高松宮記念2016 回顧

「1:06.7」

持ち時計通りの決着。

ビッグアーサーが、結局、秋ではなく、春にGⅠ馬となった。

鞍上の福永祐一騎手も、コース形態こそ一変したが、中京のデビュー戦からポンポンと勝って、その勢いのまま、未だ高勝率をキープし、20年余を越えた今、トップジョッキーとしての地位を確立している。

ウイニングランの途中、オルフェーヴル現象が発生したのは、ちょっとご愛敬。

落ちることへの恐怖はまだ残っているだろうが、今は、簡単に勝てることの喜びを一身に浴している。

ずっとパートナーだった馬が、彼の地で別のトップジョッキーに乗り替わり、あっさりGⅠタイトルをもぎ取っている。

テン乗りで重賞2週連続制覇。

ノッてるときに、細かい反省をしておけば、正しい道をただまっすぐ進むだけとなる。

さて。

異常な高速馬場と化した今週の中京の芝。

先週は、もしかするとこういう馬場であったのかもしれない、とどこかで思ってしまう部分もある。

その時に、多少なりとも、雨対応の馬場作りをした。

そして、雨は降り、とんでもない外差し馬場になった。

中一日。芝は良にまで回復したが、パンパン馬場にならなかった。

一週間。

また、雨がもしかするとレース中に降るかもしれないということになった。

今度は降らなかった。

それなり、馬場を仕上げておいたが、Bコース替わりの影響も大きく、とにかく、前が残る馬場になった。

徐々に、騎手の意識も前がかりになっていき、直前の2200Mなど、この間まではあり得なかった、1000M通過59秒ちょうどの猛ペースで展開し、ディープ産駒のグリュイエールが、かつてのクラシック候補らしい力強い末脚で、2:09.9のナショナルレコードを叩き出した。

前日の1000万特別で、世�界のロードカナロアがこの高松宮記念で前年の雪辱を果たした時に生み出された1:08.0のコースレコードは更新される。

若いシゲルチャグチャグだったからこそ成せる業とも言えるが、この馬は1分7秒台で1200Mを駆けたことのない馬。

1:07.4のレコードは、高松宮記念の前に、同じく4歳馬のロイヤルストリートが0.1秒更新。

2日で3回。

ロイヤルストリートが、前走の小倉で、1分7秒台に突入するような好時計決着でスピード負けしたような4着の後、もっと速い馬場で今度は勝ってしまった。

持ち時計は重要ではないのか?

もう、そもそもの想定時計が破綻した状態にあって、悪あがきは愚の骨頂。

でも、GⅠの高松宮記念の結果は違った。

ドバイで競馬をしていたベルカントがおらず、それに負けたがためにスプリンターズSを除外になったビッグアーサーが、その翌週の京都開幕週で1:06.7の時計を繰り出し、圧勝している経緯がある。

これに本当の意味で対抗できるのは、畑違いながらGⅠを勝っているミッキーアイルだった。

前走逃げて、阪神1400Mを1:19.9で駆けている。

面白いもので、ここまで挙げた登場人物、馬らは、好時計決着という箱の中で一つの話を作り上げることができる。

ベルカントとビッグアーサーの父は、言わずと知れたプリンスリーギフト系の使者・サクラバクシンオーである。

ミッキーアイルは、そのバクシンオーが叩き出した1:19.9という阪神1400M不滅のレコードに、史上唯一並んだ男。

そして、本番で負ける。バクシンオーの仔に、コースレコードで。

ロードカナロアから降ろされた福永祐一も然り。

ディープの仔で、いい思いも前夜のような口惜しさも味わってきたが、ここでディープ産駒を負かすことに成功。

先週はディープの重賞開催週連続勝利に花を添えたが、今度は、見事にそれを阻止した。

おまけに、前レコードホルダー・ロイヤルストリートにはデビュー戦で乗っていた馬。

自分が乗った時は勝てなかったが、大一番を前に注目されることになり、その記録も�自分で消したのだ。

あと一つ。

日本の良血。世界にも通用する一流血統。

キングマンボが母父のビッグアーサー。

キングマンボの直系がドゥラメンテ。

それを負かしたポストポンドの母父父がキングマンボ。

一族の代表馬がキングマンボのリアルスティール。

わかっているけど、ちょっと自信のない時は、敢えて、キングマンボから攻めるのが吉。

ドバイシーマクラシックもレコード決着。

戦うということに、国の壁などもう存在しないということだ。