2023年天皇賞(春)【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧
【レース結果速報】1着ジャスティンパレス(4.3倍)2着ディープボンド(22.5倍)3着シルヴァーソニック(22.5倍)
レース名 | 第166回天皇賞(春) |
日程 | 2023年4月30日 |
優勝馬 | ジャスティンパレス |
優勝騎手 | C.ルメール |
勝ちタイム | 3:16.1 |
馬場 | 稍重 |
3連単配当 | 65,060円 |
2023年天皇賞(春)- レース結果・配当・払い戻し・オッズ
着順 | 馬番 | 馬名 | タイム | 着差 |
---|---|---|---|---|
1 | 1 | ジャスティンパレス | 3:16.1 | - |
2 | 7 | ディープボンド | 3:16.5 | 2.1/2 |
3 | 16 | シルヴァーソニック | 3:16.7 | 1 |
4 | 12 | ブレークアップ | 3:16.9 | 1.1/4 |
5 | 14 | マテンロウレオ | 3:17.0 | クビ |
単勝 | 1 | 430円 |
複勝 | 1 | 160円 |
複勝 | 7 | 370円 |
複勝 | 16 | 400円 |
枠連 | 1-4 | 3,610円 |
ワイド | 1-7 | 1,040円 |
ワイド | 1-16 | 1,000円 |
ワイド | 7-16 | 3,110円 |
馬連 | 1-7 | 4,000円 |
馬単 | 1-7 | 5,990円 |
3連複 | 1-7-16 | 13,570円 |
3連単 | 1-7-16 | 65,060円 |
2023年天皇賞(春) - レース後コメント(騎手/厩舎)
「すごく嬉しいです。お客さんも多く、新しい京都の最初の天皇賞ですから本当に嬉しいです。(レースは)直線に向いてからこれは勝てると思いました。馬の動きはとても良かったです。今日はお客様も多く関係者はみんな喜んでいました。今回長距離でスーパーホースになりました。この後はどのような路線かはまだわかりませんが2500mの有馬記念でも大丈夫だと思います」
※優勝したC.ルメール騎手のコメント(ジャスティンパレス)
2023年天皇賞(春) - レース結果動画(YouTube)
2023年天皇賞(春) - 回顧
よく考えると、半兄のPalace MaliceがベルモンドS勝ち<ダート12F>、それも重賞初制覇だったような馬。
重賞未勝利も、長距離重賞に実績があったオルフェーヴル産駒のアイアンバローズは、激しい競馬の昨年は5着だったものの、今年は物足りなかったか、弟の余裕ある追走に譲る気持ちもあったのか、大きく敗れた。
つまり、阪神大賞典で長距離適性を再び証明していたジャスティンパレスに、最初から死角などなかったのである。
この勝利により、ディープインパクト産駒はここ5年で4勝目。
長い距離を走ることに向いているというよりも、キレ味である程度勝負できる京都の天皇賞には、秘める中距離で爆発させることのできるサンデーサイレンス系特有の瞬発力が勝負を決める場面では、かなり大きな武器となる事を、3度目の3000M級重賞で証明したジャスティンパレスは、もう、フィエールマンやワールドプレミアの後継として構わない。
ヌレイエフの血を持つ馬が決して強いわけではない、日本の長距離重賞戦線の事情はあるものの、キングマンボ系のスタミナモンスターであり、また無念の脱落となった前年覇者・タイトルホルダーなどに見られるように、ノーザンダンサーの芝向きの持続力を武器とできるタイプには、その安定性を生むスピードの補給という点で、タイプはまるで違うものの、菊花賞では差し切れなかった部分を、一気に、京都への適性まで味方につけ、ジャスティンパレスには勝てる要素に溢れていたのであろう。
本来はもっと激しいファイトになる予定だったところで、菊花賞馬は内でもがき、ずっと仲間だったロベルト系・このレースでは苦戦中 のボルドグフーシュも追撃してこられなかったあたり、天皇盾の守り神たるディープボンド超えにより、温故知新の血統的見地からも、ジャスティンパレスのためのフィールドが今まさに切り開かれたことになる。
かつて、マーベラスサンデーとサクラローレルが動き出して、じっとしていたマヤノトップガンはキレキレの強襲でブチ抜いた天皇賞があった。
あの時の4番人気が、岡部幸雄騎手に委ねられたロイヤルタッチだったのだが、この馬があろうことか、今回のタイトルホルダーのように歩様を乱し、競走を辞めざるを得なくなった。
皆が外に目をやったのに対し、今年は馬込みから悪い格好で脱落し、4コーナーを回り切れずに止めることになったタイトルホルダー・横山和生騎手に目を奪われたのだから、悪目立ちもいいところだったが、素晴らしいアシストをした和生騎手は、恐らく、陣営から感謝をされる。
馬の脚を痛め、自分を傷つけるだけでなく馬の命を奪うことなど、この世界では日常茶飯事。
人間ができることは、それを受け入れ、認めることで勝負から脱落することも選択肢にあるということを、かつての岡部ジョッキーがそうしたように、レース前から察知していたようなところがある。
あの凱旋門賞があり、鮮やかすぎた日経賞もあった。
異変に誰よりも早く気づいていなければ、ライスシャワーの苦い経験は無機質に繰り返されるだけ。
横山典弘騎手も武豊騎手も、その痛みをよく知るが、何か、この展開に最もショックを受けていたように見えてしまったのが、本来はライバルであるべき、アスクビクターモアに跨った武史騎手の方だったように思う。
冷静すぎた和生騎手に対し、かなりのオーバーペースは当然としても、失墜のタイミング少し早い印象だったのは、目標物失ってしまったという戸惑い以上の感慨があったあったはず。
自分の型にハメられなかったというより、内で消耗していた面々に、その後のファイトを求めるにはあまりにも酷な展開となってしまったのは、想像以上にタフなレースだったことを、雄弁に物語っている。
1分切りの1000M通過は、アフリカンゴールドが行った時点で確定的。
アスクビクターモアも追い上げること必至の組み合わせで、総マークなど当たり前の話という中で始まったレースは、向こう流しの2000通過で、2分2秒=122秒だった。
阪神とはいえ、昨年は123.6秒。
競馬でよく喩えられる、あの時の自分に大差、この場合は10馬身弱という感じだろうが、いくら高速京都でも、このラップで押し切ろうとするのは、土台無理だったのだろう。
勝負が早くから決したと悟った、完全に目覚めたルメールとすれば、最内枠の利点であるロスのない溜めから、事故の起きないように丁寧な立ち回りを優先した外持ち出しが理想と、瞬間的に極めて勝利が近いことを確信する中団外への進路取りを決定する。
前走は馬の変な癖などを確認しつつ、相手の出方などをしっかりと見極めて丁寧すぎたアプローチで、直線は一瞬、進路を失いかけた。
つまらないことで、それでも接戦は十分ある組み合わせという展望は頭にあったルメール騎手なら、追っ手最有力のボルドグフーシュを置いていく形をとった方が確実。
上手に走ってもたかが知れているようなボルドグフーシュは、もっと消耗戦になって欲しいという思惑がやや外れ、しかし、ディープボンドがパドックからやけに走る気に満ちていたのに対し、終始、大人しいレースをするに止まった。
敵がディープボンドだけとなれば、もうレースの構図は1強と同義。
誰にも邪魔されなかった今年充実のシルヴァーソニックだけ追い込んできて、完璧すぎても掲示板止まりのマテンロウレオは安定の5着に入った。
いい意味で目立たなかったブレークアップも、本領発揮でしっかりと掲示板。
ただ、そもそも相手ではないだろうジャスティンパレスには、自分の強さを見せつけるのに最も適した脇役に過ぎなかった。
ルメールも完ぺきで、インからの理想の追撃ができたマテンロウレオもよかったが、2000M過ぎてから、13秒台のラップが突然登場する不思議なレース。
昨年のタイトルホルダーならば、引き付けるどころか、静かにラップを上げていく場面での攻防で、序盤のハイペールに対する帳尻合わせは、タイトルホルダー自身ができないのであれば、もうそういうことさえできない状態だったとすれば、向こう正面に入った辺りではルメール騎手が外へ振っていたわけで、ここでレースは終わっていたのかもしれない。
速さと強さと、何よりもメンタルに様々な揺さぶりに対する適応力が問われる場面において、限界を超えたタイトルホルダーと、余裕で4コーナー追走の、天皇賞・春の正しい抜け出し態勢に入ったジャスティンパレスとが、あまりに対照的で、実に痛々しくもあり、また頼もしさもまたあった。
過酷なレースで逃げ馬2頭は完走ならず。
夢から目覚めた時、悪夢となったか、そうとは限らなかったかは、いずれ皆が違うスタンスで語り合うことになるわけだが、渋馬場の天皇賞というのは、どこでどういうメンバーでどんな場所で、どのような距離で行ったところで、人馬とも超えねばらならない高い壁に立ち向かわねばならない。
無念すぎるタイトルホルダーとその陣営に対し、ルメール騎手が素晴らしい立ち回りで在るべき王者へとジャスティンパレスが導かれたことが、何よりもファンの救いである。
あと、穴一発では武豊騎手がよくやる、インでひっそりというあれをヒュミドールに課し、結果、タイトルホルダーの失墜で邪魔をされてしまった格好も、このレジェンドも見事な立ち回り。
スタージョッキーが上位を占めた中、異質のエンドロール<条件馬>が、ボルドグフーシュの次に出てくる。
永野猛蔵という若き才能にも、いずれ大レース制覇のチャンスがやってくることが、見えてきたレースが、この一戦ということに、隠しきれないスター性のようなものが感じ取れた。
ジャスティンパレス以上に、彼に注目である。