天皇賞(春)2015 回顧
吠える男、出遅れる男と知られたゴールドシップだが、第151回天皇賞を終えた後は、鞍上に神への感謝をさせる男になった。
いつもより、いや生涯最低レベルの競馬ではあったが、上がりを遅くさせる底知れぬスタミナを活かした、輝ける3歳時の競馬を取り戻し、苦しいけれど粘り込む強い頃の姿を皆にみせつけた。
レース後は、再び調教時に見せたような新しい悪癖「尻っぱね」を連発して、己を鼓舞するのであった。
この馬を形容する言葉は色々あるだろうし、それを見つけるのは我々の課題ではあるのだが、この日のゴールドシップは想像よりも遥かに反逆的な王者らしかなぬ立ち振る舞いだったから、敢えて言うならば、
「退行による勝利」
と、この6つ目の戴冠を称賛したい。
普通じゃないなら、それをどう活かすべきか。
横山騎手のベストプランではない勝負だったのだが、どことなく馬は騎手に対しての配慮を見せ、この人馬一体を可能にしたのだろう。普通とは真逆。
人が馬に合わせるのは基本のようで、実はそれが人間の思惑に左右されがちなものであることを、この天皇賞は如実に表している。
ゲートを入らない横山典弘騎乗の馬で天皇賞というファクターを加えると…。
16年前の秋にうまくいかなかった日のことを、ゴールドシップは知っているのかもしれない。
感傷的な気分にさせてくれるのも、奔放な競馬で勝ってこそだ。
キズナに勝負をさせなかった時点で、前走苦しい競馬を経験していた2頭のハーツクライ産駒にお鉢が回ってきた。
フェイムゲームは、終始苦しい位置取りで揉まれに揉まれていたが、本物のステイヤーらしい競馬で台頭。今回3着の蛯名騎手が、その昔雨の天皇賞で幻のガッツポーズをしたステージチャンプを彷彿とさせる追撃だったが、相手があまりにも格上すぎた。
カレンミロティックもシップがいるなら…、みたいな激走だったが、前回は3着は楽にあった競馬。当然の台頭だろう。
キズナは、不得意条件で結果が出せる程、いい出来ではないということか。こちらは3歳時の輝きにはまだ足らない印象。
それを追い求めることは、幻影を追いかけることなのか言われれば、そうかもしれないと思える内容だ。
残念だし、悲しくもある。