天皇賞(春)2019 予想
色々あった平成の30年超、春の天皇賞はこれで31回行われることになるが、最初に勝ったのは南関東出身のイナリワンだった。
武豊の名が、ついに全国区になったと同時に、競馬ブームが最高潮に達したのがこの頃。
ちょうど30年経って、武豊騎手は香港出張で不在となるも、その代わりに、地方出身者2名、外国人ながらJRAの通年パスを理不尽な形ながら納得した上でゲットした2名も加わり、当時から現役の蛯名、横山両2000勝騎手も参戦。
時代は流れても、その栄誉に相応しい挑戦者が、今年も揃ったと言えよう。
馬に関しては、時代を経て、どんどんスピード型が増えた。
イナリワンの後はスーパークリークとメジロマックイーンにライスシャワーらが、この楯の栄誉を勝ち取った。
今、そんな本格派のステイヤーなど、GⅠで通用するようなスピードもないから、重賞路線にすら乗れない。
しかし、僅かにその可能性を秘める才能に、今年の春の天皇賞では出会える気がすると、筆者は確信している。
狙いはダイヤモンドS楽勝、ユタカ騎手のお手馬だったユーキャンスマイル。
菊花賞3着馬の戴冠など、まずほとんどないという50年で3勝という驚異の裏シリーズ男の歴史があることは承知で、ダイヤモンドS勝ち馬も旧3200秋天では勝てたが、こちらはあのゴールドシップに迫ったフェイムゲームの僅差の2着以外、中山のダイヤモンドSを勝ったイングランディーレしか勝てていないという、いかにも怪しい人気馬のレッテルを張られることになる。
同時に、ここにも何頭もいるハーツクライ、ディープインパクト、キングカメハメハといった未勝利種牡馬の産駒であり、ダンスインザダークという菊花賞で有利な血が、ここでは全く通用しない歴史を綴ってきているのに、ユーキャンスマイルは母父にそれが入っている。
データ班、血統班が喜んで切りそうな素材ながら、もうひとつ、左回り2戦の内容があまりにも鮮やかなので、これはもしや…、という懸念も呑み込めそうな要素が、意外にも、母系の血統構成に見受けられる。
母は秋華賞でブラックエンブレムに僅差迫ったムードインディゴ。
彼女は全3勝の内2勝は左回りだったが、その影響は、あまり大きくないだろう。
母ほどの瞬発力はないユーキャンスマイル。菊もその差で敗れた。
しかしそれが、ステイヤーとしての才覚の一端を示しているように思えたのだ。
万葉SとダイヤモンドSは時計の差は大きかったが、勝った方では菊と大差ない展開だったように思う。
中だるみが後者の方が極端ではなかった。
今回はヴォージュよりは速いロードヴァンドールに横山騎手が乗るから、ひどいスローにはならない。
そういった能力の源泉は、先述イナリワンに少し先んじて中央デビューしたオグリキャップと似た配合を持つ、祖母のリープフォージョイの存在が、一つの候補になる。
オグリはダンシングキャップ、リープも同系ネイティヴダンサー直系のシャーポで、それぞれグレードは異なるが、スプリンターであった。
でも、代表産駒がオグリキャップ、後者はパリ大賞を勝ったリスクミー。
またそれぞれの母父は、ウオーレリックから分岐するマッチェム系最後の砦であるシルバーシャーク、ノンファクトだから、一概に、この辺のゾーンでこれくらいやれそうという見立てが作れないのだ。
現に、ノンファクトの晩年の産駒に、唯一の重賞勝ち鞍がダイヤモンドSのキングザファクトがいる。
それに加え、両者の母母父は日本になじみ深いネヴァービートとプリンスリーギフト系のソーブレスド。
ユーキャンスマイルと同配合のキンカメ×ダンスで、トニービンとリアルシャダイを持つラブリーデイとは、本質的な血統のバランスが異なるのだ。
異系色の強い馬は、最近は珍しい。
表向きはラブリーデイのように見えて、中身はマイラーのはずなのに有馬もJCも全力で戦ったオグリキャップに似た泥臭さがある。
父に足りなかった長距離での活躍が、ユーキャンスマイルの登場で可能になる。
ダイヤモンドSの走りはフロックなどではないだろう。
アマゾンウォリアー-メジロラモーヌの直系グローリーヴェイズの、意識的な関西遠征ローテに敬意を示しつつ、メイショウテッコンもそれに加え、1年前は京都新聞杯に出ていた、当時ほぼ同格の面々を上位に取り、菊の1、2着馬と今年こそのクリンチャーらを押さえ、万全の態勢をとる。