フェブラリーステークス2017 回顧
フェブラリーSは、やはり他のダートGⅠとは一味違う。
モーニンが強気に攻めていける展開になると思っていたら、前走でも本当は行きたかったはずのインカンテーションが、もうちょっと速いだろうコパノリッキーや、攻めの手に出て結果かなり粘らせたニシケンモノノフの横山騎手に諦めさせて番手からの競馬をさせた、大きなレースでこそ好騎乗が光る藤岡康太騎手に誘われて、本気の逃げを見せた。
おかげで、追い込み勢もそれなりに力を出せる条件になり、カフジテイク陣営が目標とした想定の展開より、恐らくは0.5秒以上速い流れで、この馬だけは、力は出し切ってもキレで何とかできるような勝負ではなかったから、どうもしようがない3着に止まった。
正直、スタートの出負けは想定内、そこからのカバーリングは乗れているミルコのリズムの良さを考えたら当然のこと、うまく外に出せて、誰よりも手応えよく抜け出してきたのだから、これは楽勝と思ったゴールドドリームは、7歳の不沈艦・ベストウォーリアとの叩き合いという思わぬ展開で、結構危ない内容になってしまったが、何とかゴール前ひと踏ん張り、もう一度頑張ろうという気になって、またいつもの飛行機ポーズをしたくなったデムーロ騎手の気持ちもわからないではない。
褒めるべきは、ずっと2着でも自分を見失わなかったベストウォーリアの方か。
良馬場としては極限に近い時計での決着に、名うてのダートの古豪がこの時期に体が自在に使いこなせることを証明するように対応したことには、陣営はもちろんのこと、感服するよりほかはない。
惜しくも何ともない2着を4度続けて、しかし、ここ2年全く崩れていないこのアメリカ産馬は、本物志向のダート馬が増えたこの日本においても、本場の故郷で最も評価されるタフさの体現したことは、今までの鈍足を競うようなダート競馬のイメージを完全に払しょくしてきたこのレースであるからこそ、その意味合いは大きいように思う。
しかし、また2着。
南部杯連覇は共に楽勝でも、ここ2年で2着6回、3着3回だ。
褒めることは筆者の性には合わないのだが、そうでなくても、そのやり方が難しい。
6歳以上の馬が連対することすら難しいこのレース。
データを見たら、その意義を大きく称えるべきと言えるわけだが、少し切なくなってしまう。
陣営には、やっぱり残念だというコメントを発表願いたい。
父の名を世に知らしめることも必要のない、今のダート戦線における、特にGⅠカテゴリーでのゴールドアリュールの存在感。
時期が時期だけに、さすがに4歳馬ではちょっと厳しいレースだから、10年で3勝にとどまるわけだが、その内2勝はゴールドアリュールの産駒である。
未来のフェブラリーSの覇者などと、結果的には揶揄される格好で過去の才能と捉えられることも多い前年のヒヤシンスSの覇者・ゴールドドリームは、いかにも気分屋でノリすぎでもノリが悪くてもダメな時にやってしまう「逆ミルコマジック」で、気性の悪いところだけを前回は出してしまい、ひどい負け方をしてしまった。
しかし、乗り方が合っていたからと言って、あの時のサウンドトゥルーと大野騎手の完璧なレースぶりに敵うと思わない。
東京マイルの適性は前述の通り。それをそのまま出し切ったから、今回はちょっと遊びながらでも勝ってしまったゴールドドリーム。
パドックを周回する16頭の出走馬の内、唯一といっていいほど幼さを見せていた彼を、返し馬から丁寧にエスコートしていたのは、紛れもなく絶好調男に確変しつつあったミルコだった。
危なさがそのまま脆さとなることのある0点競馬もあれば、怪しいけれどもとてつもなく自信に満ちた競馬をして120点の競馬もできるのが、このデンジャラスコンビなのである。
好時計決着に影響したように思われる砂の厚さに関しては、事前の春一番によってかなりの砂が飛ばされた可能性についても、少々考慮すべきこともあるかもしれないが、勝ち馬もまた、勝つべくして勝ったということは、素直に評価しなければいけないだろう。
このレース。超出世レースとして知られた中山時代のユニコーンSの勝者に、優先的に勝機を与えてきたが、東京に定着後はカネヒキリ以外全敗であった。
それが今年はワンツーフィニッシュである。
1400でなら世界制覇も夢ではないカフジテイクは、本質的な適性の違いで、手痛い敗戦を喫することになった。
成長あるのみである。