ホープフルステークス2023の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

ホープフルステークスの予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第40回ホープフルステークス(G1)
グレード重賞(G1)
日程2023年12月28日(木)
発走時間15時40分
開催場所中山競馬場
距離芝2,000m
コース右回り
賞金7000万円
レコードタイム1:58.9

ホープフルステークス2023の予想オッズ/出走馬(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

ホープフルステークス2023の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
取消取消ゴンバデカーブース松山 弘平牡256.04.93美浦・ウッド・良(ムーア)
5F 65.2-50.3-36.1-11.5(強め)
美浦・ウッド・良(助手)
6F 82.4-65.8-50.9-36.5-11.9(G前仕掛け)
12ヴェロキラプトル戸崎 圭太牡256.016.66栗東・坂路・良(助手)
800m 57.7-41.6-26.3-12.5(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.0-39.1-25.1-12.1(末強め)
23アンモシエラ藤田 菜七子牝255.089.113栗東・坂路・良(助手)
800m 54.7-40.0-25.6-12.7(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 55.1-39.8-26.2-13.0(馬なり)
24アドミラルシップH.ドイル牡256.063.012美浦・ウッド・良(石川裕)
5F 69.0-53.7-38.9-11.1(馬なり)
美浦・ウッド・良(横山琉)
5F 67.9-52.6-37.9-11.5(強め)
35サンライズジパング菅原 明良牡256.0125.915栗東・坂路・良(助手)
800m 55.1-40.4-26.5-13.0(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 53.0-38.7-25.0-12.1(馬なり)
36シンエンペラーB.ムルザバエフ牡256.04.11栗東・CW・良(ムルザバエフ)
6F 81.4-66.9-52.4-37.5-11.8(強め)
栗東・坂路・良(国分優)
800m 56.9-41.2-26.3-12.1(馬なり)
47テンエースワン横山 和生牡256.0190.816栗東・CW・良(河原田)
7F 97.7-67.1-52.6-37.7-12.7(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 54.9-39.4-25.7-12.9(一杯)
48インザモーメント佐々木 大輔牡256.0125.814栗東・CW・良(佐々木大)
7F 99.8-67.6-52.3-37.2-11.3(末強め)
栗東・坂路・良(助手)
800m 56.1-40.9-26.6-13.2(馬なり)
59タリフラインT.マーカンド牡256.035.310美浦・坂路・良(助手)
800m 63.6-46.4-29.7-14.4(馬なり)
美浦・ウッド・良(助手)
6F 81.9-66.4-51.5-37.3-12.0(強め)
510シリウスコルト三浦 皇成牡256.026.59美浦・ウッド・良(三浦)
6F 81.9-66.4-51.9-37.4-11.5(直強め)
美浦・坂路・良(助手)
800m 52.3-39.0-25.9-12.8(馬なり)
611ショウナンラプンタ鮫島 克駿牡256.012.25栗東・坂路・良(助手)
800m 57.0-40.9-26.0-12.4(馬なり)
栗東・坂路・良(鮫島駿)
800m 58.6-41.2-26.2-12.3(馬なり)
612ディスペランツァL.モリス牡256.038.311栗東・坂路・良(モリス)
800m 51.1-36.8-23.9-12.4(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 55.9-40.2-26.3-13.1(馬なり)
713レガレイラC.ルメール牝255.04.12美浦・ウッド・良(助手)
7F 97.4-66.3-51.8-37.1-11.1(馬なり)
美浦・ウッド・良(助手)
6F 83.8-68.3-53.6-39.0-11.7(馬なり)
714ホルトバージ今村 聖奈牡256.0221.917栗東・坂路・良(今村)
6F 81.9-66.4-51.9-37.1-12.0(一杯)
栗東・坂路・良(助手)
800m 55.0-39.6-25.7-12.7(馬なり)
715ウインマクシマム松岡 正海牡256.019.47美浦・ウッド・良(松岡)
5F 69.1-53.3-37.8-11.6(馬なり)
美浦・ウッド・良(松岡)
5F 69.3-52.3-36.3-11.0(一杯)
816センチュリボンド武 豊牡256.09.04栗東・坂路・良(助手)
800m 54.9-40.2-26.1-12.9(馬なり)
栗東・CW・良(助手)
6F 83.7-67.1-51.6-36.5-11.5(G前一杯追)
取消取消サンライズアースM.デムーロ牡2---栗東・CW・良(M.デムーロ)
6F 84.4-68.6-52.9-37.7-11.7(G前一杯追)
栗東・坂路・良(助手)
800m 55.1-39.5-25.5-12.6(末強め)
818ミスタージーティー坂井 瑠星牡256.019.48栗東・CW・良(助手)
7F 99.2-67.6-53.8-38.7-11.9(馬なり)
栗東・坂路・良(助手)
800m 56.1-40.4-25.7-12.2(馬なり)
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬1回3回0回18回4.5%18.2%18.2%
先行馬10回9回6回58回12.0%22.9%30.1%
差し馬9回7回12回61回10.1%18.0%31.5%
追い込み馬0回1回2回75回0.0%1.3%3.8%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠2回1回2回19回8.3%12.5%20.8%
2枠5回3回4回17回17.2%27.6%41.4%
3枠2回2回2回24回6.7%13.3%20.0%
4枠2回3回3回28回5.6%13.9%22.2%
5枠4回1回1回29回11.4%14.3%17.1%
6枠3回5回5回25回7.9%21.1%34.2%
7枠1回2回3回33回2.6%7.7%15.4%
8枠1回3回0回37回2.4%9.8%9.8%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト28回26回21回123回14.1%27.3%37.9%
ハーツクライ20回18回15回135回10.6%20.2%28.2%
ハービンジャー15回11回16回129回8.8%15.2%24.6%
エピファネイア14回13回13回80回11.7%22.5%33.3%
ルーラーシップ13回10回17回119回8.2%14.5%25.2%
キングカメハメハ10回8回8回45回14.1%25.4%36.6%
ロードカナロア10回8回6回59回12.0%21.7%28.9%
モーリス10回8回6回43回14.9%26.9%35.8%
スクリーンヒーロー 8回7回1回63回10.1%19.0%20.3%
ドゥラメンテ7回11回12回68回7.1%18.4%30.6%

ホープフルステークス2023 - 過去10年のデータ傾向

消えたのはいずれも、前走が少しピントがずれたところを使って勝ってきた名門厩舎の馬

ここ2年、大外しの1番人気馬の影響で、3頭のいずれかが大穴という感じだから、穴党を大いに喜ばせている。

単純計算、そうした軸馬候補が消えると、準じて評価される馬、そうであるべきはずだった好走馬が順当に走って、4着までならおかしくない伏兵で繰り上がるというような構図で、万券フェスティヴァルが絶賛連続発生中の12月28日となっている。

とはいえ、その前の怪しげな1番人気に応えたタイムフライヤー/単勝4.2倍、コントレイル/東京スポーツ杯は走りすぎに思えたが、どうも違ったらしいという勝ち方 などの勝ち馬に相応しい王道の中距離路線組に対し、サートゥルナーリアは萩S、東京スポーツ杯を無難に勝ち上がったダノンザキッド両者は無敗で、三冠馬となるコントレイルとはさすがに格は違うものの、相手関係も重要な2歳戦だけに、使ったレースとその前段階における準備が滞りなく行われたとするのが筋。

一方、コントレイルの矢作厩舎から登場のミッキーカップチーノは、絶好位から正攻法抜け出しが決まらず5着。

その前年のレースレコード決着の際は、サウジアラビアロイヤルCから3連勝を目指した超名門の国枝厩舎にいたコマンドライン。

怪しい馬を連れてきたとできるゴンバデカーブースとシンエンペラーとの、同じコネクションが生むデジャヴに期待しながら、穴党のコンピューターはその一点張りでフル稼働である。

東京スポーツ杯組でまともなのが来るとすれば関西馬

昨年は実質、先行する2頭だけの競馬になってしまって、少しだけ後ろにいたムルザバエフ騎手のドゥラエレーデが僅差の接戦を制した。

ニシノデイジーは重賞連勝中で、関西の期待馬プラスカタカナ騎手のプラスアルファの能力にやられたが、精一杯頑張ったとも思えた3着。

それ以外は無敗王者のコントレイルと翌年のダノンザキッドだから、案外、主流と見ていると痛い目に遭いそう。

ショウナンラプンタに、同じ4着=ドゥラエレーデの重荷を背負わせていいものか考えものだが、角度を変えると、いかにも人気になりそうな馬が他のグループである確率というか、確実にそっちの方にいるとなれば、穴でこそということで、人気馬は来ないと決め打つなら、この良血の高馬は面白いのかもしれない。

急に衆目の一致する人気馬に肩入れし始めた手堅い筆者にとっては、非常に迷惑な存在となってくる。

ゴール前の読みをおかしくさせる、京都2歳S組が描きだす幻影

実質第一回のタイムフライヤーと、昨年大穴を生む原因となったペースメーカーのつもりが、大いにお釣り十分だった横山典弘騎手のトップナイフなど、やけに2着馬が強い。

いずれもここが5戦目以降であり、トレンドにない馬。

超正攻法の2戦無敗のシンエンペラーのような馬は、意外と距離に関係して、間隔も中4週以内で厳しいから、勝ち切った馬ほど出てこないが、コントレイルの逆バージョンでレコード勝ちのシンエンペラーは、エネルギッシュな存在であることに変わりはない。

あと、前述の好走馬たちは、サートゥルナーリア、ヴェルトライゼンデ、キラーアビリティなどと同じハイレベルになりやすい萩Sの連対馬。

キラーアビリティだけ2着だったが、勝ったのは翌年にNHKマイルCを勝つダノンスコーピオン。

前走がかなりわちゃわちゃしたところで、穴の2着がハービンジャー×メイショウサムソンという、ノーザンダンサーが濃くクロスするプレリュードシチーだったというあたり、レースを陰で支配し、本質的に格上だったはずだが、何しろ、展開がタフすぎた。

コントレイルはライアンに走らされたことをすっかり忘れていたから楽勝だったが、勝つにしても、接戦が予測される。

ムルザバエフ騎手の腕が今年も試される。

かなり邪道のようで、コマンドラインの挑戦は存外間違いではないような気がしてきた

朝日杯にも直結し、当然その先にあるNHKマイルCともリンクするサウジアラビアロイヤルCは、ことマイルということで、日本では牝馬にとって最も重要な距離<三冠をとるリバティアイランドは、オークスの前の4戦全てがこの距離>であるから、グランアレグリアにまではなれないまでも、少し前ならクラヴァシュドール、今年は断然人気に推されたボンドガールが登場。

いずれも勝てなかったから、ブルドーザーぶり全開のグランアレグリアとは違って、クラシックではまだ早いのだろう。

一方、牡馬でこの路線に挑むには…。

朝日杯がある以上、マイラーと考えれば間違いのない挑戦とはならない方をとるものだが、後にスプリンターズSを制し、直前はデイリー杯を勝っていたジャンダルムが、こちらに回ってきた。

明らかにノースヒルズのクラシック戦略であり、また武豊騎手と池江調教師の生まれた時からほとんど同じ空気を吸ってきたという深い関係性も影響した、ユタカのために獲りたいという思いがわずかに届かなかったという人間臭い一面も持ちつつ、本質的には、クラシックを競う距離なのだから、日本では必ず10Fの3歳主要タイトルが用意されている北米式も取り入れている以上、マイルとワンクォーターマイルにワンハーフマイルと、400Mでわざわざ選手権距離を作る芝戦線は、モノの本質を問うべき場面では、最も重要な結論を孕む可能性が隠されているはずと類推される。

ならば、結果的に力及ばずだったコマンドラインやジャンダルムの戦いは、本質的な馬自身の適性のズレを露呈したまでに過ぎず…。

そこまではまだ言えない、未来型クラシックウイナーであるゴンバデカーブースは、直線一気のオーダーの掛からぬ、東京マイル2戦目で、驚きの脚力を見せ、牝馬の代表級だったボンドガール、悲惨な朝日杯は残念至極のクラシック候補であるシュトラウスらを相手にしなかった。

右回りが初めてはおろか、だいたいがコーナー4つが初めてという馬が、今は、クラシック初戦の皐月賞にも登場し、どんどん勝っている。

本来なら格上だったのに、西からおかしな魅力の凱旋門賞のロゴ入り印籠を見せつける外車が現れて、さてどうなることやら。

ホープフルステークス2023- 出走予定馬の血統/成績/タイム

日本が世界に誇る名伯楽でかつ敏腕調教師が、東西に分かれて並び立つメリットが、このレースの更なる発展に繋がる一戦

ゴンバデカーブースの血統

何か難解なパズルを解くために設定されたストームバードの直系同士に掛かった3×3の謎について、本質的に突き詰める意味がないことを、先に示したのが、このゴンバデカーブース。

直後に園田と川崎で連続重賞好走のイーグルノワールが出現。

いずれもが、矢作厩舎の世界戦略に欠かせない芝・ダート双方のタレントと堂々勝ち合うあたり、彼らを送り込んだブリックスアンドモルタルの種牡馬として非凡さを、早々に独力で見出したようなところがある。

大種牡馬にもなった三冠馬のディープインパクト=ゴンバデカーブースの母父 は、暮れの旧ラジオNIKKEI杯をダノンバラード&武豊コンビで制するまで、新馬だけは勝つけど…、などと揶揄されていた。

まあ、本物=真の意味での後継 を出すまで10年かかったが、天国のディープは、この出世レースで孫世代が活躍することを毎年楽しみに待っているはずだ。

やや脱線。

北米で芝オンリーでキャリア全うの馬など、80年代まではいただろうが、伯楽チャド・ブラウンは、ついにブリックスアンドモルタルをダートコースに持っていくことはなく、キャリア13戦のうち、わずか2敗したのみ。

この辺り、ゴンバデカーブースの母父のディープインパクトと瓜二つ。

ディープは3位入線、禁止薬物検出で失格の凱旋門賞を含めても14戦12勝。

何だかいい配合ではないか、ゴンバデ君。

ファミリーはキングマンボを産んだ偉大なるミエスクと、現役時代は同じヌレイエフ産駒として切磋琢磨したソヴィエトスターと同じで、4代母のリフカはその半妹。

また、両者の姉にあたるザベリワンは、オールドファンには懐かしい、あの第1回ジャパンCで1番人気3着の北米産の名牝。

勝ったのも北米の芝馬であるメアジードーツ。

勝ち馬は5歳で最後のJCが33戦目なので、時代背景から何も不思議ないが、一つ年長のザベリワンは、何と公式記録疑わしいくらいのキャリアで、本格化前のダート戦が半数以上のタフネスガールとはいえ、ジャパンCは70戦目という記録が残る。

ゴンバデ君の未来は明るい。ただでは転ばない馬には、最初に大きなタイトルがあった方がいいようにも思う。

ホープフルステークス2023 - レース展開と最終予想

ゴンバデカーブースは、サウジアラビアロイヤルCで一堂に会した「ダミアン・レーンさんに感謝する会・鞍上変更の回」で離れた3番人気だったという馬だが、新馬戦を振り返ると、レーン騎手は、柔軟な騎乗スタイルを日本で学び、それを還元した直後ということで、新馬をバンバン勝ち上がらせる過程で、逃げたくはないが、逃げようと思うライバルがいないのであれば<ここにもルメール騎手の1番人気馬がいたが引いた>、それは高速の東京のままであるから、主導権を握ってしまおうというだけのことで、12-12のラップで直線入り口まで進行も、そこそこの上がりという感じの34.7秒でまとめ、1:34.8の好タイムで勝ち上がっていた。

十分にマイル戦線でも、1800などむしろ得意な方なのではという見立てをした筆者の中では、仲間というか、同じ時期にレーン騎手が駆って東京の新馬を快勝のボンドガール・川田騎手、シュトラウス・ルメール騎手らは強敵と思いつつ、何となく、程よいズブさという部分でも、曖昧な記憶ではあったが、ここでも大いにこいつらと好勝負なのではないかと、妙味も考えた本命の印を打っていた。

ところが、より人気になった牡牝いずれもが、立ち遅れ後軽く暴走しかかるほどに気持ちを押さえられなくなると、それに釣られるように、松山騎手に乗り替わったゴンバデカーブースも行きたがって、もはや、カオスの様相を呈していた。

しかし、モノの本質というやつは、世界の東京マイルだけに、如実の現状の完成度や将来性を示すものだ。

最も先に折り合ったのは、早めに手を引いて、それこそ、あの朝日杯で魅せた武豊の如き手綱さばきで松山弘平が抑え込んだゴンバデカーブースだった。

実際はここではすでに勝負ありだったが、東京開幕週で、前に行って勝ったイメージの先行する3頭だけに、完全に位置をとれずに終わった感じのゴンバデカーブースが負けることを皆想像したが、ボンドガールもシュトラウスも、直線は弾けず、のびのび、終いほどストライドが大きくなったゴンバデカーブースが、レース中でも最速に等しい11.3秒でラストは締め、勝敗は明確な形で決した。

未来を懸けた、正しくフューチュリティSの趣であったこの組から、シュトラウスは相変わらずというか、マーカンド騎手自身の若さもプラスにならず、勝ちに出る解法の策がハマらず、哀れにも自滅した朝日杯の後で、ジュベナイルフィリーズに出られなかったボンドガールも含め、厄を早めにふるい落とさねばならない、ネガティヴイメージ先行のサウジ組となってしまっているから、ここは使い分けという側面もありつつ、本命正統派王道路線を進行する道を歩む、ブリックスアンドモルタル<BCターフ勝ち>産駒でかつ、ディープインパクトの孫世代としての在るべき姿を示すべき立場になったから、勝ち切りたいところだろう。

彼を管理するのが、シュトラウスの父でもあるモーリスを、力通りに走る競走馬に作り変える難題に取り組み、日本競馬のエース級にまで育てた美浦の堀宣行調教師だ。

同時期にはドゥラメンテという、その名の通りのモンスターをクラシック戦線に投入し、僚友だったサトノクラウン共々を大成させながら、誰でも走る馬を作れるドゥラメンテではなく、サトノクラウンの産駒であるタスティエーラで、ダービーを制する、ある意味で離れ業をやってのけている伯楽でもある。

ただならぬ人物であることは、キンシャサノキセキやロックドゥカンブといった南半球産の半年遅れで生まれるハンディキャップを持つ才能を、3歳の内にオープン馬にしたという、驚異的なスキルを見ただけで、すぐに理解できた。

どういうわけだか、オーストラリア繋がりでは、リアルインパクトも安田記念を3歳で勝ったあと<これも凄まじいレコードではある>、1500Mの当地G1を勝った。

リアルインパクトは似たような性質のラウダシオンが、自身の勝てなかったNHKマイルCを制し、溜飲を下げる1勝を挙げている。

思えば、シンエンペラーという人気馬を送り込む矢作芳人調教師も、遊び惚けていた開成高校時代、心を入れ替えて競馬の世界に進もうとした決意した時、まだ大井で調教師をしていた父和人元師に、中央に行けということと共に、海外の競馬のことを勉強するようにと、JRAで調教助手になる前は、オーストラリアで武者修行をしていた。

その道程と差異はない愛弟子の坂井瑠星騎手も、全く同じような過程を踏んで、今信頼を勝ち取った立場にいる。

言わずもがな、矢作師が国際派であることはつとに知られることだが、堀師に負けじと、オーストラリアの頂点に近い南半球最大ともされるG1・コックスプレートを、元は眠れる森の一少女だったリスグラシューで制している。

勉強をもう少ししていれば、東大でなくとも、名門大学くらいには楽に入れたはずの矢作調教師は、言っても高卒なのだが、そのインテリさについても、かなりの健筆ぶりから、これもまさに言うまでもなくという話。

しかし、日大出身でかつ長く二ノ宮厩舎で働いていたという堀調教師も、眼鏡姿という印象以上に、競馬インテリなのは確かだろう。

サトノクラウンなんて、誰がどう考えても晩成なんだから、おまけにマンハッタンカフェ肌で8歳で初G1勝ちのカンパニーを出したクラフティワイフ系というタスティエーラが、ジャパンCの日にデビューなんて、ある意味当然なのだが、半年でもうダービー馬である。

足し算で考えても間に合わないはずなのに、何かを飛ばしながら、3戦目でトライアルのディープインパクト記念を使った時点で、確信があったのだろう。

ドゥラメンテの経験は、確実に生きていた。

それと同期のサトノクラウンはじっくりと育てる余裕のローテをとりつつ、その仔には、ドゥラメンテ級の中間ハードローテを課し、内面の強化を図った印象も残る。

皐月賞は勝ったも同然の内容だったが、矢作調教師がリアルスティールの時に感じた感慨と、その逆襲に遭ったサリオスと共に寂しい背中で中山から帰っていったあの日が、一気に走馬灯のように眼前で再現された一戦。

結果、そのいずれでもない逆転で、父の無念を晴らすと同時に、ドゥラメンテ以来となる堀調教師2度目のダービー制覇に繋がった。

ドゥラメンテ・堀宣行、コントレイル・矢作芳人ということは、まさに、日本競馬そのものである。

ややはみ出したところに、アーモンドアイやイクイノックスなど、ルメール騎手をときめかせた不世出の名馬が登場するが、生産のサイクルの中で、前者はキングカメハメハ、後者はディープインパクトと、ダービーを同じ勝負服で同じタイムで駆けた、直後に二巨頭を成すウイナー大種牡馬を父に持つ、正真正銘の後継者をそれぞれが管理し、恐らく、コントレイルの仔もクラシックで活躍するのであろうから、もう競馬の根幹を自らグランドデザインしているというくらいの話になるのだ。

誰でもできることではないとは、このクラスの馬の場合、はっきりとは言えないが、どこかに普通に考えると危ないローテと思えるような、

「共同通信杯は中1週ローテで、引っかかってしまったから1勝馬のリアルスティールに敗れたドゥラメンテ」

「凄まじい東京スポーツ杯の勝ちタイムを一旦無視してでも、苦手と思われる中山の経験を優先してホープフルSも楽勝だったコントレイル」

といった、普通はやらないことを巧みなローテ作りの中に組み込むことで、いざ闘う準備が整った時、イクイノックスが危惧された中3週問題の発生を未然に防いでいる。

それと逆をやったタスティエーラの休み明け菊花賞ローテ<本音は天皇賞直行だったのだろうが>、もっとハードにモズアスコットでの連闘安田記念制覇<かつて、バンブーメモリーもそっくりのローテで安田記念で初重賞制覇を果たす>を決めた両者は、ある意味で、自分のスタイルで、ゴンバデカーブースと京都2歳Sレコード勝ちのシンエンペラーを各々送り込む。

速い馬を探すレースではないことは、毎年、2分1秒台で決着する安定した勝ちタイムからも理解できるが、今の東京や本来の京都では、もっと速い時計で走っていないといけない。

1:59.8の京都2歳S優勝は見事なシンエンペラーに対し、新馬戦が1:34.8、同じ東京マイルの前走は1:33.4と、高水準の時計を持つ両者は、少し、他の候補よりもスケール感で上回る。

何度も見てきた両者の攻防は、2010年、震災前からバチバチだった中山朝日杯のグランプリボスとリアルインパクトとの争いに始まる因縁。

もっと前から、マイル以下の路線でニアミスを繰り返したスーパーホーネットとキンシャサノキセキ<高松宮記念で5、2着という成績に終わった2008年のファイングレインが勝ったレースで対戦はあるが>との棲み分けがあったのも、あのドゥラメンテとリアルスティールの対決を盛り上げる前段であったのだろうか。

ドゥラメンテに負けじと、リアルスティールは堀厩舎にも因縁をつけるように、矢作厩舎のスター候補としてフォーエヴァーヤングという

傑物をダート界に送り出した。

いずれそれは、コントレイルとサリオスに受け継がれ、またこの日交わることになったシンエンペラーと推奨したゴンバデカーブースが産駒の代でも激突する時代が訪れる。

ホープフルSはクラシックの前哨戦という位置づけ。

こういう想像力が膨らみ過ぎて、完全に妄想の世界に入った筆者の思考は、いくら繰り出しても鬼には笑われないだろう。

芯を食った、結果でものを言わせた実力者同士が、正真正銘の頂点を競う場面で激突することは、競馬界にとって、掛け替えのない財産である。

矢作先生のことだから、シンエンペラーをかつてのシリウスシンボリのように、早々に海外遠征に赴かせ、いずれが凱旋門賞を獲るという足掛かりに、いや、この馬で藤田オーナーと共に…、という青写真をズタズタにできるのは、堀厩舎の次期エース級かタスティエーラとの二枚看板への期待が集まるゴンバデカーブースしかいないだろう。

シンエンペラーも底知れない良血の恐ろしさがあるが、執念でタスティエーラをダービー馬へ導いた堀宣行を舐めてはならない。

両名伯楽の期待に対し、彼らは結果で応えることができるだろうか。

後は君の頑張り次第だよ…。すでに、その段階にある。