日本ダービー(東京優駿)2015 回顧
これなら、皆納得であろう。
普通にやっても勝てる。それが才能のある馬の競馬であり、自分でレースを作る力がある馬の強みである。仕方ない。
想像を超えるようなレース内容ではないが、父をそして世界制覇に届かなかったディープの駆けた時計を僅かに超えた2:23.2で走りきったのでは、まさに向かうところ敵なし。
彼らが自らで時計を出したのと比べ、この日のドゥラメンテは、正攻法の外差しで、ミルコと息ぴったり。
余裕があったので、ミルコはこの勝利に感極まる瞬間を帰り道のウイニングランで見せることができて、それにファンもよかったと声を上げるのだった。宝塚に行っても…、やめておこう。
何となく、横山ペースで進みそうな予感はしていたが、結果ミュゼエイリアンを駆った横山典弘には、勝負をより高いレベルのものにしようとする、ベテランジョッキー独特の気概があったのではないだろうか。2週前のレースのそれと同じように。
褒めるべきは、そんな当たり前のことを当たり前にした人馬より、急遽のコンビで急成長を証明したサトノラーゼンと岩田騎手だろう。
4角手前から外に張って、直線目一杯勝負を挑んで、坂の手前では突き放されてしまったが、同冠号のクランの猛追を凌ぎ切ったわけだから、大したものだ。
鞍上は語ったという。十分楽しめた。
2着で使う言葉ではないだろうが、してやったり、ベストバウトである。陣営の気運もこれで高まるはずだ。いい正月がやってくる。
同厩だから、心中複雑な部分もあるサトノクラウンは、普通のレースになればもっと際どかったと思うのだが、才能の差は歴然だったとも言わざるを得ない。その後ろに構えたリアルスティールも然り。
こちらは、皐月賞の二の舞だけは…、という一発逆転の追撃策をとったのだが、お互いが万が一とも限らない、確信に近いドゥラメンテの自滅に懸けた消極策に止まった。
ダービーでは特に、勝ち馬とその他17頭との明暗は恐ろしくはっきり結果に現れる。でも、実績やプライド、内に入れると最近よく詰まる傾向から、致し方なしと思うしかない。
余計なことを考えず、休むのみだ。頭の方も。
ホットなダービーで反映される未来予想の確信。
掛かる馬が菊に行くべきか、掛かる馬が揉まれる凱旋門賞に行くべきか。
前述の通り、ドゥラメンテは今回相手を見る余裕を持って二冠馬に輝いている。だから、勝ち時計からも最強のダービー馬である。
しかし、懸念材料を国内戦の中で消化しきれないと行きたくないとする日本の競馬界の常識が取り払われたなら、それはロンシャンに絞って…、でもいいような気もする。
堀調教師にも、もっと高みを望んでもらいたい。拍子抜けするほど簡単なダービーにした功績は、言わずもがな騎手と調教師の腕であることは、明白なのである。あともう少しの勇気だけは、馬から与えてもらえばいい。