ヴィクトリアマイル2019 回顧
想定外のアエロリットが押っ付けてのスタート。
猛ペースを作ってしまったのは、誰も希望していない展開だったように思う。
正攻法に拘るしかなかったラッキーライラックも、血統構成的に、時計の限界があるタイプだろうから、ハイペースになること自体は悪くはないことでも、適応できる次元の競馬ではなかったのだろう。
しかし、彼女たちはしっかりとゴール前まで残っている。
ファンの評価は正しく、馬の実力も確かだったのは事実だろう。
フルゲートの競馬だから、うまく行かないことも多い。
小柄なレッドオルガ辺りは、内枠は敵にも味方にも展開で、全てシャットアウトの憂き目に遭ってしまったのは残念。
しかし、馬場状態や求められた時計に対しての対応に関しては、いくら前に行ける馬とはいえ、ステイゴールド対決を微差ながら制したクロコスミアの執念には驚かされた。
かつて、ローズSが重馬場になった時に、1000Mを59.9秒で逃げて押し切ろうとした時が目立ったくらいの先行力しかなかったはずだが、昨年の府中牝馬Sで、似たような戦績だったカワキタエンカの猛ペースについていって、最後は勝負圏外でもそれを交わしたということがあった。
この日の伏線なのか、それは複雑の乗り替わりの結果、ルメールではなく、レーンに代打騎乗を依頼したノームコア陣営の勝負運も、因縁めいたものがある。
44.8-45.7というラップ。
バランスラップは中山では出ないけれども、レオアクティブで強烈な決め手を引き出して京成杯AHを、
45.1-45.6
という極めてハイレベルなバランスラップで制したのが横山典弘騎手。
そして、GⅠでその手のワールドレコード級のタイムが出る時、
セイウンスカイ 横山典弘
ディープインパクト/キタサンブラック 武豊
と、酸いも甘いも嚙み分ける名手の長距離戦での出番が目立つ一方、
トーセンジョーダン N.ピンナ
アルカセット L.デットーリ/アーモンドアイ C.ルメール
ゼンノロブロイ O.ペリエ
これらが秋のビッグマッチ3連戦における強烈なタイムが発生した時のコンビ。
「知っていることの強みと知らないことの強み」
1戦で全ての特性を掴み切ったプリモシーンの福永騎手が、何も、悪いことをして2着だったわけではない。
しかし、外に馬がいる時にやや反応が鈍いということは、しっかりとしたスパートを求められるから、ノームコアみたいなことはできないのだ。
時計という概念の破壊的な意味合いについてのみ、芝競馬の中心地であるヨーロッパでは語られるが、現に、横山典弘が能力を引き出したというわけでもないのに、ムーアでは引き出せなかったスピードを過剰なまでに出したら、内容はともかく、掲示板は外さなかったのである。
上手に立ち回ることだけを考え、ベストのタイミングで外へ出し…。
理想的な競馬という点で、前日の京王杯SCや来日初重賞制覇の新潟大賞典も同じ。
知っている横山が、中途半端な11番枠で周りを囲まれては困ると先行したことが、よくわからないけど、とりあえずうまく乗ることだけを心掛けて、今度は来日初GⅠ勝ちのレーンに味方したの事実だろう。
ただし、才能に恵まれた妹に先んじてGⅠ勝ちをしたノームコアには、プリモシーンら人気上位馬以上のマイル適性があったのだ。
ルメールはその良さを引き出そうと、適鞍ではなかったことになる中距離戦で結果を出したが、彼女にとっても不運な連続の乗り替わりが、好転してのこの結果。
うまいこと作り上げてきたプリモシーンも全力を出し切った万全の競馬をしたものの、割れたオッズが示すように、最後は何か運が必要だったレースに思える。
時計以外にも目立つものの多い、実に真理を突いた競馬であった。