桜花賞2018 回顧
パドックから漂っていた、異様なまでの人気3頭の気配。
競馬も完璧だった3頭。
しかし、人気と結果はやや違った。
みんなGⅠ馬、という考え方もある。
勝ったアーモンドアイは、周到に関西遠征もこなしつつ、賞金をしっかりと加算して、仕事人・国枝栄調教師らしい狙いすました休み明けのローテで、明確な打倒・ラッキーライラックの策を講じ、見事にそれを成した。
まるで異次元の決め手は、レコード勝ち以上のインパクトを残し、無敗の2歳女王さえ置き去りにする、無慈悲なまでの破壊力を体現する結果で、その高い資質を大舞台で示したことになる。
自分でPOGの注目株に押さえておきながら、シンザン記念といい、このこの桜花賞といい…。
「トリプルクラウン(ティアラ)」
を狙えますというルメール騎手のインタビュー時のコメントが出たのが、興奮を抑えた最終盤のことだから、簡単にその才能を我々は理解することができる。
ただ単に、強過ぎるのである。
本来ならば、最内枠は気にならない…、などという解説者たちのコメントがもっと聞かれたはずのラッキーライラックは、実質、前女王の冷や飯食らいという立場に甘んじる結果になってしまったものの、あまりにもきれいに勝ってしまったアーモンドアイに対し、本当のダメージがあるのか、正直、見立てることが難しい気がしてきた。
相手が強すぎると、直線半ばで走るのを諦めてしまう場合もあるが、抵抗というか、しっかりと自分の持ち味は出し切っている。
距離が伸びてこそ…、という論理が通用するレベル差ではもはやないのかもしれないが、ある意味、究極の好敵手として、ウオッカ×ダイワスカーレットの再現を唯一可能にできる、異次元のライバル関係を今後形成していってもらいたい。
走破タイムに関しては、アパパネに一歩及ばなかったが、彼女たちの桜花賞の時とは、着差とすればほんのクビ差開いたくらいのもの。
武器が違うからといって、一気にモチベーションダウンでは勿体ない。
それくらいのレベルで、アーモンドアイとラッキーライラックは、ハイレベルすぎる競馬を作り出せるのだ。
相手の武器を知った途端、勝負の流れも変わるものである。
本来ならば、キレでもスピードでもまずまずのところまで対抗可能なリリーノーブルは、GⅠという格に負けているというより、彼女たちが張ってしまった結界のようなものに、いつもはじき出されている印象がある。
武器は持っているが、総合力でどうにも敵わない。
最初から分かっていたことでも、どうにもならないと知った今回、全てを悟る境地に達しつつあるだろう川田騎手が、どんな可能性を今後展望しているのか気になる。
当然、NHKマイルCでは大本命級。
一発屋的なところのあるテトラドラクマよりも、遥かに競馬に安定感はある。
しかし、父がそうであったように、勝負のかかった場面でどうにもライバルに見劣るのは何故か。
この馬の場合、血統で上位2頭に見劣ることはなくても、悪い面を全く引き継いでいないことが、妙な雰囲気を醸す原因となっている気がする。
やけに大人びた感じがするのは、筆者だけだろうか。早く重賞を勝ちたい。
パドックで魅せた3頭の輝けるオーラ。
ラッキーライラックには不安など全く感じさせるもののない、落ち着き払った気配に我々が惑わされることのない、中距離型として持つべきパーツを備えつつある完成形の体躯を、多くのファンに見せつけていた。
アーモンドアイも天晴れ。
物怖じするどころか、ノッている時の良血馬が放つ大物感に加え、牝馬らしいシャープすぎる体つきではなく、これまで我々の度肝を抜いてきた決め脚が、この後躯であるということを披露しながら、何だか相手の生気を奪っていくような威圧感が加わっていった。
リリーノーブルは元より大型馬。
その体を余すことなく、スピード型の母系の特性をしっかりと見せつけ、好馬体のパワー型として、ある意味での究極の形を体現していた。
そんな3頭相手に、牝馬のキレで挑んだディープ勢が及ばないのは仕方のないこと。
全体の流れが速いから、時計も速くなったわけではない。
上位3頭には、それだけの時計で走るだけの根拠が、戦う前からあったのだ。
筆者はヒモ荒れにも少しは期待した部分はあったのだが、レース前約20分の時点で、彼女たちに逆らうことを諦めた。
こういうクラシックレースも、結構珍しい。
もっと輝ける場所を、自分の力でもっと見つけ出してもらいたい。