ヴィクトリアマイル2024の予想 過去10年のデータ傾向と有利な枠/出走予定馬の最終追い切り

ヴィクトリアマイルの予想と出走予定馬の最終追い切り評価を行っていきます。
過去結果を見ても荒れる傾向のある中、有力な登録馬の中から鉄板軸馬とされる外厩仕上げの本命馬や消去法で消すべき馬、本命をも超える可能性のある穴馬をデータ分析!

歴代勝ち馬のサインを見逃さず、予想オッズを見ながら過去配当を超える払い戻しを狙っていきましょう。

レース名第19回ヴィクトリアマイル (G1)
グレード重賞(G1)
日程2024年5月12日(日)
発走時間時分
開催場所東京競馬場
距離芝1,600m
コース左回り
賞金1億3000万円
レコードタイム1:30.5

ヴィクトリアマイル2024予想-予想オッズ/出馬表(馬柱)/出走予定馬の馬体診断/想定騎手/最終追い切り評価(枠順確定)

ヴィクトリアマイル2024の予想オッズと登録馬

枠順馬番出走予定馬騎手性齢斤量予想オッズ人気1週前追い切り最終追い切り
11ライラック戸崎 圭太牝556.032.510美浦・ウッド・重(戸崎圭)
5F 68.2-52.5-37.9-11.2(馬なり)
美浦・ウッド・稍重(戸崎圭)
6F 81.8-66.1-51.2-36.9-11.7(馬なり)
22フィアスプライドC.ルメール牝656.016.16美浦・ウッド・重(助手)
5F 66.4-50.7-36.2-10.9(強め)
栗美浦・ウッド・稍重(助手)
5F 66.9-51.6-36.8-11.1(馬なり)
23スタニングローズ西村 淳也牝556.014.2 4栗東・坂路・稍重(西村淳)
800m 54.3-39.1-24.7-12.0(一杯)
栗東・坂路・稍重(西村淳)
800m 53.5-38.7-24.5-11.8(馬なり)
34コンクシェル岩田 望来牝456.017.47栗東・CW・稍重(吉村誠)
6F 81.1-66.0-51.7-37.2-11.3(強め)
栗東・CW・稍重(吉村誠)
6F 85.5-69.2-53.0-37.5-11.4(直強め)
35ウンブライル川田 将雅牝456.010.03美浦・ウッド・重(助手)
7F 98.4-66.6-51.6-37.1-11.0(直一杯)
美浦・ウッド・稍重(助手)
6F 85.0-68.3-53.0-38.2-11.3(馬なり)
46マスクトディーヴァJ.モレイラ牝456.03.62栗東・CW・稍重(助手)
5F 66.9-52.1-37.9-11.5(馬なり)
栗東・坂路・稍重(助手)
800m 52.9-38.8-24.9-12.1(馬なり)
47ハーパー池添 謙一牝456.020.19栗東・CW・稍重(池添謙)
6F 83.0-67.5-52.5-36.9-11.3(一杯)
栗東・坂路・稍重(助手)
800m 53.1-38.3-25.3-12.6(馬なり)
58サウンドビバーチェ松山 弘平牝556.063.1 13栗東・CW・稍重(松山弘)
6F 79.4-64.6-50.4-35.9-11.2(馬なり)
-
59テンハッピーローズ津村 明秀牝656.055.912栗東・CW・稍重(亀田温)
7F 96.5-65.1-50.9-36.6-11.4(強め)
栗東・坂路・稍重(助手)
800m 55.0-40.3-26.3-12.7(馬なり)
610ナミュール武 豊牝556.02.21-栗東・坂路・良(助手)
800m 54.0-39.1-24.8-12.0(末強め)
611ルージュリナージュ横山 和生牝556.0103.4 14美浦・ウッド・重(助手)
5F 68.5-52.7-37.8-11.3(馬なり)
美浦・ウッド・稍重(助手)
5F 69.7-53.4-38.1-11.5(馬なり)
712キタウイング杉原 誠人牝456.0268.715-美浦・ウッド・稍重(杉原誠)
6F 86.0-69.3-54.6-39.8-12.6(馬なり)
713モリアーナ横山 典弘牝456.014.4 5美浦・ウッド・重(武藤雅)
6F 80.7-65.1-50.6-36.6-11.3(馬なり)
美浦・ウッド・稍重(武藤雅)
5F 69.4-53.2-37.8-11.4(馬なり)
814フィールシンパシー横山 琉人牝556.032.8 11美浦・ウッド・重(助手)
6F 86.5-70.1-54.4-39.6-12.6(馬なり)
美浦・ウッド・稍重(横山琉)
6F 82.3-66.1-51.3-37.1-11.5(馬なり)
815ドゥアイズ鮫島 克駿牝456.018.78栗東・CW・稍重(鮫島駿)
6F 84.0-68.0-53.4-38.5-11.6(一杯)
栗東・CW・稍重(加藤祥)
6F 83.8-67.3-52.1-37.6-11.6(馬なり)
脚質1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
逃げ馬1回1回2回14回5.6%11.1%22.2%
先行馬5回6回6回49回7.6%16.7%25.8%
差し馬12回9回7回114回8.5%14.8%19.7%
追い込み馬0回2回3回87回0.0%2.2%5.4%
枠順1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
1枠1回2回7回26回2.8%8.3%27.8%
2枠3回2回3回28回8.3%13.9%22.2%
3枠7回0回1回28回19.4%19.4%22.2%
4枠0回3回1回31回0%8.6%11.4%
5枠0回4回1回30回0%11.4%14.3%
6枠4回1回0回31回11.1%13.9%13.9%
7枠2回1回2回46回3.9%5.9%9.8%
8枠1回5回3回44回1.9%11.3%17.0%
種牡馬1着2着3着4着以下勝率連対率複勝率
ディープインパクト47回22回21回210回15.7%23.0%30.0%
ロードカナロア26回34回24回182回9.8%22.6%31.6%
エピファネイア23回15回15回125回12.9%21.3%29.8%
ドゥラメンテ17回14回10回86回13.4%24.4%32.3%
モーリス14回16回16回104回9.3%20.0%30.7%
ルーラーシップ13回10回12回123回8.2%14.6%22.2%
キングカメハメハ11回14回7回68回11.0%25.0%32.0%
キズナ11回12回5回76回10.6%22.1%26.9%
ハーツクライ10回16回19回102回6.8%17.7%30.6%
ハービンジャー10回13回9回80回8.9%20.5%28.6%

ヴィクトリアマイル2024予想 - 過去10年のデータ傾向

牡馬の一線級相手に戦ってきた実績十分の名牝が崩れることは稀

ここ10年で消えた1番人気馬というのは、4歳ではスマートレイアー、ヌーヴォレコルト、ラッキーライラックという3頭で、5歳だとミッキークイーン、レイパパレなので、ランクがアーモンドアイ、グランアレグリアなどとまるで違うとは、直ちには言えないような力を持った馬ばかり。

ヌーヴォレコルトに関しては、中山記念が2歳時に1度使ったキリの牡馬混合のレースでの勝利を経て、当然の支持であったわけだが、今なら誰でもわかる事ながら、ストレイトガールやその前のホエールキャプチャ、ヴィルシーナが何度も来るレースだったことを踏まえた時、ピントのずれた過剰人気型だったことがわかる。

相手関係一つで、牡馬相手にも好勝負だったミッキークイーンやレイパパレなども、もっとやれたはずだが、スペシャリストのジュールポレールの相手には、翌年に制覇者となる本格化間近であったリスグラシューが来たりとか、レイパパレの年はソダシとレシステンシア、休養明けでも三冠馬なので注目されたデアリングタクトなどがいて、本当に正当な評価だったか微妙だが、これも相手関係一つ。

本格化後のソングラインをアーモンドアイやグランアレグリアが簡単に負かせたかと言われれば、何とも言えないところがある。

一応、4歳で人気になった組は、その後もあったということで、大目に見ることはできるが、今年は武豊のナミュールかモレイラのマスクトディーヴァが支持の面で注目される存在になるから、割を食う可能性を見ておく必要もありそう。

昨年のスターズオンアースはスペシャリストに敗れたという3着だったが、桜花賞や秋華賞を勝てなかったことも、人気勢の死角となり得る。

リピート率の頻度の関係で、基本的には5歳以上が有利とはなっているが…

グランアレグリアやその前のアーモンドアイ、前年口惜しい思いをしていたソングライン、ジュールポレール、ストレイトガールらの逆襲に、そのストレイトガールが7歳時も勝っていて、もう一頭が連覇達成時のヴィルシーナの大穴快走が10年前に登場。

即ち、前年好走馬が来て、この中に多い、ウオッカと同じように、前年安田記念好走馬の楽勝や強敵を適性でねじ伏せるといった展開が恒常化している、春の天皇賞以上に特殊化しているG1として、大きな存在感を示している。

よって、どうしたって、若い馬=4歳勢はクイーンCやその前のアルテミスSくらいしか使っていないというところで、かなりこの点で不利なのは間違いないのだが、ある意味、ここら辺のレトリックは、どこかに古馬礼賛の欧米のビジネスライクなサラブレッド生産のサイクルとは違う日本競馬の文化とリンクするように、過剰に古馬が評価されているような点もあるから、少し気を付けたい。

強い馬しか来ていないし、理由もなく、上がり馬の激走を目撃することのない5歳以上は単純明快、格で押さえるべきとなってくる。

4、5歳が中心の組み合わせはいつものことであり、いつも互角の争いとなっている。

理由があってくる古馬とは違うが、適性はほとんど証明済みばかりの馬ばかりが来るのが定番

超大物は、回り道をして芝マイルに舞い戻ってきたソダシくらいで、アドマイヤリードもノームコアも、上位人気ではなかったが、ノームコアに関しては翌年もよく頑張っていたから、決して、フロックではない。

稍重の混戦にミッキークイーンの不発も手伝って、何とも言えないスローの一戦を、ルメール騎手の神懸かったリードで制した2017年は、馬というより、以降クラシック2週連続制覇の前触れという風に捉えるのが筋か。

一応、新馬戦でシルバーステート<昨年人気になったスターズオンアースは、その前年に桜花賞制覇した時、僅差でこの産駒であるウォーターナビレラを抑えて、オークスと二冠を達成していた>を破った才媛であったことを後に証明したとしておけば、アドマイヤリードの快走にも相応の説明がつく。

こうしたタイプに近いとされるマスクトディーヴァや桜花賞と秋華賞の間に7戦もしている令和のイクノディクタス<5歳時に重賞3勝含む16戦、秋はG1に4戦出走とは恐れ入る>・コンクシェルなどが、一応の候補に上るわけだが、少々ランクの点で、さすがに正攻法のプレップを勝ってきたマスクトディーヴァが上か。

ただ、モレイラマジックなど期待せずとも、そもそもが、リバティアイランドを追い詰めた…、の枕詞を抱える有力候補。

もっと前からマイルで結果を出していたハーパー、ジュベナイルフィリーズでは人気になるも己の至らなさに気付かされたウンブライル、モリアーナやJFはしっかりと走ったドゥアイズなどと、これらは一応、過去の記録に一旦遡ってフラットに評価するべき一戦という位置づけであるからこそ、人気面の妙味で、敢えて推すなら、こちらの方に思えてくる。

絞り込む要素に使える、G1を好走しきれていない馬の再評価すべきポイント

2019年のレコード決着の際、若き日のレーン騎手が初来日というか、本国以外での最初の挑戦というシーズンに初のJRAG1制覇を果たした時、偶然にも、相手には同じように、クラシックにあまり縁のなかった2頭が、アーモンドアイに一本だけでなく全部とられたラッキーライラックを一気に負かすというシーンを目撃することになった。

秋にエリザベス女王杯でワンツーする、クロコスミアとラッキーライラックが続いたという一戦は、極めて高水準。

レコードの立役者になった横山典弘騎手のアエロリットが、今にして思えば、自信を取り戻させるための過激な超前傾ハイラップを叩き出すも、結局、これが5着に残った。

素晴らしい一戦であったと同時に、プリモシーン・福永コンビの狙いすましたG1獲りのプロセスを、正攻法に近い、ロスの少ないコース取りでわずかに封じたダミアン・レーンという若者の非凡な才能を、オーストラリア以外のファンが目撃する最初のシーンになったことも印象深い。

何より、G1好走実績のあった3着以下の掲示板内のグループに対し、G1出走経験の乏しかったノームコアが、古馬重賞初制覇を決める一勝を挙げたのは、エリザベス女王杯を選ぶに至った、アーモンドアイの存在と秋華賞前に使った紫苑Sがやけに強かったことによる反動を考えた結果。

2着だったものの、高速決着だった前年の関屋記念を制し、直前のダービー卿チャレンジTは2着と、堂々の実績があった本命候補であったが、紫苑Sしか重賞を勝っていなかったノームコアは、2歳時に2勝目を挙げたアスター賞以来のマイル戦。

マイラーとしての資質を中距離で勝てないという結果、ここに挑戦するに至った過程に求める、紫苑S・高速レース制覇の実例から、ファインルージュの好走の例に類似することから、マイル実績のウンブライルもソングラインに似ているし、マスクトディーヴァは前走が文句なし。

そして、マイルG1を数多く制してきた横山典弘騎手のモリアーナは、マイルでの手応えを感じた前走で、違う手を打ってくる可能性もあり…。

面白い方が狙ってみたくなった。

ヴィクトリアマイル2024予想 - 出走予定馬の血統/成績/タイム

少数精鋭によるマイル女王決定戦であると同時に、至極の名手対決となる公算が大きい、春の隠れた名勝負必至の一戦

モリアーナの血統

この馬の4代母は、ディープインパクトの母母と共通であり、ウインドインハーヘアの半妹にあたるベラヴィテッサが、モリアーナの3代母という関係。

サンデーサイレンス系ではないが、その4×3の定番の型が、この馬にも組み込まれた母父サンデー産駒の連続配合による副産物は、この血統背景からも、紫苑Sを振り返るまでもなく、キレの成分は何となく想像もつくというレベル。

ただ、あの決め手は横山典弘あってのモノであるから、特別というか特殊な性質を持つ証拠としか、ここまではできなかった。

ただ、阪神牝馬Sで決め手を繰り出して、それなりの見せ場を作った内容から、マイル適性や東京の高速の上がりに対する親和性などを読み解くうちに、極めて単純な構造であるということに気が付いたのである。

何しろ、サンデーに絡めたヘイルトゥリーズン偏重の構成が、一目で明らかなだけでなく、根本にネアルコ系×ハイペリオン系の繰り返しがモリアーナの血統表の中でいくらでも発見できるという特異性が、かなり際立って映るのだ。

エピファネイアは母父のスペシャルウィークがサンデー×ノーザンダンサー系×ハイペリオン系。

母であるシーザリオは、そんな父をつけるのに、ノーザンダンサー系×ヘイルトゥリーズン・サンデーの父父 直系×ハイペリオンというサドラーズウェルズの孫でもあるから、極めて重く、同系配合以上の強い繋がりをもつ。

一方、母方のダイワメジャーにしても、サンデーにハイペリオン産駒のレディアンジェラが狂気の3×2という構造で誕生のノーザンテースト肌のつくりなので、母もノーザンダンサー系×ハイペリオン系だから、やかましいほどに同じ組み合わせが継続して発生するように仕上げられてきた経緯がある。

これに快速のターントゥ直系・ハビタットが、モリアーナの代でクロス。

直仔スティールハートは、ニホンピロウイナー以外にも沢山のスピード型を世に送り込んだ、同系のブームを作った種牡馬の一頭。

ノーザンダンサーのニアークティック直系よりも、ロイヤルチャージャーを経たネアルコ系の方が、スピードシンボリ<シンボリルドルフの母父、有馬連覇の豪傑>の時代から走っていたのであるから、ハイペリオン系にネアルコ直仔ナスルーラの直系を3連続配合から誕生の二冠馬・セイウンスカイのことを誰よりもよく知る横山典弘騎手にはぴったりの馬でもある。

長い距離で差して、短いところで前に行く…。

これならば、セイウンスカイの真逆の策を取って、何ら不思議ない理屈が生まれてくるのだが、モリアーナは前向きさを取り戻しているだろうか。

前走の阪神牝馬Sで、久々のマイル戦をメンバー上がり最速タイで乗り切り、3着とまずまずの好結果で、ヴィクトリアマイル優勝争いに首の皮一枚残したかのように、一応の布石となるようなものを打ったモリアーナ。

あの驚愕の直線大逆転劇は、もう4走も前の話であるが、大阪杯除外の影響を踏まえれば、関西にしか適鞍がなかった状況で、これもまた悪くもない結果とできる。

敢えて、2番候補だった保険のプレップ競走を経て、距離を戻すのではなく、同じ路線に引き続き挑もうというのは、そもそもの目標がここであったという証拠なのでもあろうかと思う。

しかし、一度距離を伸ばして、結果を残した後、内容が良くなかったのは、イン強襲が一定レベルでハマりかけたところで明らかに末脚不発だった秋華賞ぐらいだったというモリアーナに、魅惑的な伏兵ながら、マイル戦での不安が前走で払しょくされたわけではない。

道悪の前傾ラップレースばかり使われてきた中で、その秋華賞だけが例外的に、渋馬場でも高速上がりの特殊なスローであったことで、敗因はいくらでもあったようで、デビュー2連勝は、いずれもスローからの好位抜け出し。

クラシックを意識させるには十分な内容だったが、阪神ジュベナイルフィリーズで正攻法に近い戦法を武藤雅騎手がとったものの、初経験のハイペースで面食らったかのような、直線伸びあぐねというのが、流転の始まりでもあった。

作戦は上々だった、下げて勝負に出たクイーンCも、少し勝ちに出た分の競り負けだったニュージーランドTも大して負けていなかったが、わずかな勝負の綾というよりも、結果を求めた若手騎手の些細な判断の見誤りが、いずれもの敗因だったのは事実。

少し勝負懸かりだったはずの父善則師にとっても、桜花賞にも出られず、NHKマイルCでの面目躍如の激走も厳しいという判断もあったのだろうか、オーナーサイドに申し開きできるクラスの鞍上を確保した。

それが騎手学校で調教師のひとつ下の世代であった横山典弘騎手なのである。

下げて結果の出かけていた馬を、ハイペース必至の場面で行かせる意味もなく、作戦通りに直線勝負に出たのだが、少し仕掛け遅れたとはいえ、キレキレではなかった。

この結果を踏まえ、下げて勝負するのであれば、秋華賞を狙う手も合っていいのではないか、という進路再修正が図られた経緯があったのではないかと推察される。

単純に、この段階で古馬のマイル路線にぶち込むには、少し線が細いという内情もあったのかもしれない。

そんな過程で、王道の紫苑Sから始動したレースが、また道悪のハイペース。

前後半にして2秒近いラップ差が生じる展開で、子息・武史騎手の勇ましいヒップホップソウルへのアシストも目立ったのだが、ゲートオープン直後、自滅的に煽っておきながら、以降は完璧なリカバリーで、限りなく究極に近いノリスペシャルの王道である直線一気を炸裂させたレース内容は、皆の度肝を抜いた。

まだ幼いところがあることを示唆したインタビューからも、今後の伸びしろに対する期待感は感じられたものの、少し時間をかけて育てていく必要性のようなものも窺い知れた。

みんなと同じ脚を使う勝負では、秋華賞も前走の阪神でも似たようなものしか出せないが、秀でた瞬発力は彼女の魅力。

一方で、雨女ぶりが<彼女がそうかまではわからないが…>全力でパフォーマンスダウンをアシストしているように、前の前で走った中山のようなひどい馬場でも走り切れる総合力は、変な道悪巧者の印象をつけてしまっていたが、雅騎手が新馬戦で、皆に見せつけるように示した才能の指標のような記録に、モリアーナ自身の本質が凝縮されているような気がする。

テンから先団グループにいたと言え、

63.6→<以降ハロンごとのラップ>11.2→11.0→11.1

という、いくら夏の東京の新馬戦といっても、強烈な上がり勝負に、最後は自身でレースラップを上書きするような構成に持っていった圧巻の伸びは、同じく安田記念の日にデビューし、2年後に戻ってきたその開催日にアーモンドアイを完封してしまったあのグランアレグリアとそっくりである。

彼女が負かしたのは、後の2歳女王であるダノンファンタジーなのだから、相手関係もまるで違うが、3秒半以上序盤の流れが遅くなったとはいえ、グランアレグリアの直線で見せた脚とほぼ同レベルの自身33.0秒は、どこで再度発揮しようかと思えば、当然、また走らなければならない東京だったはず。

グランアレグリアは3歳時も走って、ひどい競馬をしてしまったが、何か蓄えるように、じっと待った藤沢流の秘策に応え、4歳以降はほぼ短距離路線をジャックしていった。

ヴィクトリアマイル2024予想 - レース展開と最終予想

昨年のウイナーであるソングラインも、初勝利は秋の東京の芝マイル戦。

前後半はほぼイーブンというか全く同じという11秒代後半のラップを継続したようなハイバランス戦で、直線突き抜けたのだが、このレースの一昨年不利で敗戦の屈辱を晴らした後に、連覇を決めた安田記念は1:31.4で勝っている。

約3秒に迫ろうというほどに、自己ベストを更新していった彼女は、父エピファネイアとダービーで頂上決戦をしたキズナの娘。

ここまでオープンのマイル戦では、前傾ラップしか経験してこなかったモリアーナが、ほぼお試しで、立て直しのために使った阪神牝馬Sを勝ちに出ずに、結果的には少頭数も味方につけて、位置取りの順で決まっただけの一戦を好機として、一気の大逆転の目が見えてきた。

ジュベナイルフィリーズでリバティアイランドの前に散った仲間であるウンブライルやドゥアイズ、本番で圧倒されたハーパーやマスクトディーヴァらあの娘の2着コンビも登場。

ひどい事故でよもやの療養を余儀なくされたシンリョクカや、突如として、サンプリンセス系の早熟傾向がクローズアップされるような形で成績をかなり落としてしまっているコナコーストらは登場しないものの、4歳の有力馬は出揃った。

迎え撃つのは昨年の今時分、まだ不遇の季節を過ごしていたナミュール。

これらの有力馬に対し、登場人物に横山武史騎手が加わらないのは残念だが、妙な因果で父がモリアーナに騎乗し、ナミュールはあまりにも長い時間その一つ上の先輩と切磋琢磨することで、ものの見事に追っ手を全て討ってきた武豊騎手への手替わり。

この2頭は、モリアーナの母ガルデルスリールが藤岡康太と初勝利を挙げたことでも、見えないところで繋がりがあるから、様々な点で競馬の深淵をも深く理解するスターへのチェンジは、モレイラ討ちの一点でも強調材料になるか。

モレイラ騎手はもう完全に手の内に入れてしまっただろうマスクトディーヴァと、ポイントポイントで横山武史騎手へと代打依頼があったウンブライルがルメール復帰時のお祝いという前段が作られる前に<何も不具合なければ国枝厩舎のフィアスプライドの予定>、代打に川田騎手を送ったことで継続は濃厚。

燃えるコンクシェルと岩田望来、スタニングローズと西村淳也ら二組にも注目だし、ハーパーに池添も見所十分だが、力のある能力上位馬に超の付く一流の乗り手が跨るから、スローであっても濃密な展開が推察されるから、かなり面白い。

妄想にも近い、ノリマジックで先行、あわよくば単騎先行も、若手の乗れるグループ筆頭の二人が乗る関西馬の特徴が、明らかな中距離指向であるため、臆することが全くない騎乗でブレないモレイラ騎手の果敢な先行を阻む手は、勝機に最も近づく最善手にもなってくるはず。

行く気を出させなかったものの、アメリカジョッキークラブCは内枠からの発走でもあったから、少し行きたがっていた。

そうした前進気勢が戻ってきた馬に乗った時の横山典弘は、誰よりも恐ろしいことを武豊は痛いほどに理解している。

まずまず高速の馬場状態が、恒例Bコース替わり初週のここでも継続された時、ブエナビスタ=2010年、ホエールキャプチャ=2012年も、普通に好位から抜け出せる馬に作り変える過程でこのレースを制した名手の大いなる実績が、最後に勝利という大きな結果をもたらす可能性がある。

前週NHKマイルCは3勝であり、第1回の2着騎手。

ヴィクトリアマイルは2勝で、翌月の安田記念は改修前に2勝。

桜花賞を除くJRAのマイルG1は、ホクトベガの死で勝ち運を奪われたかのようなフェブラリーSを除き、基本的には複数回勝っている横山典弘騎手は、鞍上に求められる時計の感覚の正確さで、より精緻なクオリティが求められる東京のマイル戦を、殊の外、得意としており、ここまで唯一、春の東京マイルG1全て複数回制覇の実績を持つ名手でもある。

今年勝てば、後進ルメールの最多3勝に並ぶが、そんなことはどうでもいい大ベテランが、モリアーナの才能を解放した時、最も面白いマイルG1の展開になる事は間違いない。

勝ってしまうことで、様々な記録もまた偉大なる更新となっていくが、これもまた、馬乗りとして矜持を様々な経験を重ねることで、今もアップデートしたものを持ち続けるこの男には、あまり重要ではない。

モリアーナが輝くことのみを、ここでも追求するレースに傾注するはずだ。

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