フェブラリーステークス2016 回顧

モーニンには距離不安もあるとか言われつつ、高速決着当然の馬場状態で、サンビスタを覚醒させたミルコ・デムーロが鞍上。

コパノリッキーが何もできないまま終わってしまったせいもあるが、直線お釣りのなくなった先行馬を交わし去った後の力強いストライド、そして、今までにない前にいる馬を押して押して追いかけていく形、新王者のそれに相応しい「歴史的覇者」誕生を実感させるだけの風格や迫力を有していることも証明し、奥行きという面にプラスアルファを作り出せたことでも、ミルコマジックが今回も炸裂したと言っていいだろう。

先入観のない馬に乗った時のパフォーマンスは、時に、フランキーをも凌駕する強烈なものがある。

血統面でも、ストームキャットの直系の馬にしては、変に癖のある常識にかかってこない面もなく、異様に主流血統が重なり合うような難儀な血統構成ではないから、早熟になったり、異常なほど晩成なわけでもないのは、血の進化もあるにしても、日本に来た同系統の馬の中では、最も優秀な馬であったということだろう。

母母父はアドマイヤコジーンの父コジーン。

単調な先行タイプと高を括っていると、いつの間にやら古馬の一流馬になっていたりすることがある。

その一面が、いい方に出たようだ。

ただ、今回は、勝ち馬のスピード能力についてではなく、2着以下の、ナリタハヤブサのレコードくらいは走った馬たちを褒めてあげたい。

本当によく頑張っていた。

ノンコノユメは、いくら小回り向きではないにしても、あの超不良馬場の大井のジャパンダートDで、見たこともないような追い通しのレース中盤の一生懸命な追走から、どう考えてもクロスクリーガーの先行押し切りが決まる展開を覆し、最後は、猛然と追いこんできたこちらの方が、ゴール前流すほどの余裕を残して、あっさり交わし去ってしまった馬だ。

1番人気は当然。

でも、武蔵野Sが58.2秒、今回は、GⅠ馬のコーリンベリーが結果として先行したことによる安定した逃げによる58.4秒の流れで、ついていけないどころか、馬群が道悪でバラけるのをいいことに、悠然と大外一気をかましてくるから凄い。

0.2秒差届かずの2着。

休み明けであっても、加藤調教師は、出来得る限りの最高の仕上げをしてきていたように思う。

+2kg以上にパワーアップを感じ、中間の調整を有意義な時間にすべく、いい意味で作られた中だるみは、成長を促すための理想的なレース間隔を作った。

無論、どこか使っていれば、それはまた違う結果だった可能性を秘めるのは事実だ。

しかし、若きチャンピオン候補の馬が、東京マイルを1:34.2で走ったことは、純粋に素晴らしいパフォーマンスだと言える。

素直に、勝てなかった点以外は、称賛されるべきだ。

レースの展開が、モーニンの底力をあまりにも出しやすいものになってしまったがために敗れたに過ぎない。

そして、3着のアスカノロマン。

一介のオープン馬は、今や、スピード勝負にも対応できる安定勢力になったことを、前回の東海Sとこのハイレベルマッチで証明した。

ずっと、ダートの比較的長めの距離を使われてきたが、アグネスデジタル<マイルGⅠ4勝>×タバスコキャットという配合で、ノーザンダンサーの母ナタルマに行き着く世界的名牝系の出身者で、むしろ、スピードと底力が最大限引き出される環境は、最高の舞台であったように感じる。

一年前の京都戦を圧勝した後、ちょっと進むべき道を迷いそうになったが、地方行脚に入る前に、中央の異質なスピード競馬で勝負し、かつ、末脚勝負に活路を見出す直線の伸び方だったから、使い詰めで多少は疲れはあるだろうが、まだ5歳馬。

未来は明るい。

人気馬は、大体上位に来た競馬。

7着コパノリッキーの周りにも、道悪なら、ハイペースの時計勝負なら、という穴馬が来たのだが、きっと、1600Mでのスピード比べでは、これくらいの順番であったということなのかもしれない。

6歳の、たまに強烈に強い先行馬・コパノリッキー。

どうも、走りに癖が出てきて、直線では手前を替えてくれないという話。

昨年、このレースを不本意な位置取りから、直線完璧な走りで抜け出し連覇を決めた後、脚を傷めて春を休んだが、若手で、また芸の引き出しが多い馬が相手だと、上がり目の面も含め、今後はなかなか出番は少なくなるのではないだろうか。

何しろ、自身の走破時計1:34.6は、一昨年ここで勝った時のベストタイムより1.4秒も縮めているのだ。

見ようによっては、まだ伸びしろは残っている気もするが、本音は、良馬場のパワー勝負向きという、馬体の印象通りの馬だからなあ…、であろう。

勝ち馬のレースではあったが、この結果は真摯に受け止めるしかない。