あんちょこ予想屋との出会い
私は元々は通信機器の製造メーカーに勤めていたのですが、そこで知り合った競馬好きの上司(課長)に東京競馬場に連れて行かれ、競馬にハマってしまいました。
課長には競馬だけではなく伊勢佐木町など夜の街にも誘われ、いろいろと遊びの手ほどきをしてもらった覚えがあります。仕事の面でもたくさん教えを請いたはずですが、まったく思い出すことができません。
会社にはもう一人、競馬好きの上司(部長)がおりました。部長は何でも簡単に考え簡単に済まそうとする、いわゆるいい加減な人間でした。仕事同様、競馬の予想もまじめに検討するタイプではなく、「あんちょこ」なるものを使っていました。
「あんちょこ」さえあれば馬券なんて簡単に当たるんだよ、と言いつつもをそれを見せてくれることはありませんでした。ろくに検討もせずに、なぜ簡単に馬券を当てることができるのだろう?ろくに仕事もできないのになぜ部長まで出世できたのかという疑問とともに私には大きな謎でした。
しかし私も競馬予想を深めていく間に「あんちょこ」の正体を知ることになりました。
当時住んでいた東急東横線の某駅から競馬場に行くには時間もかかるし、別に馬を見て判断するというほど目が肥えていたわけでもありませんから、私は電車1本で行ける渋谷場外に毎週通っておりました。
まだあのころの場外馬券売場にはウインズなどという洒落た名前は付けられておらず、場外と呼ばれており、客といえばほとんどオヤジばかり。
たまに女連れで来場している男を見ると、「なんだ鉄火場に女なんか連れてきやがって」などと思っていたくらいですから、話相手もおらず、ひたすら競馬新聞との睨めっこ。馬券が的中したとき以外に楽しみといえば、場外の入口近くに店を構えている予想屋の口上を聞くことでした。
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