大阪杯2020 回顧

ジナンボーが前を追いかけまわす図は藤岡兄騎乗だから想像できたが、その相手がダノンキングリーと思っていた人はまずいない。

そういう時だからこそ逃げるのが信条の横山騎手が、今回負けたからと言って、何かを言われる筋合いはないだろう。

5F通過60秒ちょいの展開。

ダービーもその前の皐月賞も、もっとタフな展開であったから、むしろ楽である。

こうして逃げても、見事に直線で脚を使わせるのが名手の真骨頂であるから、交わされた相手が誰かが重要ということになる。

結果的に、揉まれ強い男馬はここにはいなかったのである。

気がつけば、今週も牝馬である。そして、ワンツーまで同じ。

ラッキーライラックはアーモンドアイの好敵手というところまでいかなかったが、1800王のダノンキングリーに、前走の中山記念ではその前年と全く違う競馬をして、メンバー中唯一、3着馬をパスしてから、勝ったダノンキングリー同様、リラックスして走らせたのが今回も乗っていたデムーロ騎手。

もちろん、あの時は完敗で仕上がりの差はあったのだけれども、ダノンキングリーはちょっとだけナーバスさを今回は感じさせるパドックだったのに対し、現時点で万全の出来にあることを示したラッキーライラックの体躯は、桜花賞直前の勇ましいまでのパワフルさに、自身まで加わった印象があり、先行策を捨てて元の好位差しに戻したことで、この血統由来のガッツまで備わってきた。

それと道中から併せたのが、前走で驚くような弾け方をしたクロノジェネシス。

体つきはまだまだパワーアップを望みたいところだが、思われているより、体を伸縮させるようなフォームではないから、ヨーイドンでのギアチェンジのスピードが速いのも武器になる。

今週も切ない昨年のウイナーだが、これに破壊力も備えた1つ年長のラッキーライラックとは、苦しみ抜いた時間の長さが違う。

それは鞍上も同じ。

直線の進路も同じで、それは勝負であるから仕方ないけど、実力差で負けたわけではないのだ。

あの京都記念の内容がある。雨の宝塚で負ける図は見えづらい。

インから上がってきたのは、その後ろではカデナであった。

鮫島克駿騎手とアクティヴな追い込みを今回も決めたこの6歳馬は、昨年の今頃から、前日のクルーガーではないが、何かを取り戻したようなところがある。

これがクラシック候補だった男のプライド。

それに対し、ラッキーと同じ歳の3歳時に頂点を極めた2頭は、正直言って、情けない。

時計勝負と言っても、1:58.4の決着タイムである。

昨年以上の弾けなかったワグネリアンは、福永騎手が一瞬はダノンキングリーの手を練り上げ、実行しようと試みたところがあって、隣のラッキーライラックのスタートがあまりにもよくて、結果的に両者に競り負ける格好での好位のインまでは良かったが、そこから一度も順位を上げられず、自慢の持続力のある末脚を繰り出せず。

どうみても調子は良さそうに見えたのだが、負けん気が消え失せたようなパドックが、あの日の皐月賞とよく似ていた気がする。

それにしても、強いブラストワンピースはどこにいってしまったのか。

明らかに、昨年のワグネリアンとの対比以上の上積みがあったはずだが、結果は、昨年の方がもっと見せ場があった気がする。

合わない条件なのは百も承知でも、果敢に逃げたダノンキングリーよりわずかながらも、上がりの脚で及ばなかったのでは、お話にならない。

両者とも、ある意味で国内戦での限界を露呈したようなところがある。

こういう時こそ、国外に転戦するのが理想なのだが、いやはやである。