2023年日本ダービー(東京優駿)予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

日本ダービー(東京優駿)の予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第90回日本ダービー(東京優駿)(G1)
グレード重賞(G1)
日程2023年5月28日(日)
発走時間15時40分
開催場所東京競馬場
距離芝2,400m
コース左回り
賞金2億円
レコードタイム2:20.6

2023年日本ダービー(東京優駿)予想 - 予想オッズ/出馬表(馬柱)/出馬予定馬の馬体/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

日本ダービー2023の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11ベラジオオペラ横山 和生牝357.041.012栗東・CW・良(横山和)
7F 99.4-68.5-54.2-38.5-11.2(馬なり)
栗東・CW・良(横山和)
6F 86.2-70.8-55.6-38.9-12.0(馬なり)
12スキルヴィングC.ルメール牝357.04.52美浦・南W・良(助手)
7F 97.5-67.7-52.8-38.6-11.7(馬なり)
美浦・南W・重(助手)
6F 84.8-67.8-52.3-37.9-11.2(G前仕掛け)
23ホウオウビスケッツ 丸田 恭介牝357.068.317美浦・南W・良(丸田)
6F 83.9-67.1-51.7-37.2-11.3(馬なり)
美浦・南W・重(丸田)
5F 68.5-52.6-38.1-11.3(馬なり)
24トップナイフ 横山 典弘牝357.040.511栗東・CW・良(助手)
7F 97.0-65.8-51.6-37.0-11.8(一杯)
栗東・CW・良(横山典)
6F 82.6-66.9-51.9-37.1-11.5(G前仕掛け)
35ソールオリエンス横山 武史牝357.03.01美浦・南W・良(横山武)
6F 80.8-66.5-52.0-37.5-11.1(G前仕掛け)
美浦・南W・重(横山武)
6F 84.3-68.0-52.4-37.4-11.3(馬なり)
36ショウナンバシット M.デムーロ牝357.023.58栗東・CW・良(M.デムーロ)
6F 82.4-67.0-52.4-37.3-11.1(一杯)
栗東・CW・良(M.デムーロ)
5F 69.8-53.5-37.9-11.3(馬なり)
47フリームファクシ吉田 隼人牝357.032.910栗東・CW・良(吉田隼)
6F 81.3-65.6-51.3-36.6-11.1(末一杯)
栗東・CW・良(吉田隼)
5F 69.3-53.0-37.5-11.2(馬なり)
48メタルスピード 津村 明秀 牝357.021.16美浦・南W・良(津村)
6F 81.1-65.7-51.5-36.9-11.0(馬なり)
美浦・南W・重(津村)
5F 66.6-51.8-37.4-11.0(馬なり)
59グリューネグリーン 石川 裕紀人牝357.0138.018美浦・南W・良(石川裕)
6F 82.9-66.2-51.9-37.9-11.7(強め)
美浦・南W・重(石川裕)
6F 84.8-68.2-53.0-38.3-11.7(馬なり)
510シャザーン岩田 望来牝357.046.015栗東・CW・良(岩田望)
7F 95.8-64.2-50.0-35.7-11.1(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 55.3-40.0-25.3-12.0(馬なり)
611ハーツコンチェルト松山 弘平牝357.024.89美浦・南W・良(助手)
6F 82.1-66.7-52.1-37.8-11.7(馬なり)
美浦・南W・重(助手)
6F 81.9-65.6-51.3-37.2-11.4(馬なり)
612タスティエーラ武 豊牝357.08.14美浦・南W・良(レーン)
6F 83.3-66.7-51.4-36.4-11.0(G前仕掛け)
美浦・南W・重(レーン)
5F 67.1-51.9-37.5-11.1(馬なり)
713シーズンリッチ戸崎 圭太牝357.044.813美浦・南W・良(戸崎)
6F 80.8-65.5-50.9-37.1-11.7(強め)
美浦・南W・重(戸崎)
6F 83.2-66.6-51.2-36.7-11.7(馬なり)
714ファントムシーフD.レーン牝357.07.93栗東・CW・良(武豊)
6F 81.0-65.6-50.7-35.9-11.0(一杯)
栗東・CW・良(武豊)
6F 84.3-68.5-52.8-37.4-11.3(馬なり)
715ノッキングポイント 北村 宏司牝357.044.914美浦・南W・良(北村宏)
7F 95.0-64.7-50.3-36.5-11.5(馬なり)
美浦・南W・重(北村宏)
6F 83.8-67.5-52.1-37.5-11.3(馬なり)
816パクスオトマニカ田辺 裕信牝357.060.616美浦・南W・良(田辺)
6F 85.8-68.9-53.5-39.0-12.5(馬なり)
美浦・南W・重(田辺)
6F 82.5-66.8-51.9-37.4-11.9(強め)
817ドゥラエレーデ坂井 瑠星牝357.021.77栗東・CW・良(坂井瑠)
6F 81.3-65.4-50.5-35.8-11.5(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.5-38.3-24.0-11.6(強め)
818サトノグランツ川田 将雅牝357.013.05栗東・坂路・良(助手)
800m 58.1-42.3-27.2-12.9(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 55.7-39.9-25.3-11.9(馬なり)
人気1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1番人気9回2回3回6回45.0%55.0%70.0%
2番人気2回4回1回13回10.0%30.0%35.0%
3番人気5回4回2回9回25.0%45.0%55.0%
4番人気1回2回1回16回5.0%15.0%20.0%
5番人気1回5回0回14回5.0%30.0%30.0%
6~9番人気1回0回10回69回1.3%1.3%13.8%
10番人気以下1回3回3回170回0.6%2.3%4.0%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠7回3回1回29回17.5%25.0%27.5%
2枠2回2回4回32回5.0%10.0%20.0%
3枠3回2回1回34回7.5%12.5%15.0%
4枠0回5回3回31回0.0%12.8%20.5%
5枠2回1回1回36回5.0%7.5%10.0%
6枠2回4回2回32回5.0%15.0%20.0%
7枠3回1回5回50回5.1%6.8%15.3%
8枠1回2回3回53回1.7%5.1%10.2%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト33回30回26回171回12.7%24.2%34.2%
ハーツクライ15回10回9回113回10.2%17.0%23.1%
ルーラーシップ14回13回6回70回13.6%26.2%32.0%
ハービンジャー9回9回5回66回10.1%20.2%25.8%
キングカメハメハ8回5回2回47回12.9%21.0%24.2%
オルフェーヴル7回6回7回43回11.1%20.6%31.7%
ステイゴールド7回6回3回63回8.9%16.5%20.3%
ドゥラメンテ5回4回4回21回14.7%26.5%38.2%
ロードカナロア5回3回1回15回20.8%33.3%37.5%
ゴールドシップ4回6回10回59回5.1%12.7%25.3%

2023年日本ダービー(東京優駿)予想 - 過去10年のデータ傾向

皐月賞1番人気の馬が順当に勝つ年は、皐月賞が意外な結果という場合がほとんどで…

過去10年分と限定しても、古い順でワグネリアン、コントレイル、ドウデュースらが勝ち馬となったが、二冠馬のドゥラメンテ、コントレイルと同じ無敗馬のサートゥルナーリア、エフフォーリアらは、その後も活躍したのだが、皐月賞以上に派手に走れなかった馬の方が多い。
エフフォーリアに至っては、僅差とはいえ、皐月賞の2番人気馬。そもそも、ここに該当しない天才である。

一方で、ワグネリアンもドウデュースも弥生賞<後にディープインパクト記念>の2着馬で、ここで連勝が止まった馬。
一番強いとするには、皐月賞の結果だけでは早計なのだが、そのレース前の投票で生じた人気の差は、ダービーの結果に密接に影響する。

勝てなかったまでも、皐月賞1番人気馬は、サトノダイヤモンドが2着→菊花賞優勝、サトノクラウンは3着→翌年に香港ヴァーズ、5歳時にはキタサンブラックを破った宝塚記念などの勲章がついた<いずれも里見オーナーの馬というのは、何とも気の毒ではある>のだから、評価は間違っていないが、ここにサートゥルナーリアやロゴタイプなどの2歳王者でかつ皐月賞快勝の馬が入るから、ソールオリエンスが確実に人気になる一方、昔からよく消えるパターンにハマるこの天才もまた怪しい。
イクイノックスよりも派手だが、決め手は同父の先輩に一歩譲るはずだから、高速決着は望ましくないだろう。

皐月賞で敗れた馬は、普通勢いが止まるから、変に好走しない方が良い

2着馬で勝ったのはマカヒキだけ。3着から盛り返したサトノダイヤモンド共々、無傷ではなくなったタフな皐月賞<強風でハイペースの厳しいクラシック初戦は、今年だけが特別ではない>を経て、力強さを増して、いずれも乗り替わりの因縁を抱き込むように、必死な人馬による極上の名勝負を展開した。

3着馬だと、2010年のエイシンフラッシュ以降では、実に、2012年に同じく道悪の皐月賞だった時のディープブリランテがハナ差の勝負をもぎ取ったような戴冠であったが、近10年に絞り込むと、途端に減少。
皐月賞組の最先着であったダノンキングリー<これも皐月賞で連勝ストップ>、前記サトノダイヤモンド、ドウデュースくらいで、連続3着のレアケースを久々体現のステラヴェローチェは、ギリギリ届いた3着。

連続2着はエピファネイア、イクイノックスと、同じコントレイル・サリオスの二冠ロードを作った2歳王者くらい。
秋緒戦はいずれも勝っているから、タスティエーラに期待するのはいいことだが、ここではないことが多い。
惜しくも届かず…、というケースがお馴染みなので要注意。
マカヒキは勝ったディーマジェスティについていけず、ゴール前突っ込んできた皐月賞完敗の経験を糧に、正攻法の差しで結果を出している。ソールオリエンスと逆に立ち回っていればよかったのだが。

皐月賞回避で青葉賞から直行の組は、日本ではトレンドにならないと言えるが

プラダリア・5着が足されて、範囲の外になるのがフェノーメノ・2着。
記録は大きく変化しているようで、遠い昔のレオダーバン<トウカイテイオーに続く2着>からずっと同じで、どうあがいても勝てない。
NHK杯<G2・東京芝2000M>も、グレード制導入の10数年では、皐月賞直行の組がグングン結果を出して、12回やっても勝ち馬が出てこなかった。
モデルチェンジの上、G1になっていくマイルCになってからは、タニノギムレットからキングカメハメハ、ディープスカイなどが優勝馬になって見せたものの、すっかりご無沙汰。

すっかりモデルチェンジで、ダービートライアルではない西の前哨戦・京都新聞杯<元は菊花賞の最重要トライアル>からは、その初年度のアグネスフライトからキズナ、もう4年前になってしまったロジャーバローズ<何となく、昨年の大波乱のように毎年思ってしまう今日この頃(笑)>らが出ているが、どの道、皐月賞組には圧倒されている。

皐月賞は快速決着の年もあるが、近年は雨馬場やかなりバイアスのかかった競馬で、ダービーを展望する上で、多頭数の競馬と無理に仕上げずにダービーへと向かうには絶妙な塩梅で、中5週ローテが若馬にはいいリズムを生んでいる。
近10年では、キズナもロジャーバローズもいるわけだが、本当の例外は、2021年の毎日杯を破格のレコード勝ちで連勝としたシャフリヤールだけ。
距離も長く、時計も東京であるからこそ、長いところを待っていた組が多いからこそ、タフな展望になるだけで、皐月賞より間隔が詰まるから、結局、不利になっている。
強い馬には、本来は10F近辺の底力勝負における好結果が、ダービーに向けた理想のステップになっているのは、今に始まったはなしではない。
言わんとすることはおわかりいただけただろう。

妙味十分の○×のみが出てくる、ディープ記念2着馬

昔は勝っていた馬が来ていたが、それは今も変わらず、ディープインパクトの名がついてくる前でも、マカヒキがウイナーに。
ただ、近年であると、過剰も過剰な人気であったワーケアは悪目立ちするものの、ワグネリアンやドウデュースが、皐月賞で2着以下に終わってもダービー馬になった理由が、皐月賞で1番人気になった根拠ともなってくる弥生賞の2着という結果があまりにも大きい。

昔はナリタタイシンであるとか、セイウンスカイ、エアシャカールといった、皐月賞を勝つトライアル好走馬の構造になっているが、近年のディープ記念では、タイトルホルダーやアスクビクターモアなど、高速型のステイヤーが力をつけてくる時期にちょうどいいレースという感じで、むしろ、勝ち切るとダービーで不発のケースが多く、菊花賞を勝つ馬にしても、ダービーの結果はあまり大して誇れるほどの内容ではない。

一方、負けている馬・2着だった組はどういうわけだかというか、ベテラン騎手が乗っていたワンアンドオンリー、ワグネリアン、ドウデュースが勝っている<鞍上はその後も変わらなかった>という結果。
アドマイヤベガでダービー連覇の武豊騎手が、ドウデュースの時にその時の引き出しを使ったことは明らかであり、同じ弥生賞組のワンアンドオンリーだと、横山典弘騎手が無敗記録が皐月賞で途絶えたロジユニヴァースに、今までダービーを勝てなかった理由を教えてもらうような独走Vの経験を十二分に生かし、ダービー獲りのメソッドを実践して、結果を出した。

同時に、人気になったディープ記念<弥生賞>2着馬の中には、リオンディーズやマイスタイルなど、ダービージョッキーらしい皐月賞からの巻き返しを図った、難しい競馬の末の掲示板内の結果もあるから、人気になる事も恐らくない、ダービー2勝騎手が乗るトップナイフを馬鹿にすることはない。
近10年で逃げるダービーを繰り返す名手が、手塩にかけて育てたテイエムオペラオー一族の底力は、一体どういう形で引き出されるのか。
戦略に対し、明快な回答が求められる舞台にあって、十分な経験値を馬が積み重ねていることは、皐月賞と一変しそうな展開からも、決して、無駄にならない気がする。

2023年日本ダービー(東京優駿)予想 - 出走予定馬の血統/成績/タイム

もう天国にいってしまったテイエムオペラオーが、親戚筋のトップナイフに課題を与えた皐月賞の雰囲気は、あの年とよく似ていた

トップナイフの血統

筆者は常々、この馬の評論において、こと血統を用いて能力判定をするとき、ダンチヒ直系の孫世代であるデクラレーションオブウォーとヌレイエフ直仔のスピニングワールドの配合であることを、一旦、総評をする前は外して、その配合の特性を解釈しようと心掛ける。

何しろ、ダンチヒの芝向きらしいマイラー、トレンドになりかけているデクラー の父であるWar Frontであるとか、ヌレイエフ系の特性などを秤にかけ、この馬のパフォーマンスを評価することができないからだ。
馬乗りの天才である横山典弘が駆る、よくわからない好位差しの馬としたところで、他にぶったまげるような何かがあるわけでないから、それで終わってしまう。

だから、軸を第49代東京優駿ウイナー・バンブーアトラス<父はリボー系のジムフレンチ、トップナイフの母母父>と、それを取り巻く、スピード能力を足す芝向きのナスルーラ系の血の組み合わせに着目するのである。
アトラスの母父は大種牡馬であるテスコボーイ。
ブルードメアサイアーとして、同じダービーレコードウイナーであるアイネスフウジン<シーホーク産駒がダービーを連覇した年、2着はノリ騎手の1番人気・メジロライアン>も出しているのだから、直仔・トウショウボーイが敗れたダービーをその仔ミスターシービーが制したなどと、引き合いに出す必要もない。

プリンスリーギフト系は日本でしかもう流行っていないが、恐ろしいことに、ダービーに有力馬を2頭も出す、畏怖すべき顕彰馬・キタサンブラックの母父が、その中でも最も成功のサクラユタカオーのラインなのだから、サンデーサイレンス系の影響力が限定的とした時、これまた恐ろしいテスコボーイパワーが、今更ながら、再検証される時代に入ったのであろうとすべきなのだ。

これも顕彰馬・テイエムオペラオーの母であるワンスウエドは、ブラッシンググルームの直仔であり、直系にラーイというこれも直仔が入ることで、4×4。
ノーザンダンサーが変則的に掛かる父と母父の関係性も相似とできるが、アウトサンデーで成功するための要素を総合することで、パワー満点で色褪せないナスルーラの大直系を取り合わせ、薄くとも、確実に繋がるナスルーラ継続クロスに、セクレタリアトなどのボールドルーラー系種牡馬と、スピニングワールドに絡むリヴァーマンなど、総論的なノーザンダンサー同系配合では、2000Mを早期にこなす能力を評価できないが、この中長距離向きナスルーラを重ねたという前提とした時、クラシック向きとできる。
ファミリーも底力型、振れ幅が顕彰馬から未勝利馬まである一発屋の系統は、大舞台でこそ怖い。
リボーの血を持つダービー馬は掃いて捨てるほど誕生してきたがが、バンブーアトラス以外、その直系から出た日本のダービー馬はいないという点も、少し興味深いものがある。

2023年日本ダービー(東京優駿)予想 - レース展開と最終予想

雨は一応上がっていたが、今年の皐月賞は、1989年にドクタースパートが勝った不良馬場以来となる、良か稍重以外の道悪レースであった。
中間、雨馬場や渋った馬場から、トウカイテイオー、ネオユニヴァース、メイショウサムソン、ゴールドシップ、コントレイルなど、クラシック二冠以上の名馬が続々登場したが、ここ2年は似たような雰囲気のタフ馬場の第一冠から一変、高速の上がり勝負で安定のダービーとなっているから、東京で傑出した実績を持つコントレイル<東スポ杯を不滅の1:44.5で独走>しか、春二冠は達成できていない。

ドクタースパートの年は、2着であったウィナーズサークルの巻き返しで、明暗を分けた。
ゴールドシップも昨年のジオグリフも、見事な立ち回りが目立ったことで、ダービーでは奇しくも、3着に敗れていたディープブリランテ、ドウデュースらが人馬一体、乾坤一擲の逆転劇と相成った。

ミスターシービーは不良馬場の皐月賞から、その後、二冠はおろか、菊花賞も制している。
メジロモンスニーというライバルこそ現れたものの、道悪巧者であることが明らかになったダービーでは、これを突き放してみせた。
距離適性や柔軟性の差のようなものは、2020年に同じく三冠馬登場の2歳王者対決でも、そっくりの結果。
奇しくも、これも皐月賞はかなりタフな稍重馬場だった。

ダービーの方が良馬場になる確率は、恒常的に高い。
鵜呑みにできない、混戦に断とした皐月賞の結果という意味ではなく、どんな年でも、必ず、着順の入れ替わりが発生するのだ。
連対2頭は強く、3着だったファントムシーフは、二度と現れないディープインパクトと同じくらい不世出の武豊が乗ると決まった。
トライアルホースは、いずれも継続騎乗が決定。
西の最終便組も、天下人となった川田将雅の手綱で、それとなく人気に推される。

唯一、皐月賞2着のタスティエーラだけが、再びの乗り替わり。
ハーツコンチェルトというトライアル2着馬とバッティングする場面で、両2着馬は、ハーツが松山継続、タスティエーラはレーンに変更。
微妙な影響というほど、ダービー制覇は甘くないが、役者は出揃った。

波に乗って来そうなキタサンブラックの大砲が、今年は2つ。
ギニーウイナーのソールオリエンスは、東京で勝負強さを見せ、中山2戦でわがままな競馬で才能の違いを示した。
普通ができるか。
普通なら、トライアル快勝のスキルヴィングの方が…。
いや、決め手はイクイノックスに引っ張られて、本質はそこまでキレキレでない可能性もある。
パワー満点の母系は素晴らしい両者ながら、日本の瞬発力勝負で本領発揮の配合ではない。
死角はあるとみる。

最初から決めていたとはいえ、3代母ワンスウエド=皐月賞と古馬G1を合わせて7勝のテイエムオペラオーの母、という地味にクラシックに適した何かを秘めるトップナイフに、妙味も可能性も、また適性も感じている。
ただ、それを運命的な何かと思い直したのが、件の皐月賞。

ここからはその思い出の方の話。
あの日は嵐のような天候で、内枠のアドマイヤベガは、隣のワンダーファングがいなくなった影響で、窮屈な競馬を強いられた。
揉まれて、馬体重も減ってしまって大不発。
勝負所までは同じようなポジションであったテイエムオペラオーは、追加登録で参戦したくらいの馬で、毎日杯まで3連勝も、そこで独走していなければ、ダービー狙いであったはず。
ところが、大外ブン回しで、坂で手前を替えてからもうひと伸び。
良馬場でタフな皐月賞とはいえ、後にドゥラメンテが激しい競馬で制するまで、これがあり得ない平成皐月賞の筆頭格であった。

先行したオペラオー、体調回復で前年制覇以上に武豊騎手が抑える形をとったアドマイヤベガ。
これに渡辺薫彦騎手のナリタトップロード。
思惑通りに3強対決となったダービーは、アイネスフウジンのレースレコードと同タイムで、仕掛けを待ったアドマイヤベガの差し切りで決着した。

後に大躍進を遂げるオペラオーは、どことなく、泥臭い特性から、キタサンブラックのようなタイプに今では擬えることもある。
アドマイヤベガになりたいトップナイフは、一応、王道を進んできて、皐月賞だけダメだったというところまでは共通。
この距離なら、ほぼ同期の天才騎手とも腕比べで見劣りしない横山典弘を主戦というより、総司令官的位置づけに配した昆貢調教師と共に、再びのダービー戴冠を、安定の人気薄で画策するが、突っ張ったようなゲートの開いた瞬間のトップナイフに、ふと、そんな背景のオペラオー劇勝皐月賞のアドマイヤベガを思い起こさせたのは、傍に、武史跨る無敗のソールオリエンスがいたから。

キタサンブラックまで登場で、日本競馬のカオス状態であるが、アイネスフウジン相手に、1番人気・メジロライアン<典弘>、2番人気・ハクタイセイ<武豊>という構図で敗戦の蓄財は、今まさに還元の真っ最中。
減量騎手に毛が生えた程度どころか、シャーと叫ぶ天才とさえもてはやされた和田竜二が、今や頼れるタフガイになっていることでも、大きな経験をどう活かすかは重要。

皐月賞の勝ち方を覚えた武史が、何故がそばを走る父跨るトップナイフに、ある種の安心感を覚えたのも事実だろう。
出負けの理由までは見えていないまでも、ペース判断の理想形を体現するベテランは、道悪でこそ、本領発揮というのは、NHKマイルCで十分に証明されている。

一方、ソールオリエンスはテイエムオペラオー的な、ギャグレベルの襲撃という印象もあり、好位差しの理想と、ペース判断の正確さで、きっと、馬の仕上げだけを変えて、同じパターンを繰り返してきた中でのポカというアクシデントは、ベテランとキャリアこれが10戦目となるトップナイフには味方になる可能性がある。
デビュー戦で、昆調教師が父の代用品として、北海道に拠点を置く和生に<誰でもなれるわけではないことをみんな知っているからすごいのだが>、しっかりと馬作りの基礎を委ね、仕上げを今度は懇意にする父典弘に託した。
思惑通りに、テイエムオペラオー的躍進とは違う流れで、安定のオープン好走を続けていく中で、ペース判断上は正解でも、まさかの立ち遅れ…。

思うに、武豊だとか福永祐一、もちろん横山典弘もそうだが、トライアル→皐月賞→ダービーの黄金ローテで、皐月賞が一番怪しい結果ということが、ダービー制覇の勘所だと、頭ではわかっていても、経験を一度することで、完全理解していると思えるケースを、最近のダービージョッキー独占状態のレース傾向からも、毎度見せつけられている気がする。
皐月賞で揉まれた強みは、絶対能力を超越することをテイエムオペラオーが急襲の皐月賞から、ダービーでの様々な大逆転の構図から読み解くと、オペラオーは親戚筋のかわいい甥っ子にこう伝えた気がする。
「ここまでの努力を無にすることはない」

上手に走ることを名手に教え込まれ、ダービーメソッドを体得しつつ、使われながらも無理なく成長をする、3歳馬には理想のバイオグラフを描くこととなったトップナイフは、口惜しくとも一瞬相手に出られたというだけのホープフルS<あのドゥラエレーデと再戦でも注目>が、下げる手は大一番ほどあり得ないと確信できる一戦となったから、普通に出れば好位付けより前のトップナイフがいつものリズムで走れれば、気性的に不安の多い有力勢の差しに拘った策に対し、最大の武器を活かしきる大逆転の構図となる。

昨年のような勝ち方は、平成の初期から18頭以内の争いなので、武豊以外ではもうできない。
下げても難しいが、ならば、少し強気に前目につける方が、遥かに合理的と気づくのに時間のかかった福永が、どうやってその後ダービーを勝っていったかを皆が知るように、はっきりといい血統とまでは言えない伏兵を任させたときの思い切った策が定番化している横山典弘が、いよいよ3度目の戴冠で、皆を驚かせる瞬間を期待する。
ここ数戦のG1で、いよいよ、馬乗りの技術に高い精度まで加わり、想像以上に期待値を超える競馬を安定してリピートする名手を、大舞台で侮ることは、色々な意味で損をする気がしてしまう。
馬が自信を失っていなければ、意外性の人馬が本領発揮となる。