2023年NHKマイルカップ【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧

【レース結果速報】1着シャンパンカラー(22.2倍)2着ウンブライル(12.9倍)3着オオバンブルマイ(6.1倍)

レース名第28回NHKマイルカップ
日程2023年5月7日
優勝馬シャンパンカラー
優勝騎手内田 博幸
勝ちタイム1:33.8
馬場稍重
3連単配当260,760円

2023年NHKマイルカップ - レース結果・配当・払い戻し・オッズ

着順馬番馬名タイム着差
111シャンパンカラー1:33.8-
23ウンブライル1:33.8アタマ
310オオバンブルマイ1:34.01.1/4
418ダノンタッチダウン1:34.21.1/4
515カルロヴェローチェ1:34.2ハナ
単勝112,220円
複勝3390円
複勝10270円
複勝11490円
枠連2-69,690円
ワイド3-101,760円
ワイド3-113,310円
ワイド10-112,680円
馬連3-1112,990円
馬単11-330,450円
3連複3-10-1127,690円
3連単11-3-10260,760円

2023年NHKマイルカップ - レース後コメント(騎手/厩舎)

「JRAの騎手になり、かけがえのない馬と出会えた。そして、こうしてまた出会えた。僕を乗せてくれたことが本当にありがたい。この馬にはまた称号を獲ってもらいたいです。また、勝ったことで気持ちが前に進むきっかけになった。後押ししてくれたレースと馬だった。」

※優勝した内田 博幸騎手のコメント(シャンパンカラー)

2023年NHKマイルカップ - レース結果動画(YouTube)

2023年NHKマイルカップ - 回顧

父は言わずと知れたとすべき、日本競馬界における最高純度の血統馬・ドゥラメンテ。
3歳のこの時期はほぼ無敵であった。

母系に目を転じると、青山オーナーに縁のある3代母のバルドウィナが、注目すべき存在となる。
この娘が、桜花賞とこのNHKマイルCに参戦する前に、フィリーズレビューを勝っていたワンカラット。
そのまた娘のワントゥワンもマイル重賞で活躍し、彼女もまた、初仔からワンダイレクトという皐月賞参戦馬・ディープインパクト記念の3着馬 を出して、まだまだこれから牝系を広げようという勢いがある。
現に、この3歳マイルチャンピオンもトライアルであるニュージーランドTでは3着であった。

ワンカラットの半妹には、サンシャインもいて、これは古馬の中距離重賞で好走を重ねるアラタの母。
そして、これまでのエース級が桜花賞を制したジュエラー。
いずれも、父が違うという特徴があるものの、しかし、活躍の舞台は2000M以下のスピード戦が相場。
フランス由来の血統には、長い距離に向く血も多いわけだが、このファミリーには、特に、3歳春のワンターン戦が合うようだ。
ワンカラットを除いて、古馬になって出世したような馬はあまり多くなく、ワンカラット自身はG1制覇に届かなかった馬。

仕上がり一つではあるが、天才的な能力の発揮の仕方をするシャンパンカラーのファミリーは、全て、短いところに向くということで、スプリンターだった母父のレックレスアバンドンに、中長距離型も出るドゥラメンテをつけたことがヒットしたのだろう。
ノーザンダンサーは多く重なるものの、ミスプロのクロスは薄め。
強いクロスをあまり好まない系統だけに、今にして思えば…、ではあるが、素晴らしい血統背景がこの勝利に影響していることは間違いないだろう。

キングカメハメハと並んで高い評価を受けていたシーキングザダイヤ<同じ雨馬場、同じ青山洋一氏の持ち馬>での忘れ物を取り返すように、懐かしき稍重のNHKマイルCで外から伸びてきたのが、ピンクカメオを2007年のこのレースで駆った内田博幸騎手。
出来過ぎの21世紀序盤のレース史を思い起こすような展開で、妙ににやけてしまったのは筆者だけではないのかもしれない。
密かにその時を待っていた、期待の血統馬が能力全開のシーンが繰り広げられた一戦だった。

序盤の展開は、34.3→46.3→58.4と、このレースで稍重ならば、標準のレベル。
ただ、勝ち馬や好走した面々が、後ろからの競馬。
完全に序盤で終わった感じもあったウンブライルも、こちらは意図してと思える武豊騎手のオオバンブルマイなども、序盤は後方からとすると、苦しい展開というよりも、上位勢が34秒台で上がってきて、その他は35秒以上の馬ばかりというレース展開に、自力と同時に、完成度や勝負運なども同時に問われた、皐月賞と似たような実力勝負の側面を見た気がする。
もっと順調なダノンタッチダウンや、馬込みを抜け出すことを苦もしないようなカルロヴェローチェならば、結果は違っていたかもしれないが、雨がまた降ったことで、人気馬の死角は見事に顕在化した。
前者にはまだ体を作る時間が必要で、後者にはマイル戦の展開に合わせるような、馬自身の適応力が足らなかった。
それでも彼らが上位に来ているのだから、明確に順当な結果だったと言える。

シャンパンカラーは抑えることを選択することが重要なわけではなく、父がそうであったように、馬のリズムをしっかりととって、スムーズにどう導いてあげられるかが重要。
それでいて、東京でそれも1600のレースばかり使われたのだから、近2走のレース内容などいくらでもリセットできたはずが、多様な選択肢を与えてくれたがために、ファンの多くが、この才能を秘める何かとして、大きく扱うまでの時間が作れなかった部分がある。

思えば、あのピンクカメオの時は、桜花賞で大惨敗後、今後の目標を作るためのステップにとでも考えていたのだろう陣営の思惑を超越するように、大井の内田が、あり得ないところから追い込んできて、後のG1馬・ローレルゲレイロを負かした、テン乗りでの勝利。
大きな仕事をすることを宿命づけられた内田騎手は、この勝利を経て、かなり理不尽な形で競馬学校の候補生らと同じような試験を受けた末に、今の立ち位置を勝ち取った。
いいことも悪いことも、だいたいが2000年代中盤に凝縮される名手の転換期に、このレースを大きく役立つ。
何しろ、1か月後にエプソムCを制したエイシンデピュティに、内田騎手が翌年の宝塚記念で騎乗していたのだから、因縁めいた何かはある。
父も同じフレンチデピュティだった。

時が流れ、内田騎手も一兵卒となったから、試走に近いトライアルの経験も含め、自由な選択肢をフルに活用しきり、最高の結果を導いた旨をインタビュアーでは語っている。
経験のなせる業というところだろうが、道悪の芝がこれほど似合う剛腕もいない。
期せずして、そうした順番が巡ってきたのだろうが、血統が素晴らしいのだから、これもブラックホークの妹であるピンクカメオとよく似ていて、偶然とも思えない。

シンボリルドルフの一族であるウンブライルは、これに続いた意地の在来牝系の名牝。
あらぬ展開に、自身も戸惑ったことだろうジュベナイルフィリーズから、苦心の木村調教師が、兄のステルヴィオとは違うアプローチで、こうして叩き3戦目のG1で結果を出した。
マイル戦でずっこけ続けてきたが、4度目の正直。
レースぶりに大きな進境が見られたわけではないが、結果、ダービーを大いに展望する武史騎手にしたら、こうした東京の結果はプラスに働く。
勝負勘が鈍るような休みを要するような怪我をしたわけではないだろうが、<一旦検査を要するような落馬があった> 松山弘平騎手は今悩めるデアリングタクトと無敗ロードを驀進していた頃も骨折があったし、また、骨盤骨折した年の春に甦り、当たり前のようにタニノギムレットでダービーを語ったレジェンドの武勇伝もある。
大いに期待できるダービーはもうすぐだ。

難しい気性の馬だらけで、名手跨るオオバンブルマイ、カルロヴェローチェの他、穴人気には少しおまけが多かったモリアーナなど、コンビネーションは素晴らしいものの、馬自身の完成の度合いや馬場や距離の適性など、微妙に狂っていた部分が結果に影響したグループは、誰でも勝てそうなレースで上の方の着順に来ていたが、エエヤンやドルチェモアなど、トライアルで注目された面々では、西の組のショーモンなども、もみくちゃにされたり、まだ耐えきれないペースやレースのタイトさも手伝って、全部が全力を出し切れない競馬の裏の側面が、もろに出てしまった組は残念であった。

ただ、皐月賞など何も得ていなかったはずのダノンタッチダウンが、悟りの境地に近づいてきた川田騎手によって、しっかりと立て直された。
陣営の努力次第では、いかようにも成長をできるのが3歳馬。
思えば、昨年の春にいいのか悪いのか、色々とあった現4歳のカワキタレブリー<このレースの3着>とアサヒ<スプリングSの中心馬も自滅大敗>が、同じ1600のレースで仲良くというか、どっちが早く立ち直ったかを競るように、3勝クラスのレースで好走していた。
誰もが、シャンパンカラーのように勝ち運を味方につけられるわけではないが、古くはアグネスデジタルもここで厄を落として、秋以降の躍進に繋げた。
一旦リセットでも、まだまだ伸びしろのある、特に人気に応えられなかったドルチェモアやカルロヴェローチェには、まだまだ自分の誇りを捨てるような致命的な敗戦の記録はない。
もっと積極的に戦えるような、もっと進化した戦法を手に入れたい。