宝塚記念2016 予想
ゴールドシップが走る前は、馬場造園課でも不可能なほどの水撒きが、自然と行われてきた。
雨の阪神はタフ。
しかし、直前ではない雨だと、春から続く高速決着になりやすい馬場状態のままなので、ここ数年よりは大分軽いコンディションとなるだろう。
これを正確に読んだところで、ゴールドシップに振り回されてきたファンたちは、あまり意味がないことにも気づいてしまった部分がある。
早めに推理をし始める人にとって、それは織り込み済みで参戦をしてきた陣営を推すことが、何よりの安心材料となる。
有馬記念のように、展開上の有利不利を重要視しないといけないほど、この2200M戦は難しいレースではない。
安田記念のモーリスとの違いを明確に示すことは、なかなか難しいのではあるが、半端なレース間隔でこれまで数多くのGⅠ実績のある馬がころっと負けてきたのと、今のドゥラメンテの総合力を突き合わせたときに、いや、不安はほぼフルゲートの古馬GⅠが初めてということ以外、むしろ、他に何があるのか、筆者には見当もつかなった。
逆説的に言ったら、京都で名誉を大いに傷つけていたオルフェーヴルやゴールドシップが阪神で蘇ったのは、むしろ、相手関係が充実するこの舞台で、本来の実力を発揮しやすい状況とは必ずしも言えない状況にありながら、総合力が結局一番上だったからこその快走であったのではないのか。
この距離で、古牡馬であれば、雨も京都も阪神も関係ない。
ディープインパクトは、阪神なら負けていたのか。
メイショウサムソンは、京都なら必ず勝てていたのか。
ディープスカイは、重馬場では動きが違ったのか。
これら全て、その時の状況が全てを物語っている。
雨に影響された前2者は、他が影響されたのと、自分と同じくらいの馬場適性のある馬の一撃に二度屈したものであり、競馬のやり方はさして変わらないのだから、良馬場でやれるとも限らないこの時期のレースで、タラレバの引き合いに出すのは無理筋だろう。
ディープスカイだって、良馬場のせいでステイゴールド産駒に敗れたなどと言っても仕方ないわけで、ドリームジャーニーとの実力差は、昨秋ほどのものではなかっただけのこと。
王者には不利は少ない。
その代わり、逆転される可能性はある。
ただし、それは王者が順調に使われてきた場合に限られる。
ここ20年で見ても、秋に古馬と対戦した春天好走のクラシックホースは消耗して、ここで息切れしてしまうが、勝っていないか使っていない馬、有馬記念を勝って天皇賞で負けた馬は、基本的に負けることはない。
マヤノトップガン、テイエムオペラオー、ステイゴールドの2頭等。
菊花賞連対馬の信頼度は高いが、キタサンブラックはその裏をいっている部分もあって、有馬記念最先着馬でもあるから、ちょい負けだろうか。
一方、古馬GⅠが前走の海外が初めてであったというドゥラメンテタイプは、比較対象とならないだろうシャドウゲイトしかいない。
サトノクラウンのような、秋天を経た馬だと、アドマイヤムーンの好走例がある。
4歳馬だからこそ起きる珍現象。
イスラム世界で厄落としの意味があるかは定かではないが、負けるために参戦したようなドバイシーマCは、ドゥラメンテの能力をより高めるためにもこの上ない貴重な経験だったのではないか。
秋以降の中長距離古馬GⅠは、あまりハイレベルではなかった。
ラブリーデイの軽視というよりは、年が明けたら4歳、4歳、ダートも4歳だったことを振り返らずとも、4歳、5歳が中心になるこの宝塚�記念で、近走5歳のGⅠ馬が見せ場を作るときには、決まって4歳馬が勝っているのだから、実質的な勝負づけはすでに済んでいると考えるべきだろう。
その中のチャンピオンホースを本命にしないといけない状況。
問題は、どの馬を相手にした方がいいかだ。
ちょい負けしそうなキタサンと同格にすべき馬は、既に彼を負かしているアンビシャスであるとか、管理する堀調教師も言うようにドゥラメンテのライバルと言えるサトノクラウンだろう。
彼らがみんなドゥラメンテの迫力に屈服させられたとしても、今年の重賞好走馬が3頭も残っている。
最近、このレースではトニービンの血が勝敗のポイントとなっているので、ハーツクライ産駒のシュヴァルグランは、本当はこういう距離の底力勝負向きだろうから、2番手グループの次に評価すべきか。
不安は鞍上にもあるドゥラメンテ。
しかし、M.デムーロ騎手は、いつもこの馬に対しては、畏敬の念を込めて、いい緊張感で接しているように映る。
「少し大人になった」
ならば、浦島太郎のように上に乗っかっていれば、一見、無茶苦茶なことをしているようでも、竜宮城には連れて行ってくれるはずだ。
ゴールドシップは持ち帰った玉手箱の中身を見てしまったから、昨年あんなことに…。
今年は、玉手箱ではなく金の斧をもらうための無難なレースを期待したい。