桜花賞2019 回顧
終わってみれば、あの日の競馬が幻ではなかったことを示す、意地の復活走であった。
1:32.7というタイムが破格ならば、上がりの33.3秒も桁違い。
それだけスローだったということの証であるが、消耗してしまいがちな彼女のキャラクターを理解した陣営の英断に、これは感服せざるを得ない。
新馬で強い勝ち方をした馬は、桜花賞で有利。
2歳女王を6月の東京だったとはいえ、しっかりと抑え込んだあの競馬から、グランアレグリアは数ランク上昇し、有意義な2戦を消化した、ということになる。
誰でもそう理解すれば単純に、グランアレグリアという才能を評価できるわけだが、それは簡単ではない。
だから、客観的に捉えるためには、彼女の周りで起こった必然の出来事を拾っていった方が、具体的な桜花賞戴冠の理由も説明がつく、という感じもしないではない。
新馬戦の組み合わせは、以降4連勝で桜花賞に挑むダノンファンタジー他、多数の牡馬も参戦していたが、下の方の着順だから巻き返せたというメンツばかり。
3番人気の牝馬・ヴォイスオブジョイは、以降スプリント路線で活躍も1勝のみ。
ならば、牡馬はという感じで4番人気だったゴールデンウェルは、2戦目からダートを使われ、ようやく先月の中山で勝ち上がり。
完全にこの時点で2強であり、桜花賞と前走との間隔と似たようなサウジアラビアロイヤルCまでの間に勝ち上がったのも、ダノンファンタジーのみ。
1分33秒で駆けたということは、異例の1分32秒台突入の桜花賞における前哨戦的意味合いが強かったと考えるべきだろう。
しかし、グランアレグリアは2戦目で出負けしてしまい、記録上は好位抜け出し圧勝の競馬ながら、消耗等をこの時点から考慮され、メンバーの質なども考え、朝日杯FSへの進路を取った。
結果、2歳女王2頭誕生の奇跡は起きなかったが、これまでの2戦と同じようなレースラップで比較的スムーズなレースをしたものの、アドマイヤマーズがプライドもあって似たような脚質で、鞍上がデムーロ騎手だった。
ある意味、アーモンドアイのシーズンが終わった後のルメール騎手には、勝負運のようなものは残っていなかったのかもしれない。
マークされ、見事に潰された。
普通、日本の競馬の常識では巻き返しを前哨戦等で図るが、レース後のルメール騎手が語ったように、藤沢先生はうまいのである。
3歳馬での再三にわたる秋の天皇賞への挑戦という手法をとるように、若い牝馬で桜花賞に挑戦する場合は、上がり目を残すタイプやスピードの勝った馬には、賞金加算の条件が付かないことを踏まえ、休養明けの参戦をとる。
思えば、ホープフルSから皐月賞直行は失敗するも、結局はダービー馬になったレイデオロのことを、どこかで忘れていたのだろうか。
筆者を含め、あの日のことを引っ張っているものが何かによって、ファンの側の成否も見事に別れてしまった。無念。
和田騎手のシゲルピンクダイヤは、前走の強烈な追い込みを再現するために、うまく直線でインの進路を取った。
スローの読みが当たっていたから、思惑通りの結果に繋がったのだろう。
枠が外でグランアレグリアを追う側のダノンファンタジー、ビーチサンバは、理論上同じ脚を使っても勝負にならないから、もはや、最初から勝負圏外。
これら、昨年のアーモンドアイと同タイムの組で、序盤の運びは予定内のやや掛かりだったが、以降の馬群の捌きが予想以上に手こずったクロノジェネシスは、進路が開いたのが、イン強襲へ向け、シゲルピンクダイヤの通ったところが、彼女が外へと進路を取ったことで生じた隙間ということで、不運も重なり3着。
仕方ない。
新馬① 60.0-33.6
サウジアラビア① 59.9-34.1
朝日杯FS③ 59.5-34.4+0.4
桜花賞① 59.4-33.3<上がりは自身のものと同一>
自分の庭に呼び込まれた時点で、新馬戦のダノンファンタジー同様、何もさせてもらえないのだ。
距離延長は…。筆者もルメール騎手に同調する。
オークスへの参戦も五分五分だろう。ダンスインザムードの二の舞だけは、絶対に御免のはずである。