オークス(優駿牝馬)2020 予想
阪神JFからチューリップ賞、桜花賞を一つのゴールとした3歳牝馬の黄金ローテが、それぞれ、古馬GⅠ並みのハイレベル決着になるようになってから、桜花賞を勝った馬や好走馬には不利になるケースも増えてきた。
昨年と一昨年の優駿牝馬誕生の流れは、あまりにも極端に違う。
デゼルが俄然、レーン騎手とのコンビ継続が叶ったことで人気沸騰となりそうだが、ウインマイティーはともかく、ウインマリリンとアブレイズは例年の水準より遥かにタフな展開を制した馬であり、ホウオウピースフルにも東京2000での勝ち鞍がある。
デゼルのパフォーマンスが異様に映るならば、リアアメリアやウーマンズハートも、その左回り適性では侮れないとなる。
どこにも平均的なレベルの競馬はないこの世代のクラシック戦線。
そのど真ん中にあるデアリングタクトの連続好走を望まないのであれば、そうした実績を事細かに拾い集める必要がある。
きっと、桜花賞の頃からこのオークスの想定表を勝手に作っていた人たちだけが、その本質を見破れるのだろう。
即ち、桜花賞の前には既に、その可能性や展望が明らかにオークスでこそと思えた馬にこそ、こういう年は有利なのだ。
消耗は激しいが、筆者は道悪の桜花賞では追い込みは利かないと言い張り、絶対大丈夫と考えて、レシステンシアを狙った経緯がある。
レース後、それが間違っていたとは思わなかったが、デアリングタクトのスケール感に関してのみは、甘い見立てであったと反省した。
どうも、あれは只者ではないと思いつつ、実績に目を奪われたという結果に思えるから、もっと恥ずかしい。
しかし、そういう立場になる今回のデゼルは、母が無敗の二冠をフランスで成し遂げたアヴニールセルタンで、凱旋門賞でもトレヴに次ぐ評価をされた馬とあって、尚の事評価を上げる一方、楽なのか激しいのか、アーモンドアイでさえ見比べることの難しい強烈な東京でのパフォーマンスが、果たして連続して可能なのか、という疑問も生まれる。
それはウインマリリンも同じで、どちらも短い時間で一気に出世してしまったのも死角だろう。
別に今では普通のローテだが、11月デビューで、休み明けで次が2月のエルフィンS。
来たる第一冠の桜花賞は、そのハイパフォーマンスから中8週である。
東京に来るのがあの道悪競馬から中5週だから、これは苦しいわけだが、レースレコードから中3週、3月デビューから2戦して中2週の馬がライバル。
オープンキャリアは似たようなもので、勝利の可能性がある馬が限定されてると仮定すれば、論ずるよりも先に答えの推理はできてしまう。
横一線であればあるほど、格の高い順に有利になる。
そういう経緯があるから、関東馬で無敗の二冠を目指した2頭が共に4着以下だったのに対し、関西馬は有資格3頭とも連対している。
負けた2頭も大して負けていない。
新馬戦で後半4F全てが、前のラップより0.4秒以上速くなる展開で、京都内回りの1600戦を楽勝。
これまで3戦全て、1馬身半以上の差をつけて勝っているデアリングタクト。
これと似た戦歴を持ったシスタートウショウは、下げる競馬でイソノルーブルの果敢な先行に僅差退けられる結果に終わったが、彼女とデアリングタクトの父であるエピファネイアはシラオキを通じ、その血の力を示した優駿となった。
ダービー馬も三冠馬も複数含まれるデアリングタクトの味方は、エピファネイアの母であるシーザリオである。
危機的状況を脱したのは、誰よりも瞬発力があったからではない。
誰よりもオークスというタイトルが似合う馬であったからだ。
その4年後、際どくライバルに迫られるブエナビスタが二冠を達成する。
両者の父であるスペシャルウィークにはニジンスキーとシラオキの血を持つ。
キングカメハメハとサンデーサイレンスの組み合わせであるデアリングバードと同じ配合からは、最強の血統馬・ドゥラメンテなる二冠馬が出現した。
生まれる前からクラシック戦線での活躍が期待された通りに実現する時、レース史上初の5年連続1番人気勝利が、必然性を持って歴史の中に埋没することになる。
血統の方が、実は重要だというオークス史は、ファン諸氏が自ら調べるのが良い。
それが裏切られた瞬間、新たなドラマがまた生まれるのである。