エリザベス女王杯2018 回顧
強引に先行する馬もなく、今年も、クロコスミアがスローの逃げ。
昨年はうまく立ち回れなかったリスグ�ラシューが、今年はモレイラ騎手を配し、勝負の中団待機。
うまく捌けた昨年のモズカッチャンは、似たような好位のポジションも、気配ほどは反応できず、今年はキレ負けしてしまった。
パドックで掛かることが心配されたノームコアも、途中で前につけるところまでは昨年と同じだったルメールとて、案外の直線の反応は無念の一語。
勝負は昨年モズカッチャンが使った脚を、今年はリスグラシューが使って、差し切り勝ち。
それなりに流れた前走の府中牝馬Sで、ディアドラが強烈すぎて目立たなかった中での上がり32.6秒が光る。
東京新聞杯で素晴らしい彼女の決め手を引き出した元主戦の武豊騎手でもなければ、前走その脚を使わせたミルコでもない。
外国人騎手ばかりが勝利。
ルメールとモレイラでレースは決着し、兄より真面目なクリスチャンがそれに挑む構図。
それぞれに脚質面への不安というより、仕掛けのタイミングに課題があったりする点で、この大一番が関西初遠征の3歳ノームコアはかなりの減点。
無敗馬でもなかなか崩せない壁は、得てして、口惜しい思いに数知れず浸ってきた残念女王・王子に突き破ることができるのだ。
器用さと同時に、キレ味の引き出し方を工夫しなくてはいけないタイプは、こうした非根幹距離重賞では強いとされてきたが、モレイラがどうこうというより、今のリスグラシューが本物になったことを何よりも数字が示している。
昨年と馬場状態は大差なく、同じく序盤の流れも似たようなもの。
その中で、リスグラシューは秋2連敗で武豊騎手もいない状況で、流れを掴めず終わった前年とは一変。
外にいたのが奇しくも同じオーナーのコルコバードで、とてもいいスタートから終始被される展開になるも、相手がこれが初重賞であり、うまく行き過ぎたつけが勝負所の手応えに出て、外差し傾向の助けは多少あったが、昨年同様の内と前が残る展開。
そこでギリギリまでスパートできなかったことで、無駄な脚を全く使わず、前回の伸びで上がってこられたのならば、時計もそれなりに作れる底力が身についたリスグラシューには、いくらか余裕のあるレースだったかもしれない。
1秒以上の勝ち時計短縮は、その影響が大きい。
昨年同じく外から突っ込んで来たミッキークイーンは3着止まり。
それでも僅差であった。
しかし、その反対の立場であるモズカッチャンは今年は3馬身離された。
前走の府中牝馬Sで2番手からそれなりに粘って5着のクロコスミアが、楽に先行しての2着。
となれば、同じく厳しいレースを使われたリスグラシューも、もっと走れるわけだ。
昨年と違ったのは、モズカッチャンも含め、皆が強い男馬と厳しい争いの中で揉まれてきたこと。
しかし、経験を糧にできたのは、前の2頭。
上手に運びながら、モズカッチャンも急進勢力のレッドジェノヴァも、上がりへの対応力で最後は差をつけられた。
得てしてということならば、同じ距離を使っているよりも、様々な条件を知った方がいいということもある。
1800が得意なクロコスミアはドバイターフ。一貫して2000以上のモズカッチャンは、シーマクラシック完敗以外の結果はまずまずも結局は、丸一年未勝利。
ほぼ一緒のレース選択をしていたが、クロコスミアの方がよりアグレッシブな挑戦者であり続けたのである。
それでも、最後は昨年と同じような負け方。
岩田騎手も苦しいだろうが、それは日本の関係者にも同じことが言える。
いいところだけ外国人…、ではないのである。
差別的な意味ではなく、それらにいなくなってもらえるような勝負強さを、今はただただ耐えて、彼らから学ぶより他はない。
日本人のナイスファイトは、伏兵に乗った前記の岩田騎手とコルコバードの浜中騎手。
モレイラが華麗なのは相変わらずだが、泥臭さで何とかしようという意思を汲み取れたから、面白いレースになった点は強調しておきたい。
最終レースは結局、藤岡佑介騎手が勝利。女王杯の緊急乗り替わり枠で騎乗機会を得た、栗東の考える人であった。
まあ、どちらの騎手が勝っても気分は悪くなかったのだが…。