競走馬の脚質の見分け方を診断していけば予想にも役立つ!

ジャパンカップを予想!

競馬には「脚質」(きゃくしつ)というものがあり初心者の方でも聞いたことがある人がいるかもしれません。

「脚質」の知識は初心者はもちろんですが、上級者やプロの予想家と呼ばれるような人達まで非常に気にしている重要な知識です。
大きく分けて4つの種類があり、基本的にはどの競走馬も得意な走りのスタイルはそれぞれこの4つに当てはまります。

馬も私達人間と同じように得意、不得意があります。
また、競馬場のコースによっても「この脚質の馬が強い!」といったレースがあります。

それぞれのレースに出走する競走馬の「脚質」を理解すれば予想にも役立ち、更にはレース展開を読んでいく技術も上達することでしょう。

脚質の種類と競走馬ごとの戦い方の違い

競馬の脚質には以下の4種類があります。

それぞれ一覧にして特徴を説明していきましょう。

逃げ馬の特徴

「逃げ馬」とはレースが開始直後からいきなり先頭に立って
後方を走る馬からまるで逃げるかのように突っ走っていく馬のことを言います。

一般的にはみんなと同じ集団の中で走りたくない、といった馬などが該当しますね。
気性的に強気な馬や逆に他の馬を怖がって馬群に入りたくない馬などがレース直後に「逃げ」の作戦に出るのもよく見られます。

一番先頭を走って後続の馬群を引っ張っていくので当然レース全体のペースを掴むことができる脚質です。

スタートの加速さえしっかり出来れば後方の馬が本来の実力を発揮出来ぬまま引き離していくことが出来るので有利かと思いますが
当然ペースを上げていけば一番負担が大きくなってしまうわけなのでスタミナも大事になってきますね。

前半に飛ばしすぎたせいで後半にバテてしまい、
差し馬などに最後の直線で抜かされてしまうケースも多々見られます。

なので「逃げ馬」が有利になるのは最後の直線が短い函館競馬場での勝率が極端に高いのもその理由です。

先行馬の特徴

逃げ馬はレースで先頭を走る馬ですが、「先行馬」は先頭ではありませんが前のほうを走ります。
2番手や~5番手くらいまでに入っており、先頭を追って走っているのがこの脚質に当てはまります。
(前のほう、といった曖昧な言い方なのは何頭立てのレースかにもよるからです)

1番手の逃げ馬を射程圏内に入れておりいつでも抜かせる位置を走りますが、
スタート直後から前のほうを全力で走るためハイペースで走らないといけないレースの場合だと
ゴール前にスタミナ切れになってしまう場合もあるので注意です。

一般的には逃げ馬がいないレースなどでは優位なポジションと言えますがここぞという時に抜かしにいけるよう
騎手の指示にもしっかり対応できる総合力がないと務まらない脚質でもあります。

ちなみに地方競馬場の場合は最後の直線が短いところが多く、
このように前を走る「先行馬」は有利な傾向があります。

差し馬の特徴

差し馬はレース前半の段階だと馬群の後ろのほうを走っており
レースの後半になるとペースを上げて最終コーナーが終わった後くらいから最後の直線にかけてどんどん前を走る馬を抜かしていって差し切るという馬です。

理想的にはハイペースなレースにて先頭の「逃げ馬」、それを追う「先行馬」がレース後半でスタミナが尽き、
バテてきたレース後半に最後の直線で抜き去る形です。

しかし逆にスローペースで走るレースの場合だと幾ら先頭を走る「逃げ馬」や続く「先行馬」でも
スタミナ切れになりませんのでこの「差し」の作戦は無駄になります。

コースとの相性的にはやはり最後の直線勝負ですので
直線の長い中京競馬場での勝率が高くなっています。

追い込み馬の特徴

「追い込み馬」とは差し馬よりも更に後ろに位置しながら力を温存しながら走り、
レース終盤に一気にフルスロットル!
今まで溜めてきた力を爆発させて最後の直線でごぼう抜きしてしまうスタイルです。

スタート直後の加速が苦手な馬や性格的に馬群に入りたくない馬などもこの作戦を取ります。

当然、差し馬と同じようにレース終盤が命ですからゴールまでの最後の直線が長い「中京競馬場」や「東京競馬場」で良い勝率を誇っている脚質でもあります。

やはり後方を走っていた馬が最後の最後で先頭を追い抜かすとても盛り上がる勝ち方ではありますが
それだけに難易度も高い勝ち方なので馬券を購入する際は注意も必要ですね。

コースごとの脚質データや勝率について

馬の脚質を理解して馬券を購入していけばレース展開や予想がやりやすくなったほうがお分かりかと思います。

しかし実際にこの脚質の知識で予想をして利益に繋げていくためにはどういった脚質がオススメなのでしょうか?

レースの前のほうを走る「逃げ馬」「先行馬」
レースの後ろのほうを走る「差し馬」「追い込み馬」

スローペースの場合はスタミナが切れる前にゴールできるので「逃げ馬」「先行馬」が有利。
ハイペースの場合は前を走る「逃げ馬」「先行馬」がバテてしまい「差し馬」「追い込み馬」が有利。

というのがシンプルな特徴ではありますがやはりそれには競走馬はもちろん、
実際に走る競馬場のコースがとても重要になってきますね。

前述のように「逃げ馬」「先行馬」などは「差し馬」「追い込み馬」に最後の直線で抜かされないように
最後の直線が短いコースが有利ですし
その逆も同じで「差し馬」「追い込み馬」はレース後半勝負なので最後の直線が長いコースで良い成績をおさめています。

このように脚質データを読んでいくときはそのコースとの相性も視野に入れておかなければならないということです。

脚質適正とは?

脚質データを読んでいくと、どの脚質が一番最強なのか?と思う時が出てくることでしょう。

結論から先に言ってしまえばそんな最強の脚質などは存在していません。

勝率を上げていくために必要なのは脚質適正を知っていくことです。
脚質適正とは、距離適性×気性が重要と言われております。

何故気性が関係してくるのか?と思う方もいると思うので詳しく説明していきましょう。

まず気性とは馬の性格のことでほぼ血統による遺伝で決まると言われています。

競馬はとにかく速く走ることが重要ですが、脚力と同じくらい気性は厳しいレースを勝ち抜いていくために必要な部分です。

目の前を走る馬を追い抜きたいと思う闘争心や精神力、そして粘り強さ。

他の馬を怖がらないタフさや落ち着いて自分のペースを維持できる勝負強さなども当然脚質に絡んでくる重要な部分です。

逃げ馬の見つけ方

また、重馬場の場合はより脚質による差が顕著になります。
逃げ馬や先行馬が有利というわけでもないのですが、差し馬や追い込み馬にとってあまりにも不利な要素が多い重馬場の場合は逃げ馬を見つけるのがコツになってくることでしょう。

逃げ馬の見つけ方としては前走で逃げた馬を調べていくことが基本にはなってきますが、逃げたい馬が複数いると当然のように先行争いが生じてゴール前に馬のスタミナが尽きてしまう可能性も十分に高まってしまいます。

当然馬場状態が悪いと予期せぬことも多く起こりえますのでその時は脚質が自在の馬がベターかもしれません。

自在の馬の気性としては基本的に難はないので後はどれだけの脚力があるのかというだけで判断すればいいのでまずはこちらの方法を試してみることをオススメします。

脚質の診断や判定の方法

競走馬の脚質やコースとの相性についてわかったら早速レース展開を予想してみましょう。

各競走馬の脚質についてはネットの他に競馬新聞などでも情報を入手できますが
最近良い結果が出ていない馬などは走りのスタイルを豹変させるパターンもあるので注意が必要です。

まずは直近のレース(前走や前々走など)の結果を見て
「レース中にその馬はどの位置で何番手を走っていたか」
をチェックすることが重要です。

例えば③-②-①といった具合ならば先行の位置から追い上げて逃げ馬を抜かしてゴールした、
ということが推測できるでしょう。

例えば歴代3冠馬が揃った「第40回ジャパンカップ」を例に見てみましょう。
上位3頭の4つのコーナーの通過順を列挙してみると、

【1着 アーモンドアイ】

④−⑤−④−④

【2着 コントレイル】

⑨−⑨−⑨−⑨

【3着 デアリングタクト】

⑦−⑦−⑦−⑦

死闘を物語るように健闘の伏兵陣よりも、実力の全てを出し切ろうとした3頭の三冠馬はいずれも直線で真っ直ぐ走れずに、各々理想の位置取りだったにもかかわらず、最後は歯を食いしばって激走していました。

そこまで激しい競馬ばかりではありませんが、これらに類する活躍を見せた近年の名馬たちには特徴があるようで
殊脚質の部分で、あまりワンパターンに固執しないタイプが続々登場しています。

基本的な数字の羅列の理解と同時に、いつも違う戦法を取り入れる馬が、上のクラスほど案外多いということも頭に入れつつ、なんでそんなことになったのに勝ったのかを少し解説して参ります。

【キタサンブラック】<顕彰馬/G17勝>

−勝利したG1の位置取り−
・菊花賞 ⑤−⑤−⑩−⑧
(最初のG1タイトル)

以降、
<逃げ切り(①−①−①−①)>

・天皇賞(春)<2016年>

・ジャパンC

・有馬記念

<4コーナー1、2番手>

・大阪杯 ④−③−③−②

・天皇賞(春)<2017年> ②−②−②−①

・天皇賞(秋) ⑪−⑤−②

【キセキ】<現役/G11勝>

・菊花賞 ⑭−⑭−⑫−⑦

・ジャパンC ①−①−①−①
*<2着/2018年・勝ち馬アーモンドアイ>

【グランアレグリア】<現役/G14勝(3連勝中)>

・桜花賞 ③−①

・安田記念 ⑧−⑦

・スプリンターズS ⑮−⑮

・マイルCS ⑤−⑤

実は、この3頭を取り上げただけで、脚質と競走馬の特徴、最も重要な戦略というものが読み取れるのです。
どの馬も先行ポジションにつけて、ほどほどに抑えて、頃合いを見て抜け出していくというパターンが、本当はいつでもやりたい戦法なのだけれども、競馬というのは、タイムトライアルでもぶっちぎりの楽勝ばかりを続けられるものでもないので、いっぱい強い馬が登場するG1レースで、毎度同じように勝てるとは限らないわけです。

問題は、それが彼らにとって、大きな問題ではないのだと、どの段階でファンも関係者も理解したのかということ。
殆んどの場合、それはその馬に関わることが多い主戦騎手が一番最初に気づくわけですが、乗り替わりで、また色々と戦法も変更を余儀なくされる可能性があったにもかかわらず、二人以上の騎手で素晴らしい結果を残しているのも、また異例と言えば異例。

とりわけ、殿堂入りを果たしたキタサンブラックの素晴らしいところは、超大型馬だったにもかからわず、戦略が柔軟に選択できた稀有な性質の持ち主だったことでしょう。
春の天皇賞、ジャパンC、引退レースの有馬記念を逃げ切った馬でありながら、それはそれで大変な記録ではあるのですが、ペースに合わせて抜け出したり、スタート時に変な態勢でゲートを出てしまって、信じられないほど後ろの方からレースに参加しながら、武豊騎手が極悪馬場を皆が安全運転で外を回すところを逆手にとって、誰もいない内ラチ沿いからスルスル進出して、直線では先頭でいつも競馬にしたという秋の天皇賞もありました。

4歳以降は武豊騎手が乗っていたので、そんなことも可能だったのですが、3歳のデビュー時から、最後に有馬記念を使うところまでで、実は4人の騎手が絡んで、2人で勝っている上に、残りの2人はワンポイントリリーフにも関わらず、先行して粘り込める持ち味を発揮させて、G1でそれぞれ3着に導いているのです。
馬が騎手によって、その持ち味を変えることは、騎手の流儀にも関わることなので、当然毎度毎度変化することはあるのですが、元々が、そういうことではブレないのがキタサンブラックの強みだったことは、本格化遥か前の3歳時に、すでに証明されていたことになります。

脚質ごとのデータと代表的な馬

<近5年、古馬混合芝G1の勝ち馬の脚質>

【短距離<1600M以下>】

A:逃げ切り<2F目からすでに先頭>
<3勝>

B:先行抜け出し<3コーナー5番手以内>
<8勝>

C:差し<4コーナー8番手以内>
<4勝>

D:追い込み<4コーナーで出走馬中後ろから5〜9頭以下>
<5勝>

【中長距離<2000M以上>】

A:<1、2コーナーから先頭>
<3勝>

B:<3コーナーで5番手以内>
<14勝>

C:<4コーナーで出走馬中真ん中より上/途中で極端なマクりはなし>
<7勝>

D:<4コーナーで出走馬中真ん中より下/途中からマクった馬も含む>
<5勝>

一応、芝のレースの脚質分類はこのAからDまでの4種類を、レース展開、特にどういうラップによって構成されたものであるかで、様々なデータが形成されているとするのが、一般的な解釈です。
<A=逃げ>というのは、文字通りで最初から果敢に先手を奪って、粘り込みを図る馬のこと。

しかし、それ以外の脚質については、そのラップの構成如何で価値も変化して、必ずしもスローペースだから前が粘り込みやすいというほど単純ではないからこそ、位置取りを数字で、コーナーごとの通過順を記したものを一つの物差しとして、レース展望の参考資料として用いるのですが、展開の読みが合っていたところで、コースも馬場状態も騎手の性格も臨戦過程も…、などと他の参照すべき材料に目を向けた時、得意な条件の見極めこそが、最も重要であると気が付くわけです。

短距離と中距離以上のG1で何か違うのかというと、『中だるみが起きやすいか否か』。
短距離戦は、基本的に出たなりのポジションで、逃げ馬がどういうレースを作ろうとするかでほとんどのものが決まってしまうので、単純と言えばそうですが、長ければその途中で、騎手の意思と馬のリアクションが展開に影響を及ぼすわけです。

流れに左右される前に行って勝負するタイプと、その真逆の直線勝負型とでは、まるで存在理由そのものが違うようで、本質はほとんど同じ。
得意な条件を自分で作れるようで、真ん中にいるその他有力馬の動きに最も左右されるわけです。
大きなレースほど、逃げ切りは決まりません。
簡単に逃げ切れないのは、その果敢さが驕りにもなり、時には幸運を運んでくることはあっても、簡単に逃げ切りを許してもらえるはずがないから。
逃げ切りの例が、中長距離だと『キタサンブラック』に限られると気がつけば、よくわかることです。

<D=追い込み>はどこから動くかも重要ですが、誰が何をしようとしているかに、どれほど左右されないかが問題なのであって、自分の型にハメやすい半面、結局、前の動きに合わせるしかないという、逃げ馬とは違う理由でも、他の馬の動きにかなり左右される側面があります。
一方で、前がバテてくれれば、一定数ではなく、複数存在する後方待機グループが、何かの拍子で突き抜けることがある。
そう考えた時、脚質というのは実際のところ、
『自分が動かすか』
『相手に合わせられるか』
そのいずれかに分類されるわけです。

前に行ければ有利ですが、逃げ馬同様、先行ポジションに位置付けられる好位5番手くらいの馬だって、マークは当然きつくなる。
一方、相手を動かすこともできるし、相手の動きを封じることもできる馬ならば、本当はどの位置にいてもいいわけです。
流れに合わせる、相手に合わせる、自分の好きな位置につける。
その結果、位置取りで<B=先行>と<C=差し>を分けますが、これというのは結局、
『たまに逃げてもいい勝負になるか』
『逃げるとダメだから反対に殿<しんがり>付近にいてもいいから、ある程度仕掛けは遅らせたいか』
とこれまた二分され、分類上は4つになっているというわけです。

レースは生き物ですから、騎手の判断や馬の精神状態によっては、全く予想外の展開が起きますが、上のクラスではそれは少ないのです。
ルールに合わせる能力と絶対的な競走能力と、その両方のレベルが高いから、オープンクラスにいる。
敢えて、策を変えるというのは、決まって極端な策にしか活路を見出せないタイプで、使う距離を変更するだとか、芝とダートで主戦場そのものを変えるとか、そういうことがない限り、自分のポジションというのは大きく変化することはありません。
能力不足で後ろの方にいること以外、パターンは2種・2系統で分類され、意図したかどうかはともかく、微妙な匙加減の中で、ほとんどの馬が上手にレースをこなしたことで勝ち切るのだという理解によって、脚質そのものの本質を見極めることができるのです。

*ダートのスピード馬

・トランセンド・・・ G14勝中3回が逃げ切り

・スマートファルコン・・・ G1級6勝全て逃げ切り勝ち

<直接対決>
JBCクラシック 2011年…大井競馬場

スマートファルコン・・・ ①−①−①−①
トランセンド・・・ ②−②−②−②

勝ったのはスマートファルコン。
前走からこの対戦を想定していたトランセンドの藤田伸二元騎手は、ハイペースを利して、2番手からの競馬で勝利していました。
行く一手、というよりは誰もついていけないからこの策を追求していったスマートファルコンもまた、武豊騎手がスケールアップを図る強烈なラップに耐えられるような英才教育を経て、重賞6連勝中の絶頂期で肉弾戦覚悟の逃げに打って出ます。
結果は自分の形に拘った方が制しただけのように見えますが、本当の快速馬が直接当たることで、馬も騎手も、極限の能力発揮に自ずから導かれていくのです。

この結果から学ぶべきは、ダート競馬の本質というものと、有利な作戦という概念への疑いでしょうか。
ダートの競馬は芝の瞬発力が必要ない分、出来るだけ一定のリズムを守り通す方が有利で、芝以上に先行型の活躍が目立つ路線です。
それでも、ハイペースになれば話は別で、北米系の芝以上にハイレベルな時計を求められるハードなダートでも差しが決まる状況になるのだから、もっと砂が厚めに敷かれいる日本で、そのキツさは本場のそれを凌ぐレベルにもなります。

ところが、紛れることはまずない高水準の長めの距離のレースで、ほぼ捨て身の逃げのようで計画通り、おまけに、人気馬同士でマークし合って逃げ込むというのは、前がきつくなればなるほど、もはや、レース全体がハイレベルすぎて、差せなくなってしまうのです。
追いかけるだけで息が上がってしまうような展開。
実力者が行き切ってしまえば、結局、後半が走りやすくなるというのは、時より、芝の超高速決着でも見られるシーンです。

今なら、ダート王のクリソベリルがいい見本でしょうか。

・ジャパンダートダービー・・・ ⑥−⑦−⑥−⑤

・チャンピオンズC・・・  ③−③−④−④

・帝王賞・・・ ④−③−③−③

・JBCクラシック・・・ ③−③−③−③

国内ダート戦の無敗を続けてきた彼は、逃げ馬と同じように、似たようなポジションから同じように安定した抜け出しを理想形としています。
通過順位を見ただけで、ほぼ、その戦績が分かる馬もまた珍しいのですが、芝よりは、こうした自分のリズムが守りやすいという特徴もまた、この位置取りから読み解くことができるはずです。

主な三冠馬の脚質


戦後の最強馬として長く輝きを放った「元祖・無敗の三冠馬」
<シンボリルドルフ/G1 7勝>

〔4コーナー3番手以内〕
<正式な位置取りの記録がほとんど残っていないので、あくまで目測ではあるが…、>

・皐月賞

・有馬記念<1984/85年>

−中山のレースで勝負所で置かれたことのない馬−

いつも簡単に競馬を自分の流れに持ち込んでしまった名馬として、アンチを作るほどにまで傑出した安定感を見せたシンボリルドルフですが、逃げ馬との距離感と同時に、差し馬が上がってきて併せてくる前に勝負を決めてしまうからこその、七冠の必然性がここに表れています。
実は、逃げ切りも前哨戦では何度かあって、完全にガス抜きにやっただけのはずが、衝撃的な強さで、実は7つのビッグタイトルよりも3歳秋のセントライト記念、特にその信者の多い4歳緒戦の日経賞を、ルドルフのベストレースに挙げるファン、関係者は意外と多いようです。
実際、あり得ないくらいの強さです。


コントレイルの前に登場の「特別な年の三冠馬」
<オルフェーヴル/G1 6勝>

〔4コーナー3番手以内〕

・菊花賞

・有馬記念<2013年>

ただ、3コーナーで3番手以内は全競走で一度もなし。

・菊 ⑩−⑩−⑥−③

・有馬 ⑬−⑬−⑫−②

−いつでも捲れる天才ランナー−

追い込んで来るというよりは、折り合うポイントが後ろの方だったというだけ、とするのがオルフェーヴルの個性だと皆が認知しているので気づきませんが、実際は、直線一気の追い込みはほとんどなくて、飛ぶ鳥を落とす勢いだった3歳春から、長距離戦の連続参戦で情緒不安定となっていた4歳シーズンにおける最初の勝利となった宝塚記念までで、後はいつ何時も、この強烈な勝ち方をした上記2戦のような戦法が繰り返されていきました。
日本で全ての手綱を任された池添騎手と凱旋門賞専任のスミヨン騎手とでは、アプローチの違いこそありましたが、池添騎手で勝った、特にこの2レースに関して、鞍上から見てもオルフェーヴルは本気を出していない…、というあり得ない見解を、後々コメントしたとされます。

菊花賞も最後の有馬記念も、同じウインバリアシオンが2着でしたが、菊では2馬身半、有馬記念に関しては、直線で突き抜けて史上最大着差にわずかに及ばなかったものの、前々年同じレースを制した時が1馬身に満たない差だったのに対し、最後の最後に自身最高の8馬身差圧勝で、有終の美を飾っています。


「ワープする男」の代表格と言えば、コントレイルの父であるこの馬。
<ディープインパクト/G1 7勝>

〔有馬記念の勝負のポイント〕

2005年 ⑪−⑩−⑧−⑥
<好位抜け出しのハーツクライに及ばず2着>

2006年 ⑫−⑫−⑪−⑩
<前年よりややハードな展開で追い出しを少し遅らせて、直線では弾ける>

ただ一番強烈なのは、有馬記念勝利直前のジャパンCで、

⑪−⑪−⑪−⑦

これ、11頭しかレースに出ていないのに、動き出したのが4コーナーに入ろうというところからで、おまけに、

73.8秒−71.3秒

という超スローペースを、大外から突き抜けた一戦。
自分が追い込みに固執することで、周りの動きを止めてしまったという、武豊騎手とディープインパクトにとっての芸術を体現したものとして、本当はもっと評価されるべきなのでしょうが、凱旋門賞での敗戦と使用薬物の規制に抵触したことによる失格処分を受けた直後の一戦で、それどころではなかったというのが本当のところ。
決して、前年のクラシックを走っていたときや春の天皇賞で驚異のレコードを叩き出した時のような派手さは、見た目では感じられませんが、この2つの数字を並べたデータを併記することにより、名馬ディープインパクトの個性が全て表現されていると言っても、筋違いな見解とはならないはずです。