倍)3着ドゥラエレーデ(31.2倍)
レース名 | 第24回チャンピオンズカップ |
日程 | 2023年12月3日 |
優勝馬 | レモンポップ |
優勝騎手 | 坂井 瑠星 |
勝ちタイム | 1:50.6 |
馬場 | 良 |
3連単配当 | 1,902,720円 |
チャンピオンズカップ2023 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ
着順 | 馬番 | 馬名 | タイム | 着差 |
---|---|---|---|---|
1 | 15 | レモンポップ | 1:50.6 | - |
2 | 7 | ウィルソンテソーロ | 1:50.8 | 1 1/4 |
3 | 5 | ドゥラエレーデ | 1:50.9 | クビ |
4 | 4 | テーオーケインズ | 1:50.9 | クビ |
5 | 2 | メイショウハリオ | 1:51.3 | 2 1/2 |
単勝 | 15 | 380円 |
複勝 | 15 | 210円 |
複勝 | 7 | 1,820円 |
複勝 | 5 | 890円 |
枠連 | 4-8 | 2,780円 |
ワイド | 7-15 | 8,660円 |
ワイド | 5-15 | 4,720円 |
ワイド | 5-7 | 29,790円 |
馬連 | 7-15 | 29,040円 |
馬単 | 15-7 | 32,020円 |
3連複 | 5-7-15 | 469,320円 |
3連単 | 15-7-5 | 1,902,720円 |
チャンピオンズカップ2023 - レース後コメント(騎手/厩舎)
「もう速かったら行ってもいいかなとは思ってましたし、やはり少し距離に不安あったので、なるべくラチ沿いのロスなく行きたいなっていうのはありました。僕が乗せていただいたのは今年のフェブラリーステークスからですけど、最初からすごく良い馬でしたけど、ここに来てまた力をつけてるんじゃないかなと思います。初めての1周の競馬で大外枠って結構高いハードルだったと思うんですけど、この馬の能力で乗り越えてくれましたし、堂々とチャンピオンと言っていいんじゃないかなと思います。レモンポップとフェブラリーステークスとチャンピオンズカップと勝つことができました。 まだまだこれから頑張ってくれると思うので、応援よろしくお願いします」
※優勝した坂井瑠星騎手のコメント(レモンポップ)
チャンピオンズカップ2023 - レース結果動画(YouTube)
チャンピオンズカップ2023 - 回顧
レモンポップの血統
終わってみれば…、まさにその典型のような結果に、今週もなった。
逃げ勝ったレモンポップは、若い指揮官、若くしてスター性を持った鞍上と共に、勢いそのままにというよりも、明らかに実力的な部分の相対的な上がり目が、まだまだ若すぎるセラフィックコール以外では、最もこの年、その伸びしろという部分で、まさに極限に近い伸び幅を見せた、そういうレースであったように思う。
正確に近い、序盤の60秒後半での進行は、明らかに前走の盛岡での高速の逃げ切りとは、本質からしてまるで違うが、筋肉モリモリのゴツイ馬として作らなかったこの挑戦という名目の大勝負は、何も心配ないんだと、馬の方から人間の側がむしろ勇気づけられるように、簡単に序盤の諸問題を解決したところで、実際問題、あとはもう、他は何もさせてもらえなかったと言える。
中京に移って、ちょうどこれが10度目の秋のダートチャンピオンシップ・チャンピオンズCは、レモンポップが最初の逃げ切り勝ちの勇者となった。
阪神時代にも、逃げる王者・トランセンドが現れたが、そのレベルに既に到達しているどころか、とっくに超越している印象もあった。
G1格のレースに関しては、この往年のスピードスターも、旧ジャパンCダート連覇を含み、4、5歳時の絶頂期の1年で4つも勝ち取っている。
中には、震災の影響で東京開催になった南部杯という、極めて歴史的にも珍しい一戦を勝った記録もある。
その思い出なり、データに触れていれば、きっと、誰でも自信を持って、坂井瑠星のような心持ちになれたのではないだろうか。
それにしても、序盤の出脚は、坂井騎手もかなり意識してのことであろうが、いかに死に枠たる大外の15番を乗り切るのかを決定的な勝負のポイントと考え抜いたように、速いレモンポップに、更にいいスタート切らせるための準備をしてきたことがわかるような、いくらか膨れた発走。
外に馬がいないから、プレッシャーはかからない一方で、当然、時速0kmからのスタートであるから、前掛かりの展開を所望する有力馬であろうとなかろうと、少しでも前につけねば勝負にならないからこそ、少しだけ力みがちにゲートを飛び出すから、勢い余って、どんな馬でも大外の馬は外に膨れてしまう。
しかし、中距離仕様に作り上げていく中で、長い距離をこなせるための手立てを、徹底して考え抜いて作り上げた田中博康調教師は、ボディバランスがより洗練されたのであろう、いとも簡単に修正をする中で、すんなりと先行位置をとれる態勢に入り、もうこの時点で、坂井騎手は自分の流れを自らの意思で作り出せる確信を得たはずである。
頑張ったことは馬自身もそうだし、成長をさせるための我慢を重ねてきた陣営の作戦勝ちの一面もあるが、騎手に自信がない限り、ワープできない先行型の脆さも理解できるようになった坂井騎手は、自分のやる気を彼自身がコントロールできることを既に理解しているかのように、何の圧をかけるまでもなく、加速させるためだけの叱咤の激励をしたくらいで、その後は、レモンポップがレースの流れを決めたような展開。
プレッシャーをかけるということに、どれほどの価値があるのかをよく理解する、欧州圏で活躍するアジア系のムルザバエフ騎手・ドゥラエレーデが放つ強烈な勝ち気は、しかし、自身の伸びを失わせる敗因になったくらいで、そうでなければ、今のこの人馬の実績からして、あれで止まることはなかったはず。
流れに沿って、理想の好位抜け出しがドゥラエレーデの型であるから、力負けである。
そばにはずっと、かつての王者であるテーオーケインズがいた。
型にハメたはずが、程よい追撃の形であったとすれば、逃げ切りのレモンポップがレース上がり2位の37.3秒。
べらぼうに速い上がりを使わせず、かと言って、トータルのタイムは平均値以上の1:50.6。
むしろ、逃げ切るのはどの馬にもほどほどに走りやすいところで、どうやら、レモンポップ自身の解釈では、いつも東京ワンターンで安定してやっていた、例の好位抜け出しのそれだったのかもしれない。
大差勝ちでも何でもないが、力が違ったということだろう。
上がりトップで2着に飛び込んだ原優介騎手のウィルソンテソーロは、120点満点であるのだが、あまり本質的には、レースに参加できた馬の中で勝負に挑めた馬がいなかったという型であろうから、もう、レモンポップが1強だったという以外にない。
勝負所から理想に近いスパートのクラウンプライドは、出来も実力の面も問題なかったはずだが、もう少し一緒に伸びていく流れにあった、仲間を求めるというか、日本の中のレースでは、伸び合う直線を希望する先行型。
崩れないはずの馬が崩れたところで、反動ではなく、自分の型を崩されたような敗戦であるから、スピード負けでもあるのだろう。
結果的に、これと例によって、序盤のレースについていくような性質の馬にまで育っていないセラフィックコールが、二桁着順の中で上の方での入線。
この馬に、あのウィルソンテソーロのような希望の豪脚を期待であったが、理想の先行馬のペースではないまでも、総合力の底力勝負の形に持ち込んでいる本命級が、終始、楽にレースを牽引するところで、イクイノックス相手であれば、今年ならば、スルーセブンシーズだとか、ジャスティンパレスのようなふた呼吸置くぐらいの仕掛けでいい流れを作れたはずだが、内の方で、底力のある中距離型も粘っているようなところで、3歳馬の内面的な死角なども踏まえると、場慣れしていなかったということでは、4コーナー大外ブン回しが前半で見えたところで、推しのファンとしたら、絶望に近い流れだった。
しかしながら、残念も何も、まだ馬自身が作り出すアスリートとしての本能に、まだまだセラフィックコールが目覚めてはいないのだから、勝ちも負けもない。
いい意味での伸びしろということなら、2年も待てば、レモンポップのようになっていて、何ひとつ不思議はないと思わせるだけのポテンシャルは、前走までで示してきている。
まだ、セラフィックコールは始まってもいないのかもしれないから、自信を失う理由もない。
変に使い込むのではなく、レモンポップを作り上げた田中調教師の流儀を、こちらもまだ若い寺島調教師は吸収したい。
何しろ、まだ馬が若すぎる。
天才を好むレースになり始めたこのチャンピオンズCであるが、天才のように育てず、しかし、持ち合わせた天賦の才をじっくりと、体作りから念入りに取り組み、出来ることをきっちりとした答えが出るような形に持って行って、気持ちよく走らせるというのは、まさに、クラシックを戦うまでわずか2戦という、それも2歳戦のみのキャリアだったイクイノックス・木村哲也調教師と、このレモンポップはよく似ている。
切れ味が極上に過ぎたイクイノックスは、しかし、体が上手に使いこなせるようになり、ハードな時計勝負になる事で生ずる日本の芝の死角を、陣営の努力でしっかりとレース間隔に主眼を置くことで、きっちりと取り除くことで、衝撃の4歳秋としたが、その点で、レモンポップだって何も見劣ることはない。
文句なしで、少なくとも海外実績で上をいくデルマソトガケやウシュバテソーロに、またに堂々挑める立場に、今はある。
北米血統特有の、速い血を持つ馬が、どこまで我慢比べに耐えられるかというダートの頂上決戦挑むまでのプロセスは、使い勝手がいい短距離戦からスタートし、本物であるなら、距離を延伸して、実際にその通りに育つ。
マイラーだと散々騒がれたというか、そういう自覚のあったコントレイルとその陣営にまつわる話は著名だが、東京の2400ではついに崩れることはなく、常に強かった。
身体能力の向上や、その時間の掛け方を、個体差に合わせて実践することで、いかにも速すぎるタイプでも、こうして統一王者になれるということは、本来は、皆が知っていたはずのこと。
本番前に、やはりここはレモンポップだな…、という風に単勝が売れて、1番人気に推した多くのファンは、実に聡明である。
まるでイクイノックスのように育って不思議ないこのスピードスターが、来春の主役になって、誰も不思議に思わない状況となった今、イクイノックスに学ぶ、木村厩舎に学ぶべき田中博康調教師の心中は、どうなのだろうか。
本当の挑戦が、いよいよ始まろうとしている。