2020年菊花賞 回顧

【レース結果速報】1着 コントレイル(1.1倍)2着アリストテレス(23.0倍)3着サトノフラッグ(34.9倍) - 父子無敗三冠達成は史上初!

レース名第81回 菊花賞
グレード重賞(G1)
日程2020年10月25日(日)
優勝馬コントレイル
優勝騎手福永 祐一
勝ちタイム3:05.5
馬場
3連単配当8,740円

菊花賞2020 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差人気/オッズ調教師
13コントレイル3:05.5 -1/1.1倍矢作 芳人
29アリストテレス3:05.5 クビ
4/23倍音無 秀孝
310サトノフラッグ3:06.1 3 1/2
5/34.9倍国枝 栄
48ディープボンド3:06.2 クビ
7/51.6倍大久保 龍志
515ブラックホール3:06.2 クビ
10/116.8倍相沢 郁

単勝3110円
複勝3110円
複勝9350円
複勝10360円
枠連2-5510円
ワイド3-9530円
ワイド3-10550円
ワイド9-102,780円
馬連3-9910円
馬単3-91,010円
3連複3-9-103,810円
3連単3-9-108,740円

菊花賞2020 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「思っていた以上に接戦になった。相手の脚もよかったのでなんとかしのいでくれと思っていたが、馬が頑張ってくれた。改めて凄い馬だと思った。いいスタートを切ってくれたが、折り合い面でうまくリラックスさせることができなかった。2着馬がずっと後ろにいて、コントレイルがエキサイトしていたが、なんとか我慢してくれた。最後の直線は、相手の馬の手応えがよくて“まずいな”と思ったが、馬を信じて強い気持ちでいた。本当に長い距離お疲れ様と声を掛けたい」

※福永騎手のコメント

菊花賞2020 - レース結果動画(YouTube)

※実況レース映像

菊花賞2020 - 回顧

シンボリルドルフよりは危なかったが、アリストテレスの底知れない能力をここでは称賛すべきだろう。

皐月賞のサリオスとは違い、オープンクラスの戦いなど全く知らないアリストテレスの好馬体にまだまだ足らない未成熟の魅力に、僅かながらでもスタミナ能力で劣ったコントレイルとの個体の能力差が加わり、この大舞台で均一化されたのだろう。

アリストテレスの方は、これが9戦目という馬だから、コントレイルよりずっとキャリアはあって、古馬との対決も制している。

古馬の緩急の展開に対し、しっかりと対応したのだから、菊花賞の同期同士の争いでは好勝負必至の下地はあった。

奇しくも、福永騎手にとって様々な思いの詰まったあのエピファネイアの仔。

トータルの時計が遅くなった時、有り余るパワーが爆裂する男だったエピファネイアは

ここぞの場面では絶対に外さない信頼できる馬ではなかったが、何かから解放された瞬間、信じられないほどに勝負強く、誰よりも華麗に駆け抜ける能力を持っていた。

最初から最後までずっと強かったシーザリオらしくはない。

むしろ、3歳春までは躓きながら、大舞台でこその底力を古馬と対戦するようになってから本格的に見せ始めたシンボリクリスエスの姿そのままでもある。

その血筋を遺憾なく、最大限活かし切った瞬間、時に、歴史的名馬さえも餌食にしてしまおうという魔力があるのだろう。

現に、福永騎手はそのエピファネイアにジャスタウェイで歯が立たなかったという苦い記憶がある。

何となく、その時の互いの距離適性とよく似ている気もする。

アリストテレスは侮れない。そして、コントレイルの神戸新聞杯での勝ちタイムにかなりのアドヴァンテージがあったアリストテレスが、リスクを負ってトライアルに回っていたのなら…。

ライバルを散々千切り捨ててきたコントレイルには、クラシックのフォーマットが若干フィットしなかったことが、このような名シーンを生んだとできるから、アリストテレスもコントレイルやサリオスのように評価されなければいけない。

これまでずっとついてきていたヴェルトライゼンデが、皐月賞同様、側にはいなかった。

良馬場は合うが、ちょっと渋った時計に魅力のない馬たちのパラダイスとなった時に、コントレイルにわずかな死角が生ずる。

改めて、それをアリストテレスが証明し、正攻法で戦う長距離戦は有り得ないとしたコントレイル陣営に対するアドヴァイスは、その叩き合った両者にとって、有益なものになる。

有馬記念に行くのか、休んで天皇賞か。

ジャパンCに展望を持つコントレイルだけでなく、そこにチャンスを求めた他の陣営にとって、この結果は大きい。

だからとって、コントレイルが負けたわけではない。

イケイケドンドンのタマモクロスも阪神大賞典で同着優勝。

旧弥生賞のディープインパクトも、後に菊で好敵手となるアドマイヤジャパンとぎりぎりの攻防だった。

ルドルフの皐月賞は、ビゼンニシキを弾き飛ばしていなければ、きっともっと接戦だった。

反則と取られていたならば、この時点で、クリフジ伝説はディープインパクトまで生き続けていたことになる。

危ない場面が得意分野の競争でもあるのだとすれば、相手の庭で無駄に人気を背負って戦うことは目に見えていたこの一戦を、怒りと気合いで制したこの1勝は、競走馬として真骨頂でもある可能性を示した。

コントレイルは相手のことなど、ゴールドシップがそうであったように、装鞍場からゲート前の輪のりまでの間で、実力差を見極めているようなところがある。

相手になりそうな馬を見つけた時、ゴールドシップはやる気のない時、いつも以上にピリピリする。

最初はそんなところを見せていなかったコントレイルだが、想像以上のスローにタフな馬場もあって、本音を言えば、メイズイくらいに大敗していても不思議ではなかったというのが、福永騎手の心の中にはあったのだろう。

コントロールは出来ていないレベル。

それでも、レースのシステムをすぐに理解した後に、何だかいつこく外から被せてくるアリストテレスに、これは負けられないと気持ちを入れ直したのだろう。

お互いに手応えはいいから、馬場のいいところを選んで、直線は外目に張って行った。

京都の戦い方を熟知したルメールと福永の争いではない。

そのアシストに対し、馬自身がどう応えていくか。

本当はこんなに消耗させるような叩き合いはまっぴらごめんだったはずのコントレイル陣営にとって、想定外のスローとアリストテレスの中に眠っていたパワフルな化け物が、あたかも予定調和のように眼前に現れたのは、しかし、取りも直さずコントレイルの才能が有り余っているせいでもある。

ヴェルトライゼンデがいないレースは、バランスが崩れている。

皐月賞も重馬場レベルのタフさ。今週の菊花賞も同じだろう。

苦手な分野に飛び込んで、皐月賞ではもう少し余裕があったが、飽きっぽさもあるコントレイルには、楽に走れる可能性がある一方で、内枠の苦しさが今週もまた大いに出てしまったから、全てはアリストテレスの頑張り如何という展開となってしまった。

一瞬は交わされかけたが、それでも粘り込むのは基本能力の差以外でも何でもない。

意外な宿敵の出現で、陣営の狙いはちょっと多岐にわたるとならない状況に至ったわけだが、実は誰よりも苦しいキャリアの積み重ねだったとすれば、この日、菊花賞馬になるために生まれてきたアリストテレスを破るための試練であったともすることができる。

アリストテレスをかばうわけではないが、九分九厘三冠が見えている馬が隣にいた時、九分九厘菊花賞馬になれたはずの馬が並んだという三冠トライアルのシーンは、ミホノブルボンとライスシャワーの争いのみしか知らない我々は、菊花賞の真の価値を見直す。

アリストテレスを負かすからこそ、コントレイルは偉大なのだ。

アリストテレス次第で、この世の中の流れもまた、大きく変わる。

彼はまだ、中学校に上がったばかりである。