菊花賞2021【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着タイトルホルダー(8.0倍)2着オーソクレース(5.4倍)3着ディヴァインラヴ(17.3倍)

レース名第82回 菊花賞
日程2021年10月24日(日曜)
優勝馬タイトルホルダー
優勝騎手横山武
勝ちタイム3:04.6
馬場
3連単配当79,560円

菊花賞2021 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
13タイトルホルダー3:04.6-
218オーソクレース3:05.45
311ディヴァインラヴ3:05.4アタマ
414ステラヴェローチェ3:05.4ハナ
57ディープモンスター3:05.61.1/2
単勝3800円
複勝3240円
複勝18170円
複勝11410円
枠連2-81,600円
ワイド3-18980円
ワイド3-112,540円
ワイド11-181,350円
馬連3-182,420円
馬単3-185,220円
3連複3-11-1814,610円
3連単3-18-1179,560円

菊花賞2021 - レース後コメント(騎手/厩舎)

「前走(セントライト記念)が酷い競馬だったので、リベンジできて良かった。個人的には距離は長いと思った。今回無理してでもハナを意識していた。馬もやる気だったしリズムよく、ペースは気にしていなかったです」

※優勝した横山武騎手のコメント(タイトルホルダー)

菊花賞2021 - レース結果動画(YouTube)

※実況レース映像

菊花賞2021 - 回顧

クラシック親子3代制覇も偉業だが、菊花賞を父子二代で逃げ切り勝ちなど前代未聞。

驚きは着差ではなく、その着想であり、そこに至る必然の勝利の方程式に沿った戦略があってのこととしても、絶賛する以外にはない。

序盤は行き過ぎたと思ったのだが、溜めすぎと思った4コーナー辺りで、勝負を決めていたということになる。

父典弘騎手も、4300勝をJRAだけで記録する武豊騎手も、決め打つ長距離の先行は全てハイペースに近い流れを見せかけるか、実際に速いかのどちらか。

馬場質を考えても、序盤の1000Mで1分ほどの展開はやや速い。

ただ、自分は苦しいけれども、追う者はもっと苦しい。

その苦しみを最初に菊花賞で体現したのが横山典弘であり、最も苦しめられたのが武豊だった。

壮絶死で散ったサイレンススズカの夢の続きを少しで見せてくれた、あのセイウンスカイの逃げ切った菊花賞のこと。

23年して、ルメールと福永<ユーイチ騎手は再び完敗であるが…、キングヘイローで5着>を差し置いて、この圧巻のパフォーマンス。

ここ最近、菊花賞のタイムが遅かったが、阪神で3分4秒台の記録。

少なくとも、長い距離ではコントレイルよりタイトルホルダーの方が強い、そう証明した価値は大きい。

その鞍上にノリ騎手の愛息・武史騎手がいたのだから、もっと素晴らしい。

タイトルホルダーの武器である持続できる先行力を活かしつつ、皆の末脚を奪った。

さすがに次の1000Mの1分5秒台は遅すぎるが、これはセイウンスカイのラップ差である「4.3秒」を意識したそれであり、すぐ後に天皇賞でイングランディーレを駆り、まんまと逃げ切ったそれよりずっとハイレベル。

知らないはずのない父の偉業をなぞることは、一見、参考資料があるから簡単なようで、馬乗りの才能も究極のものが求められる超絶技巧あってのポッシヴルなミッションなのだから、いよいよ、その領域を知ることになった、ということになる。

まだ10年もプロの騎手として乗っていないのに、イメージ通りに乗り切った終いの5Fはほぼ同じ59秒台前半。

みんなもう知っている必殺技だが、サクラローレルもホクトベガも、愛するメジロライアンにも乗って勝っていた30歳頃の父が成した偉業は、もう子の代で一般化されようとしている。

誰も勝てないと知っている展開に持ち込まれたから、その他も何もない。

1、2番人気の神戸新聞杯組は、あえなく着外に敗れている。

タイトルホルダーの血統。

姉はちょっとしたアイドル的人気を誇る小さすぎる競走馬・メロディーレーン<父オルフェーヴル>。

それと同じ牝馬を推した身とすると、ちょっと切なくもある。

弟は真逆の先行策が似合うタイプで、距離適性はずっと姉の方があったのだろうが、秘める才能が爆発することなく春を終えたことで、わずかながらでも、進化を見せることに成功したタイトルホルダーは、父ドゥラメンテにはまるで縁のなかった菊花賞に圧倒的なツボを持っていたことになる。

ドゥラメンテは、叔父のルーラーシップの仔にあのキセキがいるから、その産駒が菊花賞圧勝でも何ら不思議なかったが、父ほどはキレまくる<様々な意味において>ことのない特性が、鈍重に見える母父モティヴェーター<ダービー馬・父モンジュー>の血を借りることで、芝向きに完全フィットして、タフ馬場歓迎の中長距離型へのシフトに成功したとも推察できる。

キングマンボ系とサドラーズウェルズ系といえば、何を差し置いても、凱旋門賞でそのモンジューと世紀の泥んこ決戦を演じたエルコンドルパサーがいる。

エルコンドルパサーは砂王者となったクリソライト一族の基本性能を担保した種牡馬となったが、芝で唯一、大物となったソングオブウインドも菊花賞でレコード勝ち。

何から何まで、菊花賞に偏った縁のある馬だけに、エルコンドルパサー的なズブさはそこまで見られなくとも、ルーラーシップ−キセキのラインよりもずっと真面目に走れるから、こうしたマグレでも何でも実力価値ができたという可能性が大いにある。

スタミナの根拠は少なくとも、欧州12F戦向きのフォーマットに牝系はハマっている感じだから、間違いなく、皐月賞の渋馬場適性で多くの伏兵を制する武器はあったことになるが、この結果で見えるのは、中山の根幹距離で結果を残した馬は軽視できないということだろう。

エピファネイア産駒のオーソクレースが、ホープフルS以来の好走。

父は菊花賞圧勝馬。何せ、これがあのクリソライトの一族の芝向きとして活躍中。

普通に考えたら、阪神だからこそ距離適性を信じて、かなり絞り込んだ見解を雄弁に語ることが可能だったことになる。

スタミナ自慢の一頭だった牝馬のディヴァインラヴは、ナイスチャレンジはおろか、唯一、タイトルホルダーを追い詰めた伏兵として、歴史に名を刻むまでになりかけたが、素晴らしい接戦の2着争いで辛うじて3着に粘り込んだ。

何も、厚めの複勝を押さえていたから自慢することではないが、それにしても、福永騎手のあの乗りこなす技量は一体何なのだろうか。

正直言って、2週続けて追い込んだルメール騎手より、ずっと的確に能力判断をした絶妙な騎乗である。

ある程度出して、揉まれないポジションをキープし続けたことは、春のワールドプレミアよりもずっとスムーズに見えたし、彼女の性格などを踏まえると、これ以外の手はなかった。

だから、素晴らし過ぎたタイトルホルダー&横山武史コンビは置いておくとして、バゴ的才能発揮がもうちょいに終わった4着ステラヴェローチェ、ストレスがまだ成長を阻害する寸前で休養をいれた2着のオーソクレースなどより、ずっと長い目で見て面白そうな才能に見えるし、それが大舞台で証明されるべきと考えて、完璧に騎乗した福永騎手も言うことなし。

清々しいまでの3着は、正攻法でマヤノトップガンを追いかけたダンスパートナーとよく似ている。

前にいた馬が強すぎた。

面白いことに、コース差を踏まえると、レコード勝ちした26年前のトップガンと0.2秒差しか見劣らず、長距離戦は一時期よりも高速化が止まっているからこそ、牝馬の好走という枠には止まらないかもしれない。

ただ、

ダンスパートナー… 3:05.0<5着>

ディヴァインラヴ… 3:05.4<3着>

やはり悔しいのはこの点か。

タイトルホルダーの姉・メロディーレーンよりは1秒速く走ったのだが、これでは完璧ではないのかもしれない。

余力残しの3歳の上がり馬。人馬とも、伸びしろに余裕を残している。

牡馬勢はそれに対し、そこまで褒められた結果だったとは言えないが、皐月賞もダービーも、何だかキツネにつままれたような展開になったところがあり、A級とできるほどの素材は、現状では少なかったから、仕方がない面はある。

気配はよく見えたレッドジェネシスは、ただ回ってきただけの後方入線。

差せる形こそが理想のステラヴェローチェとて、それと同じようなポジションで競馬して、前走のタフすぎた中京・神戸新聞杯の反動もあったのかというような4着止まりの結果。

やはり、本質が長い距離向きではない可能性がある性質の証明が、クラシック戦で繰り返しされてきたとすれば、一芸に秀でているタイプがこのクラシック戦線の組にはあまりいなくて、阪神の菊花賞という特異な舞台では、よりスタミナを殺がれることで、あの2着争いに全てが凝縮されていた印象を受ける。

特に成長をした感じのなかったオーソクレースは、鞍上の卒のない競馬で見せ場こそ作ったが、そもそも、セイウンスカイほどの迫力まではないタイトルホルダーであるから、彼もスペシャルウィークにはなれない。

成長の余地はあるが、その理想の曲線を体現する時、このような長距離戦ではない可能性を感じた。

ディヴァインラヴは上がりの脚で勝ち馬に並ぶ数字だが、牡馬が差してきてそれをわずかに上回っても、本当の価値はない。

マイルに行くわけにもいかず、何とも難しい面々。

ならば、仕上がっていないこと見え見えのズブなディープ・ディープモンスターの方が将来性は上だろう。

あの出来で5着に持ってくるとは、流石武豊である。