皐月賞2018 回顧
前は速かったとはいえ、簡単に止まるような展開ではなかったように見える。
4角の手応えは、結果的に圧勝に終わったエポカドーロの右に出るものなしという印象。
上がりも掛かったし、時計もメンバーのレベルを考えると平凡。
やはり、あの馬がいないのだから…。
人気勢の支持があまり集中しなかった理由が、この結末に凝縮されている。
筆者はハイレベル世代だと思っていたので、こういう展開は歓迎で、もっと面白い競馬が続いていくことに期待が集まる。
が同時に、この結果がダービーと直結するようにはとても思えなかったのも事実。
道悪の皐月賞とレコード決着の皐月賞は、そのほとんどで、近20年の連対馬はまずダービーで苦戦である。
ここで無敗で挑んでいれば…、という注釈つきでも、こういう2分オーバーの、最近ではイレギュラーに近いにこの結果では好走の根拠を探すのが難しい。
今回は今回として。
父は言わずと知れた、文句なしの三冠ロードを歩んだオルフェーヴル。
母は桜花賞前まで元気だった06年のフィリーズレビュー勝ち馬であるダイワパッション。
ポカの多そうなフォーティナイナーの血が入った芝馬であるエポカドーロは、気分良く先行した三羽烏のはるか後方で悠々の単騎逃げの形。
結果的に、皆が認める気分屋のジェネラーレウーノはその一匹烏として粘り込むことになったのだが、何の何の、全くレースの流れが違う後方グループといって差し支えない他の13頭の中で、唯一といっていいほど、勝ち馬だけが勝つべきポジションにいたように見える。
あの4角の手応え。
前残りの07皐月賞のようで、単騎逃げの決まった08年のようであり、結論が06パターンような、荒れ方は02年にそっくりで…。
面白い結果になった皐月賞の勝者で、唯一、その後も生き残ったのはトライアルホースでもあるメイショウサムソンだけ。
その後はヨーイドンにも、激烈なハイペースにも適応していくスキルが求められるようになり、こういう押し切り勝ちのパターンはなかなか難しくなる。
13年だけは、朝日杯ハイレベル時計勝ちのロゴタイプのガッツが際立つ形であったが、追いかけてきた組がエピファネイア以下、GⅠ級のスピード型ではなかった面もあって、これも勝ち馬はダービーに縁なし。
今年は大いに差し損ねの年であり、ハイペースなのに、いや、縦長ではない展開が、差し馬の末脚に対する少しだけあった過信により、こういう波乱の結果を呼び込んだということになるだろう。
差しやすい馬場でもなければ、そもそも、GⅠ級のレースではこの流れは中の上くらいの展開。
見せ場を一番作ったように思えるノンキャリアホースのキタノコマンドールが、まだまだ全容を見せていない皐月賞は、かなり不気味である一方、では、ワグネリアンやステルヴィオが能力を出し切れたかというと、展開上の不利はステルヴィオにあり、ワグネリアンはやや手控えた調整が今回は裏目に出たような結果論のラストガス欠で、東京で一変の可能性が大いにあった。
しかし、あの4角の手応えだからなあ。
オルフェーヴルやメイショウサムソンらと比較するのは、人気がそれほどではなかったから難しいのだが、彼が14倍くらいの支持だったのに対し、父は11倍弱、サムソンもエポカドーロと似たようなオッズの中穴評価だったのだ。
人気馬は完全に屈服させられ、前記名馬は、共にダービーの道悪競馬に対応し、楽に二冠馬になってしまった。
何となく、ダノンプレミアムを幻を追いかけてしまうような結果になったこの皐月賞は、この日の人気勢に加えて、違う武器を持った仲間が増えたという捉え方が正しいのだろうとは思う。
きっと、ダノンプレミアムが負けるようなレースではなかった。
となると、ファンにとっては、2歳王者がやや死角をもって挑むダービーに対し、違う武器を持っている馬から入るのがいいという予言めいたものを受け取ったとも言える。
個人的には、ダービーでこの馬場で狙いたかったグレイルの頑張りに期待感を持った。
ジェネラーレウーノと似たキャラに思える。
となると、ここで人気になっていた馬の逆襲は、十二分に期待できる状況が整ったのではないだろうか。
ハイレベルであるが故、見えない才能の争いになった時の本番のレースは、実に見ごたえのある別解を示す絶好機になることを、ファンをしっかり頭に止めておかねばならない。
意外なダービーとなりそうな予感がしてきた。