ヴィクトリアマイル2024【結果】|レース後コメント/動画/払い戻し/回顧
【レース結果速報】1着テンハッピーローズ(208.6倍)2着フィアスプライド(12.5倍)3着マスクトディーヴァ(2.3倍)
レース名 | 第19回ヴィクトリアマイル |
日程 | 2024年5月12日 |
優勝馬 | テンハッピーローズ |
優勝騎手 | 津村 明秀 |
勝ちタイム | 1:31.8 |
馬場 | 良 |
3連単配当 | 916,640円 |
ヴィクトリアマイル2024 - レース結果・配当・払い戻し・オッズ
着順 | 馬番 | 馬名 | タイム | 着差 |
---|---|---|---|---|
1 | 9 | テンハッピーローズ | 1:31.8 | - |
2 | 2 | フィアスプライド | 1:32.0 | 1 1/4 |
3 | 6 | マスクトディーヴァ | 1:32.0 | クビ |
4 | 15 | ドゥアイズ | 1:32.1 | クビ |
5 | 11 | ルージュリナージュ | 1:32.2 | 1/2 |
単勝 | 9 | 20,860円 |
複勝 | 9 | 1,950円 |
複勝 | 2 | 320円 |
複勝 | 6 | 130円 |
枠連 | 2-5 | 11,100円 |
ワイド | 2-9 | 15,840円 |
ワイド | 6-9 | 5,380円 |
ワイド | 2-6 | 470円 |
馬連 | 2-9 | 93,690円 |
馬単 | 9-2 | 303,260円 |
3連複 | 2-6-9 | 43,750円 |
3連単 | 9-2-6 | 916,640円 |
ヴィクトリアマイル2024 - レース後コメント(騎手/厩舎)
「左回りの方がいいことは何回か乗って分かってたので、この馬の末脚を信じて乗りました。4コーナーまで最高の形で直線を迎えられました。直線はすごく長く感じて必死で追っていました」
※優勝した津村 明秀騎手のコメント(テンハッピーローズ)
ヴィクトリアマイル2024 - レース結果動画(YouTube)
ヴィクトリアマイル2024 - 回顧
エピファネイア産駒ではモリアーナがいて、休み明けでここに出てきたデアリングタクトも著名。
母父タニノギムレットといえば、このレース独走のウオッカがいる。
初代ヴィクトリアマイル覇者=ダンスインザムードはサンデーサイレンスの産駒で、これが母母父。
挙げれば切りがないが、危ない血統の積み重なったこのような配合の強烈パンチを時たま繰り出すタイプは、津村明秀騎手のような、当たりの柔らかい丁寧な乗り方のできる騎手でなければ、まず、大きな舞台では力を発揮できない。
サンデーサイレンス系が父母父父と母母父でのクロスであり、狙ったロベルトの同系配合は4×4と濃すぎることはないが、複合的に重なるヘイルトゥリーズンの繋がりは極めて密。
ファミリーにはサトノクラウンやマルセリーナと強く関わるマルジュがいたりだとか、また、スウィンフォード系のスタミナを後世に伝えたアルサイドやパーシアなど、案外重厚な配合なのだが、キレを出そうと躍起になってヘイルトゥリーズンの血を重ねているうちに、高速の左回り戦に強化される魅惑的なダークホースが誕生したということだろう。
初の左回り出走は、初重賞挑戦でもあった、ソダシの出ていたアルテミスSの3着。
思いは願わずとも、突然叶うことはあるものだが、意外とこの馬のリズムにG1と縁のなかった人馬が秘める破壊力が、血統のイメージ通りに爆発したということなのだろう。
ウンブライルやマスクトディーヴァらは、騎手の流儀もあって、後方待機の策を最初から狙えるような感じではない馬場を意識した位置取りは叶ったが、それでも力を出し切ったというよりも、拍子抜けしたような競馬に終始した。
先週のルメール&アスコリピチェーノ以上の滞りが発生の1番人気コンビは、それと似たようなゴールシーンにもなったが、案外、モレイラのイメージより差し込まれた展開が、同じ流れを生んだと踏まえた時、この馬が全力発揮できる状態でなかった可能性もあり得る。
次が大事だ。
それでもだ…。
これらの外から、テンハッピーローズが突き抜けるとは誰も思っていないので、唯一、彼女を信じられる立場にあった津村騎手だけに、このレースのヴィクトリーロードが見えていたのだろう。
普通はあんな外に出してはいけない馬場状態なのだが、馬乗りの技術を極めようとしている職人・津村明秀には、馬とのリズムの方が重要という頭があった。
伏兵の敗戦にいくらでも力負けのレッテル張りは可能だが、結果的に、
45.4-46.4
という、ハイバランスの東京マイルを外から突き抜けられるような、G1らしい中身の濃いレースに対応できたのが、テンハッピーローズだけだったという感じ。
卒なく乗れる気楽なルメール騎手のフィアスプライドが正攻法で粘り込みを図ったが、正直、相手ではなかったという圧倒的な末脚の迫力があった。
その辺りをモリアーナやナミュールに期待したかったが、行かせようにも反応鈍いモリアーナ=横山典弘、最初から行けそうな気配ではなかったナミュール=武豊両ベテランのテクニックがフルに炸裂するような下準備は全くできなかった。
普通のレースならもっと差しは決まるが、決め手比べというよりは、牝馬限定戦にしては激しい時計勝負に加えて、特有の上がりの脚比べになるヴィクトリアマイルは、正攻法のクラシック組こそ、案外の結果に終わることが多い。
総じて、スピード不足。
ナミュールにそれはないのだが、時計のイメージほどの底力までは求められないから、アーモンドアイやグランアレグリアならともかく、往年のウオッカなど、ワールドクラスの総合力がないと、専門家になりかけているナミュールでも、わずかな適性の面で、東京での底力比べで見劣ると同時に、やはり、例年より1週詰まったドバイからの転戦の消耗が、完全復調まで至らなかった印象もある。
何しろ、あの伝説級のマイルチャンピオンシップは、モレイラ相手の小差での勝利。
藤岡康太騎手の煽ったスタートの後のリカバリーなど、素晴らしすぎた劇的勝利の側面もあった。
しかし、それらを押しやって、テンハッピーローズが勝つとまでは、神も予測していない。
絶好調なのかどうかも不明な大いなる伏兵には、とことん、年に一度しか頑張らないという強固なスタンスが、今年最初の左回り戦での爆発に繋がったことは間違いないのだが、予測は不可能に近い。
ただ、前年最終戦である夏の朱鷺S・新潟1400の名物リステッドは、久々にこの馬らしい末の伸びが見られたと感心するような勝ち星であったが、その時から、津村騎手が継続騎乗していた。
その1年前はテン乗りで好走。
福永元騎手や今村騎手での好走したことのあるこの馬には、暑い日がある5月から、灼熱の8月末までの全5勝の記録がある、正真正銘の夏女の性質が、キャリアを振り返っただけでも判然とした形で見えてくるのだが、津村騎手のような馬を丁寧に作り上げるテクニシャンであるなら、どこかで必ず、癖の強い馬に対する処方箋を様々出していたはずである。
左回り特化で夏が好き、加えて、外からぶっ放すような、それこそ、朱鷺Sや信越Sで好走した時のような、回っていくところでの勝負の綾をしっかりと自分の勝負運に繋いでいくという作業も求められる。
順を追って、馬がよくなることを、ここが明けて3戦目であることも踏まえた津村騎手が、満を持して、自慢の左回り大外ブン回し作戦を敢行したことが、狙いを持って勝負するだろう有力勢の不発を引き出したわけではないが、勝手にこけてくれたことで、自らの才能を爆発的に開花させたことになる。
裏を返せば、年に一度は走ってくれるから、それでも、オープンで肝心の賞金加算が滅多にできないタイプだけに、高柳大輔調教師が津村騎手を確保したところから、きっと、神が味方していたのかもしれない。
圧倒的な決め手は、今回、メンバー最速ではなかったが、33.2秒は3位であり、最速はレジェンドの更に後ろで機を見ていた、前日破壊力満点の追い込み勝利をメインで決め損ねていた横山和生騎手のルージュリナージュ。
これも大変な伏兵。
抜けた存在とは言った何がそれにあたるのか。
カワカミプリンセスもミッキークイーンも罠にハマっていたが、どこかでそれを忘れているのだから、もっと我々も学ばないといけなかったのだろう。
15頭立ても、外を回すのが流儀となっているテンハッピーローズのための好材料になっていたが、これもみんな楽に走れる要素と捉えていた部分もある。
難しいのだが、テンハッピーローズが輝くヴィクトリアマイルなのだから、専門家をいつの年も見つけ出すという作業を突き詰めていく流れが、来年、このレースの検討に入った時に、最も力を注いでやるべき最初の段階に組み込めないようだと、また同じ罠にハマる。
安田記念優勝馬なのに、中東の罠にハマっていたソングラインが、あっさりソダシを負かしたのは、つい昨年のこのレースの話である。
ソングラインは即座に安田記念も制覇し、いとも簡単に連覇して見せている。
津村騎手のような、日の目を見ることが少ない馬をどう輝かせていくのか、というテーマを持ってこのレースを制覇した例は、序盤から散見される。
ひどいスランプに陥った桜花賞無敗制覇のダンスインザムードが、その時以来の勝利を挙げた時は、藤沢厩舎所属時代の北村宏司騎手とのコンビだった。
翌年は執念で高速マイルを制した、かつてのクイーンC勝者である松岡正海騎手のコイウタ。
言わば、こうした流れで、人気薄になって連覇のヴィルシーナ・内田博幸騎手やいつも人気薄だったストレイトガール・戸崎騎手、ジュールポレールの幸騎手など、どこかで強烈なインパクトを残していた騎手が、突然、目の前に現れた勝機をしっかりとモノにしてきたレース史の一部分に、この津村&テンハッピーローズの劇的1勝が刻まれることになる。
もう少し、しっかりとしたインタビューをしてもらいたい津村騎手だが(笑)、ようやく、優しいだけではない乗り手としてのテクニックを振り返る上で、最も重要な相応しいタイトルを、テンハッピーローズからプレゼントされたのか、自身が誘ったかを理解できるのは、異例の6歳馬ワンツー<歴史的な大波乱であった2015年以来>という結果を裏切れるかどうかが判然とする、この夏以降の活躍に懸かっている。