天皇賞(秋)2024【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧
【レース結果速報】1着ドウデュース(3.8倍)2着タスティエーラ(53.8倍)3着ホウオウビスケッツ(48.1倍)
レース名 | 第170回天皇賞秋 |
日程 | 2024年10月27日 |
優勝馬 | ドウデュース |
優勝騎手 | 武 豊 |
勝ちタイム | 1:57.3 |
馬場 | 良 |
3連単配当 | 397,100円 |
天皇賞(秋)2024 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ
着順 | 馬番 | 馬名 | タイム | 着差 |
---|---|---|---|---|
1 | 7 | ドウデュース | 1:57.3 | - |
2 | 4 | タスティエーラ | 1:57.5 | 1.1/4 |
3 | 9 | ホウオウビスケッツ | 1:57.6 | 1/2 |
4 | 11 | ジャスティンパレス | 1:57.6 | クビ |
5 | 2 | マテンロウスカイ | 1:57.6 | クビ |
単勝 | 7 | 380円 |
複勝 | 7 | 200円 |
複勝 | 4 | 1,020円 |
複勝 | 9 | 1,000円 |
枠連 | 3-4 | 3,240円 |
ワイド | 4-7 | 3,000円 |
ワイド | 4-9 | 18,280円 |
ワイド | 7-9 | 2,980円 |
馬連 | 4-7 | 9,660円 |
馬単 | 7-4 | 13,560円 |
3連複 | 4-7-9 | 102,180円 |
3連単 | 7-4-9 | 397,100円 |
天皇賞(秋)2024 - レース後コメント(騎手/厩舎)
「めちゃくちゃうれしいです。腹をくくってラストの脚を、というレースを考えていました。ペースは遅かったけど、これしかないかな、と。ものすごい末脚で、ドウデュース本来の末脚で大丈夫だと思いました。今回は絶対に結果を出さなきゃいけない、と強い気持ちで乗りました。ドウデュースの本当の力を出すことができて改めてうれしいですし、いいラストシーズンにしたいなと思います」
※優勝した武豊騎手のコメント(ドウデュース)
天皇賞(秋)2024 - レース結果動画(YouTube)
天皇賞(秋)2024 - 回顧
ドウデュースの血統
びっくり箱を開いたかのような末脚に驚愕するシーンを、今年は昨年とまるで違う形で示したドウデュースは、伝説のサラブレッド・ダンシングブレーヴの近親でもある。
5代母がその祖母にあたるから、ドウデュースの3代母であるリファール産駒のダーリングドームは、同じ父を持ついとこ。
ダンシングブレーヴの伝説を21世紀版に改変した、その血を母父父に持つイクイノックスは、最初はこの血統背景を持つドウデュースとライバルになれそうだったが、勝ち運をダービーで多分に消耗の勝者の方は、浮き沈みの激しい戦績を刻み、一方で、イクイノックスはダンシングブレーヴの末裔に相応しい成長力で、ダービー以降は6戦全勝、全てがG1という快記録で、この競馬の世界を牛耳った。
北米系の血を受けるシアトルスルーも母母父に絡むセクレタリアトも、世界に誇るクラシック三冠馬であるが、おまけのように加わる凱旋門賞連覇のアレッジドの血や、父のハーツクライ、凱旋門賞馬・トニービンの影響を強く受けたその血に支えられたドウデュースに、成長のストップなどなかったことを結果で示した価値は、この後のことを考えるとかなり大きい。
ちなみに、トニービンの産駒はこのレースを得意とし、東京のG1を複数回制するのは当たり前のようなところもあったが、ウイニングチケットが敗れた翌年に小島太騎手と共に制したサクラチトセオーが、まさに、東京の旧500M直線の攻防で、絵に描いた異様な逆転で皐月賞を勝った年に好走のジェニュインを捉えたシーンは、武豊騎手なら当然、どこかに再現する場面をリメイクの形でも、機会をうかがっていた可能性を思い起こさせるものがあった。
初めて朝日杯フューチュリティSを制した馬で、4年連続のG1制覇に成功し、競馬界が抱える早熟のサイクルに対する危惧を、ダービー馬による真っ向否定から、好走復活のタスティエーラ共々、特別な才能を抱える者たちへの畏怖を、この伝統の舞台で十二分に堪能できた我々は、実に幸せである。
リバティアイランドは残念だったが…。
誰もが、直線で弾けるリバティアイランドを想像するような展開になったし、思われたような、スローペースでの進行。
位置取りも尤もらしいようで、実際は、もうエネルギーの大半があらぬ方向へと抜け出して今って、レースどころではなかったのだろう。
あまりにも反応は悪く、また抵抗の程度も度を越していたため、このためにしっかりと調整し直した川田騎手も、さすがに無事に牧場に返すためのスマートなギブアップを選択せざるを得なかった。
アーモンドアイのような凄まじい発展力を期待したファンも多く、また、実際に陣営はその通りになるように作り上げたつもりだったが、単純に、休み明けの難しさが全て出てしまっただけの結果にも思えた。
怪我がないことが第一だが、どうも、川田騎手と中内田厩舎は、急激に負のスパイラルに入ってしまったような状況に突入で、周りの方が心配になっている。
恐らく、大きなけがはないだろうが、一応、故障明けであったという点で、コントレイルと似たような臨戦過程であったことも付け加えたい。
体重をむしろ、自分で調整して減らしながら、ジャパンCでもさらに体を削った三冠馬に対し、こちらの若き三冠姫は、心と体のバランスがまるで整っていなかった。
むしろ、引き際の方が難しい状況になったほど、内容が悪すぎただけに、レース選択も実に難しい。
武豊がいかにインテリであるかを語るまでもなく、饒舌に勝ち馬を称えるようにインタビューの受け答えをしながら、
「でも、これしかないから…」
確信の直線一気は、90年代から超の付く大活躍をしている名手の気概やパフォーマンスの確実性に身をもって触れてきたものとしても、別格のそれに見えた。
先述のサクラチトセオー的一気は、2014年に北村宏司騎手がスピルバーグで炸裂させたそれによく似ていて、今年勝つために使った上がりは、何と32.5秒。
まさに、リバティアイランドの新馬戦なみに、キレキレだった。
筆者推奨のタスティエーラも、想定の相手ではないので、一度、不穏な春まで見せていたアレを見せかけて、ダメと思った後、エンジンを再度吹かして伸びてきたそれが、ダービーのスローの流れに乗って、その中で踏ん張り合いに受けて立つ姿とよく似ていたから、プラス体重でいくらか、ジャパンC分の余裕がある中で、筆者の想定よりはずっとムチムチだったが、想像したとおりに、単純に不器用だったというだけの不発続きが、いかにもダービー馬同士、よく似ていた。
これが33.4秒。
特殊な作戦をあまり好まないというか、普通に乗れる馬に余計なことをするタイプではない松山弘平騎手に、このタスティエーラはとても合っていたようだが、それを撫で切るドウデュース然り。
上がりでそれに準じた4着強襲のジャスティンパレスなど、まだまだ、引退は近づいているとはいえ、4歳との格差があるようにも感じた。
ホウオウビスケッツは変な先入観がなかったから、望来騎手とすれば、普通に立ち回って、頑張ってくれればいいという感じ。
それに対し、外枠へのフォローも重要だったリバティアイランドやルメール騎手のレーベンスティールらは、スローの展開はもちろん、厳しい緩急差に適応出来なかった感じもある。
ソールオリエンスもそれが合わないから、みんな掲示板下の方で、再び燻っていた。
よっぽど、マテンロウスカイの方が老獪だった。
鞍上のイメージ通りという感じで、前につけられたわけではないが、まだ注文の付く連中に対し、しっかりと、G1だからこその反応で、底力を示していた。
恐らく、逃げる手も鞍上は考えていただろう。
まだ伸びしろを感じさせるこの馬は、騸馬であるから、先は長い。
何となくだが、直線一気のイメージをどこに合わせているのか、武豊騎手の思考を少し忖度してみたのだが、菊花賞のダンスインザダークや復活のダービー馬の近年では元祖に近い1999年秋の天皇賞制覇のスペシャルウィークのような一閃も思い起こしたが、ルメール騎手が乗り出す前の横山典弘騎手でよく2着に突っ込んできた時代のハーツクライでも、様々な記憶がある鞍上のこと。
ハーツクライと言えば、一時期までは代表産駒=ジャスタウェイ独占の時代もあり、同世代のワンアンドオンリーやヌーヴォレコルトは、父の完成期に近い形で、同年のオークス、ダービーを優勝しているから、これとはまるで違う形。
サンデーサイレンスに決め手を繰り出させることで、数百の勝ち星を重ね、直系だけで2000勝近く勝っているだろう武豊騎手には、同時に、このレースで散ったサイレンススズカやダートの爆走王・スマートファルコン<父ゴールドアリュールはサンデー産駒でユタカ騎手主戦>らに教えながら、自らも学んだという、選手権距離におけるスピード能力の引き出し方に、一定以上の理解があり、確信を得ている部分があったことは事実だ。
昨年は速すぎて、それより2秒遅いのだから、比較にならないが、
皐月賞=2:00.0<3着>
昨年の天皇賞=1:56.6<7着>
これらの間に、この馬のツボがある事だけは理解するこの天才は、スローだからこそ、サンデーサイレンス直仔のように、直線一気が合うのではないのか…、という確信があったのだろう。
前に行くのが常道だが、正攻法を選択しそうな外枠の有力馬に対し、相手に合わせる策があまり合わない我流の中距離型であるドウデュースには、この作戦しかなかった。
斯くして、いつものようにユタカスペシャルを決めて、ドウデュースは期待通りに、鞍上に今年初のG1タイトルをプレゼントしたような展開となった。
絵に描いたような物語…、それこそが、武豊騎手の本質であることは、わざわざ我々如きが語るまでもないだろう。
60歳まで乗りそうなことだけは、ほぼ間違いない。
昨年の急な欠場が、この勝ち気を引き出したのもあるだろうが、本音がどこにあるかわからないからこそ、勝負師として生き残ったことは間違いない。
ただ、作戦勝ちだったように思う。
リバティアイランドが普通通りに走れば…、の疑念は、残念ながら、消えることはないから、勝てないまでも、ドウデュースと武豊騎手にはまだ頑張ってもらわないといけない。