日本ダービー2024の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

日本ダービー2024の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切りの予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第91回日本ダービー(東京優駿)(G1)
グレード重賞(G1)
日程2024年5月26日(日)
発走時間時分
開催場所東京競馬場
距離芝2,400m
コース左回り
賞金2億円
レコードタイム2:20.6

日本ダービー(東京優駿)予想-予想オッズ/出馬表(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

日本ダービー(東京優駿)の予想オッズと登録馬

日本ダービー2024の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11サンライズアース池添 謙一牝357.0314.519栗東・CW・良(池添謙)
7F 95.0-65.7-51.9-37.1-11.6(一杯)
栗東・CW・良(池添謙)
7F 99.4-68.3-53.4-38.3-11.8(稍一杯)
12レガレイラC.ルメール牝355.07.22美浦・ウッド・良(ルメール)
7F 97.4-67.0-52.0-37.5-11.4(馬なり)
美浦・ウッド・良(助手)
6F 86.3-69.4-53.5-38.7-11.8(馬なり)
23ジューンテイク岩田 望来牝357.039.6 14栗東・坂路・良(助手)
800m 55.2-40.1-26.0-12.8(馬なり)
栗東・坂路・良(岩田望)
800m 57.0-40.1-25.3-12.5(馬なり)
24ビザンチンドリーム西村 淳也 牝357.039.8 12栗東・CW・良(西村淳)
7F 98.9-68.2-53.2-37.8-11.4(稍一杯)
栗東・CW・良(国分優)
6F 84.8-68.9-53.4-38.0-11.5(馬なり)
35ダノンデサイル横山 典弘牝357.045.315栗東・CW・稍重(横山典)
6F 79.6-65.0-49.6-35.1-11.0(一杯)
栗東・坂路・良(調教師)
800m 55.5-41.0-26.8-13.3(馬なり)
36コスモキュランダM.デムーロ 牝357.013.76美浦・ウッド・良(小林勝)
5F 65.3-50.7-36.8-11.4(一杯)
美浦・ウッド・良(小林勝)
5F 69.1-53.2-38.5-12.2(馬なり)
47ミスタージーティー藤岡 佑介牝357.0101.018栗東・CW・良(藤岡佑)
6F 79.0-64.3-50.4-36.7-11.6(一杯)
栗東・坂路・良(藤岡佑)
800m 53.7-38.8-25.0-12.3(馬なり)
48アーバンシック横山 武史牝357.010.93美浦・ウッド・良(横山武)
6F 82.6-66.1-50.9-36.4-11.1(G前仕掛け)
美浦・ウッド・良(横山武)
6F 83.8-66.9-51.7-37.0-10.9(馬なり)
59ダノンエアズロックJ.モレイラ牝357.011.78-美浦・ウッド・良(助手)
6F 82.0-66.1-51.1-36.3-11.4(馬なり)
510サンライズジパング菅原 明良 牝357.067.317栗東・CW・良(助手)
7F 97.6-65.9-51.2-36.6-11.3(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 52.4-37.7-24.2-12.0(馬なり)
611シュガークン武 豊牝357.016.37栗東・CW・良(武豊)
7F 98.8-65.8-50.3-35.4-11.1(馬なり)
栗東・坂路・良(吉村誠)
800m 55.6-41.0-27.0-13.6(馬なり)
612シックスペンス川田 将雅牝357.010.84美浦・ウッド・重(助手)
5F 63.8-49.3-35.0-11.3(馬なり)
美浦・坂路・良(川田将)
800m 52.2-37.7-24.2-12.1(馬なり)
713シンエンペラー坂井 瑠星牝357.014.2 5栗東・CW・良(坂井瑠)
6F 79.8-65.2-51.2-36.7-11.4(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.4-39.4-25.3-12.4(馬なり)
714ゴンバデカーブース松山 弘平牝357.024.89美浦・坂路・重(助手)
800m 57.3-41.6-27.0-13.3(馬なり)
美浦・ウッド・良(助手)
6F 82.6-66.3-50.6-36.1-11.4(馬なり)
715ジャスティンミラノ戸崎 圭太牝357.02.311週前追い切り
栗東・CW・良(荻野琢)
7F 98.1-66.9-51.7-36.0-11.3(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.2-39.0-25.1-12.1(馬なり)
取消取消メイショウタバル浜中 俊牝357.033.411栗東・CW・稍重(浜中俊)
7F 94.4-63.6-49.8-35.6-11.4(一杯)
栗東・CW・良(浜中俊)
6F 85.1-68.7-52.7-37.2-11.3(馬なり)
817ショウナンラプンタ鮫島 克駿牝357.024.010栗東・坂路・良(助手)
800m 59.5-44.1-29.0-14.6(馬なり)
栗東・坂路・良(鮫島駿)
800m 54.3-38.9-25.1-12.2(馬なり)
818エコロヴァルツ岩田 康誠牝357.050.213栗東・CW・良(岩田康)
6F 84.7-69.0-53.6-37.6-11.4(馬なり)
栗東・坂路・良(岩田康)
800m 55.6-39.6-25.0-12.1(馬なり)
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬0回3回1回18回0.0%13.6%18.2%
先行馬9回5回4回54回12.5%19.4%25.0%
差し馬8回9回12回142回4.7%9.9%17.0%
追い込み馬3回3回3回83回3.3%6.5%9.8%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠7回3回1回29回17.5%25.0%27.5%
2枠2回1回4回33回5.0%7.5%17.5%
3枠3回3回1回33回7.5%15.0%17.5%
4枠0回5回3回31回0.0%12.8%20.5%
5枠2回1回1回36回5.0%7.5%10.0%
6枠3回4回3回30回7.5%17.5%25.0%
7枠2回1回5回51回3.4%5.1%13.6%
8枠1回2回2回54回1.7%5.1%8.5%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト27回28回23回153回11.7%23.8%33.8%
ハーツクライ16回10回9回123回10.3%16.5%22.2%
ハービンジャー11回11回6回67回11.6%23.2%29.5%
ドゥラメンテ11回7回7回32回19.3%31.6%43.9%
キングカメハメハ9回7回2回49回13.4%23.9%26.9%
ルーラーシップ8回15回8回78回7.3%21.1%28.4%
オルフェーヴル7回4回5回41回12.3%19.3%28.1%
ゴールドシップ5回6回10回84回4.8%10.5%20.0%
エピファネイア5回6回6回38回9.1%20.0%30.9%
ステイゴールド4回2回2回35回9.3%14.0%18.6%

日本ダービー(東京優駿)2024 - 過去10年のデータ傾向

1番人気が消えることが増えた近年は、高速皐月賞の時ほど要注意

すごくシンプルな話。

良馬場の皐月賞は、近年、ほぼ高速決着が確定的であり、2022年の時だけ、道悪馬場のような荒れ具合であったために、皐月賞が時計を要する結果になったものの、そこで1番人気ではなかったのに、4着であったものの、共同通信杯の内容と川田騎手への信頼度に堀厩舎の3点セットで過剰な支持を集めたダノンベルーガが似たような着順に終わったという例はあったが、実はこれ以外も、皐月賞の内容を含めた総合的判断で、1番人気に推された馬が決まって、苦戦という傾向。

道悪の皐月賞だった2018、20、21、23年は、皐月賞で人気になっていた馬か皐月賞馬が連対しているが、同時に、別路線組が人気になりすぎると消えて、人気がないと、その状況に乗じたかのように好走をする。

2018年はダノンプレミアム、2021年はシャフリヤールがキーホースになって、前者は無敗馬ながら、皐月賞回避で消え、後者は前走レコード勝ちの内容を盾に、無敗のエフフォーリア封じに成功をした。

ここでの人気の差は結果に大きな影響を及ぼす。

高速皐月賞を制した2019年のサートゥルナーリアは、反動もあったのだろうが、レーン騎手への交代を余儀なくされたところで、人馬の若さが結果に大きな影響を及ぼしたのだが、決まって、皐月賞が速すぎると、ドゥラメンテ以外は消えている傾向。

2022年の低速皐月賞組は、2、3着だった人気馬が着順入れ替えて、本番をレコードで好走している。

連対馬であるジャスティンミラノが出てくる以上、客観的に捉えても、皐月賞の4着以下から軸馬を選定するのが筋であろう。

あまり、朝日杯もホープフルも変わらないというか、皐月賞の結果次第という顕著な傾向

どの年代のダービーの傾向を吟味していっても、結局のところ、皐月賞の経験が重要なので、敢えて調べてみたのだが、2歳G1から参戦の組に、一応の2択はあるにしても、結果として、G1・ホープフルS出走馬が圧倒的に強いわけではなく、朝日杯勝ちのドウデュースとホープフル勝ちのコントレイルと、皐月賞の時点で世代の中心であるという評価を得ていた2歳チャンプしか勝っておらず、あとはホープフル勝ちでも、G2最終年に勝っていたレイデオロの皐月賞ひと叩き後のルメール降臨の神騎乗がハマっただけで、実は、むしろそこから出ていない組が有利という傾向にある。

とはいえ、皐月賞に至る過程に、トライアル忌避の大原則に近い近年の傾向は、暑さを経験させる意味での6月中央場所デビューに、ある程度の意味合いがあるけれども、結局、調整は難しいなどの理由で、ならば真夏のローカルで試練をクリアさせた方がよっぽど合理的という結果論に合わせて、皐月賞を経ていることが重要であり、そこで人気通りに走ったりだとか、何かしら、走りづらい原因となる障壁が敗因に直結しているなどの何かがないことには…。

2020年はホープフル→朝日杯→ホープフル各出走馬の上位独占で、いずれも連対実績のあった世代のトップクラスの快走であった。

実は、それ以外で2歳王者決定戦に登場のグループはほとんど好走していない。

レガレイラとシンエンペラーに夢見た未来に期待するくらいなら、出られなかったゴンバデカーブースやサンライズアースなどの逆襲に期待するのも手であろう。

妙味はなくとも、皐月賞で崩れた理由がそのトライアルを使っていたことだと仮定した時、タスティエーラ理論は高確率でハマる

スピード能力よりも総合力を問われる皐月賞<雨が降ろうと何だろうと、相応のスピード能力を多頭数で問われていくことで、結果的に、瞬発力勝負一辺倒になりやすいダービーよりも、能力値の分析がしやすい結果が皐月賞ではよく出る>には、ダービーと同じくらいの余裕が求められるが、皐月賞の状態を考えていないその参戦馬が、結果がよほどひどくない限り、大目標のダービーでより調子を上げて、巻き返すというのはずっと昔からある基本的傾向。

力が抜けていれば、万全の皐月賞ではなくとも、ダービーに余力を残して好走出来てしまうから、大一番でも崩れない。

牝馬よりも、一時期は圧倒的に牡馬の春二冠馬が多かったのは、それが最大の根拠となっていた部分はあるが、今は、皐月賞の高速化で一筋縄ではいかなくなった。

とはいえ、皐月賞の前でダービー出走もほぼ確定的にさせた、主に、中山のトライアル連対馬に関して、その逆襲の確率は一定以上あるとできる。

コントレイル以降のダービー馬は、1800重賞を勝っているかディープインパクト記念の連対馬で、ホープフルS勝ちで実質的にワールドレコードクラスの東京スポーツ杯独走のコントレイルの実績に、何かしら、肖っているような馬が続々勝っているという傾向。

2着馬も似たようなもので、結果、その後のレースを含め、近8回全て、ダービーの連対馬はG1馬となって現役を終えている状況。

もう勝っている2頭にも当然注目だが、トライアルの結果が信用できるものだと仮定したとき、皐月賞でも崩れていないディープ記念組と、まだ無敗で令和のシリウスシンボリを目指すシックスセンスはとりあえず押さえておくべきとなる。

いずれも2歳G1を勝てなかったか未出走だが、勝ち馬はその未出走馬であるから、消耗度の比較でシックスセンスを買うという荒業もあっていい。

昨年スキルヴィングを買った人々は、その夢の続きを、国枝厩舎初戴冠と合わせて、期待感MAXというファンは、意外と多いはずだ。

鬼脚を使える共同通信杯や京成杯を使ってきたグループの取捨は、ひどく評価を下げなければ、問題はなしも2着ばかり

古い順に、イスラボニータ、サトノダイヤモンド、スワーヴリチャード、ダノンキングリー、エフフォーリア、ソールオリエンスと大物ばかり、今や、一瞬ながらも主流ではなくなったきらさぎ賞組は1頭だけ<今年はビザンチンドリーム>、例外的に登場するくらいで、近年の主流である中山か東京のG3で走り初めのグループが、続々好走しているが、これではもっとタフな年明け2戦目も2着であったイクイノックスと同じではないかという、見事などん詰まり感。

センター前に詰まった当たりでヒットが出たとしても、状況的にホームランだけ欲しい場面で、ある意味、四番なりチームで一番のスラッガーとしての資質が求められるダービーでは、このような結果は望ましくない、というニュアンスの話。

例外になったドゥラメンテとディーマジェスティらは極めて特殊で、二冠制覇のドゥラメンテは共同通信杯が強行軍での出走で、負けたけれども、トライアル出走は諦めたという組。

堀調教師はこの経験を深化させ、タスティエーラをトライアルも挟んで皐月賞にも出走させた上で、ダービー獲りを再び成したことになる。

ディーマジェスティは、近年は少し増えたが、渋馬場の共同通信杯から皐月賞連勝の馬。

2→1着だったジオグリフは、適性もあって、ダービーは失速であった。

両方良馬場のジャスティンミラノの評価は少しも下がらないが、レコードタイムが速くなりすぎる近年の皐月賞は、速い時だけ、少し割り引きたい。

皐月賞に出られなかった京成杯勝ち馬のダノンデサイルはハイレベルの京都2歳S4着馬、これに敗れても、皐月賞で崩れなかったアーバンシックには、ドゥラメンテ的なファンタジーさがある。

ホープフルSのレースレコードとほぼ同レベルのタイムで走ったコスモキュランダとアーバンシックは、レガレイラとシンエンペラーに先着していた。

時計的評価と総合的な臨戦過程なども踏まえたジャッジを加えた時、レガレイラより前に来た組を蔑ろにするような評価は適切ではない。

ホープフルS好走必至と思われたゴンバデカーブースや惨敗は新潟2歳Sのみであるジューンテイク・朝日杯4着馬 なども含め、波乱の使者も主要路線に絡む組と踏まえたら、人気になりすぎた優秀過ぎる結果を先に出した組以上に、これらに肩入れしたくなるのも無理はないだろう。

日本ダービー(東京優駿)2024- 出走予定馬の血統/成績/タイム

悲願の戴冠は突然に…、という物語は、もう5年がかりの挑戦という形で、いよいよ成就しそうな予感がする

アーバンシックの血統

母親の名前が違うというだけで、あとは基本的に、レガレイラと双子のような関係にある血統表は、レガレイラの講評でほぼ全てが開示されている状況。

何が違うかと評するのは非常に困難に等しいから、ハーツクライとアンブライドルズソングというキレの配合ということが、早々の成功の道筋に繋がった、案外最初は評価が芳しくなかったスワーヴリチャードの血統的な強みが、ディープインパクト一族のファミリーで、サンデーサイレンスのクロスが入ることで、より強化されたのだから…。

もし、皐月賞で4、6着と結果に差が出た要因があるとするならば、牡牝の差というよりも、明らかな個体の差である馬格の違いの中から答えを見つけ出したいという話にもなってくるところではあるが、運動能力の違いを評価しようとした時、東京でのパフォーマンスにそう大差がないということと、馬格の差は、距離適性に出ることはあっても、中山でのパフォーマンスに、よりアーバンシックには無駄があったような部分が認められるので、総じて、パワーというか出力が圧倒的に上であるアーバンシックが、意外なほどのダービー適性を秘めていることは間違いない。

また、父の同期であり、自身のファミリーの中にいるダービー馬・レイデオロは、3代母ウインドインハーヘア共通であると同時に、北米系の血筋を純化させた存在であるミスタープロスペクター・サンデーサイレンスの各々3×4で共通する点でも、いずれも、高速皐月賞で差し切れなかった休み明けのグループであり…、などとやっていくと、ますます、ウインドインハーヘアのひ孫が強い時代<キタサンブラック産駒が連続2着中、その前はディープ晩年の産駒がダービーを独占状態>に入って、その流れを先取りのレイデオロの前例を味方につけられそうな状況にある。

決め手でレイデオロ以上なのは明らかだから、マカヒキ以来となる500kg超えのダービー馬誕生に向け、味方につけられそうな要素は全て、買い材料として拾っていきたい。

重賞未勝利馬の割に、評価を一定以上受けるからには、頼りになる勝因となり得る要素は一つでも多くかき集めておきたい。

日本ダービー(東京優駿)2024 - レース展開と最終予想

レース序盤は特に、モタモタしたところのある走りで無駄が多い印象のアーバンシックは、条件戦を2勝したのみで、重賞2戦はいずれも完敗だった。

しかし、いずれも高速決着の中山戦。

分かってはいるが、出来ることとそうでないことがある。

そう腹をくくることが最初からできているからこそ、横山武史騎手のお手馬になってきた側面はある。

きっと、どこかにハードなアプローチを施した途端、気持ちが急に後ろ向きになってしまう面もあるだろうし、キレやすい本質がレースにそのまま出てしまう可能性だってあった。

ここまで、510kgを一度も切ったことのないこの大型馬は、恐らく、陣営としても大事に育てなければならない大器であるからこそ、必要以上に攻めた仕上げはしてこなかったのだろう。

だからこその武史である。

そういうところを理解しつつ、昨日より少しずつ巧くなっている騎手としてのスキルアップは必至の、まさに伸び盛りの主戦にとって、こうした明らかに緩い馬の扱いは結構難しいものであるが、卒なく、乗りこなしている面を素直に認めてあげるべきだろう。

よりによって、新馬戦はダービー2勝の父との親子対決になった。

昆厩舎のいかにも怪しげなマテンロウの馬を逃げさせたその一戦は、癖馬を乗りこなしてこそという誇りも少しある典弘騎手の手を煩わせ、コーナーに入る前も4つ全て回り切った後も含め、再三にわたって、外へ内へと妙な動きを見せて、最後は止まってしまった。

そのマテンロウノカゼは、ここまでは未勝利で、ダート未勝利参入も不発続きで、まさに悪戦苦闘の真っ只中。

武史騎手のアーバンシックはその最初のフラつきに、自身がそこまでついていけなかった部分もあって、少し後ろにいたことで巻き込まれなかったから、ほぼストレスなく、外へ持ち出して、その後も安定して繰り出す鋭い末脚で、内容的には人気通りの完勝と映った。

ただ、以降は少しいただけない。

東京で末脚を引き出す騎乗は狙っていただろう鞍上の意図に必要以上に応えるかのように、序盤から大きく立ち遅れた上で、横の馬の動きで前をカットされたことで、モレイラのサトノオラシオンや、その後自分が乗ることになるアドマイヤベルなどとは、互角に立ち回れない位置からの巻き返しを迫られた百日草特別では、凄まじい瞬発力で大外一気を炸裂させたものの、妙な方向に進みそうな懸念がここの時点で露見する。

で、結果的に別の馬で再び親子対決となった京成杯は、大体真ん中の枠で、厳寒期の正月開催明け直後でもあり、目一杯の仕上げも当然できない状況だから、最高体重の516kgで出走。

案の定、急かさなかったこともあるが、武史騎手は無理をさせないような立ち回りで、少し抑えめの進行を選択したから、気分屋もいいところのダノンデサイル<父の騎乗馬>がボロを噴射しながら、気ままに中団前めを悠々追走の状況で、実際はスローでもあり、勝負ありの展開だったが、うまく大外をまくり上げない進路を、直線入り口で見つけたことで、ロスなく走れたので、見た目には前を追い詰めての2着。

しかし、明らかに中山では死角があるという、皆が思った通りの結果ともなった。

ダービーを視野に、重賞2着馬でも皐月賞に潜り込めた今年、その好機をモノにすべく、何度かゴチャつく場面こそあったが、逃げたというか暴走のメイショウタバル以下にも軽くはない展開になったことで、どうしてもクリアしておきたかった馬込みからの競馬も一応こなし、モレイラ騎手のコスモキュランダが強烈すぎたので目立たないが、ある意味、普通の追い込みに近いポジションから、じっくりスパートの形で、激しい時計の勝負になったところでも対応した4着は、上位が全て主要競走の勝ち馬であり、直後の着順に、ホープフルS連対の2頭を従えた結果からも、確実な進展が見られた、進境著しい若駒のミラクルボトムアップに期待感が増すような好印象を残した。

唯一、そうしたところで懸念があるとすれば、鞍上がダービーを勝っていないという点。

もう一つ、総じて早仕掛けが多い横山武史流のスタイルとのマッチングの問題も、大一番では死角になってしまいかねない材料となる。

如何ともしがたい、滅多に現れないはずの無敗の皐月賞馬が続々登場の時代に入り、モノの見事に、コントレイル以外全敗の不穏な流れを一つ作ってきてしまったエフフォーリアとソールオリエンスの横山武史でもあるから、スローの展開からの立ち回りで、後ろからも差され、前も残したという結果は、実に虚しき、非情な結末のそれである。

メジロライアンとの挑戦から20年近く、紆余曲折もありながら、トップジョッキーであり続ける中で、絶好機を驚異の雨馬場という究極の後押しまで味方につけ、皐月賞惨敗を汚名を見事に晴らした父の初戴冠から、早15年。

未だにG1に乗れるどころか、時に、大きな障壁ともなっている典弘騎手の現役続行は、邪魔になる要素であると同時に、重要な成長ドリルの一部分でもある。

必要以上に意識することはなくとも、明らかに、兄の和生騎手とも違うポジションを狙った勝ち気なライアン・ムーアスタイルの体得は、未完成でありながらも、自身の技術と実績が確実に積み上げられた現状、結果的に、父の3000勝超えでキャリアを終えるだろう、競馬界における偉大なる功績に迫る記録を残すことがほぼ見えている状況にもなってきた。

まだ1000勝にしばらく届かないが、馬乗りの技術向上に加え、ポジショニングの精度がもっと上がれば、途中で倒れない限り、2500勝は間違いない。

若き日の父のように、海外にもっと出ていく時間を作れば、友人でもあり、ライバルでもある少しだけ年上の坂井瑠星騎手のように、ネクストユウガ世代の筆頭格として、世界を舞台に戦えるようになるだろう。

このダービーでの課題は、馬が言うことを聞かない可能性があるという前提に立って、父が2度勝ったこのレースの戦法と同じように、皐月賞よりも前でどう走らせるかの一点に絞られる。

最近、積極策というよりも、スピード競馬への対する原理原則的な戦法を忠実に守りつつ、誰よりもポジショニングというところでライバルの攻め手を目減りさせる技術を遺憾なく発揮するモレイラ騎手に対し、少し、真っ向から勝負を挑み過ぎている武史騎手の姿が、ちょっと気になる。

東京競馬場でそれをしてしまうと、マジックマンの馬との力関係が互角以下であるなら、好勝負は難しい。

正しいようで、明らかに相手を意識しすぎている印象は拭えない。

話は少し脱線するが、瑠星騎手は勇ましき挑戦・現地流では侵略を企図したものとなったケンタッキーダービーでの凄まじい激闘を終え、本命級のライバルであったシエラレオネ<余計な話題までも提供する天下のチャド・ブラウン厩舎>と鞍上のガファリオン騎手との再三にわたる接触事象に対し、決定的な不利を受けていないと公言し、アンフェアな面はあったとされ、相応の過怠金は科されたものの、降着とはならない公算が大きい。

揉めると案外ややこしいことも、彼は知っているのだろう。

客観的な事実から述べている面もあるのだろうが、誰が悪いというわけでもないことが起きた時の対応とすれば、花丸もつく大合格である。

翻って、モレイラで勝ったプリンシパルSのダノンエアズロックを強く意識過ぎた仕掛け=ファビュラススターの良さを引き出せなかったことは、少し反省したい。

常にそうしたトライ&エラーを繰り返す世界にあって、アーバンシックのような内面的にも幼さを抱える若駒は、いつも相性のいい騎手、もっと言えば、その時にフィットした鞍上を求める。

最後はマーフィーでJCを勝ったスワーヴリチャードは、前年の大阪杯がミルコとのコンビだったわけだが、元は、ダービー連覇二人目の偉人となった名手・四位洋文現調教師が中心となって作り上げたワンダーボーイである。

ビッグスケールではあるものの、注文が色々とつく。

正攻法に近いダービーは、ルメールの執念に屈した2着だったが、その後の活躍を見れば、四位洋文あってのスワーヴリチャードだったことが、今更ながら、クローズアップされてくる。

この年のダービーは、皐月賞で後方にいた組の好位付けやそこまでの押し上げがあった馬同士の決着。

早めに仕掛けきれなかったミルコは猛然と迫るも3着止まりで、横山典弘のマイスタイルが、超スロー以外の様々な理由で逃げ粘るという結果。

松山弘平も戸崎圭太もハマらなかったこのダービー参戦ジョッキーは、その多くが再度登場する。

しかし、ここにいなかったモレイラと横山武史が追加招集で、川田将雅はサトノアーサーよりは内面重厚なシックスペンスで挑むという構図。

ダービーを勝ちたい戸崎圭太を巡る争いは、今年も熾烈を極めるわけだが、ずっと短い期間、実は戸崎騎手とそっくりな惜敗の歴史をずっと年下の武史騎手は、ここ5年繰り返している。

父の乗れなくなったダービーで、初参戦となったリオンリオンとの大逃げは、少しやりすぎもあったが、結果的にダミアン・レーンの成長にも繋がり、浜中俊のあっと言わせるダービー制覇の副因ともなった。

翌年は自分が乗れなくなったオークスで、父がウインマリリンを自分が乗っているかのように理想の立ち回りをして、際どく2着に入った。

エフフォーリアやソールオリエンスでは、惜しいだけではない何かの不足分が敗因となったが、これは、断じて早仕掛けが原因ではない。

馬の適性やスローの展開への適応力の差が、わずかに出ただけ。

今のソールオリエンスではないから、昨年時点の彼は力負けではなかった。名誉のためにも。

武豊でも10年と少し、父典弘も20年余の時間を要したダービー初制覇は一日にしてならず。

ミルコのような例は極めて稀であり、ルメールでさえも、惜しいとだけでは説明のつかない3、2着を経た後の戴冠という例がある。

まさに好機である。

川田将雅にもルメールにも、再度のダービー獲りへの期待がかかるが、難しい馬に乗る時ほど、主戦が乗るのが当たり前のダービーではいい結果がついてくる。

ゆっくりでも、ちょっとずつ馬が成長をして、確実に、自在性が見えづらい範囲でも、わずかながらでも進化しているものがあると、持ち味を理解する鞍上は、アレンジを加えやすい。

ここ10年で、新馬戦の時と同じ騎手が乗っていた馬が5勝、直前の皐月賞を中心とした主要レースからの継続騎乗というケースでは、実に同期間8勝という傾向。

ダミアン・レーンには、屈辱のサートゥルナーリアでの代打・ボール球=出遅れ・大まくり・展開読み間違いの3球連続空振りの失態があるから、理由あって、前走乗れなかった福永現調教師のシャフリヤール<シーザリオ産駒のルペルカーリアがいたのでは、先約云々以前に断らざるを得ない、プログノーシスに佑介騎手が乗り、この馬には川田騎手という不思議な取り合わせの毎日杯だった>のケースは除き、例外ほとんどなしの鉄板データ。

妙なもので、この前走から継続の傾向は、昨年に至るまで、厩舎とオーナーサイドで揉めまくったあのシリウスシンボリ<加藤和宏・士津八師の父→岡部幸雄→加藤再騎乗でダービー制覇>とそのシャフリヤールの件があったのみで、昨年は歴史的快挙だったと言えるほど、鉄則のダービー制覇のメソッドになっていた。

50年以上続いていた、テン乗りはおろか、前走からのチェンジも実質タブーの原理原則論を取っ払ったのは、秘策を講じて、ダービー馬を再び生み出したドゥラメンテの堀宣行をおいて、他には到底不可能の芸当。

川田=シックスペンスがそこに挑み、怪我で乗れなかったルメールはG1馬を駆り、正面突破を目指す戸崎に、皐月賞を名誉ある撤退で走れずとも、春に走れるチャンスを残した横山典弘のダノンデサイルも侮れないし、武豊もモレイラもいる環境。

しかし、自分の馬に不安がある時、自信をつけることのできる根拠を得られるならば、主戦騎手ほど有利なこのダービーに、もろもろ、足らない何かだらけのアーバンシックに跨り、東京のロングストレートこそ主戦場という確信を得た横山武史ならば、自然と、正しいポジションをモレイラの様に取れてしまう可能性がある。

無論、いつものように立ち遅れてしまう危険性もあるが、そうなったとて、百日草特別の経験がある。

エフフォーリアのイメージで乗り、武豊にだけできるアドマイヤベガやキズナ、ドウデュースのレアケースである直線一気の好例を頭に入れて、名手たちが駆るそれなりのクラスの馬に対抗できれば、最後には幸運の女神がほほ笑んだかような直線の攻防に…、と信じることしか我々にはできない。

くれぐれも、スキルヴィングのような展開だけは御免である。

勿論、坂井瑠星とドゥラエレーデのやっちまった落馬も切なかったが、そこで未来が奪われる人馬は誕生しない。