2022年ジャパンカップ【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧
【レース結果速報】1着ヴェラアズール(4.5倍)2着シャフリヤール(3.4倍)3着ヴェルトライゼンデ(9.5倍)
レース名 | 第42回ジャパンカップ(G1) |
日程 | 2022年11月27日(日) |
優勝馬 | ヴェラアズール |
優勝騎手 | R.ムーア |
勝ちタイム | 2:23.7 |
馬場 | 良 |
3連単配当 | 9,850円 |
2022年ジャパンカップ - レース結果・配当・払い戻し・オッズ
着順 | 馬番 | 馬名 | タイム | 着差 |
1 | ⑥ | ヴェラアズール | 2:23.7 | - |
2 | ⑮ | シャフリヤール | 2:23.8 | 3/4 |
3 | ③ | ヴェルトライゼンデ | 2:23.8 | クビ |
4 | ⑧ | デアリングタクト | 2:23.9 | 1/2 |
5 | ⑭ | ダノンベルーガ | 2:24.3 | 川田 将雅 |
単勝 | 6 | 450円 |
複勝 | 6 | 160円 |
複勝 | 15 | 140円 |
複勝 | 3 | 240円 |
枠連 | 3-7 | 470円 |
ワイド | 6-15 | 380円 |
ワイド | 3-6 | 560円 |
ワイド | 3-15 | 530円 |
馬連 | 6-15 | 940円 |
馬単 | 6-15 | 1,920円 |
3連複 | 3-6-15 | 2,360円 |
3連単 | 6-15-3 | 9,850円 |
2022年ジャパンカップ - レース後コメント(騎手/厩舎)
「芝の過去5戦を見て、いい感じで走れていると思った。今日はペースが遅く、直線はとにかく混戦で前が塞がって行き場を失う場面があったが、上手に縫ってよく走ってくれました。」
※優勝したR.ムーア騎手のコメント(ヴェラアズール)
2022年ジャパンカップ - レース結果動画(YouTube)
2022年ジャパンカップ - 回顧
ヨーロッパの競馬では、こうしたアプローチはごくごく通常の型なのではあるが、これ以上ない、ライアン・ムーアを堪能する大レースとなった。
鼻の差でジャパンCを3勝している生ける伝説・ランフランコ・デットーリに通ずるものがあった。
考えてみれば、ジェンティルドンナでこのレースを制した年・連覇の2013年 のライアンは、ハナ差で若き挑戦者・デニムアンドルビーを抑え込んでいる。
終始苦しいポジショニングではあったが、出負けすることまで想定していただろうムーア騎手は、そもそも、日本の調教馬のように、勝手に追い出せばギアがオートマチックに上がっていくようなエンジンの性能ではない一流馬を駆って、しっかりと直線での追い出しで、苦しい展開になる事まで考え抜いた組み立てを常にしてきている。
だから、その昔というか、午後一番手の芝の新馬戦を楽勝したタスティエーラの父・サトノクラウンが、2戦目の東京スポーツ杯を勝って、その名が世の知られるようになったあのレースのように、絶対に外に出さないと決めた時は、ヨーロッパのエース級の騎手<所謂、専属契約を結んでいる厩舎があるという意味>であれば、ロスなどしては勿体ないから、詰まっても仕方ないと決め打って、それでも日本の騎手などより正確に先を読み、その都度組み立て直しながら、進路選択を何度も変更していくのである。
全力では走れない状態のヴェラアズールなど、我々がここ数年見てきた、大外ぶち抜きの強烈な決め手をまだ発揮する段階ではない。
それでも、ライアンの手に掛かれば、所謂ニュートラルの段階ではなく、少なくとも3速ギアくらいの段階でしっかりと機を伺い、追い出すべきタイミングを逃さずに、馬群をまさに縫うようにして上がっていき、前に馬がいなくなったその刹那、ギャロップの4、5速のトップギアにしっかりと入れる形を作っておけるのである。
日本の騎手ならば、今日はダメだと思う。
ナリタトップロードで悲しい思いをした、古馬になって以降の負け戦の日々を、どことなく、いかにも逡巡するかのような渡辺薫彦調教師の頭の中で、ヴェラアズール推しの筆者など多くのファンと、まるで同質であったことは想像に難くないところだろう。
完璧に4歳のシャフリヤールを完成させた藤原調教師が管理する、この大いなる主役は、流れに乗るということではなくとも、正攻法の外からの抜け出しで、完全なる古馬になったダービー馬のあるべき姿を示そうとした瞬間、インからの強襲に屈した。
何も問題のないクリスチャン・デムーロに、これ以上を求めることはできない。
詰めていけば、やるべきことは他にもたくさんあったという向きもあるが、昨年も完調ではなかったはずなのに、まだまだ若い馬の割に、気性面を除けば、父ディープインパクト以上の迫力を秘めた中型牡馬の凄みがあったが、今年はコントレイルのそれに及ばないまでも、さすがの中心馬の姿であった。
なのに…。
速い馬の存在を望む、ジャパニーズターフ・チャンピオンシップの一つであるこのジャパンCは、差し馬が人気なれば、まずハイペースはない。
マイル通過までが、事前の高速決着の頻発に対して、かなり遅い97.8秒。
この時点で、もうジャパンCは4コーナーに掛かる場面。
そこから、11.7、11.4、11.3、11.5秒の順で上がっている。
ライアンの判断は、ほば完璧であったと同時に、芝の競馬の本質を如実に示した、日本でも実績十分の外国人騎手たちの攻防でもあった。
こうなると、上がり勝負は苦しいユーバーレーベンや、重馬場で結果を出してきたオネスト、テュネスらいかにも欧州調教馬には出番はなし。
辛うじて、新前コンビのデアリングタクト&マーカンド騎手が、全くいい形に持ち込めなかったのに、オークス級の切れ味で追い込んできたことが印象に残る一戦でもあった。
貧乏くじは、正攻法がまさに結果に影響を及ぼしたダミアン・レーンのヴェルトライゼンデと、一番の勝負所で調子上向きならずとライアンに進路を奪われた川田&ダノンベルーガだったろうか。
動きが明らかに硬く、パドックでその辺りの詰めたローテを影響を踏まえたアシストを、丁寧に返し馬で施していた川田騎手のダノンベルーガは、激しい古馬同士の攻防に加え、進路のないところをわざと作るための策を弄するムーア騎手ら、欧州のA級騎手らが作る死闘に、途中までは加わったものの、共同通信杯でキレたような末脚をG1では見せられず、ここも5着止まり。
ヴェラアズールも大いにエンジンのかかりは遅いが、ハーツクライ直仔でジャスタウェイ級のポテンシャルを誇るこのダノンベルーガに、まだ東京の大レースで、自身の秘める才能を出し切る様々な要素が足らないのだろう。
母はティズウェイ×マリブムーンと、いかにもの北米快速中距離型の性質のようで、その後に、突然のようにして、ロミタス、レインボウクエスト、その奥にもブランドフォード系や本流フランスのマイバブーのラインまで入る芝向きの潮流が、しっかりと血統図の深くに連綿と続いている。
その良さが出るのは、まだ先か。
モーリスも異様な新馬戦から1年半くらして、漸く動けるようになった晩成型。
血が争えないのである。
ヴェルトライゼンデに関しては、キレがあるわけではないものの、長期休養明けの鳴尾記念を1:57.7で勝ち切り、後々スターとあるジェラルディーナなどを完封している。
実力通りだが、ここまでの戦績は【3・4・2・3】で、前々走勝つ前は、2歳時に新馬とリステッドの萩Sを連勝したのみの勝ち星しかなかった馬。
いつの時代にもいる、押しても引いても…、というタイプの安定株だが、父はいかにも晩成のドリームジャーニー。
母系は熟成をさせることに適したドイツの名血で構成され、父同様、最後はグランプリレース向きの性質を体現できるかどうかの勝負に持ち込めるかどうか、この辺りでその才能の最終評価がなされるはずだ。
ただ、どういうわけから、父やその全弟オルフェーヴルとは違い、東京は好きなようで…。
ヴェラアズールの血統。
それはまだ、完全体に一歩足らない印象を受けたのは、3着ヴェルトライゼンデと同じSurumuの血を持つ影響だろうか。
しかし、この血はドイツ調教馬・ランドのジャパンC優勝にも大いに寄与した、当地に最も大きな影響を与えるハンプトン直系の重要な血統。
ランドはAcatenangoの産駒であり、ズルムーの直仔。
ヴェルトライゼンデは母父が同じで、母マンデラもドイツの活躍馬。
テュネスにだって母母父にアカテナンゴは入るから、ほとんど東京ドイツ村であったわけだ。(笑)
ヴェラアズールはエイシンフラッシュ産駒であり、母父父がズルムー。
ジャパンCでも勝ち切った東京優駿・日本ダービーも、必ず人気なりそうな馬に続く支持にとどまったが、アカテナンゴが隣国開催のキングジョージや凱旋門賞で勝ち切れなかった分、ランドやBlue Canari<フランス産・フランスダービー勝ち>らが、ドイツ以外のレースで結果を出したことで、他の系統との結びつきもよく、芝のレースには欠かせない血になっていった。
ちなみに、ランドが1995年にこのレースを勝った時が2:24.6。
キングジョージ独走のテュネスの兄・ノヴェリスト<父母父ズルムー>2:24.60。
凱旋門賞完勝のデインドリームは2:24.49で、このヴェラアズールが勝ったジャパンCは2:23.7。
これくらいのタイムで、ドイツ血統が猛威を振るうことを覚えておきたい。
欧州比1秒上増しが、ジャパンCでの推定走破可能タイムになる。